はじめまして! 関西在住のフォトグラファー・Hisa(@Hisa0808)です。全国各地の自然や都市風景を撮影し、主にInstagramやTwitterなどのSNSで作品を発表しています。
今回は三重県四日市市にある“工場夜景の聖地”、四日市コンビナートへドライブ旅に行ってきました。ここは海岸沿いに工場が立ち並んでいて、撮影スポットがたくさん! 僕も「工場夜景撮影」といえばここに来ます。
移動は車がスムーズで、南下していくと効率よく巡ることができます。一晩でじっくり撮っていきたいので、いろんなパターンの撮影が楽しめる3か所をメインに回りました。また、後半では特徴的な工場夜景が撮れるオススメのスポットをさらに3か所紹介します。
旅のルート
メインの撮影場所(赤いピン)
- 四日市港ポートビル14階 展望展示室「うみてらす14」
- 四日市ドーム裏
- 大正橋
上から南下して巡っていきます。
+αのオススメスポット(青いピン)
- いなばポートライン
- 塩浜エリア
- 磯津公園
四日市港ポートビルの展望展示室「うみてらす14」は、平日は17時に閉まるため、ゆっくり撮影したい方は21時まで開館している土日祝日に訪れましょう。
- ①夕景×工場夜景の絶景を満喫「うみてらす14」
- ②水面に連なる光の柱が美しい「四日市ドーム裏」
- ③未来都市に迷いこんだような世界観「大正橋」
- まだまだあります!オススメの工場夜景スポット
- 【番外編】工場夜景撮影の持ち物
- Photographer's Note
①夕景×工場夜景の絶景を満喫「うみてらす14」
昼過ぎに出発して、少し早めの15時半頃に四日市港ポートビルへ到着しました。この日はとても天気がよく、きれいな夕焼けに期待しながら展望展示室へ向かいます。
四日市港ポートビルは日本夜景遺産に認定されていて、その最上階にある展望展示室「うみてらす14」では、夕焼けからマジックアワー、夜空まで、空の表情と工場夜景撮影の両方が楽しめます。いろんなバリエーションが撮れるので、四日市で工場夜景を撮るなら必ず訪れたいスポットです。
16時半頃、太陽が傾きはじめました。工場に明かりが灯るまでは、工場地帯より右側の夕日が沈む方角にセッティングして、夕焼け撮影を楽しみます。
予想通り、この日はとてもきれいなサンセット! 空と地上を二分割に、中央に夕日を配置してその美しさを際立たせるように撮りました。
展望台から広い風景を撮影するコツ
工場夜景をはじめ広い風景全体を撮るときは、F6以上に設定します。夜景撮影では必ず三脚を使っていて、ISO100を目安に極力低くしてシャッタースピードを調整します。
ガラス越しの撮影では、反射の写りこみを軽減できるレンズフードが便利です。僕は吸盤付きのフード「LENSKIRT」を愛用していて、四隅を吸盤でガラス面に密着させ、反射して写りこむ後ろと横からの光を遮断できます。こういったフードがない場合でも、ガラスとレンズを平行にして、極力ガラスに近づけると写りこみを軽減できます。
空が青く染まる中、工場夜景の撮影開始!
太陽が沈んだ17時頃。工場に明かりが灯りはじめたら、いよいよ夜景撮影スタートです。
まだ暗くなる前、空がいい色を残していたので、工場地帯を入れながら淡く染まった空を撮影しました。煙突から出る水蒸気がいいアクセントになっています。
工場夜景撮影に適した天気と季節
天気は雲の少ない晴れの日、空気が澄んで光がクリアに写る寒い時期がベストです。工場の煙突から立ちのぼる水蒸気も見えやすく、遠くのほうまできれいに写すことができます。
太陽が沈み切って、空に青みが残る時間帯の工場夜景もとてもきれいです。先ほどの写真と20分違うだけで、こんなにも表情が違う夜景を撮ることができます。
望遠レンズで工場の幻想的な輝きを切り取る
うみてらす14からの撮影で一番オススメしたいのが、工場夜景のクローズアップです。真っ暗な時間帯ほど密集した光がきれいに写るので、ここではいつも夕景→空と工場夜景→工場のクローズアップの流れで撮影しています。
クローズアップして撮る場合、極力焦点距離の長い望遠レンズでファインダーをのぞいて、より圧縮効果が生かせるように建物や光が密集している部分を探します。左と右の写真を比較すると、焦点距離420mmで画角を狭めたほうがメインのタンクが目立ち、配管や煙突が凝縮した印象になることがわかります。
