みなさんは、今年の目標はもう決めましたか? 「まだ…」という方は、ぜひ撮ったことのない被写体や、やったことのない撮り方に挑戦してみてください! きっと楽しく撮影を続けるモチベーションになりますよ。
今回は新しいチャレンジにオススメの「夜の写真」を大特集。定番の街の夜景をはじめ、車の光跡、室内やポートレート、工場夜景など、実はいろんな被写体があるんです。また、デジタルだけでなくオールドレンズやフィルムでも撮ってみると、夜写真の可能性がさらに広がります!
はじめてでもきれいに撮れる夜景撮影の基本
夜景は、ブレてしまったり、ザラついてしまったり…意外と難しい被写体です。そこで、都市風景を素敵に切り取るフォトグラファーの相沢亮さん(@aizawa0192)に、はじめてでもきれいな夜景を撮るための基本を教えてもらいました!
撮影の前に知っておくべきこと
夜景をはじめて撮るときは、足場が安定して、かつ暖かい屋内の展望台がオススメです。また、ビル明かりが多い平日が狙い目。日没30分前から撮りはじめると、変化する空の色が加わり夜景がよりきれいに写ります。
ガラス越しで気になる反射の写りこみは、ガラス面とレンズを平行にして、極力レンズを近づけると防ぐことができます。
手持ちできれいに夜景を撮影するポイント
カメラの構え方と設定の目安を覚えれば、三脚がなくてもどこでも気軽に夜景撮影を楽しむことができます。
- カメラをしっかり構えてブレを抑制する
カメラが動かないように脇をしっかり締めて、カメラを両手で持って撮影。重いカメラや長い望遠レンズはブレやすいので、機材は軽いものほど手持ち撮影に向いています。
- ブレないなるべく遅いシャッタースピードに設定する
設定:50mm・F6.3・1/6秒・ISO400
シャッター優先オートで、ブレが出ないシャッタースピードを見極めます。「1/焦点距離」(50mmであれば1/50秒)が手ブレしないと言われていますが、機材の重さや手ブレ補正のありなしで変わるので、目安として写りを確かめながら調整しましょう。Z 50では、焦点距離50mmで1/6秒程度までブレませんでした。
- ISO感度はなるべく800以下に抑える
ISO感度を上げるほど明るく写りますが、ノイズも比例して増えます。ISO感度調整は最終手段として、ブレないシャッタースピードでも明るさが足りない場合に少しずつ上げていきます。Z 50のようなエントリー機ではISO1600を上限に、800以下に抑えるようにしましょう。
ブレとノイズをさらに抑える三脚撮影
三脚を使えばブレを気にせずシャッタースピードをかなり遅くできるため、ISO感度を最小値にしてクリアな夜景を撮ることが可能です。ブレの原因の一つである「シャッターボタンを押す際の振動」は、ニコンの無料アプリ「SnapBridge」でスマホからリモート撮影をすると防ぐことができます。
設定:17mm・F4.5・8秒・ ISO100
三脚を使って撮影された街夜景がこちら。ISO感度は100にし、街全体を鮮やかに写すためシャッタースピードを8秒に設定しています。
構図は空:地上を二分割か三分割を基準に
ブレずに明るく夜景が撮れるようになったら、構図も意識しましょう。ポイントは「空と地上の比率」と「見どころ」です。
- 空と地上の比率を「1:1」か「2:1」に当てはめる
夜景が印象的な場合は1:1の二分割、空を多く見せたいときは三分割で空を2にすると、バランスよく撮ることができます。悩んだときは両方撮っておいて、後で選択するというのもありです。
- 見どころをつくる
東京タワーなど目を引く被写体がある場合は、取り入れてアクセントにします。タワーがない場合でも、特に明るいビル群や車通りの多い大きな道路など、自分の中で見せたい部分を構図に取り入れましょう。
記事では、屋外での手持ち撮影や三脚撮影のコツ、夜景写真の表現を広げるテクニックも詳しく解説しています。夜景撮影をこれからはじめたいという方は、まずこちらの記事をチェックしてみてください!
光跡を描く長時間露出撮影とレタッチのコツ
車などのライトの軌跡を長時間露出で写し出す「光跡」は、肉眼では見えない光の線を描き、夜の街を華やかに演出してくれます。フォトグラファーのKoukiさん(@kouuki923)に、特に実践しやすい車の光跡撮影の仕方とレタッチのコツを教えていただきました!
