やわらかい描写が特徴的なオールドレンズとデジタルカメラの組み合わせを、フォトグラファーに体験してもらう「オールドレンズ×ミラーレス」企画。
今回は、デジタルカメラユーザーの宵月 絃さん(@__yoii_to)です。月や花など身近な被写体を繊細に表現する宵月さんは、オールドレンズの写りでどんな世界を描くのでしょうか?
記事の終わりに、スマホ用壁紙プレゼントのお知らせもあるので、ぜひ最後までご覧ください。
※本記事では、もともとはフィルムカメラ用に作られた、マニュアルフォーカスのレンズをオールドレンズと呼んでいます。
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はじめまして、宵月 絃(よいづき いと)です。
季節ごとに咲く花や夕暮れ後の淡い空や月など、日常で見つけた「すき」を写真に収めています。特に、心が落ち着くしんとした空気感がすきで、夜はそんな風景を探して歩きます。
今回、はじめてオールドレンズを使って、夕暮れから月や星の出る時間帯までの夜の景色を撮影してみました。花、空、星、月、街…。いつも身近にありながら、たまに見過ごしてしまうような「すき」を撮りながら感じたこと、オールドレンズならではの表現について紹介したいと思います。
- はじめてのオールドレンズに感じた魅力
- すきな被写体で光やボケの質感を楽しむ
- オールドレンズで描く曖昧で儚い夜の世界
- 夜をもっとかわいく写す撮影のアイデア
- Photographer's Note
- LINEで友達登録してスマホ用壁紙をゲット!
はじめてのオールドレンズに感じた魅力
オールドレンズで撮影された写真はよく目にしていて、すきだなと思っていたのですが、実際に撮ってみると「こんな描写が叶うんだ…!」といろんな発見がありました。
特に夜の撮影では、光やボケ、質感の描写が印象的です。
にじむようにやさしく広がる光の描写
夜は、被写体を照らしてくれる光の描写が印象を大きく左右します。オールドレンズを通した光は、にじむようにやわらかく広がり、強い光もどこかやさしく感じました。
夜に明るい情景を撮るとのっぺりしやすいので、陰影をつけることを心がけます。光の色や花の影との重なり方で、玉ボケに表情が出ました。
淡く溶けそうなボケと影の質感
オールドレンズのボケや暗部の質感は、やわらかい静寂を描くのにぴったりです。
夕暮れの河川敷で、被写体をあえてぼかしながら遠くの光を入れると、ほんのり浮かび上がる光の粒が夜の青に溶けこむように写りました。
ガラスのように繊細で儚い雰囲気
ふんわりとしたボケとは対照的に、光と重なった被写体は輪郭がシャープに描写されます。
道路沿いの花壇を撮ると、触ったら壊れてしまいそうな、ガラス細工のように繊細に写すことができました。光のにじむような質感や、細かくちりばめられた玉ボケが1枚の中に現れた、とても惹かれる写真です。
すきな被写体で光やボケの質感を楽しむ
オールドレンズの写りを体感して、普段からすきだと感じている被写体とも相性がいいのではと思いました。
- 夕暮れ時の空の色
- ポツンと浮かぶ月
- 繊細な花の質感
それぞれをオールドレンズ特有のやわらかく、にじむような光やボケと輪郭の描写が生かせるシチュエーションで撮影してみました。
空や雲の色を繊細に描く
オールドレンズは、空の温かみや淡く溶けそうな色を表現するのに向いていると感じます。
澄んだ空もいいですが、このように雲がたくさんある日には、みるみる変化していく空と雲の移ろいを写すのがとてもすきです。
明るい月を夜空にポツンと写す
月を撮る場合、にじむような光の描写を生かしておぼろげに写すと、ポツンと寂しげな中にもやさしさを表現できると思います。
うっすらと雲がかかる日は、ぼんやり広がった月の明かりが淡く描写されて、とても穏やかな気持ちになりました。現行レンズでは雲の形や色が鮮明に出てしまうことが多いので、オールドレンズならではだと思います。
月を撮るときは、出入り時刻や形を事前にチェック
