みなさん、はじめまして。香川在住のフォトグラファー・ひろ(@hiro_photograph)です。
写真は15年ほど前に、会社の先輩がきっかけではじめました。カメラを買ってはじめて撮りに行ったのが朝日。その場所が、たしか海だったと記憶しています。
家からすぐの身近にある海に行って撮ることが多く、「海の魅力」は語り尽くせないぐらいで…。天候や時間帯によってさまざまな表情を見せてくれて、いつ何時見ても飽きません!
今回は夏の海の撮り方について、地元の海の写真とともに僕なりのアイディアを紹介したいと思います。
- 人を真ん中に入れて、海の広がりを感じさせる
- 夕陽に染まる海を、シルエットを入れて情感たっぷりに
- 干潮時は、リフレクションを狙おう
- 水しぶきで風景に動きを加えよう
- ローアングルで、水のきらめきを主役に
- アイテムを使って、海撮影のバリエーションを広げる
- Photographer's Note
人を真ん中に入れて、海の広がりを感じさせる
人と海を一緒に撮影する場合、人を真ん中に入れると海の広がりを表現できるので、ファーストステップとしてオススメです。そこから、狙いに合わせて左右に余白を作ったりしていくと、バリエーションが生まれていきます。
海撮影の機材や設定
- 海や空を広く写し入れたいときは、焦点距離は24~35㎜ほどで、F値をやや絞り気味のF8~11に
- 人を入れて際立てるときは、焦点距離は50mmほどで、F値を開放気味に
という使い分けをしています。
この写真では「島旅に来た」というイメージで、人を主役として中心に配置し、海を背景の一部にしました。
- 人の配置は島の稜線のちょうど間にして(後ろの海にブイが浮いていたのでそれを隠す意味もあります)
- 友人の持ち物であったカメラも雰囲気を膨らませる小道具として
「これからどこへ行こう?」と考えているようなイメージで目線を外してもらいました。
引いて広く写す際も、構図の考え方は一緒
淡い雲が出ている空の表情がよかったので、引きの画も。このときも、人を中心に置きながら、堤防や海の割合を意識してあくまで背景の一部になるように。
上の写真は、「旅の途中で少し休憩している」イメージ。
ラムネを2本置いてもう1人いることを意識させながら、
- 人をやや右寄りにして、ラムネと人をセットで見たときに中心の位置になるように
- 左側の島が右の島より手前にあり濃く写るので、右側にリュックを配置
以上の配置調整で全体のバランスを取りました。
こちらは、人は真ん中にしながら、波によってできた砂紋を強調するため、下の面積を大きくしました。焦点距離は24mmで、砂紋の表情を広く写す構図に。海は少し淡い描写にするため、F5.6を選択しました。
モデルさんには海をまっすぐ見てもらい、この写真を見た人がいろいろ想像できるように、という狙いがあります。
人を中心からずらす場合は、三分割構図を意識
三分割構図のグリッドを意識して、堤防や人の位置を調整することで、右側への広がりを作りました。
また、海を入れない構図でも、堤防や背景の抜けるような空、白いワンピースや帽子、サンダルを脱いだ素足…などの要素によって、「海に来ている」という想像をかき立てられると思います。
夕陽に染まる海を、シルエットを入れて情感たっぷりに
夕陽が沈む方向の海が家から10分ぐらいということもあり、夕陽と海は一番撮ってると思います。太陽がまさに沈みそうな瞬間、水面に太陽の筋ができる光景を狙いました。雲による空の表情がすごくよかったので、空を広く入れています。
そこに人のシルエットを入れることで、見た人がいろんな想像をできる写真に。
この際、
- 先ほどの太陽の位置に立ってもらうことで人がより際立つように
- 顔のシルエットがきれいに見えるように横向きに
- 顔と風景の重なりのバランスを見ながら(空の部分に顔がくるように)アングルを調整
ということをポイントに画づくりしています。
この写真は実は撮って出しで、編集をしていません。人はシルエットになるとわかっていたので、アンダー気味にして空の表情を出しました。
「2人」になると、さらに想像力がかき立てられる
この写真では、2人の間から太陽を出すことを意識しています。今年は本当に雨の日が多くて全然晴れない中、夕方にようやく晴れそうだったので、昼に連絡をして友人カップルに海まで来てもらいました。「恋人同士が海まで夕陽を見に来た」という、まさにの状況で撮りました。
友人に「浴衣で海にいるから来る?」と誘われて、そのとき撮った写真です。「海で楽しそうにはしゃいでいる」というイメージで、手をつないで走ってもらいました。
淡く染まる夕陽と海をバックに、浴衣のディテールを残しつつシルエットを浮かび上がらせるために、
- 太陽は直接入れず、斜めからの光で
- 絞り過ぎると暗部が浮かび上がってこないので、F4程度に
マルチパターン測光でそのまま撮ると全体的に暗くなってしまうので、プラス補正しています。
干潮時は、リフレクションを狙おう
香川県の父母ヶ浜のように干潮時に潮だまりができる海岸では、無風のときはこんなふうに水面反射を生かした撮り方ができます。少しでも風があると水面が揺らいでしまい、きれいなリフレクションにはなりません。
上の写真では、リフレクションでできた像を生かすため、人を中心に上下対称の二分割構図に。このときは夕暮れ時の曇り空で、あまりに白すぎたので色温度を4500K程度に設定して少し青味を持たせました。赤との対比が際立ったと思います。
リフレクションがはまる構図
・上下対称に二分割構図
・人の実像は一部分であとはリフレクションで構成する
の主に2つのパターンで撮っています。
上の写真では、実際の人の顔や傘を持っている様子は入れず、リフレクションで見せるように。モデルさんの向きに合わせて空間を広くあけることで、構図に安定も持たせています。
水面の印象を強めるためローアングルで構図を決めたのですが、構えたまま風が止むのを待つのはかなり疲れます(笑)
こちらはリフレクションの像を、波紋で少しくずしました。夕方で、青い水面に夕景が反射することで、静かな美しさがより際立ちます。
美しい波紋を撮るコツ
- 開放から2~3段絞ることできれいに写る
- 少しアンダー気味に撮ると雰囲気が増す
- いい画が撮れるまで、何度も波紋を作ってもらっては撮るという作業を繰り返す
水しぶきで風景に動きを加えよう
静かな海の情景に動きを加えたいときは、水しぶきを作るのがオススメです。
上の写真では、リフレクションを作った状態でカメラを構え、水面を蹴ってもらい水しぶきを狙いました。背景が青空でもいいのですが、夕方の暖色系の空を入れることで水しぶきがより際立ちます。
こちらも夕方の時間帯を選び、夕陽の反射に手と水滴を重ねることで、幻想的な画づくりをしました。
水滴を写し取るコツ
- シャッタースピードが重要で、1枚目は1/2000秒、2枚目は1/1600秒に設定
- しずくが際立つように少し露出を抑え、開放F1.8で背景をぼかす
- 1枚目の写真では、水しぶきの前ボケで奥行き感も強調
あとはとにかく、イメージ通りになるまで何度も何度も繰り返す…これに尽きます!