光跡をきれいに写す条件と設定
- 撮影場所:車通りの多い道路の歩道橋の上がオススメ
歩道橋の上から光跡を写したのが右の写真。光跡ありなしで比較すると、同じ画角でもまったく印象が違います! - カメラのセッティング:長時間露出で撮影するため、三脚に固定
- シャッタースピード: 10秒を基準に交通量や車の速度によって微調整
- F値:光跡全体をしっかり写すため、そして白とびしないようにF13~14を目安に
- ISO感度:ISO100以下で極力下げる
- 焦点距離:スケール感を表現できる広角がオススメ
- シャッターの切り方:シャッターボタンを押したときのブレを防ぐため、リモートでシャッターを切る
その他、余計なブレなどが発生しないように[手ブレ補正・自動ゆがみ補正・ISO感度の感度自動制御・高感度時ノイズ低減・長秒時ノイズ低減]はすべてOFFにします。
光跡を美しく仕上げるレタッチ
左:編集前、右:編集後
光跡写真は、撮影後のレタッチがとても大事です。「Lightroom」で、主に以下のように調整します。
- 白とびしないように暗めに撮るため、露光量やシャドウを上げる
- テクスチャを+100程度まで上げ、シャープに
- 周辺光量を落として、光跡を際立たせる
明暗のメリハリがついて写真全体が引き締まり、クールに仕上がります。
さらに写真を合成することで、道路を光跡で埋め尽くします。このとき、スマホでは「Photoshop Mix」というアプリがオススメです。
重ねたい写真を選び、「比較(明)」で合成します。比較(明)は、写真同士を比較して明るい部分だけがベースに足されるので、同じ画角で撮った写真であれば光跡だけが重なります。
左:合成前、右:合成後
右が写真を4枚合成したものです。合成枚数が多ければいいというわけではなく、道路がまんべんなく埋まるように、違った角度のものをバランスよく重ねるのがコツです。
記事では、光跡の撮り方に加えて、東京のオススメ撮影スポット7選を紹介しています。道路の形やまわりの夜景によっていろんな光跡写真が撮れるので、身の回りで試してみるのも楽しいですよ!
工場夜景でSF映画のような世界を撮る
煙突や配管、タンク群などが夜間照明で照らし出される工場夜景は、街の夜景とはひとあじ違う非現実的な世界観が魅力です。関西在住のフォトグラファー・Hisaさん(@Hisa0808)が、“工場夜景の聖地”と言われる三重県の「四日市コンビナート」をナビゲート! 工場夜景のさまざまな表情を引き出すための撮影テクニックを紹介していただきました。
工場夜景撮影に適した条件と基本の撮り方
きれいな工場夜景を撮るには、空気が澄んで光がクリアに写る寒い時期の晴れた日を選ぶのがベストです。シャッタースピードは遅くする必要があるため三脚を使用し、ISO感度は100を目安に極力低く設定。風景全体にピントを合わせるため、絞りはF6以上にします。
空と工場を1:1で風景全体の美しさを表現する
工場夜景を一望できる展望台からは、空の表情を生かした工場夜景の撮影がオススメです。
ポイントは、空と工場地帯の比率を1:1にすること。二分割することで、淡く染まる空と工場地帯を、一つの風景として美しく写し出すことができます。日没後20分ほど経つと、右のようにブルーアワーになり、より工場の明かりが際立ちました。空の表情によって、工場夜景の雰囲気が大きく変わります。
工場の一部を切り取ってメタリックな世界を描く
先ほどは風景としてとらえましたが、工場夜景は望遠レンズでクローズアップすると、非現実的な世界観をつくり出せます。焦点距離420mmでズームすると、圧縮効果で煙突や配管、光が密集して、未来都市のような雰囲気になりました。
光の柱が並ぶリフレクションを長時間露出で撮る
四日市は川沿いに工場があるため、リフレクションを生かした撮影もできます。シャッタースピードを13秒以上にして、水面に映る光をなめらかに写すのがポイントです。
画角を決めるときは、工場の建物と水面の光が多い部分を探します。建物の上端から反射の下端までの赤枠部分を中央に配置すると、反射を目立たせつつ、バランスのいい構図になります。
人のシルエットを入れて物語を表現する