月は、空が真っ暗になると手持ち撮影が難しくなってしまうので、日が暮れて月が昇る30分~1時間ほどの間が一番撮りやすいです。月の出入りの時刻や月の形は、「月の出・月の入りマップ」というサイトで、事前に調べるようにしています。
花のしっとりとした質感や色に注目する
息をひそめて夜を待つように咲く花は、空にほんの少し残る光で撮ると、オールドレンズ特有のしっとりとした質感で浮かび上がるように表現できます。
夜の青が混ざった花の色がとてもきれいです。周囲は暗いので風景は入れずに、花を見下ろすように撮りました。
薄暗い中、オールドレンズで撮る花の色は、昼間よりもコントラストが強く感じます。特に白い花は、暗い場所ではしっとりと浮かび上がり、明るい場所ではガラスのような透明感が出て、どちらの写りもすきです。
オールドレンズで描く曖昧で儚い夜の世界
街中のイルミネーションや街頭の光も、パキッと写りすぎないところが好みで、新たな夜の魅力を感じました。ここでは、オールドレンズの描写を生かした、夜の表現の仕方をご紹介したいと思います。
光が溢れる街をやさしく切り取る
夕暮れ後の街が空の青に染まっていく時間がすきです。オールドレンズはそんな街の明かりを、やさしくにじむような質感で写してくれます。少し曖昧になることで、街のせわしなさや人の気配が和らぎ、心地よい距離感を感じます。
冬になると街中に増えるイルミネーション。レンズの効果で、輪郭が曖昧になり温かみのある雰囲気になります。また、ポツンとある街灯にレンズを向けると、フレアがほどよく出て光がにじみ、やさしい印象を受けました。
人工的な光と植物を合わせて撮る
やわらかなボケと繊細な質感を同時に描けるオールドレンズで、夜の光と花などの植物を合わせて撮ると両方の魅力が引き出されます。
信号の手前など光源が密集しやすい場所や道路脇、街灯が近くにある花壇などがおすすめです。光源が近いと明るすぎてしまうため、光源と被写体の距離をとると、光が繊細な泡のように広がり、全体をふんわりとした雰囲気に撮ることができます。
また、車のライトなど強い光に向かってレンズを向けると、ゴーストが出て幻想的な雰囲気に仕上がりました。ゴーストの部分はシャープに、背景のボケは水彩画のように描かれてとても惹かれます。
コスモスは薄い花びらに光が透けて、細い葉や茎の影が重なり繊細さを感じるので特にすきです。
影絵のような物語のある光景を描く
空に赤みが少し残る時間帯に、影絵のようなイメージで撮るととても楽しいです。オールドレンズで撮影すると、空の色や暗部の質感はなめらかに、シルエットは繊細に描けました。
グラデーションを際立たせるときは、空を広めに
マジックアワーの空は、シルエットとの相性がとてもいいです。なめらかなグラデーションを主役にするために、要素を絞って空を広く写します。花や茎が小さめで細かいものをいくつか入れると、空に溶けこむように描写できます。
部屋から窓越しの風景を撮ると、額縁に飾られたように切り取ることができます。空の色や雲があるかどうかで毎日異なり、表情を変える絵のようです。
夜をもっとかわいく写す撮影のアイデア
オールドレンズを使う中で、「こんなことをしてみたら」と思いついた撮影アイデアを最後にご紹介します。
雨粒のついた窓ガラス越しに光を撮る
雨の日、窓ガラスについた雨粒をぼかして、遠くの光を撮ってみました。ぼかすほどに絵具のようなにじみ方になります。
暗い時間に、遠くの街明かりを写して雨粒をぼかすと、弾けるような描写に。強い光でしたが、オールドレンズのおかげで誇張しすぎず、雨ににじむように色が広がってきれいです。
ピントをあえてはずして淡い雰囲気に
被写体の輪郭をぼかすと、曖昧さの中に感情がふわっと混ざる気がします。オールドレンズの描写は、その曖昧さをより引き出してくれました。
花を撮るとき、普段は風がないタイミングを選ぶのですが、少し風のあるときに撮影してみました。揺れた花の輪郭がレンズの描写でふんわりとぼけて、儚げな雰囲気になりました。
