みなさん、はじめまして。東京で写真を撮っているフォトグラファーの相沢亮(@aizawa0192)です。主に東京の風景やスナップを撮ることが多いのですが、夜景も好きな被写体です。
夜景は、ぶれてしまったり、ザラザラしてしまったりと、はじめての人にとっては難しく感じる撮影だと思います。
でも大丈夫です! この記事では、夜景をきれいに写すための基本ポイントを、実際に撮影するときの順番に沿って説明していきます。
※以下の画像をクリックすると、各解説に移動することができます。
夜景撮影でまず知っておくべきこと
オススメの撮影場所と時間帯
はじめての撮影場所としては、「屋内の展望台」がオススメです。足場が安定していますし、暖かいので長時間の撮影も安心です。
展望台には、日没約30分前には行きます。その理由は、大きくわけて「夕焼け」、日没直後の「ブルーアワー」、「真っ暗な空」の3パターンの撮影ができるからです。空の色が加わることで夜景はよりきれいに写ります。また、日曜や祝日よりもビルの明かりが多い平日が狙い目です。
矢印をタップすると、日没前後の時間ごとの空の変化がわかります。
展望台での立ち位置は、東京タワーなど目印になるものが見える位置がオススメです。ピント合わせの基準にしやすいですし、構図を決めるときのポイントにもなります。
ガラスの反射の写りこみを防ぐコツ
展望台で窓ガラスの反射が写りこんでしまうと、せっかくの夜景が台なしです。
レンズをガラス面と平行にして、近づけると反射の写りこみを防ぐことができます。このとき、展望台のガラスを傷つけないように、絶対にレンズをぶつけないようにしましょう。ちなみに、レンズの周囲をおおうように、上着などをかける裏技もあります。
手持ちで夜景を撮影する基本ポイント
ここでは、手持ちで夜景をきれいに撮るためのポイントを紹介していきます。三脚を用意する必要がなく、どこでも気軽に撮れるので、基本を覚えると夜景撮影が楽しくなるはずです!
ぶれずに明るく写すための設定の仕方
夜景は光をたくさん取りこむことで、明るくきれいに写すことができます。このとき、以下の3つの項目の数値と明るさの関係を頭に入れておきましょう。
各設定と明るさの関係:シャッタースピードを遅く、F値を小さく、ISO感度を高くするほど、明るく写ります。
※詳しくはこちら
夜景撮影を難しくしているのが「手ブレ」と「ノイズ」。何も考えずに撮ってしまうと、下のようにブレブレの写真になったり、ザラザラした写真になってしまいます。
設定:50mm・F6.3・1/3秒・ISO500
ブレやノイズを抑えて明るく写すポイントはこちらです。
- カメラの構え方で、動きを極力抑えこむ
- シャッター優先オートかマニュアルで、ぶれないシャッタースピードを見極める
- ISO感度は最大でも1600、できれば800以下に抑える
- 撮影後に拡大して確認する
上記は、あくまでもわかりやすく説明するための参考値です。使っている機材や空の明るさ・夜景の明るさによって設定値は変わるので、設定をいじりながら「調整の仕方」を覚えることが大事です。
1.カメラをしっかり構えてブレを抑制する
カメラが動かないように、脇をしっかり締めて、カメラを両手で持って撮影に臨みましょう。重い機材や、望遠レンズで長ければ長いほどぶれやすいので、機材は軽いほど安定させやすくなります。
2.シャッター優先オートかマニュアルで、ぶれないシャッタースピードを見極める
シャッタースピードを指定するため、「シャッター優先オート」にします。「1/焦点距離」(50mmであれば1/50秒)が手ブレしないシャッタースピードと言われています。実際には機材の重さや手ブレ補正のありなしで大きく変わり、Z 50では焦点距離50mmで1/6秒でもぶれずに撮ることができました。
設定:50mm・F6.3・1/6秒・ISO400
夜景撮影に慣れてきたら、F値なども設定できる「マニュアル」がオススメです。F値もコントロールできると、夜景撮影のバリエーションが増えます。デジタルカメラは何度でも設定を変えて試せるので、ぜひ挑戦してみてください。
3.明るさは、ノイズに気をつけながらISO感度で調整
ISO感度を上げるほど同じシャッタースピードでも明るく写りますが、ノイズも比例して増えます。
ISO感度調整は最終手段。ぶれないシャッタースピードでも明るさが足りない場合に、ISO感度を少しずつ上げるように。Z 50のようなエントリー機では上限ISO1600くらいまでを目安にします。ISOオートで撮る場合は、上がりすぎないように上限を設定しておきましょう。
明暗差が強い場合にオススメなアクティブD-ライティング
「アクティブD-ライティング」というモードを使うと、明暗差の強い状況下でも目で見たコントラストに近い仕上がりにできます。
左:アクティブD-ライティング未使用、右:使用
右は、アクティブD-ライティングの「標準」を適用したものです。元の写真と比べると、全体的に暗部が明るくなりました。「ISO感度を調整しても、白とびや黒つぶれが発生する」という場合に試してみてください。
4.撮影後に写真を拡大してブレがないか確認
液晶モニターではきれいに見えても、後からパソコンで見たらぶれていた…という失敗、よくあります。撮影したら、拡大してブレがないか、白とびや黒つぶれがないかなどを確認しましょう。
設定:50mm・F6.3・1/6秒・ISO400
以上のポイントを踏まえて、空に明るさが残る日没30分後くらいに撮影した写真がこちらです。風景全体を写すためにF値は5.6以上に、ISO感度は空が明るいうちはISO640以下を目安に極力抑えるようにしています。
