「夏」といえば、抜けるような青空と大きな入道雲、麦わら帽子やビーチサンダル…と、さまざまなモチーフが思い浮かびますが、みなさんはこの夏どんな写真を撮りましたか?
今回は、これまで公開した記事の中から「夏」にまつわるテーマをピックアップ。夏らしさを際立てる構図やアングル、光の入れ方などの基本から、小物使いや風景へのアクセントの入れ方などの応用まで、ロケーション・被写体ごとに撮影テクニックを紹介します。
夏感たっぷりなロケーションでの「夏のとらえ方」
輝く海や砂浜、鮮やかな田園風景…。夏の強い日差しで魅力を増した光景を目にすると、自然とワクワクしてきますね。ここでは、風景やポートレートなど、ロケーションを生かした撮影ポイントを紹介します。
【海】はじめてでもマネできる!海の表情を生かす構図・アングル・小物の演出
地元・香川で日常的に海を撮影しているフォトグラファー・ひろさん(@hiro_photograph)に、夏の海の撮影アイディアを教えてもらいました。
1.主役の人を真ん中に配置して、海の広がりとストーリーを感じられる写真に
- 「島旅感」をイメージした写真では、堤防越しに海を背景として入れるのがオススメ。麦わら帽子やカメラなどをうまく生かすことで、旅感がさらに増します。
- 夕景の海を背景にする場合、人をシルエットで入れると情感たっぷりに。太陽は直接入れず斜めからの光で明暗差を抑えると、ゆかたなどのディテールを残すこともできます。
2.水面のきらめきを開放絞り気味で玉ボケに
- 水のきらめきはローアングルで強調。左の写真のように開放に近いF値できらめきを前ボケにし、奥に人を配置することで、「爽やかな夏」の印象が際立ちます。
- 海と夏アイテムの相性は抜群です。玉ボケにしたきらめきにラムネを重ねることで、主役が浮き上がります。
その他にも、リフレクション+αなど、海が作る風景を生かしたさまざまなアイディアを紹介しています。
読むだけで夏旅気分に浸れるこちらもオススメ!
フォトグラファー・yasukaさん(@ya.24)が昨年訪れた、福岡県・能古島。記事を読むだけで夏の島旅を満喫できます!
そして、海、入道雲、麦わら帽子、ワンピース…と、要素をたっぷり詰めこんだ写真は、夏のとらえ方の参考になるものばかり。右上のブランコに乗った写真は、しゃがんで撮ることで、入道雲の中に飛びこんでいくようなイメージを狙ったそうです。
【海と青空】背景の構図で印象が変わる日の丸構図のポートレート
透明感が魅力のフォトグラファー・酒井貴弘さん(@sakaitakahiro_)に、海と青空というロケーションで、人を際立たせる「日の丸構図+α」について教えていただきました。
1.主役は日の丸、背景は三分割を意識することで、全体がまとまる
モデルさんの顔を日の丸構図にしながら、背景は海の水平線が三分割のグリッドに乗るように。そうすることで、写真全体がまとまった印象になります。
2.同じ場所でも、空を大きく入れることで、主役の存在感がアップ!
上の2枚の写真は同じ場所で撮影したものですが、青空を大きく入れることで人物の存在感が増し、さらに透明感が際立ちました。いいロケーションを見つけたら、いろんなアングルを試すことが大事ですね。
記事では、波の水しぶきとモデルさんの仕草で動きを出した撮影にもチャレンジしています。ぜひ参考にしてみてください!
Model:MiYaBi(@myb__611)
夏のフィルムさんぽを楽しみたい方はこちら!
海が見える公園でフォトさんぽをしたモデルの松浦稀さん(@marematsuura)とフォトグラファーのnanoさん(@nanono1282)。ピントや露出、波打ち際でのリフレクションや多重露出など、フィルムカメラで人や風景を撮る際の基本から応用まで、夏気分を満喫しながら学べます!
