はじめまして。透明愛好家のtomei(@tomeinohito)です。
私は「透明」が好きで、普段から透明に縁のあるスイーツを作ったり、雑貨を集めたり、SNSを「透明な博物館」のように見立てて撮影した写真を発信しています。
今回は、私の思う「透明」の魅力について、透明スイーツの作り方・撮り方を通してお伝えできたらうれしいです。
「透明」と向き合うきっかけ
みなさんの好きな色は何色ですか?
私は、今でこそすぐに答えを出せますが、以前は「透明…だけどそもそもこれは、色なのだろうか」と答えを頭の片隅に置いておく日々でした。
透明と向き合うきっかけになったのは、4年前からはじめた写真。自分の好きなものがわからなかった当時、カメラを通して自分の好きなものを見つめてみようと思い、撮りはじめました。
そうして“好き”を突き詰めていったら、やっぱり透明が残ったんです。
日常に溢れている透明の姿
日常の中で見つけた透明たち。ガラスや透過、水を切り取って形を保っているかのような姿に透明を感じて撮影しました。
“透明”って、ないものの比喩表現として使われたりしますよね?
そのないものを自分にとって一番身近な“料理”と組み合わせてみて、「ないものを作ってみる」ということに自分の中でおもしろさを感じて、今でもそれを続けています。
根本にあったお菓子作り
お菓子作りは目の前の作業だけに集中できるところが好きで、透明スイーツをはじめる前からよくしていました。作っている瞬間は、嫌なことも忘れてしまうくらい、とても静かな時間なんです。
自分の中にあった「写真」×「お菓子作り」×「透明」が組み合わさることでできた「透明スイーツ」。
いつも私が透明スイーツを作るときに意識していることを、作り方と一緒にお話ししていこうと思います。
夏みかんを閉じこめた水信玄餅
太陽のような色の夏みかんを使った、清涼感と季節を感じる透明スイーツ。1切れをまるごと包みこんだ水信玄餅は、果物の形が生きた見た目と自然な甘さが魅力です。材料もシンプルで作りやすいので、ぜひ試してみてください。
水信玄餅の作り方
材料
- 夏みかん…4切れ
- グラニュー糖…15g
- アガー(凝固剤)…8g
- 水…250ml
- はちみつ…大さじ1
作り方
- ボウルにグラニュー糖とアガーを入れてよく混ぜて小鍋に入れ、水とはちみつを加えて溶けるまで加熱する。
- 氷水で粗熱をとったら、夏みかんを1切れずつ入れておいた製氷器に流しこみ、冷蔵庫で固まるまで冷やす。
思わずシャッターを切ってしまう調理過程
調理中は一つのストーリー仕立てのようで、完成図を想像するのと同時に工程もイメージして“動きのある瞬間”を選んで撮影しています。特に液体を流しこむシーンでは躍動感が伝わりやすくなります。
完成した静寂感とは異なる魅力の動きのある透明の表情。その先を想像させるような一枚をとらえたくてシャッターを切ってしまうのですが、どこを切り取ってもおもしろく、撮り終わってから見返すのも楽しみの一つです。
水信玄餅の撮り方
光の向きを工夫することで、水信玄餅の透明感や夏みかんの自然な色味を写し取ることができます。アングルや構図によって、透明スイーツのさまざまな魅力を引き出すことも。レンズは、広い世界観を切り取れる35mmを愛用しています。
透明感を最も引き出せる「半逆光」
透明なものが一番引き立つのは、後ろからの光かなと思います。自然光を生かした半逆光は、素材の色を保ちながら透明感を演出できます。また、果物の美しさを写し取るには、形がきれいなものを自分で吟味することが大切です。
宝探しを楽しむように、さまざまな視点で見つめる
一つのスイーツも、撮る角度や見せ方で変化をつけていきます。俯瞰、横、スプーンですくってみるなど…。同じ画角でも寄ってみたり引いてみたり差をつけていくと、素材の見せ方の新しい可能性を探す“宝探し”のような気持ちになります。
実際に目で見る視点から写すと、見た方が一人称になった気持ちに。
