今年の冬は例年よりも全国的に寒くなり、雪が降った地域も多かったですね。朝起きて、カーテンを開けた瞬間に広がる雪景色は、大人になってもワクワクします。
今回は、これまでに公開した記事の中から「冬写真」に関する記事をピックアップ! 冬の気候を生かした風景やポートレート撮影、この時期ならではの室内での楽しみ方など。冬がもっと楽しくなる撮影テクニックやアイデアをお届けします!
雪ポートレート撮影のポイントと表現のコツ
フォトグラファーの酒井貴弘さん(@sakaitakahiro_)が、地元・長野で雪ポートレート撮影。雪の中での露出設定やロケーションを生かした表現のコツなど、基本から応用まで撮影のノウハウをたっぷりお伝えします。
雪撮影の露出は被写体に合わせる
真っ白な景色では白とびを避けるために暗めに撮りがちですが、一番大切なのは「被写体の露出」。モデルさんが最も魅力的に写るように、顔を基準に露出を合わせて適正露出で撮影します。
暗めの背景を選んで降雪を際立たせる
降雪をとらえると写真に奥行きが生まれ、幻想的な雰囲気が引き立ちます。降雪を強調するには、樹木など少し暗めの背景を選ぶのがポイント。シャッタースピードは1/400秒より速ければ、十分写し止められます。
雪景色の空気感を際立てる仕草や表情
雪景色は、寒さが伝わる仕草との相性がいいです。「手を温めてみて」などの仕草をお願いするとポーズを引き出すことができます。構図は、モデルさんの後ろ側に余白をつくることで想像がかきたてられ、ストーリーを感じる写真に。特に雪で真っ白な世界では、余白の効果が大きくなります。
雪の世界観を引き立てるコツ
真っ白で繊細な世界にマッチする表情を引き出すには、撮影側が立ち位置やアングルを変えながらいい瞬間を探していくことが大切です。その上で以下の2つを意識すると、より世界観を演出できます。
- 髪に雪をつける(積もった雪を髪につけてもOK)
- 口元の力を抜いてわずかに口をあけることで、息づかいが感じられる
ロケーションを生かした世界観のつくり方
左:F1.2、右:F8
雪景色では樹木がアクセントになります。左のようにぼかせば人が際立ち、幻想的な印象に。背景までピントを合わせると、人を含めて一つの風景として表現できます。どのようなイメージにしたいかで写し方を変えてみましょう。
雪が一面に積もっている場所では、画面を真っ白にすると非現実的な世界観に。モデルさんにしゃがんでもらったり、高い位置から撮影するなど、高低差を生かすのがポイントです。
街では、赤い郵便ポストなどアクセントになるカラーを入れるのがオススメ。さらに小さい雪だるまを作ると、つついたりするなどポーズの幅が広がります。
寒い中での撮影は、こまめに暖をとるなど体調優先で行うことが大切です。雪によって姿を変えた別世界を、いろんなアイデアで切り取ってみてください!
酒井さんの「冬の匂い」をテーマにした写真集も公開!
「冬の匂い」をテーマにした酒井さんのWEB写真集を公開中です。誰しも共通して「冬」の匂いを感じるのは、「雪」自体が記憶を持っているから…。その雪の記憶を、人や光で表現しています。
ポートレートだけでなく、酒井さんの冬の風景写真も必見です。すべてがつながり、一つの曲が流れるような世界観にぜひ浸ってください。
物語を感じる作品に仕上げたい方はこちらもチェック!