【田園】見る人の共感を呼ぶ、アニメのワンシーンのような田園風景の撮り方
田園風景を「アニメのワンシーンのように」切り取るAkine Cocoさん(@akinecoco987)。「どこか懐かしい」と見た人の共感を呼ぶ、田園風景の撮影ポイントを紹介します。
1.地上と空の比率は1:2をベースに、空の表情が生きる比率を探す
田園風景を撮る際は「空の表情」が大切で、特に青空と積雲の組み合わせが夏らしくてオススメ。
- 表情を際立てるには、地上と空の比率が重要。1:2を基本に、そこから雲の形や広がりを最も生かせるバランスを探します。
- 太陽に近いと色味が薄くなるため、太陽から十分離れた空を狙うことで、青空の色味をしっかり出すことができます。
+αで田園風景にアクセント
豊かな緑と青空に+αの要素を加えていくと、田園風景にバリエーションが生まれます。カーブミラーのはっきりしたオレンジ色が、アクセントになっています。
2.放射線構図で風景の広大さを強調
スケール感を表現したい場合は「放射線構図」でパースを強調すると効果的です。
上の写真は、画面右上の雲がしっかり入るように意識しつつ、空、田んぼ、道路で3分割になるようにバランスを整えています。
はじめは田園風景の背景に山や林、小さな集落がある場所を意識して撮ると雰囲気が出やすいそう。他にも、Twitterで投稿する際の4枚組の考え方や、田園風景でミニマル写真を楽しむ秘訣も紹介しています!
夏の風物詩を取り入れた「夏のとらえ方」
ゆかたや花火、スイカなど、夏の風物詩を取り入れるだけで、写真が一気に夏仕様に! キーワードごとに撮り方のポイントを紹介します。
【ゆかた】江戸情緒溢れる町の世界観を生かした、ゆかた撮影のポイント
趣のある町並みとゆかたは相性抜群! フォトグラファー・shuntoさん(@shuntosato)に、レトロな雰囲気や和アイテムを生かした撮影のコツを教えてもらいました。
1.その場の雰囲気に溶けこむような、光と仕草を切り取る
ゆかたには、しっとりした趣や、非日常という楽しさの両方の魅力があると思います。
- 表現したい雰囲気に合わせて露出を調整。
- あんみつを食べる姿や石畳を楽し気に歩く様子など、場所に合った動きを取り入れる。
見た人のイメージが膨らむような画作りがポイントです。
2.小物を使うと、モデルさんも和の雰囲気になじみやすい
着慣れない衣装で、雰囲気に合ったポージングはすぐには難しいところ。そこで、小物を持ってもらうことで、モデルさんも自然と和の雰囲気を楽しむことができます。
撮影前のコミュニケーションも大事に、そして常に左目で目視しながら右目でファインダーをのぞいて笑顔を逃さないように。何気ない会話から生まれる自然な笑顔が一番のシャッターポイントです。
今回はゆかたの撮影ポイントを紹介しましたが、「北総の小江戸」と呼ばれる千葉県・佐原の魅力、風景やスナップなどレトロな町並みを切り取るポイントもたっぷり紹介しています!
Model:花柳のぞみ(@nozomihanayagi_)
【花火】手持ちで、花火+人をバリエーション豊かに撮影
フォトグラファー・yuki(@sty830)さんが長野県を旅した記事では、スナップ感覚で楽しむ花火大会の撮影について紹介しました。花火は三脚を使った定点撮影が一般的ですが、動き回りながらバリエーションを出すには、手持ち撮影がポイントです。
遠くの花火は望遠でぼかして大きく見せる
花火と一緒にポートレートを撮る際は広角レンズが基本ですが、小さめな花火が遠い位置で打ち上がる場合、望遠で花火をぼかすのが効果的。実際よりも大きく写り、人と重ねることで際立ちます。
花火のスケール感を伝えるには、やはり広角で
こちらは別記事で紹介した、yukiさんの思い入れのある「長岡花火」の写真。広角により、視界すべてをおおう花火の迫力が伝わってきます。
記事から「花火」をピックアップしましたが、長野の高原風景はとても涼を感じられて、見るだけで心地よくなりますよ!
