みなさん、はじめまして! 大阪在住のフォトグラファー・綾(@ayaaya_0806)です。
普段は「日常の中の非日常」をテーマに、ジャンルにこだわらず、偶然見つけた美しい色や光を撮影しています。最近は特に部屋の中で、インテリアやアクセサリーを撮影することが多いです。なかでもアンティークが大好きで、「#アンティークと日々の暮らし」というハッシュタグをつけて日々SNSに投稿しています。
これらはすべて自宅で、自分でスタイリングをして撮影した写真です。
アンティークの魅力は、その時代に生きた人々の息吹や、大量生産にはないあたたかさ、未完成さが感じられることだと思います。そこに自分自身の日々の記憶が加わることで、より愛おしさが深まります。そういった一点物にこめられた思い出を、自分なりの雰囲気で写真に収めたいと思い撮影しはじめました。
今回は、家の中という一番長く過ごす場所で、大切なモノとの記憶を輝かせるための撮影ポイントをご紹介したいと思います。
- 部屋で撮影するときに、何よりも重要な「光」
- アングルによって、モノたちの一番いい表情を引き出す
- 人の気配を写し入れることで、想像力をかき立てる
- 世界観を盛り上げるスタイリングのコツ
- アンティークな世界観をつくるためのポイント
- Photographer's Note
部屋で撮影するときに、何よりも重要な「光」
部屋撮りのポイントは、外からの自然光を最大限に生かすことに尽きます。
照明は消して、自然光だけで撮影するのがオススメです。私は出窓付近で撮影することが一番多いのですが、季節や時間帯によって光が入る場所や角度は変化するので、日々ベストポジションを探しています。
光の有無による印象の違い
光が差していない光が差している
左は室内に光が差していない状態、右は光が差している状態です。決してくもりがいけないというわけではありませんが、自分が撮りたいイメージに必要な光が、いつどこからどんなふうに差すのかを知っておくと、より理想的な写真が撮りやすくなると思います。
光の向きで変わる表情をつかむ
自然光を生かして撮影する際は、その光の入る向きも意識しています。
- 斜め前から入る光:主役を引き立てながらも優しい雰囲気にしたいとき
- 逆光気味:透過性のあるモノを撮るときに手前に伸びる影を生かしたいとき
上の写真のように、光の向きで印象や生かせる構図も変わってきます。主役の被写体がある場合には、基本的に斜め前から光を当てて、影の表情も生かしながら立体的に見せることが私は多いです。
斜め前から入る光によってできた影が美しかったので、シンプルなスタイリングで光と影の表情を強調しました。
一筋の光でモノたちにスポットを当てる
光の状況によって、窓とモノの隙間から一筋の光が差しこむときがあります。そういった光を見つけたときは、ぜひ小物を一つ置いてみてください。ライン上に収まるモノがオススメです。自然光をスポットライトのように生かすことで、物語のワンシーンのような演出ができます。
光を鏡で反射させて、壁にスポットライトを当てるアレンジ
この写真は鏡を使って壁に光を反射させました。角度を変えられる鏡があれば、スポットライトのような光を好きな位置につくり出すことも可能です。
ブラインドやレースで、光と影に表情をつける
自宅の窓にカーテンやブラインドをつけていれば、それを生かすことで写真に光と影の表情が加わります。
私の家では窓にブラインドをつけていて、その影の表情を生かすことで、被写体の魅力がさらに増すと感じています。また、カーテンがあれば陰影を抑えることができますし、レースの表情が加わるとよりやわらかさが出ます。
ちなみに私の家にはカーテンがないので、代わりにドレスなどのレース越しに撮影することが多いです。被写体の近くにレースをかざすことで、光の強さを調整したり、意図的に影を生み出すことができます。
レース越しに光を取り入れて撮影してみました。レースの柄が影になり、写真に表情が加わりました。光と影の偶然性を取り入れると、その瞬間にしか撮れない1枚になると思います。
フィルターとしてレースを使い、よりやわらかさを出すアレンジ