風景に人を入れる写真は、建物や地形のスケール感を表現できる上に、アニメや映画のワンシーンのような世界観をつくり出すことができます。人物がブレやすいので、シャッタースピードを1秒以内、ISO800以内、絞りはF5程度を目安に設定して、ブレがない写真になるまで何枚か撮りましょう。
河口に近い場所では潮の満ち引きの影響で水位が変化し、干潮時は川の上に人が立つ不思議な写真を狙えます。画づくりのポイントは、頭と足元をできるだけ光の部分に重ねてシルエットを強調することです。
四日市コンビナートには、まだまだ魅力的な工場夜景スポットがあります! 記事では、今回紹介した写真が撮れる場所や、撮影のポイントを具体的に紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
オールドレンズで撮るやさしい夜の風景
デジタルカメラユーザーの宵月 絃さん(@__yoii_to)が、オールドレンズとミラーレスカメラ Z 5の組み合わせで夜の風景を撮影。はじめてのオールドレンズの写りに感じた魅力と、やわらかい描写を生かした夜の撮り方についてうかがいました。
※これまでの「オールドレンズ×ミラーレス」企画の記事はこちら
オールドレンズ×夜撮影の基本
オールドレンズならではの玉ボケの形をしっかり写すため、絞りはF2程度を基本に。ほのかに当たる明かりだけで撮る場合や、玉ボケをつくらない場合は開放にします。
オールドレンズで夜を撮る魅力
オールドレンズで撮る夜の風景で特徴的なのが、「光の描写」と「ボケの質感」です。
- にじむようにやさしく広がる光の描写:光はオールドレンズを通すとにじむようにやわらかく広がり、強い光もやさしい雰囲気で写ります。
- 淡く溶けそうなボケと影の質感:なめらかなボケと暗部の質感は、夜の静寂を表現するのにぴったりです。ほんのりと浮かぶ光が、背景のボケに溶けこむように描写されます。
ふんわりした光やボケとは対照的に、光と重なった被写体の写りはガラス細工のようにシャープです。オールドレンズの曖昧さとミラーレスの繊細な描写が、お互いの魅力を引き立てます。
オールドレンズと相性がいい夜の被写体
オールドレンズの写りは、空の色や月、花の質感を表現するのにぴったり。より雰囲気を生かせるシチュエーションや被写体選びも大切です。
左のような空のグラデーションは、オールドレンズで撮ることで淡く溶けそうな色を表現できます。このとき、手前の風景をシルエットにすると、空の美しさが際立ちます。
右のように月を撮る場合、にじむような光の描写を生かしておぼろげに写すと、寂しげな中にもやさしさを表現できます。現行レンズではくっきりと写りすぎてしまうことが多いので、オールドレンズだからこそ出せる雰囲気です。
明るい色の花は薄暗い中でも存在感があり、夜の青が花の色に混ざってとてもきれいです。特に白い花は、暗い場所ではしっとりと、明るい場所ではガラスのような透明感が出て、どちらの写りも魅力的です。
夜の室内をやさしく幻想的に写し出す
夜の室内をオールドレンズで撮影する場合は、キャンドルや電飾のほのかな光で、暗さも生かしながら撮ると雰囲気が出ます。
キャンドルの明かりでほんのりと照らされて、まわりがやわらかな印象に。オールドレンズはぼかせる部分が多いので、小物を使う撮影に向いています。
上の写真の光は、100円ショップで売っている電飾です。暗いところでは強い光になり、オールドレンズ特融のフレアやにじみを感じられてかわいいです。
夜の光と相性がいいスマホリフレクション
先ほどの写真は、スマホの反射を使って撮影しています。スマホ画面を斜めにし、月だけ反射させるように。レンズをスマホに接するくらい近づけて真横から写すのがポイントです。これはイルミネーション撮影にも応用できます。
空や花など身近な被写体や室内も、オールドレンズを使えば新鮮な表情に。記事ではその魅力が発揮されるシーンや撮り方について、宵月さんの世界観溢れる写真でお届けしています!
光源を生かす夜のフィルムポートレート
夜は街灯やイルミネーションの輝きを生かすと、雰囲気のあるポートレート写真が撮れます。ですが、フィルムではISO感度があまり高いものがないため、きれいに撮れるか不安ですよね?