写すものを複数にして華やかにしたり、一つをお皿にわけてシンプルに写したりすることで、同じスイーツでも緩急が生まれていきます。
全体像を見せたいときは、俯瞰で。複数の写真で構成するときのバリエーションになります。
被写体に寄ると、普段とは違う視点で非現実感が生まれるように感じます。スプーンですくいあげることで、動きのある一枚に。
透明感を引き立たせる編集
「Photoshop」や「VSCO」を使い、下記のような編集で透明感をさらに引き出します。
- コントラストを強め、くっきりとした印象に。
- 青みを足し、ガラスのような透明感のある写真に仕上げます。
左:編集前、右:編集後
夏みかんのキューブゼリーポンチ
水信玄餅とほとんど同じ材料でできるアレンジスイーツ。黄色と透明のグラデーション、炭酸水の泡がとてもきれいな一品です。夏みかんの酸味とはちみつのコクを炭酸水の弾けるような飲み心地で楽しむことができます。それぞれ異なる味や食感ですが、不思議な統一感がある爽やかな味です。
ゼリーポンチの作り方
材料
[キューブゼリー]
- グラニュー糖…15g
- アガー…8g
- 水…250ml
- はちみつ…大さじ1
[夏みかんソース]
- 夏みかん…200g
- グラニュー糖…50g
- 氷…適量
- 炭酸水…適量
作り方
- 水信玄餅と同じ要領で、[キューブゼリー]の材料を加え混ぜて加熱し、氷水で粗熱をとったら、バットに流しこみ冷やす。固まったらキューブ状にカット。 ※1cmくらいにカットしましたが、グラスに合わせてお好きの大きさで。
- [夏みかんソース]の材料を小鍋に入れて煮詰め、氷を入れたグラスに、夏みかんソース→キューブゼリー→炭酸水の順で入れる。
ゼリーポンチの撮り方
器に合わせた構図や質感を統一した小物でスタイリング。グラスを傾けたり、シロップを注ぐ瞬間をとらえることで、自然な世界観を切り取れます。
グラスの形状を生かすため、縦構図で
ゼリーポンチは高さのあるグラスに注ぐので、縦の構図で撮影することを意識しています。このとき、手に持って少し傾けることで自然体を演出できます。
透明なアイテムで世界観を演出
高さのあるグラスを横構図で撮るときは、シロップの小瓶やデカンタなど透明なアイテムを配置。空間をバランスよく生かしながら、世界観をつくり上げます。
このときは、シロップを注ぐシーンを1/100秒より速いシャッタースピードで連続撮影。徐々に色が変わっていく様子の中から、夏みかん色に淡く色づく瞬間を選びました。
「透明」を一つの色ととらえ、3色でまとめる
料理を撮影するときは、3色以内のシンプルな色使いにまとめるようにしています。「透明」も1色として考え、果物などの見せたい色や質感を強調するためです。
上の写真では、夏みかんの黄色、青に近い透明、影の黒の3色で、3色目の影の表情を生かすように俯瞰でリズミカルに配置しました。
Photographer's Note
ご紹介した透明スイーツが季節を楽しむきっかけになり、夏を楽しんでいただける方が少しでも増えたらうれしいです。
「透明」は、いつもみなさんの日常に溶けこんでいて、その日常こそがアイデアの源なんだなと日々感じます。何より、“好き”を突き詰めていったり、自分と向き合うことを教えてくれたきっかけも日常から突然はじまったりするものです。
私の場合、写真を撮ることで自分を見つめ、写真を通して「透明」が好きだと気づき、好きなもので何か生み出してみようという行動のきっかけにもなりました。最近は料理だけでなく、プロダクトやアートなど、幅広く「透明」について向き合っていけたらなと考えています。今回お話しして、「透明」を少しでも身近な存在に感じていただけたならうれしいです。
…みなさんの好きな色は何色ですか?
Supported by L&MARK
tomei
透明に縁のあるものを作り・集める、透明愛好家。透明の持ち味を最大限に注ぎこんだ作品を、「透明の博物館」としてSNSで発信している。