複数の写真を重ねて、物語を感じる作品に仕上げる「多重露出」。フォトグラファーの櫻子さん(@sako_photo)に、基本とイメージ通りに仕上げるコツを教えていただきました。上の作品は、下の2枚を組み合わせて、冬の景色に思いを馳せる女性を表現したものです。
記事では、撮影後に合成する方法も紹介しているので、自分らしい作品づくりを楽しんでみてください。
アニメのワンシーンのような冬景色の撮り方
地元・福井県の風景を撮り続けるAkine Cocoさん(@akinecoco987)の連載「日本の四季を届けるフォトレター」。第2回は、「アニメのワンシーンのような冬景色」をテーマに撮影していただきました。ここでは、冬の澄んだ空気に映える光と雪を生かして、冬ならではの出会いを切り取るコツを紹介します。
光を生かして冬の空気感を演出する
枯れ木に咲く雪の花は、雲越しに輝く日の光に重ねて画面中央に配置することで、それぞれの美しさが際立ちます。青みを帯びた雲と光のコントラストも、辺りに漂う冬の冷たい空気を感じさせます。
夜になると、昼間とは違う光で風景の表情が変わります。オレンジ色の街灯が照らす住宅街は、紺色の空と相まって温かみを感じる雰囲気に。どこか懐かしさや安心感を覚える情景です。
雪に映える被写体と視線の流れを意識する
真っ白な雪景色の中では、被写体の色がより引き立ちます。雪化粧で一段と存在感を増した朱色の鳥居と階段、手前の草木と雪道で対角線構図をつくることで、奥行きを感じる写真になりました。
普段よく目にする信号機や公衆電話も、雪の中では味わい深く感じます。あえてメインを画面の端に寄せて切り取ることで、ふと視線を向けたような臨場感を出すことができます。
冬ならではの現象や惹かれる景色に注目する
積雪後によく見られる霧にミステリアスな印象を抱いたり、足跡一つない雪道に美しさを感じたり。普段はカメラを向けることもなかった場所で新しい魅力に出会えることが、冬ならではの光景を探す楽しみです。
みなさんも、普段とは違う光景に想像を膨らませて、アニメのワンシーンのように表現してみてください! 記事では、冬の光と雪が織りなす風景の魅力を写真と言葉で伝える「フォトレター」をお楽しみいただけます。
初雪の光景を人×風景で描くPhoto Diaryも公開中
新潟在住の写真愛好家yukiさん(@sty830)による、冬のPhoto Diary。初雪の景色と喜ぶ女性を写した写真から、新潟の冬の記憶を追体験できます。昇りはじめた朝日の光やきらめく雪の結晶が、オールドレンズ特有のやわらかい描写で印象的に描かれています。
銀世界とイルミネーションを美しく表現する
フォトグラファーの片渕ゆりさん(@yuriponzuu)が行く、宮城の樹氷とランタンの光に魅せられる旅。ここでは、雪におおわれた銀世界の撮り方や、イルミネーションを美しく切り取るコツを紹介します。
雪景色を主役に撮る場合は、低めの露出で白とびを防ぐ
一面雪におおわれた場所では、適正露出だと白とびしてしまうため、露出は低めに設定します。手がかじかむほど寒いので、暖かい服装に加えて手袋と帽子も準備しましょう。
雪景色は車窓から撮ると、窓の結露が前ボケになってきらめきが加わりきれいです。ブレないようにシャッタースピードは1/500秒以上、前ボケをつくるためF値を小さく設定。次々と移り変わる景色を追えるようにオートフォーカスで撮影します。
イルミネーションは周囲の環境を生かして魅力を引き出す
ランタンの光は、背景の森のひんやりとした空気感を生かすと暖かみが際立ちます。レタッチで全体を明るくして、被写体の温度感と華やかさを強調しています。
イルミネーションの近くに池や水たまりがある場合は、水面のリフレクションを生かして幻想的な雰囲気で撮ってみましょう。構図は、水面の近くにしゃがみ、ライブビューで画面を見ながら決定します。暗いのでISO2500まで上げて、手持ちでブレないように気をつけながら、シャッタースピードは1/100秒となるべく遅く設定。ブレを抑えながら、明るく写し出します。
記事では、世界的にも珍しい「樹氷」や無数のランタンできらめくイルミネーションなど、雪と光がつくる幻想的な世界を旅する様子をお届けしています。冬の宮城の魅力を、写真を通して体感ください!
