はじめまして! フォトグラファーの櫻子(@sako_photo)です。普段はポートレートや、風景を主とした写真を撮っています。
「フィーチャーアカウント運営の裏側―セレクト基準から今後の展望まで」でもお話しさせていただきましたが、青色が大好きなあまり、素敵なブルーの写真を集めるInstagramアカウント「Today's Blue Collection」をつくって運営しています!
今回は、Today’s Blue Collecitonで“ブルーの世界”を集めたいと思うようになったきっかけでもある、「多重露出」についてご紹介したいと思います。
カメラの「多重露出」機能や画像編集ソフトで合成した作品たち。
- 多重露出の魅力は、何ができるかわからない“作品づくりの可能性”
- 完成イメージを考えて、ベースとなる写真を撮影
- ベースとの重なりを意識して、多重露出撮影
- 合成モードと写真の組み合わせで、作品の幅が広がる
- 2枚以上を重ねて、さらに世界観をつくりこむ
- 画像編集ソフトなら、後から自由に合成できる
- Photographer's Note
多重露出の魅力は、何ができるかわからない“作品づくりの可能性”
私が、ブルーの写真の魅力を強く感じたのは、桜と水族館の写真の多重露出作品をつくっていたときでした。
もともと、画像編集ソフトで写真をいろいろ組み合わせて遊んでいたんですが、撮った桜の写真の背景が暗かったので「水族館のような世界とマッチするだろう」と組み合わせてみたら、思った以上に世界観を引き出すことができたんです。ちょうどその頃、デジタルアートなどの展示会に行ってアート作品に触れる機会が多く、インスパイアされたんだと思います。
Today's Blue Collectionを立ち上げたいと思うようになった頃につくっていた、多重露出によるブルーの世界の作品。
多重露出でできた作品のブルーの世界観に魅了されると同時にその可能性を感じ、「せっかく写真を撮るなら写真でしかできないことをしたい。写真だからこそ演出できる世界観をつくってみたい」という想いが大きくなっていきました。
多重露出のおもしろいところは…
- 自分が見たい世界や表現したいことを叶えてくれる
- 創作意欲をかき立たせてくれる
- しばりにとらわれず、好きに、自由に、想像力を膨らませることができる
…ということ。
多重露出には決まりや正解もなく、絵や小説をかくことに似ていると思います。架空の世界を視覚的にリアルに表現できる、そして、「これとこれを組み合わせたら何ができるかな」と “創作料理”のようなイメージで挑戦的でもあります!
そもそも多重露出とは?
多重露出は、1枚の中に複数の像を重ねて写しこむこと。Z 6などのカメラの機能に「多重露出」があれば撮影時に重ねることができます。画像編集ソフトなどで後から多重露出風に合成することも可能です。
Z 6の「多重露出」機能で、2枚の像を重ねた写真。
今回は初心者さんでも簡単にできる、Z 6の「多重露出」機能を使った方法を紹介していきたいと思います。
Z 6/Z 7の「多重露出」機能についてはこちら
完成イメージを考えて、ベースとなる写真を撮影
ここでは、女性と雪景色をイメージした上の作品をつくりたいと思います。多重露出撮影をするときは、人物×人物や風景×風景ではテーマがぼやけてしまうので、人×風景がオススメです。そうすることで、作品にストーリー性も生まれます。
ベースとなる写真は、主役をはっきり写す
主役である人物が、白黒はっきり写るようにシンプルな背景を意識して撮影しました。
ベースとなる写真を撮るときのポイント
ベースの写真には、シルエットや光など表現したいものをはっきり写すイメージで撮るといいと思います。また、多重露出の合成モードによっては重ねるごとに明るくなる場合があるので、ベースとする写真は明るくなりすぎないように撮るのがポイントです。
ベースとの重なりを意識して、多重露出撮影
先ほどの人物写真に重ねる写真を「多重露出」機能を使って撮影します。合成モードには、複数写真をそのまま重ねる「加算」や明るい部分のみを重ねる「比較明合成」などがありますが、今回は結果がイメージしやすい「加算」を使用してみたいと思います。
重ねる写真は、ベース写真の構図を考慮したフレーミングに
人物に木々のうねりを重ねるために、下部に木がくるようにフレーミングしました。ベース写真の雪山は生かしたいので、重ねる写真の上半分はシンプルに空でまとめています。
合成する写真を撮るときのポイント
2枚の写真のよさを損なわないようにするためには、両方ともごちゃごちゃした写真は避けたほうがいいと思います。片方は主題が明確なすっきりとした写真で、もう片方はテクスチャーのような少し要素の多い写真にするのがオススメです!
