みなさん、こんにちは! フォトグラファーの酒井貴弘(sakaitakahiro_)です。
2021年はフリーランス2年目。120%出し切った昨年は、足りない部分が見えてきました。今年はさらに成長するため、チャレンジを続けていきたいと思っています。
そんな僕の今年初の記事は、「雪ポートレート」です。地元・長野の風景に懐かしさを感じながら撮影をしてきました。
雪が降ると世界は一変し、日常と切り離される感覚がおもしろいです。限られた時期に限られた場所でしか出会えない光景で、モデルさんを特別な世界観で切り取れるのが雪撮影の魅力だと思います。
今回は雪景色を求めて、長野県にあるスキー場と麓にある街に行ってきました。撮り下ろした写真とともに、雪での撮影の基本ポイントと雪のイメージを生かした表現の仕方について紹介していきます。
雪撮影の基本ポイント
雪の中での撮影は、寒さや濡れの対策をしながら、モデルさんの負担がないよう極力短時間で行う必要があります。そのために押さえておくべきポイントを紹介します。
雪撮影の持ち物とモデルさんの服装
降雪を考慮した持ち物
- カメラ:防塵・防滴性に優れたもの。
- レンズ1本:雪が降る中ではレンズ交換を避けたいため、信頼のおける1本に絞る(僕の場合は50mm単焦点)。レインカバーをつけて撮る場合、ズームリングを調整するのが難しくなるため、自分が動いたほうが撮りやすいです。
- レインカバー:降雪による機材濡れを防ぐため。
- タオル:カバーで完全に防げるわけではないので、こまめにレンズなどを拭く。また、モデルさんについた雪を拭くためにも用意。
- 防寒対策:自分用はもちろん、モデルさん用にカイロなどを多めに。
低気温下での撮影の注意点
寒い中では、モデルさん・撮影者双方の負担が大きいので、こまめに暖をとるなど体調優先で。
その際、寒い場所から暖かい場所に移動すると、急激な温度差で機材に結露が発生する場合があります。対策として、機材を使用しないときはバッグの中へ。バッグの中は急激な温度変化を防げるため、徐々になじませることができます。
モデルさんの服装
モデルさんの服装は撮影イメージによって決めます。
今回は、モデルさんを「冬・雪の象徴」としてとらえ、上着をあえて白いニットにしました。絵本など物語に出てきそうな「どこか懐かしい」イメージで、下はロングのチェックスカートにしてモノトーンでまとめました。
モデルさん自体が主役の場合やファッション撮影では、赤など目を引く色を持ってきてもいいと思いますし、マフラーなど小物で遊んでみるのもいいと思います。もちろん、防寒が最優先です。
スノーブーツで雪対策
雪撮影で忘れてはいけないのが足元対策です。雪が靴の中に入りこむと一気に冷えてしまうので、スノーブーツ(特に防寒・防水機能のもの)があると安心です。スノーブーツが写真の雰囲気に合わない場合は、足元を写さないなどの工夫をしましょう。
雪撮影の露出は被写体に合わせる
降雪の日は厚い雲におおわれている状態ですが、くもりの日より明るく感じます。白い雪景色で光が拡散されるため、やわらかく撮れる印象です。
真っ白な景色では「白とびが心配だから暗めに撮ろう」と思うかもしれません。ですが、僕は白とびしてもいいと考えています。それより重視すべきは「被写体の露出」です。モデルさんが最も魅力的に写るように、顔を基準に露出を合わせて適正露出で撮影します。
撮影時の明るさ
上の写真が撮影時の明るさのものです。最初からベストな状態で撮ったほうが、モニターで確認したときにお互いにモチベーションがアップします。Z 7IIは撮って出しがとてもきれいなので、かなりテンションが上がりました!