雪と氷がつくり出す冬だけの絶景をとらえる
michikoさん(@michi._.ko)が Z 7を手に訪れたのは、冬の蔦沼。秋の紅葉が有名な青森県の撮影スポットですが、冬は雪と朝日に染まる木々とリフレクションの撮影を楽しむことができるんです。この時期にしか見られない絶景を、撮り方のポイントとともにお届けします。
雪と朝日に染まる絶景を湖に映して切り取る
冬の蔦沼の一番の見どころは、朝日に照らされて雪景色が色づく光景です。瞬く間に変化する色を撮り逃さないために、広角から望遠までカバーできる24-70mmのズームレンズが活躍します。
上の写真では雪化粧した木々が朝日で染まる光景を、広角でダイナミックに切り取りました。
雪と朝日に染まる木々と、その部分のリフレクションだけを切り取ると、さらに色のコントラストの美しさが際立ちます。
日の出から30分ほどで、風景は一面の銀世界に。赤く染まった景色とは一変、ひっそりとした雰囲気が漂います。風のない穏やかな水面の反射もきれいですが、白鳥による波紋で揺れたリフレクションも幻想的です。
寄り引きで氷の質感やスケール感を引き出す
沼の近くにある岩場には、びっしりと氷柱が。広角ズームで見上げるように撮影すると、奥行きが強調されて迫力が増しました。パンフォーカスで氷柱をシャープに写すことで、雪国の厳しい寒さも感じられます。
氷柱から滴る水が凍ってできた氷筍(ひょうじゅん)は、標準ズームで引き寄せると、透明感やつややかな質感を表現できます。
雪の中に浮かぶ川をスローシャッターでなめらかに描く
蔦沼へ向かう途中にある奥入瀬渓流。スローシャッターで撮影すると、雪におおわれた岩の間を流れる水がなめらかに描写されます。降雪がある場合は、シャッターを長く開けすぎると写真に水滴が写りこむので注意が必要です。
メインの蔦沼の絶景はもちろん、途中の雪道でも思わずシャッターを切りたくなるような光景にたくさん出会える青森の旅。定番の紅葉とはひとあじ違う、冬ならではの表情をお楽しみください!
冬の富士山撮影の基本と撮影スポット
季節ごとに異なる美しさをもつ富士山ですが、特に空気が澄んでいる冬は絶好の撮影シーズンです。四季を通じて富士山を撮り続けるフォトグラファー・Daisuke Uematsuさん(@daisukephotography)が、冬の富士山撮影の基本と魅力を引き出すコツを教えてくれました!
富士山撮影の基本
寒さが厳しいので防寒対策はもちろんのこと、理想の富士山を撮るための機材や事前のリサーチも重要です。
富士山撮影の持ち物
- カメラ:手持ち撮影では軽くてグリップ感がいいものが便利。暗い時間まで撮る場合は、高感度に強いものが◎
- レンズ:山梨など富士山に近い場所で撮る場合は14~70mmまでカバーできるレンズ
- 三脚:軽くて丈夫なものがオススメ
- 予備バッテリー:気温が低いと消耗が早いため、多いほど安心
防寒対策のため、インナーや靴下は保温力や速乾性が高いものを。アウターは雨風をしっかり防いでくれるものを選び、帽子と手袋も忘れず身につけましょう。
事前リサーチ
・富士山との位置関係を確認
WEBやSNSを見て「撮りたい富士山」をイメージしたら、撮影場所と富士山との位置関係や日の出・日の入り方向、時刻を確認します。
・天気や雲の動きをチェック
撮影日前日に天気予報で、風速と雲の動きをチェック。風がなければリフレクション撮影も可能です。当日も、GPV気象予報やライブカメラで雨雲がないか、富士山をおおい隠すような雲がないか確認します。
冬にオススメの富士山撮影スポット
・山中湖
設定:70mm・F22・1/160秒・ISO64
山梨県の山中湖を中心とした周辺エリアでは、10月下旬~2月下旬までの期間、太陽が富士山山頂に重なる「ダイヤモンド富士」が撮影できます。このとき、F値を大きくして光芒を際立たせるのがポイントです。
設定:14mm・F11・1/15秒・ISO100
ダイヤモンド富士の後は、夕焼けに染まる富士山と湖面のリフレクションによる絶景を狙いましょう!