多重露出でストーリー性のある1枚に
合成モード「加算」で多重露出。
多重露出で撮影することによって、雪景色に想いを馳せる女性のような、ストーリー性のある1枚に仕上がりました。
「加算」で合成するときのポイント
「加算」で合成すると、2枚の写真がそのまま重なり全体的に明るくなるため、両方とも少し暗めに撮ることをオススメします。また、「加算」では彩度が少し下がるので、色味よりも明暗を意識した作品づくりのほうがうまくいくと思います。
自分の世界観をつくり上げるために、私はここからさらに画像編集を行います。
雪の白い世界とブルーの世界観を表現したかったので、シャドーに青みを入れつつ、ハイライトを少し上げています。
このように、カメラの機能を使った簡単なステップ+画像編集で、自分のイメージを形にすることができました。
合成モードと写真の組み合わせで、作品の幅が広がる
合成モード「加算」での多重露出を紹介しましたが、合成の仕方やその特徴に合った写真を組み合わせることで、多重露出による作品づくりの可能性がさらに広がります。Z 6には4種類の合成モードがあり、「加算」以外で使いやすい「比較明合成」をここでは紹介したいと思います。
「比較明合成」で、輝きや彩りをプラス
合成モード「比較明合成」は、撮影した各写真を比較し、最も明るい部分を選択して合成します。そのため、光源を撮影する際に輝きをアップしたいときなどによく使います。
「比較明合成」で多重露出後、画像編集した作品。
玉ボケになるように写した別の写真を重ねることで、果物のオブジェのまわりに輝きが生まれました。LEDと玉ボケを少しずらすことが、輝きをアップさせるポイントです。
「比較明合成」は、シルエットに風景を重ねるときにも便利
黒めの服を着てもらい、人物がシルエットになるように逆光でベース写真を撮影。シルエット部分に水面がくるように写真を重ねました。明るい部分が合成されるため、シルエット内に風景が浮かび上がる淡く優しい作品に仕上げることができます。
「比較明合成」で多重露出後、画像編集した作品。
2枚以上を重ねて、さらに世界観をつくりこむ
Z 6の「多重露出」機能を使うと、最大10枚まで重ねることが可能です。自分がイメージした世界観に近づけていくことができますし、想像した以上の仕上がりになることもあります。
上の写真をベースに、2人の手の先から光が溢れ出ている作品をつくりたくて、光源を玉ボケにした写真を「比較明合成」で多重露出していきます。
大小さまざまな光を、計9枚撮影しました。手の先から上に広がるような構図を中心に、アクセントとして大きなふんわりとしたボケを全体に配置した写真を最後に加えています。
「比較明合成」で多重露出後、画像編集した作品。
「比較明合成」で合成したのが、上の作品です。多層的に光のボケを配置したことで、絵本の世界のような幻想的な作品に仕上げることができました。Z 6では、これまでに撮った写真の合成結果を確認しながら撮影できるので、構図合わせもしやすいですし、重なっていく様子を見るとより創作意欲が湧いてきます!
画像編集ソフトなら、後から自由に合成できる
これまでZ 6による多重露出を紹介しましたが、画像編集ソフトを使えば後からでも合成ができ、より自由度高く作品づくりができます。ここでは、「Photoshop」やスマホアプリ「PicsArt」を使った作例を紹介したいと思います。
PC編集派向けのPhotoshop合成
Photoshopで合成。
こちらは、デジタルアートに包まれた人物のシルエットに、水族館で撮影した金魚を「スクリーン」モードで明るい部分のみ反映するように合成しました。Photoshopでは、一部を切り抜いたり、重ねた写真の一部を消しゴム機能で消したり、何枚もコピーして位置を変えて重ねることができるなど、自由度の高い合成が可能です。
スマホ編集派向けのPicsArt合成
PicsArtで合成。
上の作品では、人物のみに街の明かりを重ねたかったので、人物以外のところを消しゴム機能で消しています。スマホアプリのPicsArtは、Photoshopと比べると複雑な作業は難しい面もありますが、複数枚を重ねたり、消しゴム機能で重ねた写真の余分なところを消すこともできるため、シンプルな合成をスマホで行いたい方にはオススメです!
Photographer's Note
「多重露出」でもっと自由に、創作料理のように写真を楽しむ
多重露出は、自分のクリエイティビティを刺激して、創造力を豊かにしてくれる表現方法だと思っています。合成モードや写真の組み合わせ方の一例を紹介しましたが、まずはあまりこだわらず自由に撮ってみるのがいちばんです。仕上がり具合を見て、「今度はどんなふうに合成してみようか」と実験的にやってみましょう!
Z 6の「多重露出」機能は、4つの合成モードが選べて、最大10枚まで合成できるなど、簡単操作でも幅広く作品づくりができると思うので、想像を超えた未知なる作品がたくさんつくれそうです。 多重露出に興味が湧いてきたら、ぜひ挑戦してみてくださいね!
まとめ
- 人×風景で、片方は主題を明確にすっきりと、もう片方はテクスチャーのような少し要素の多い写真がオススメ!
- 「加算」モードは、重ねるほど明るくなるため少し暗めを意識
- 「比較明合成」モードは、輝きをアップさせたり、シルエットに風景を重ねるのに便利
- 2枚以上の写真を重ねていくと、さらに世界観をつくりこめる
- 画像編集ソフトを使った“後から合成”なら、自由度の高い作品づくりが可能
Model:くりはらまゆか(@mayuka_kurihara)、萌花(@m__flowerrr)
Supported by L&MARK
櫻子
埼玉県本庄市出身のフォトグラファー。透明感のある、儚い雰囲気をテーマに作品を制作。地元や旅した地域の魅力発信にも力を入れている。青くて素敵な写真をフィーチャーする「Today’s BLUE Collection」の運営や、講師活動なども行っている。