降雪はシャッタースピードと背景で際立たせる
降雪をとらえると写真に奥行きが生まれ、幻想的な雰囲気を強調してくれます。写し止めるにはシャッタースピードが1/400秒より速ければ十分。少し暗めの背景を選ぶのが、降雪を際立たせるポイントです。
背景が白くても、髪の部分で雪を写すこともできます。F2程度にすると降雪が大きな前ボケとして写り印象的です。前ボケは計算して入れることはできませんが、何枚か撮影してセレクトしましょう。
なお、降雪はフラッシュを使うと、大きく丸く写すことができますが、今回は人と風景全体の雰囲気を重視したためフラッシュなしで撮影しました。降雪はあくまで風景の一部なので、写し止めることがすべてではありません。自分のイメージに合うかどうかで雪の写し方を考えます。
まずは、一緒に楽しみながら撮る
持ち物や設定について紹介してきましたが、撮影地に到着したら「雪に純粋に心躍る様子」を切り取ってみましょう。一緒に楽しみながら遊ぶ感覚で撮るとモデルさんもリラックスして、その後の撮影がスムーズに進みやすくなります。
雪の中で、人の表情や仕草を際立たせる
雪撮影と言ってもポートレートの基本はやはり表情や仕草で、どのようなイメージで撮影するかが大事です。
そのイメージをつかむために、モデルさんにいろいろ動いてもらいながら、魅力的な瞬間を探していきます。降る雪を見上げてもらったり、かがんでこちらをのぞきこんでもらったり。撮る側も位置やカメラアングルを変えながら、その表情が生きる撮り方を見極めます。
雪の世界観を引き立てるコツ
- 髪に雪をつける(雪が降っていない場合でも、積もった雪を髪につければOK)
- 口元の力を抜いてわずかに口をあけることで、息づかいが感じられる
この2つを意識するだけでも、ぐっと雰囲気がよくなります。
寒さが伝わる仕草を切り取る
雪景色は「寒さが伝わる仕草」との相性がいいです。モデルさんには「“寒い”という感じで手を温めて」と伝え、その仕草をしてもらいました。
構図のポイントは、後ろ側に余白を作ること。左側に余白を作ると目線の先に意識がいきますが、後ろ側をあけると想像をかきたてられ、いろんなストーリーを感じていただけると考えています。雪で真っ白な世界では、余白の効果がより大きくなります。
表情で、はかない雰囲気を表現
真っ白で繊細な世界には「ピュア」「はかない」などのイメージがあり、同じ立ち方でも表情によって雰囲気が変わります。
左はカメラをじっと見ている瞬間、右は少し首をかしげ憂いのある表情をした瞬間ですが、印象が違いますよね。抽象的なイメージに対してぴったりな表情をしてもらうのは難しいので、モデルさんに表情を変えてもらう中で、イメージに合った瞬間を選び出しています。
今度は横を向いてもらいました。先ほどのカメラ目線の写真に比べ、よりはかなさが感じられます。
なお、上の2枚を比べると、全体が暗い左のほうが映画の世界のように物語を感じる写真になりました。2枚は場所による明るさの違いですが、編集で仕上げる際もトーンを意識することで自分のイメージに近づけることができます。
静的な雪景色に動きを加える
真っ白な景色は静的な写真になりがちですが、モデルさんに走ってもらったり回ってもらうと、髪や服がなびき動きが加わります。このとき躍動感が大事なので、ブレやボケを気にする必要はありません。
雪に寝そべって視点を変える
雪が十分に積もっている場合、思い切って寝そべってみましょう。立った状態とは違う仕草や表情を撮ることができます。撮る側が先に寝そべってみると、場が和んでモデルさんの抵抗もなくなります。
僕も寝そべり、同じ目線で撮りました。
ここでも、顔の向きや表情を変えてもらったり、自分が動きながらいい瞬間を探すことが大切です。
今度は仰向けになってもらいました。降雪で目をあけられない状態でしたが、まつ毛についた雪が印象的です。
カメラは地面スレスレに構えて、手前の地面や髪の毛を前ボケにして奥行きを出しています。実際に目で見ることがないアングルも、表現の幅を広げるために試してみてください。
雪に寝そべる際の注意点
体が冷えやすくなるため極力短時間で撮影を切り上げるようにします。タオルを準備し、すぐ温まれるように建物の近くで行うという配慮を忘れずに。寝そべるのは撮影の一番最後にしましょう。
ロケーションを生かした画作り
続いて、風景を生かした画作りのバリエーションを紹介します。自然/街のロケーションの違いでも雰囲気が変わり、先ほど紹介した表情や仕草もその背景に合わせることで、より世界観をつくることができます。
樹木を入れて、背景に表情を加える
雪景色では、樹木のシルエットがアクセントになります。
左:F1.2、右:F8
背景はぼかすかどうかで写真の印象が変わります。左は背景をぼかすことで人が際立ち、また幻想的な印象になりました。右は背景までピントが合い、人を含めて一つの風景となっています。
こちらは街ロケーションで樹木をバックにした写真です。しっかり背景まで写すことで臨場感が出ました。