そこで、フィルムメインで撮影する写真家の増田彩来/saraさん(@sara_photo_912 )に、フィルムで撮る夜のポートレートのコツを教えていただきました。
夜にフィルムで撮影するための基本
- 街明かりなどの光源を探す
- 開放F値が小さいレンズで開放を基準に撮影する
- フィルムはISO800あると安心ですが、低感度フィルムでもシャッタースピードの調整で撮影は可能
夜のフィルム撮影で重要な光と顔の向き
夜は街頭や車のライトなどの光源を生かして、光の当て方を考えて撮ることが大切です。
左手前に光源がある順光状態で撮影した写真。光に顔を向けるとしっかりと表情が写り、右のように光源と反対側を向くと顔がシルエットになります。どう見せたいかによって光の当て方を考えましょう。
背景に光源があり逆光になる場合は、周囲の明るさで撮り方や写り方が変わります。左のように暗い場所ではシルエットとして写るので、横顔を浮かび上がらせるといい雰囲気に。
右のように明るい場所では横顔はもちろん真正面でも表情がしっかり写ります。髪の毛を光で透かしたり、逆光をさらに生かすことができます。
低感度フィルムでも明るく写すコツ
暗い場所ではISO感度が高いほど安心ですが、ISO200程度の低感度フィルムでも明るく写す方法があります。ポイントはシャッタースピードです。
手持ちの場合、1/15秒より遅いとブレる可能性がありますが、しっかり構えれば1/30秒程度まではブレずに撮ることができます。
左:1/30秒、右:1/8秒
上の2つの写真は、光源で明るさを確保してISO200で撮影したもの。1/30秒で撮影した左の写真は、モデルさんにも止まってもらっているので、ブレずに表情もしっかり写せています。1/8秒で撮影した右の写真は明るいですが、少しブレました。ただしこのブレも、先の動きを想像させる表現として生かすことができます。
光源を用意して光と影を自在につくる
光源が少ない暗い場所では、スマホのライトを使ってみてください。フェンスなど特徴的な影を意図的につくると、表情にアクセントが加わります。撮るときは、照らした状態で先にピントを合わせて設定を調整し、シャッターを切るのがポイントです。
記事では、車のライトやお店、室内の照明の生かし方や世界観をつくるアイデアなどをたっぷりと紹介しています。フィルムの質感でしか撮れない夜のポートレートにチャレンジしてみてください!
イルミネーションを生かした撮り方はこちら
フォトグラファーの酒井貴弘さん(@sakaitakahiro_)には、イルミネーションを生かしたポートレートの撮り方を教えていただきました。
場所選びからモデルさんを際立たせる光の使い方、背景のアクセントにするイルミネーションの玉ボケのつくり方まで、盛りだくさんの内容です!
#NICO STOP企画で選ばれたフォトグラファーを紹介!
いつも#NICOSTOPの投稿をいただきありがとうございます。たくさんの投稿の中から、今回は物語を感じるエモーショナルなフィルム写真を投稿してくださった、maiさん(@mic985o)の作品をご紹介いたします。今回の表紙は、この中の1枚を使用させていただきました。
都心部の夜景は煌めいている#Lomography #NICOSTOP pic.twitter.com/xVNfFjFGz4
— mai (@mic985o) 2020年12月11日
maiさんコメント
夜の東京タワーやビルのきらめきなど、惹かれるものを多重露出で撮影しました。多重露出は、表現の幅が広がりますし、被写体の組み合わせを考えるのが楽しいので好きです。
夜に多重露出をするときは、幻想的な雰囲気を出すために夜景を玉ボケにししたり、人に夜景を重ねてより印象的になるようにしています。
編集部コメント
夜写真の募集にいろんな作品が寄せられ、表現の奥深さや多様性に改めて驚きました。その中でも、多重露出を使った幻想的で物語性を感じる、maiさんの作品を選ばせていただきました。現実と非現実の間の世界のような、おぼろげで曖昧な空気感に心惹かれます。
これからも、#NICOSTOPでのご投稿を楽しみにお待ちしています。
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「夜の写真」特集、いかがでしたか?
ひとくちに「夜景」といっても、街明かりや光跡、空や月、人や植物、工場と被写体はさまざま。見慣れた景色が夜はどんな世界になるのか、ぜひファインダー越しに観察してみてください。夜写真の新しい楽しみ方が見つかるはずです!
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