澄んでいる冬の空は星が見えやすくなります。ぼんやりとした星の写りやオールドレンズの絞りの羽根の形もかわいいので、あえてピントリングを回してふわっと写しました。
主役が見つからないときは、自分の手を被写体に
ぼかすものがない場合は、自分の手を撮るのも夜の雰囲気に合っていると思います。上の写真は、明かりに手を伸ばすようなイメージで撮りました。
キャンドルや電飾の光で小物を幻想的に写す
オールドレンズでの描写を試したくて、はじめて自分の部屋でキャンドルを撮ってみました。ほのかな明るさで花の影絵のようです。
オールドレンズはぼかせる部分が多いので、小物を使った撮影にも向いていると感じます。ほんのり明るく照らされて、まわりがやわらかな印象になるように撮りました。
キャンドルを使うときはホワイトバランスも意識
左:ホワイトバランス「晴天」、右:ホワイトバランス「電球」
キャンドルの光は赤みが強いので、ガラス小物の透明感を出したいときはホワイトバランスを変更します。「電球」にすることで、青みが増しました。撮影時にイメージに合う光の色を意識しておくと、レタッチしたときに理想に近づけやすくなります。
撮影後はスマホアプリのLightroomで、透明感を出すためにテクスチャや明瞭度を少し上げたり、露出やコントラストを調整して仕上げます。
100円ショップで売っている電飾の明かりも、暗いところで使えば強い光になり、オールドレンズの描写も生かせるかなと思い試してみました。
電飾をカメラの前に持ってくると、フレアも写り、オールドレンズ特有のにじみが感じられてかわいいです。
今度はスマホ画面の反射を使って撮影しました。不確かな反射と、全体の曖昧な描写とが相まって、夢の中のような雰囲気です。
月だけを反射させたかったので、スマホ画面を斜めに。右の写真の赤線より下の部分だけに反射を入れ、レンズをスマホに接するくらい近づけて真横から撮りました。この撮り方は、イルミネーションなどにも使えます。
Photographer's Note
いつもは目に入ったものを感情が向くままに撮ることが多いのですが、オールドレンズを使った撮影では、光の当たり方・時間帯が花や風景などにどんな変化を与えるのかを考えて、意識的に被写体を探すことが増えました。「もっと写したい」という気持ちを膨らませてくれた気がします。実際の目で見るよりも幻想的に一瞬を残せるので、心が常にどきどきしていました。
オールドレンズは光がにじみやすかったり、花のやわらかな質感を際立たせたいときに手前も後ろもぼかしてくれたり。儚さや寂しさの中に感じるやさしさや、温かさを表現したいときにぴったりでした。曖昧さがある風景だからこそ、愛おしいと感じる瞬間も多かったと思います。
みなさんも、オールドレンズで身近な「すき」を探してみてはいかがでしょうか。
オールドレンズ×夜撮影の基本設定
- F値:玉ボケの形をしっかり写すため、基本的に F2くらいで撮りました。とても暗くてほのかに当たる明かりだけを頼りにするときや、玉ボケをつくらない場合には開放にしました。
- シャッタースピード:よほど動く被写体でなければ、1/25秒くらいまではぎりぎりぶれません。
- ISO感度:夕暮れから空のグラデーションが残る時間帯と光源がある場所では、ISO250〜1250程度に。光源がなく、空の明かりも薄く暗いときには、ISO4000程度を上限に調整しました。
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AI Nikkor 50mm f/1.4S
製品ページ※Z シリーズカメラでNIKKOR Fレンズをご使用するにはマウントアダプターFTZを装着する必要があります。
宵月 絃
デジタルカメラで身近な四季の花や月、星、空など「すき」と感じるものを写真に収めてSNSを中心に発信。淡く儚い雰囲気や、静寂の中にやさしさを感じる光景など、見る人の気持ちに寄り添うような写真が人気を集めている。