その場所の特徴とどのようなイメージにしたいかで背景の写し方を調整しましょう。
画面を真っ白にして非現実的な世界に
雪が積もった地面で画面を真っ白にすると、ポツンとモデルさんだけがいる非現実的な世界観になります。上の写真ではモデルさんにしゃがんでもらい、画角に収まるようにしました。高い位置に登れる場合にはモデルさんの動きの自由度が増すので、高低差をうまく生かしてみてください。
また、モデルさんを中心に配置するよりも、余白をうまく使いたいと思い下側をあけました。余白と反対側の上を向いてもらうことで、いろんな想像が膨らむように切り取っているのがポイントです。
雪やくもりで空が白い日は、背景をぼかして地面との境界線を曖昧にすると画面全体を白くできます。空だけを背景にしても真っ白に写りますが、雪と空の差を生かすことで白の中にニュアンスをつくれます。さらに降雪が前ボケとして写りこむことで物語を感じる1枚になり、白だけの世界の中に奥行きが生まれました。
白の中にニュアンスをつくるテクニック
僕は透明なレインカバーを使っているのですが、カバーがレンズ上側にかかるようにして前ボケにしたのが上の写真です。光のない状況でしたが、白の中にニュアンスをつくり、幻想的な雰囲気を出すことができました。
寒い中でいろいろ小物を取り出して試すのは難しいですが、置かれた環境を生かすことをぜひ考えてみてください。
街ではアクセントになる色や場所を探す
雪が積もった街ロケーションでは、スナップ的にアクセントになる場所を探していくのが楽しいです。
こちらは街中で見つけた郵便ポスト。白と赤のコントラストが際立ちます。
雪をかぶったポストの上に小さな雪だるまを作りました。つついたり、なでなでしたり、腕になる枝を探してもらったり、雪だるまがあるだけでポーズの幅が広がります。
こちらは待ち合わせスペースの手すりに置いた雪だるまとのツーショット。少しかがんで雪だるまと目線を合わせ、つつく様子を切り取りました。
街ロケーションでの画作り
ポイントは、その場所がわかるような描写です。上の写真では、手すりとわかるように下の茶色部分まで入れ、背景をぼかしつつも樹木を感じられるように写しています。待ち合わせスペースの屋根部分も入れて、額縁効果を得ながらこの場所の空気感を切り取りました。
風景が雪でおおわれると、冬だけのミニマルな光景が現れます。
上の写真では、眼下に茶色い道だけが見えている場所を見つけました。道を画面の対角線上に配し、モデルさんにこちらを見ながら歩いてもらいました。
左が元の写真で、回転させることでよりグラフィカルな印象になります。赤い傘があれば、写真家ソール・ライターのような写真も狙えますね。
降雪が前ボケになり、雪ならではのミニマルな光景にさらに変化が生まれているのもおもしろい点です。偶然ではありますが、ちょうどモデルさんの顔のところに前ボケができ、白い吐息のようにも見えます。
Photographer's Note
「雪」という特別な世界でのポートレート撮影に興味が湧いてきましたか?
今回は、スキー場と街の2つのロケーションで撮影を行いました。スキー場は広い雪原や森があり、別世界感を堪能できます。着替えられる場所や休憩スペースもあり便利ですが、標高が高く雪が強い可能性があるため備えが必要です。一方で街ロケーションは、場所によって表情や色があるのでバリエーションを撮りやすく、スナップ的にポートレート撮影をするのに向いています。
屋外だけでなく、室内からも雪景色を生かせます。上の写真は宿泊先で窓を開けて撮ったもので、映画のワンシーンのような1枚です。室内から外を撮ると明暗差が大きくなるため、人が明るく写るように顔の向きを意識するのがポイントです。
雪が降る中、少し撮っては休憩…を繰り返しながらでしたが、寒い中でもファインダー越しの真っ白な世界に浸り、モニターで写真を見てかなりテンションが上がりました。「思い切り色が入った服や小物を入れてもおもしろいな」といろんなイメージが浮かんできて、まだまだ雪撮影の楽しみ方はありそうです。
みなさんぜひ、雪景色の撮影を楽しんで、いろんなアイデアを試してみてください!
2月には、同じく長野で撮影した「冬」がテーマのWEB写真集記事を公開予定です。ぜひお楽しみに!!
※この記事は、2020年12月19日~20日に撮影したものです。
※スキー場で撮影の際は、他のお客様の迷惑にならないように、また安全面には十分ご注意ください。
Model:真仲ひかり(SHREW)
ヘアメイク:eri ito(@eri.ito_hairmake)
撮影協力:竜王スキーパーク
Supported by L&MARK
酒井貴弘
長野県生まれ。東京在住のフォトグラファー。ポートレートを得意とし、広告写真や企業案件、ポートレートなどの撮影案件から雑誌掲載、WEBメディアでの執筆、写真教室やプリセットのプロデュースなど幅広く活躍。SNSでは約2年間で総フォロワー10万人を超えるなど、SNSでの強みも持っている。