構図は空:地上を二分割か三分割を基準に
ぶれずに、明るく夜景が撮れるようになったら、構図も意識しましょう。ポイントは「空と地上の比率」と「見どころ」です。
- 空と地上の比率:まずは「1:1」の二分割か「2:1」の三分割に当てはめてみましょう。とてもバランスがよくなります。使いわける基準ですが、夜景が印象的な場合は1:1、空を多く見せたいときは空を2に。悩んだときは両方撮っておいて、後で選択するというのもありです。
なお、比率を意識して撮る際は、ファインダー内に格子線を表示させると便利です。後からトリミングや傾き補正も可能ですが、データサイズが小さくなるのでできる限り撮影時に調整します。
- 見どころ:東京タワーなど目を引く被写体がある場合は、取り入れてアクセントにします。タワーのような被写体がない場合でも、特に明るいビル群や車通りの多い大きな道路など、自分の中で見せたい部分を構図に取り入れましょう。
ホワイトバランスで好きな色味に仕上げる
撮影時にホワイトバランスも設定すると、夜景の印象を変えることができます。
左:オート、右:電球
カメラのホワイトバランス機能で、左は「オート」、右は「電球」に設定しました。クールに仕上げたい場合には、青みが強調される「電球」がオススメです。
RAWで撮影すると現像時に設定を変えることもできるので、ぜひ自分らしい色味を見つけてみてください。
編集する前提の場合は暗めに撮影しておく
僕はRAWで撮影し、Lightroomで編集しています。その場合、白とびしないように少し暗めに撮影します。そして、明るさやシャドウを上げ、色味をそのときにしたい表現や写真の雰囲気によって調整。
下の写真は、日没後30分頃特有の青とオレンジの色が変わる瞬間の色味を生かすように撮影しました。少し赤みが強いと感じられたので、色温度を下げて青を強調し、空のグラデーションがきれいに見えるようにしています。
左:編集前、右:編集後
なお、暗めに撮るため、ISO感度は低めにします。このときは、ISO400~640が適正のところ、編集想定でISO200としました。
「編集するなら、ISO100で撮って明るくすれば同じではないか」という質問をいただくことがありますが、低すぎると黒つぶれが増え、後から無理に明るくするとガビガビのひどい写真になってしまいます。環境や設定でISO感度の下限は変わりますが、黒つぶれしていないことを撮った後に拡大表示して確認することが大切です。
テイスト調整はトーンカーブがポイント
編集の応用編として、トーンカーブを使うとテイストを調整できます。僕はオールドテイストが好きなので、フェードがかかるようにトーンカーブの左下の暗い部分(青丸)を少し引き上げ明るく、右上の明るい部分(赤丸)を少し抑えました。
屋外での手持ち撮影にもチャレンジ
展望台での撮影の後は、屋外の手持ち撮影にもチャレンジしてみましょう。オススメは街を見渡せる歩道橋の上です。
設定:36mm・F6.3・1/4秒・ISO400
こちらは東京タワーを主役に、歩道橋の上から手持ちで撮影しました。
道路の直線上にタワーがある美しさを強調したかったので、手前の道路を入れて奥行きのある構図に。ぼかさず、立体感を出すためにF6.3にしています。
夜景の中にひときわ明るい被写体がある場合は、そこに露出を合わせましょう。主役の白とびを防ぐことができます。なお、明暗差が大きい場合に、一番明るい場所に露出を合わせると黒の部分が多くなるので、全体のバランスを見て決めるようにしています。
外ではストラップを手に巻きつけて持つ
歩道橋では、手すりを使ってカメラを安定させることができます。手でしっかり持ち、カメラの底を固定すればブレが軽減されます。なお、カメラは絶対落とさないように、カメラストラップを手に巻きつけるようにして持つのがポイントです。
三脚を使った夜景撮影の基本
「三脚って難しそう」と思われるかもしれませんが、実はその逆です。三脚では手ブレを気にしなくていいので、簡単に夜景を撮ることができます。
※展望台などでは、三脚を使えない場合もあるので、事前にホームページなどで確認しましょう。
三脚は、重さや持ち運びやすさ、価格や安定性などを考慮して選ぶようにしています。今僕が使っているのはVelbonの「Geo N530M」というカーボン製。アルミ製に比べて軽量で、外気温の影響を受けにくいのが気に入っています。手すりや柵などがある場所も想定すると、携帯しやすいミニ三脚よりも、上の写真のような中型の三脚が最初の1本としてはオススメです。
三脚を立てるときは2本の脚を手前に
左:正しい立て方、右:間違った立て方
三脚は、左の写真のように手前に2本の脚がくるように立てます。2本の脚側に重心があり、バランスが崩れても後ろに倒れるので、三脚を受け止めてカメラを保護できます。また、1本の脚が手前にある立て方だと、撮影時に自分の脚が当たったり、転倒の原因になります。
撮るときは、三脚を立てていい場所を確認して、極力窓ガラスに近づけるようにします。このときもガラスを傷つけてはいけないので、接しないように。ガラスの反射の防ぎ方は、手持ち撮影と同じく、ガラスとレンズを平行にします。
リモート撮影でブレを防ぐ
せっかく三脚に固定しても、シャッターボタンを押す振動でブレが発生してしまいます。そのとき使いたいのがリモート撮影です。
ニコンには「SnapBridge」という無料のスマホアプリがあり、カメラと連携させると、スマホからリモート撮影ができます。「撮影モード」「シャッタースピード」「F値」「露出補正」「ISO感度」「ホワイトバランス」などの基本設定もスマホの画面上で調整できて、とても便利です!
