はじめまして。フォトグラファーのShunto(@shuntosato)です。普段はポートレートをメインにしていますが、実はそれ以上に風景写真だったりスナップを撮るのが好きだったりします。
オールドレンズやフィルムカメラを手にノスタルジックな世界に浸る「晴れ、ときどきレトロ気分」。第4回は関東にあるレトロな町並みをご紹介したいと思います。以前から訪れてみたかった千葉県の佐原(さわら)。江戸時代や明治時代からの建物が数多くある「北総の小江戸」と呼ばれる場所です。
今回は、僕自身初となる自筆コメントの掲載。古き良き町並みの魅力と、撮影時のこだわりやポイントなどを僕なりの視点でお伝えしていきます。
タイムスリップしたような佐原の町並み
ノスタルジックで情緒あふれる町の空気感と落ち着いた川のせせらぎ。なんだか江戸時代にタイムスリップしたような気分でした。今の時代なかなかレアな丸型ポスト。朱色がレトロな町に映える、差し色もこだわりの一つです。僕自身、赤を意識した撮影も多いので素敵なシャッターポイントでした。
今回は浴衣女子のんちゃん(@nonchan_1207)とお散歩。忙しい日々を忘れるように、この町のゆったりとした時の流れに身をまかせてシャッターを切りました。撮影では風向きや光などの環境を意識していて、すべての条件がそろった瞬間を切り取るように心がけています。
瓦屋根と川沿いに続いているしだれ柳が印象的で、さっと1枚撮るだけで時代劇のワンシーンのような写真が撮れました。和服が町に映える抜群の雰囲気ですね。
レトロな和雑貨屋さん「並木仲之助商店」
レトロな町並みの中でまず目に留まったのは和雑貨屋の「並木仲之助商店」さん。和紙や千代紙、紙雑貨、薫香などが置いてあります。ここは明治からある建物で、もともと日用品雑貨を扱っていたそうです。
店内に入った瞬間にどこか懐かしい香りに癒やされます。
お会計ではお店の方がそろばんで計算されている姿にほっこり。
小上がりに広げられた美しい和紙たち。一つ一つ丁寧に仕上げられた、日本ならではの繊細さに思わず息を呑みました。
懐かしい紙風船を買って無邪気に遊ぶのんちゃん。
僕は撮影前のコミュニケーションも大事にしていて、自然で素敵な笑顔も逃さないように、常に左目で目視しながら右目でファインダーをのぞいてシャッターを切っています。何気ない会話から生まれる自然な笑顔が1番のシャッターポイントですよね。
江戸時代の書店を改装した菓子店「さわら十三里屋」
次にやってきたのは、さつまいも菓子専門店「さわら十三里屋」さん。さつまいもはここ佐原の名産だそう。江戸時代から続いていた「正文堂書店」を改装したお店で、中に入るとしっとりとした落ち着く雰囲気です。
生地に芋パウダーを練り込んだ「芋どら」や、スイートポテト、大学いもなど芋づくし。一つ一つの手作り感と木箱に並べられたお菓子の懐かしさに食欲もそそられます。
撮影では店内の明暗差を生かし、高級感を伝えたくて編集でショーケースに温かみをプラスしたのがポイントです。
悩みに悩んだ末に定番の「芋どら」に決めました。せっかくの天気なので外でいただきましょう。
包み紙を開けた瞬間の香り、今でも思い出します。生地はほんのり甘くて、上にのった大きい芋との一体感が抜群。
撮影中はいつもまわりの環境を意識しています。特に空と光と背景。今回は晴れた空の下、レトロな町並みを背景にベンチに座ってもらい撮影しました。
水郷の醍醐味「小江戸さわら舟めぐり」
いよいよ、水郷の醍醐味である「舟めぐり」を体験。
海外の観光客の方もたくさんいて印象的でした。早速乗りこみましょう。
ゆったりとした川の流れとともに、また違った角度から佐原の町並みを眺めることができました。
涼しい風、陽の光の中で過ごす時間は日常を離れた特別感があったように思います。