白いレースをレンズの前にかざすと、よりやわらかい雰囲気を演出できます。レースはその影の表情を生かしたり、フィルターとして活用できるので、とても便利なアイテムです。
アングルによって、モノたちの一番いい表情を引き出す
ひと口にインテリアと言っても形や大きさはバラバラですよね。ポイントはそれぞれの一番いい表情になるアングルや切り取り方を見つけることです。小物の特徴に合わせてアングルを変えて撮影してみましょう。
背の低いモノは、俯瞰で縦横のラインを意識してすっきりと
背の低いアンティーク小物を並べて俯瞰で撮影しました。
雑誌やSNSでも人気の「置き画」と呼ばれる方法です。丸い花瓶は真上から見てもかわいいのでそのままに。一番小さい花瓶は立てると形が伝わりにくいので寝かせて置いてみました。大きな本は端に置いて、わざと見切らせることでバランスをとっています。大きさはバラバラですが、実はレイアウトのルールがあります。
白い破線:レイアウトするときに意識した縦横のライン
俯瞰撮影では、基本的には斜めに置かず、縦か横に置くこと。そうすればモノが多くてもすっきりと収まります。基本ルールを守っていれば、斜めになる部分があっても、それはアクセントになります。
背の高いモノは、正面からで特徴を最大限に写し取る
クリームソーダを真正面から撮ってみました。
ソーダのグラデーションや気泡、グラスの華奢な脚や影が1枚で表現できました。自分が被写体のどこに魅力を感じていて、何を伝えたいかを意識することで、自然とアングルは決まってくると思います。
今度は注いだばかりの炭酸ジュースを斜め上から寄りで撮影しました。グラスをすべて写さないことで、光に照らされた気泡がより際立ち、清涼感が伝わる1枚になったと思います。このようにあえて部分的に切り取ることで、着眼点をストレートに伝えることができます。
人の気配を写し入れることで、想像力をかき立てる
モノだけでなく、人の気配を感じさせると、印象がグッと変わります。
先ほどのクリームソーダを手に持って撮影しました。人の手が加わることで、モノのある光景から、そのモノと人のワンシーンへと変化します。
手に持つことで、被写体のベストポジションを撮影できる
手で持つことは、被写体の位置や角度を自由に変えられるというメリットもあります。少し角度が変わるだけでも光や影の表情は変化するので、一瞬の表情を逃さないようシャッターを切りましょう。
一部が暗い全体が明るい
例えばこのアンティークのオイルランプ。左は上部が影になってしまった写真、右は上部まで光が当たるように位置を変えて撮った写真です。右のほうがガラスがきらめき、より魅力が伝わる気がしませんか?
また、手を入れなくても同じモノを2つ並べると、「2人いるのかな…」と想像させることもできます。
先ほどの炭酸ジュースを入れたグラスを2つ置きました。おそろいのモノが2つ並ぶことで、写真にリズムも生まれます。
世界観を盛り上げるスタイリングのコツ
テーブル上でインテリアを撮影するとき、重要なのはやはりスタイリングです。
主役の色を意識したサブアイテムを足していき、雰囲気をつくりこむ
例えばこちらの写真。アンティークボタンを使用したハンドメイドアクセサリーが主役です。アクセサリーの雰囲気に合わせてアンティークのソーサー、そして前ボケ気味にドライフラワーを入れました。このとき、被写体の一部と同色の小物を入れると全体の色がまとまりやすくなります。上の写真では、前ボケのお花をアクセサリーと同色の紫色で合わせました。
こちらはアクセサリーの下に洋書を敷いてみました。英文字が加わることでストーリー性を感じませんか? また、本を敷くことでアクセサリーの向きが安定し、撮影しやすくなるという物理的な効果もあります。
このときも、引き立て役として配置する小物の色合いは落ち着いたものでそろえ、ドライフラワーやレースでさりげない華やかさを演出しています。もしここで美しくても派手なお花を選んでしまうと、主役の存在感が薄れてしまう可能性があります。花びらの小さいお花やレースは光を邪魔しないので、小道具にオススメです。