ローアングルで、水のきらめきを主役に
きらめきを撮るときはレンズのチョイスが大事で、標準~望遠で開放近くのF値で撮るとほどよい玉ボケになってくれます。さらに、ローアングルにすることで、水のきらめきを主役級に輝かせることができるんです。
上の写真は、F2で手前のきらめきを前ボケにし、奥に人を配置することで爽やかな夏をイメージしてもらえるようにしました。水面の中から特にきらめくポイントを見つけ出し、モニターの写りを確認しながら、カメラが水面につくかつかないかのギリギリの位置に構えて撮っています。
アングルによって玉ボケが入る量が変わるので、砂紋の層ごとのきらめきを生かすために先ほどの写真よりは少し上の位置から撮影。想像が膨らむように、足と白いワンピースの裾だけで構成しています。
砂浜の足跡もローアングルで主役に
今度は「足跡」を主役に、開放気味に人物をぼかすことによって海に思いを馳せているようなイメージに。島や立っている位置、少しなびいたスカートはかなり意識しました。ローアングルではあるのですが、低すぎると足跡がほとんど写らなくなるので、座ってアングルを決めています。
この写真は撮って出しで、海や空の露出よりも、主題の足跡を意識した露出で撮影しました。
アイテムを使って、海撮影のバリエーションを広げる
海撮影には車で行くのですが、何かに使えないかとアイテムを常に載せています。
サンダルなど、身につけているものを手に持つだけで画になる
海といえばサンダル。頭や足元が入らないようにフレーミングして、手に持ったサンダルに目がいくようにしました。
波が出てきた海の表情とサンダルを手に持った仕草がマッチしていると思います。背景に海を入れる場合、穏やかだったり、波が出たりと様子は刻々と変わるので、海の表情をうまく生かせるとなおいいですね。
赤い傘で、天候の悪い海にアクセントを
曇りや雨の日の海はコントラストが低く、のっぺりとした印象になることが多いので、差し色として赤い傘を使うことがあります。
すべて同じ服装、ポーズで撮ったので、違いを見てみてください。ちなみに、服装は傘が際立つようにシンプルなほうがオススメです。
この日は薄曇り。人を真ん中に配置することで、視線誘導を狙いました。寄って撮ると天候が関係なくなってしまい、かつ主張が強すぎるので、引いてまわりの状況を写したほうが風景や天候を生かせます。
このとき雨は降っていませんでしたが、厚い黒い雲でおおわれ、海は空に溶けこむほど白くなっていました。ダイナミックな雲の流れを生かすように、かなり引いて空の割合を多く。中心から外に広がるように雲が出ていたので、その始点に人を配置しました。
夏らしいアイテムの世界観を海で演出
夏といえば、ラムネですよね。夏場は常にラムネを持ち歩いて、いつでも撮れるようにしています。
モノを際立たせるときは背景をすべて水面にして、手元だけを切り取るようにしています。加えて、水面のきらめきを開放に近いF値で玉ボケで入れるのがポイント。ラムネを光に重ねると、ラムネの中に光を入れることができて、より雰囲気が出てきます。
純粋に楽しむことで出せるバリエーション
撮影の休憩中。モデルさんがラムネを撮り出したので、「それいいやん!」と撮らせてもらいました。手を上げてる方向に空間をあけて広がりを出すため、人を左寄りにしています。
人を入れる場合は、海と人が際立つように露出を合わせるので、空の白飛びなどは気にしていません。
Photographer's Note
夏の海撮影のアイディア…いかがでしたか?
身近にある海でこれまでたくさんの写真を撮ってきましたが、海を撮るときは実は「ただただ、きれいだな~」と思いながらシャッターを切っています(笑)
今回紹介した撮影方法は一部で、まだまだたくさんの撮影方法があると思います。思いついたらとりあえずやってみることが大事だと思うので、どんどん撮ってみてください!
僕自身の話をすると、もともときれいな風景が好きで、住んでいる香川県内はもちろん、他府県のいろいろな場所に撮りに出かけたりしています。今後もまだ見ぬきれいな風景を求めて、いろんな場所へ出かけていきたいと思っています。
Supported by L&MARK
ひろ
香川県在住のフォトグラファー。フィルムやデジタルカメラで撮影した写真を、Instagramを中心に発表している。もともとは風景が専門分野だったが、最近はポートレートにも力を入れている。