舟の撮影では、風向きやモデルさんとの距離感を意識し、引きの写真では “全体のバランス”を重視しています。町並みとしだれ柳、のんちゃんの動きや表情までベストなタイミングでシャッターを切りました。
シックな雰囲気が素敵な甘味処「いなえ」
「あんみつが食べたい」というのんちゃんの要望で、甘味処「いなえ」さんにやってきました。ちなみに店名は、佐原の「佐」を分解して「イナエ→いなえ」だそうです。小粋ですね。
窓から入る光がきれいで、席の雰囲気もシックでかっこいいですね。しっとりとした雰囲気を伝えたかったので、彩度は上げず黒をしっかり残して撮影しました。実は結構アンダーな写真が好きで、ついついいろんなカットを撮ってしまいました。
かき氷が最近は人気ということでしたが、やっぱり「クリームあんみつ」で決まり。一緒に柚子煎茶を頼みました。色味が涼しげで夏らしさを感じます。静かな空気の中に、お茶を注ぐ澄んだ音が響きます。
この場所はどこから撮っても画になりますね。添えられた黒蜜や白蜜をかけると、味の変化を楽しめるだけじゃなく、写真的にも楽しめます。テーブルフォトが苦手な僕でも、すごく雰囲気のある写真を撮ることができました。
食事を終え、中庭に出てみることにしました。
中庭に続く木の道は、光と影のコントラストがその場の空気感を表現してくれます。こんなふうに手元や足元を切り取ってみるのもいいですよね。
清涼感のある石畳と竹林の中庭。足を踏み入れた瞬間に凛とした空気の変化を感じました。
趣深い町並みの佐原では、時代を遡るように、一つ一つを丁寧に切り取ることができたと思います。笑顔あふれる小江戸の町歩きからしっとりとした雰囲気のお店まで、どの場所も撮らずにはいられません。何と言っても昔ながらの空気感は普段味わえない感覚で、なんだか温かい気持ちになれました。ここで過ごす時間は日頃の疲れを癒やしつつ、ゆったりとした時間の感覚を取り戻してくれたと思います。
— ANOTHER SIDE STORY —
佐原では、何気ない日常でもファインダーをのぞいて見ると、いつもとまた違った景色が見えた気がします。何を主役にするかは自分次第、感覚にまかせてシャッターを切るのもいいですよね。ちょっと視点を変えてみるだけで、おもしろい発見や偶然の出会いがあるかもしれません。
— photo&text by Shunto
並木仲之助商店
千葉県香取市佐原イ502/TEL:0478-54-2585/営業時間:9:00〜17:00/定休日:不定休
さわら十三里屋
千葉県香取市佐原イ503/TEL:0478-51-1105/営業時間:11:00〜17:00/定休日:月曜日
https://www.shirohato.com/jusanri/
小江戸さわら舟めぐり(まちおこし会社ぶれきめら)
千葉県香取市佐原イ1730-3/TEL:0478-55-9380/営業時間:10:00〜16:00(季節により変動あり)/定休日:不定休(気象状況等により運休あり)
http://www.kimera-sawara.co.jp/
いなえ
千葉県香取市佐原イ511/TEL:0478-54-7575/営業時間:10:30〜17:00/定休日:水曜日
※お店での撮影はお店の方に許可を得てから、お店や他のお客様に迷惑にならないようご注意ください。また、撮影のみのご利用はご遠慮ください。
※こちらに掲載している情報は2019年9月12日現在のものです。
Model:花柳のぞみ(@nonchan_1207)
Supported by L&MARK
※撮影協力:水郷佐原観光協会、衣装協力:INOUE美容室
Shunto Sato
東京出身のフォトグラファー。春夏秋冬の移り変わりを優れた色彩感覚で表現し、自身の掲げる「#その瞬間に物語を」のタグでは1日約1000投稿される程人気に。その空間に引き込まれるような世界観は、国内に留まらず海外でも注目されている。