【スイカ】フォトグラファー10人が「スイカ」を題材に描いた夏
NICO STOP参加フォトグラファー10人による夏の特別企画を昨年行いました。「スイカ」という共通テーマでどこまで独自の夏の表現ができるのか…? ここでは3人の作品をピックアップします。
「双子たちの夏休み」嵐田大志さん
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スイカといえば、縁側!という直球で「古き良き日本の夏」を表現した嵐田さん(@Taishi_Arashida)。おばあちゃん家でスイカを食べるシーンをイメージした写真は、セミの鳴き声まで聞こえてきそうです。
yuki「二人で過ごした夏休み⑧」
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yukiさん(@sty830)は、スイカを「赤い色の夏アイテム」としてとらえ、スイカが一番映える色合いの場所で夏を満喫するカップルを撮影。これ以上ないほど詰めこんだ「夏」で、二人の思い出を彩りました。
yasuka「晴れたら」
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割ったスイカを見ると「心から楽しいときの全力の笑顔」を思い浮かべるというyasukaさん(@ya.24)。思いっきり遊ぶ友人たちのスイカのような笑顔から、夏の晴れた日のワクワク感が伝わります。
フォトグラファー10人の「スイカ」で作品を作っていくプロセスは、季節のとらえ方の参考になるものばかりです!
また、連動して昨年開催した「夏の思い出」フォトコンテストでは、Twitterで投稿されたみなさんの「夏のとらえ方」をご覧いただけます。
おうちの中で楽しむ「夏のとらえ方」
最後は、おうちの中でも夏撮影が楽しめる被写体を紹介します。
【夏スイーツ】宝石のように美しい、透明スイーツの撮り方
SNSを「透明な博物館」に見立てて作品を発表している透明愛好家tomeiさん(@tomeinohito)。夏みかんを使った涼やかな透明スイーツのレシピと撮り方を教えてもらいました!
1.透明感を最も引き出せる「半逆光」
素材の色を保ちながら透明が最も引き立つのが、自然光を生かした半逆光です。アングルを変えたり、調理中の動きのある透明を撮影したり、光輝くいろんな透明を探してみてください。
2.透明を1色と考え、3色でまとめる
テーブルフォトでは、色数を3色程度にまとめるのがコツ。透明も1色として考え、果物の色や影の色を生かすように配置やアングルを決めます。右上の写真は、影の表情を生かすため俯瞰で撮影。
夏の日差しを浴びて輝く透明スイーツを、作って、撮って、食べて…たっぷり堪能してください!
【ペット】ミニチュアアイテムで作る夏のシチュエーション撮影
Instagramで人気のKAZさん家のハリネズミさん(@ichigo_chiyoco)。連載企画「今日は何の日?」8月では、「ビーチサンダルの日」「ゆかたの日」など夏らしい記念日をお届けしました!
ミニチュアアイテムや家にあるものを駆使して、ハリネズミさんと世界観を作り上げる
思いきり夏を演出するため、夏らしい小物を集めて撮影。左のビーチの砂は、実はハリネズミのトイレ用の砂なんだそう! 専用のものでなくても、アイディア次第で夏の雰囲気を演出できます。
また、右上の写真では、バニラちゃんをかわいく着付ける感覚で、まわりにお花を散りばめて。家族であるハリネズミさんとの思い出を残したいという気持ちが大事なんですね。
#NICO STOP企画で選ばれたフォトグラファーを紹介!
いつも#NICOSTOPの投稿をいただきありがとうございます。たくさんの投稿の中から、今回は「夏のとらえ方」にぴったりなmasaki_photographさん(@masakiphoto1)の作品をご紹介いたします。
なついろ#東京カメラ部 #NICOSTOP#お盆なのでフォロワーさんがくっそ雑に紹介してくれる pic.twitter.com/i7MWRubW7Y
— masaki_photograph (@masakiphoto1) 2020年8月16日
編集部コメント
どの作品も素敵なのですが、特に4枚目のどこまでも続くひまわり畑と麦わら帽子という組み合わせが夏らしさにあふれていて惹かれました!鮮やかなイエローとグリーンの色合いもかわいらしく、眺めているだけで一緒にひまわり畑を散策しているような気分を味わえました。
そして、こちらの写真を表紙に使用させていただきました。
masaki_photographさんコメント
大きなひまわり畑と麦わら帽子。夏を表現する最高の組み合わせを目の前に、シャッターを切らずにはいられません! 両側がひまわりになる通路で立ってもらい、元気に咲くたくさんのひまわりの黄色で明るい夏を表現しました。
これからも、#NICOSTOPでのご投稿を楽しみにお待ちしています。
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バリエーション豊かな「夏のとらえ方」、いかがでしたか?
夏らしさを際立てるために大切な、主役と背景の構図や光のとらえ方、小物による演出は、広大なロケーションでもおうちの中でも生かせるポイントばかりです。
暑い日はもう少し続きそうなので、撮り残した被写体があったら、ぜひチェレンジしてみてください!
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