・新倉山浅間公園
設定:17mm・F9・25秒・ISO800
ここの醍醐味は、富士山と五重塔のコラボレーション。桜の時期が有名ですが、冬の夜は富士山と街明かりがクリアに写ってとてもきれいです。三脚に固定し、25秒の長時間露出をすると街が鮮やかに写ります。
記事では、四季を通じて富士山の豊かな表情が撮れるオススメスポット5選と、魅力を引き上げるレタッチのポイントも紹介。あなたの「撮りたい富士山」がきっと見つかります!
冬の光を生かした魅力的な物撮りの仕方
冬は太陽が低くなり、窓からの光でモノに長い影ができるのも特徴です。ここでは、フォトグラファーの綾さん(@ayaaya_0806)が実践している、光と影の表情を生かした物撮りのポイントを紹介します。
光の向きで変わる表情をつかむ
左:斜め前から入る光、右:逆光気味
光の入る向きを意識することで、写真の雰囲気をコントロールすることができます。
- 斜め前から入る光:主役を引き立てながらも優しい雰囲気にしたいとき
- 逆光気味:透過性のあるモノを撮るときに手前に伸びる影を生かしたいとき
主役の被写体がある場合は、斜め前から光を当て、影の表情を生かして立体感を出すのがオススメです。
一筋の光で小物にスポットライトを当てる
窓とモノの隙間から差す一筋の光は、小物を照らすスポットライトのようにすることができます。冬の斜光でできた長い影が、物語のワンシーンのような雰囲気です。
鏡の反射を利用して自在に光をつくり出す
上の写真では、鏡を使って窓からの光を壁に反射させています。手を入れて人の気配をプラスすることで、さらに印象的な写真に。角度が変えられる鏡があれば、スポットライトのような光を好きな位置につくり出すことができます。
ブラインドやレースで影に表情をつける
窓にカーテンやブラインドがついている場合は、その影を生かすと写真に表情が加わります。また、レースをかざして光の強さを調節したり、柄を影にして写しこむのもきれいです。
記事では、魅力をさらに引き出すアングルやスタイリングのコツも紹介しています。寒くてこもりがちな冬は、部屋で物撮りにチャレンジしてみてはいかがですか?
#NICO STOP企画で選ばれたフォトグラファーを紹介!
いつも#NICOSTOPの投稿をいただきありがとうございます。たくさんの投稿の中から、今回は絵画のように美しい雪景色を投稿してくださった、かとえりさん(@tonnkotori) の作品をご紹介いたします。この記事の表紙は、こちらを使用させていただきました。
かとえりさんコメント
撮影の目的地へ向かう道中で出会った光景です。手前の木にだけ光が当たり、影になった背景とのコントラストが美しいと感じて撮影しました。少し色味を青に寄せることで、冬の凛とした空気感も表現できたと思います。
真っ白な雪景色は単調な印象になりやすいので、普段から陰影を意識して撮影するようにしています。
編集部コメント
多様な作品がそろう中で特に目を引いたのが、かとえりさんの作品でした。
前景に見える白い木々と背景の濃紺の対比が美しく、白と青だけのシンプルな配色に冬の心地よい静けさを感じて選ばせていただきました。
これからも、#NICOSTOPでのご投稿を楽しみにお待ちしています。
+ + +
「冬写真」特集、いかがでしたか?
他の季節よりも自然の彩りが少ない冬ですが、澄んだ空気やきれいな光、真っ白な雪景色など、今しか撮れないシーンがたくさんあります。斜めに差す光が、家の中に美しい光景をつくることも…。ぜひ、冬ならではの被写体を狙って撮影を楽しんでみてください!
Supported by L&MARK