ISO感度を下げてノイズを抑える
三脚のよさは何といっても安定性です。シャッタースピードをかなり遅くできるため、基本的にISO感度を上げる必要はありません。最小値に固定して、ノイズが出ないようにしましょう。
設定:17mm・F4.5・8秒・ ISO100
街夜景を鮮やかに写すために、シャッタースピードは8秒以上を目安に(ただし、白とびを注意して遅くしすぎないように)。広角にするほど遠くのものがより小さく見えるため、街の光一つ一つがちりばめられた宝石のように見えます。このときは夜景の輝きが印象的だったので、空と地上を1:1にしました。
長時間露出では、車通りの多い道は光跡になり、赤やオレンジの色味のあるものをアクセントカラーとして取り入れると全体の色味が鮮やかになります。また、風がある日は雲が流れて肉眼とは違う描写を楽しめるなど、三脚を使ってシャッタースピードを確保できると表現の幅が広がります。
※光跡撮影は、別の記事で紹介される予定です。
夜景撮影のバリエーションを広げる
ブレやノイズを抑える基本の撮り方を解説してきましたが、さらに表現の幅を広げるための撮影バリエーションをご紹介します。
あえてぼかして、玉ボケで幻想的な写真に
設定:180mm・F5.6・1/6秒・ISO400
こちらは、車やタワーの光をあえてぼかしたものです。映画のワンシーンで、場面が切り替わるような瞬間や幻想的な印象に仕上がります。
オートフォーカスでは撮れないため、マニュアルフォーカスに。玉ボケはF値が小さいほどきれいに写るので、なるべく開放に近づけます。
左:50mm・F6.3、右: 180mm・F5.6
玉ボケは、望遠になるほど大きく写ります。左と右の写真は同じ場所から撮ったものですが、左は焦点距離50mm、右は焦点距離180mmです(35mm判換算で75mmと270mm)。望遠ではF4以上でも十分玉ボケが描けます。また、圧縮効果で光が凝縮され、より幻想的な写真になりました。
F値を上げて、光芒を表現
設定:28mm・F18・25秒・ISO100
「光芒」とは光源の中心から放射線状に伸びる光の筋のことです。F値を上げると、光が線のように伸びます。その分、シャッタースピードも遅くする必要があるため、三脚での撮影時にオススメです。
左:F5(3秒・ISO100)、右: F18(25秒・ISO100)
F値による光芒の違いを、並木道に並ぶ街灯や車のライト部分を抜き出して比べてみました。F18まで絞るとかなり伸びています。
個人的には、小さいF値で街灯の光を丸く撮るほうが淡くて好みですが、バリエーションとして覚えておいて損はありません!
広角でダイナミックに切り取る
設定:16mm・F4.5・1/2.5秒・ISO100
上の写真は、広角端で撮影したものです。全体にピントを合わせ、雲の様子からビル群まで、目の前に広がる情景を切り取るように撮りました。この街明かりが灯りはじめる時間は、1日の中でもほんのわずかなマジックアワー。空の青みと東京タワーの色の対比が本当に好きで、この時間帯に写真を撮ることが多いです。
広角の写真の魅力は臨場感があり、映画の序盤のワンシーンのように撮れることにあると思います。そのとき、どこまでを写し入れるかという画角整理が大切なポイントです。上の2枚の写真を比べてみると、右の写真は下の船が途切れてしまっています。広角で撮るときは、風景全体を注意して撮るようにしましょう。
夜景作品ギャラリー
最後に、これまでZ 7で撮影してきた、東京の夜景写真ギャラリーをお届けします。
Photographer's Note
夜景撮影の基本的な撮影方法をご紹介しました。明日からでもすぐに実践できますので、ぜひ試してみてください!
今回の夜景撮影のおともは、Z 50とZ 7でした。普段ミラーレスのZ 7を使う機会が多かったのですが、Z 50はそれよりも軽量コンパクトで、気軽に写真を撮りたいときなど普段使いにとても重宝しそうです。夜景だけでなく、旅やスナップ撮影などにも挑戦してみたいと思います。
Licensed by TOKYO TOWER
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