次は、煙突がたくさんあるエリアをクローズアップ。煙突の全貌が写るように200mm程度に引いて、立ち並ぶ様子が伝わるように撮影しました。SF映画のワンシーンのような、無機質でメタリックな感じがたまりません。
夢中で撮影していて、気づけば時刻は17時半すぎ。
「うみてらす14」は三脚が使用可能な上に、夜にはガラスへの反射が軽減されるように、室内の照明が暗めになるんです。撮影をするのに本当に素晴らしい環境だと訪れるたびに思います。もちろん、撮影中は周囲への気配りを忘れないことが大切です。
撮影地:四日市港ポートビル14階 展望展示室「うみてらす14」
三重県四日市市霞2丁目1-1
開館時間:平日10:00~17:00/土日祝日10:00~21:00
※入場は閉館30分前まで
休館日:水曜日(祝日の場合は開館)、12月29日~1月3日
入場料: 一般(高校生以上)310円、中学生以下無料
駐車場:あり(無料)
http://www.yokkaichi-port.or.jp/ut14/
②水面に連なる光の柱が美しい「四日市ドーム裏」
工場夜景のさらに違う表情を求めて、個性的な夜景が撮れる撮影スポットを目指します。
車で約6分、「四日市ドーム裏」にやってきました。道が広くて三脚が立てやすく、自分のペースでゆっくり撮影できるので、初心者の方にもオススメです。
ここでは、工場の明かりが水面に反射する美しい夜景を撮ることができます。
リフレクション撮影のコツ
シャッタースピードを13秒以上にして長時間露出することにより、水面に映る光をなめらかに撮影することができます。明るくなりすぎるのを防ぐためF13に、三脚に固定してISO感度は100に設定します。
ズームして、工場の建物と映りこみの光が多いエリアを切り取りました。建物の上端から反射の下端までの赤枠部分を中央に配置すると、反射を目立たせつつバランスよくまとまります。
ここは煙突から立ちこめる水蒸気も見どころで、気温が低く、湿度が高いほど水蒸気が見えます。この日は気温が高くあまり撮れませんでしたが、寒くなる冬場が狙い目です。
撮影地:四日市ドーム裏
三重県四日市市大字羽津甲5169
駐車場:あり(無料)
※ドームでイベント開催中は混み合う場合があります
※遊歩道へ車を乗り入れず最寄りの駐車場をご利用ください
③未来都市に迷いこんだような世界観「大正橋」
時刻は19時すぎ。続いて訪れた「大正橋」は、川越しに見える軍艦のような工場夜景が美しい、四日市コンビナートの中でも人気のスポットです。
近くに駐車場がないので、少し離れた場所に車をとめ、堤防から川の対岸に見える工場を撮影します。
普段は川幅いっぱいに水が流れているのですが、ところどころ川底が見えるほど水位が下がっていますよね。この河口は海に近いので、満潮・干潮の影響で川の水位も変わるんです。
水位を気象庁のホームページにある潮位表で確認して、水位が下がるタイミングに合わせて今回の旅の日程を決めました。一緒に来ていた友達に、川の真ん中の安全なところに立ってもらい、シルエットを入れた不思議な写真を狙います。
未来感のある雰囲気がたまりません! ここでの写真を以前SNSに投稿したときには、「アニメや映画のような世界観だ」と国内外の方から大変多くの反響がありました。
撮影のポイントは、人と奥の工場の密集部分をセンターにして、存在感を強調することです。暗い部分と人が完全に重なるとシルエットが見えにくくなるので、頭と足元をできるだけ光の部分に重ねます。手前の水面にリフレクションをつくることで、不思議な世界観を強調できました。
人を入れる場合の設定のコツ
シャッタースピードを遅めに設定しているので、どうしても人がぶれてしまいます。ここでの設定は、シャッタースピードを1秒以内にして、ISO800以内に抑え、F5ぐらいを目安に。ブレがない写真になるまで、何枚か撮影しました。
寄って工場と人のシルエットだけにすると、また違った印象になります。建物は山なりの1番高い部分が中心になるようにして、上半身が光と重なる位置で人のシルエットをわかりやすく写しました。
このような風景に人を入れる写真は、建物や地形のスケール感を出すことができますし、レンズや撮り方で違った表現ができるので、撮っていてとても楽しいです。
撮影地:大正橋
三重県四日市市北納屋町
駐車場:なし
※最寄りの駐車可能な場所をご利用ください
まだまだあります!オススメの工場夜景スポット
紹介した3か所以外にも、まだまだ魅力的な写真が撮れる撮影スポットがあります。ぜひ立ち寄ってみてください!