スタイリングの秘訣は、妄想力
スタイリングはアイデア次第で、可能性は無限大だと思っています。
例えばこちらのドライフラワー。「クラスペディア」という丸い形が珍しいお花です。
木琴を叩くときに使うマレット(バチ)に似ていたので、下に楽譜を敷いてみました。写真にリズムが加わり、音色が聞こえてくるような気がします。
私は幼少期から音楽に慣れ親しんで育ったので、写真の中に自然と音楽を反映させることがあります。アイデアを増やすには、たくさん写真を見ることももちろん大切ですが、音楽やファッションなど、写真以外のジャンルの要素も加えることで、よりオリジナリティのある作品が出来上がると思っています。
日常のワンシーンを切り取る、アングルとスタイリング
スタイリングに凝ってつくりこみすぎてしまうと、商品撮影のようになり、日常感が薄れてくることもあります。日常感も出したいときは、少し引いて実際の視線のアングルで撮ってみましょう。小物はきれいに並べすぎず、少しラフな動きをつけることで、自然なワンシーンを切り取ることができます。
上の写真では、洋書を2冊ずらして重ねました。そうすることで、ラフな雰囲気になったと思います。ちなみに実際にこのまま飾って過ごしているので、リアルな我が家の状態です。
アンティークな世界観をつくるためのポイント
アンティークな雰囲気の写真にするためには、画像編集も大事なポイントです。
画像編集で世界観をつくりこむ
私は普段、デジタルカメラで撮影していますが、画像編集でフィルム調に仕上げるのが好きです。特にこだわっているのはブルーの色味。色ごとに色相・彩度・輝度を調整したり、シャドーにブルーを足したりしています。ただし冷たい印象にはしたくないので、色温度は少し上げてどこか懐かしい印象になるように仕上げるのがポイントです。
画像編集はスマホのみで、「Lightroom(モバイル版)」を使っています。Lightroomを使いはじめる前は「VSCO」の「C1」というプリセットをよく使っていました。無料で簡単にフィルム調の雰囲気に加工できるのでオススメです。
アンティーク感を出すためには、オールドレンズを使うのも手
アンティークにぴったりな雰囲気を出すためには、オールドレンズを使うのも一つの手です。光をやわらかくとらえることができ、ボケも優しい表情になります。
私はオールドレンズとデジタルのズームレンズを半々で使っていて、光やボケを生かしたいときはオールドレンズで、手持ちカットで片手がふさがる場合はデジタルのズームレンズのオートフォーカスで撮影することが多いです。
Photographer's Note
日常の中にある特別な記憶を残していくために
モノにはそれぞれ、それを使う人の記憶や物語が宿っています。
例えば、この写真に写っている薔薇はプロポーズのときに夫からもらったもの。
ヘッドドレスとウェディングドレスは結婚式当日に着用したもの。
古書はそのときにウェルカムスペースに飾ったもの。
下に敷いている楽譜は新婚旅行で訪れたイタリアの古本屋さんで購入したものです。
薔薇はドライフラワーにしているので長持ちしますが、いつまでもきれいに保てるものではありません。今しかないその美しさや大事な思い出を残していくために、私はシャッターを切り続けたいと思います。
今回ご紹介した撮影のポイントが、みなさんの“好き”や“大切な思い出”を魅力的に残すヒントになれば、とてもうれしいです!
おまけ
アンティークは、夫と骨董市やアンティークショップに訪れた際に少しずつ買い足しています。ドライフラワーは、ドライフラワー専門店で買うこともありますが、街の商店街で買ったお花やプレゼントでいただいたお花を、自分でドライフラワーにすることが多いです。日の当たらない場所に吊るして乾燥させるだけでできるんですが、自分でドライにすると生花からドライフラワーまで楽しめます!
アクセサリー:mirikaさん(@mirika._ / https://mirika.thebase.in/)
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