道路のS字カーブが美しい「いなばポートライン」
道路の曲線美と工場夜景のコラボが撮れるエリアです。手前から橋脚を入れて迫力を出しS字カーブの道路の奥行きを強調しました。水面に反射した工場夜景の光が、橋脚にかぶらない角度から撮るのがポイントです。
さらにこの場所で狙いたいのが、橋脚のライトを生かして人のシルエットを入れた写真です。風景写真だと邪魔になってしまうこともあるライトの光も、逆に利用して撮影することで、夜景のアクセントになります。
撮影地:いなばポートライン
三重県四日市市霞2丁目
駐車場:なし
※最寄りの駐車可能な場所をご利用ください
SFの世界観が魅力の「塩浜エリア」
四日市コンビナートの中で、最も近距離で工場夜景が撮れるスポットです。メタリックな工場に人のシルエットを入れて、SFのようなシーンを撮影することができます。
あえて人を少しぼかして工場にピントを合わせ、物語を感じるシーンを表現してみました。
撮影地:塩浜エリア
三重県四日市市塩浜町周辺
※最寄りの駐車可能な場所をご利用ください
要塞のような工場夜景が撮れる「磯津公園」
さらに南下した磯津公園付近から、先ほどの塩浜エリアを向くと、まるで要塞のような工場夜景を撮影することもできます。
まずは引きで撮ってみました。クローズアップするときは、中央にあるタンクのような部分(通称:芋Q・おばけタンク)を狙うのがオススメです。
焦点距離165mmまでズームすると、ゲームのラスボスステージのような雰囲気が出てワクワクします。
工場の水蒸気で少しもやがかかっているのも、ミステリアスでいいですね!
撮影地:磯津公園付近
三重県四日市市塩浜
駐車場:なし
※最寄りの駐車可能な場所をご利用ください
四日市コンビナートの工場夜景を一晩で満喫した今回の旅。3か所なら約4時間、6か所なら7時間で回れます。「工場夜景」と一口に言っても本当にバリエーション豊かで、季節や天気でその表情が変わるので飽きることはありません。みなさんもぜひ、今回紹介したスポットや撮り方を参考に、撮影にチャレンジしてみてください!
【番外編】工場夜景撮影の持ち物
遠方へ行くときは、撮影スポットと日時を事前に決めてから出発するので、機材は撮りたいものに合わせて必要最小限に絞ります。移動時にあまり重い荷物を持ちたくないのでレンズは多くても4本程度です。
今回の持ち物
- カメラバッグ:31Lサイズ。カメラやレンズ、小物類までたくさん入るものが便利です。
- カメラ:Z 6
- レンズ:24〜500mmまでをカバーするレンズ3本。
- レリーズ:夜景撮影や長時間露出をする際に、三脚を使ってシャッターを切るときには必須です。
なお、ニコンのアプリ「SnapBridge」をスマホにインストールすると、スマホ側でリモート撮影が可能になります。- レンズフード:フードの裾に吸盤がついた「LENSKIRT」。ガラス越しに夜景を撮影する際に活躍します。
- 三脚
- お手入れ道具など
冬の外での撮影はとても寒いので、防寒対策は忘れずに!
Photographer's Note
「工場夜景の聖地」と称されるほどに美しい四日市コンビナートの夜景は、何度行っても楽しめる撮影スポットです。僕がカメラをはじめて最初に工場夜景の撮影をしに来た場所であり、以来、何度も訪れているところでもあります。
Best Shot
普段から風景に人を入れた写真を好んでよく撮っていますが、この写真のように、その場所の限られたときにしか撮れない場面にシルエットがバッチリはまったときは、何ともいえない達成感が得られます。今回狙っていた1枚がイメージ通りに撮れてよかったです。
もっと寒くなると、さらに工場夜景撮影のベストな時期になるので、また撮りに行きたいと思います!
工場夜景撮影のマナー
- 工場の敷地内への立ち入りは禁止
- ゴミが出たら必ず持ち帰る
- 近隣の迷惑にならないように配慮する
- 車の走行に十分注意して撮影を行う
※こちらに掲載している情報は2020年12月17日現在のものです。
協力:四日市市、四日市観光協会、四日市港管理組合
Supported by L&MARK
※Z シリーズカメラでNIKKOR Fレンズをご使用するにはマウントアダプターFTZを装着する必要があります。
Hisa
全国の絶景や風景を独自の視点で撮るフォトグラファー。SNSを中心に作品を発表しており、これまでに国内外を問わず数々のWEBメディア、テレビ、雑誌などに写真が取り上げられている。