みなさん、初めまして!酒井貴弘(@sakaitakahiro_)といいます。
東京でフォトグラファーとして活動しながら、ポートレートを中心とした作品制作をしています。被写体の魅力が伝わるような写真を目指して日々邁進中です。これからどうぞよろしくお願いします!
Z シリーズで撮り下ろしたポートレート写真を参考に、撮影方法やノウハウを紹介する連載『キミと彩るポートレート』。
「この写真ってどうやって撮るんだろう?」、「どうしたらこういう写真に近づけるんだろう?」。素敵な写真をみる度に、そう思いますよね。僕も写真を始めた頃いつもそう考えていたし、もちろん今もそうです。
僕と同じように感じるみなさんが、少しでも自分の撮りたいと思う写真に近づけるように、そしてもっと写真を楽しんでもらえるように頑張っていきたいと思います!
ということで、第一回目の今回は「カメラの基礎編」をお届けします。
カメラの基礎、シャッタースピード・F値・ISOについて
カメラの基礎として、まず第一に覚えておくべきことは何でしょう?それは「シャッタースピード・F値・ISO」です。写真を撮る上で、この3つを理解しておくことはすごく重要。
むしろこれさえ理解できれば、カメラの基礎はほぼOK!と言えるかもしれません。これらをマスターすると、写真の表現の幅がぐんと広がりますよ。
今回は「シャッタースピード・F値・ISO」について、作例と共に解説していこうと思います!失敗しないためのアドバイスも要所に挟んでいくので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
「シャッタースピード・F値・ISOなんて難しい!」
カメラを始めたばかりだと、まずここでつまずくかもしれません。でも実はそんなに難しいことはなく、小学校の九九みたいに一度覚えてしまえば、簡単に使いこなすことができるんです。
3つの要素を理解する際に一番重要になってくるのが、“3つの要素を組み合わせて、写真の明るさを決める” ということです。
シャッタースピードを速くすると光を取り込む時間が少なくなるので、仕上がりは暗くなります。逆に遅くすると、光がたっぷり入るので明るい写真になります。
また、F値を大きくすると光を感知する入り口が狭くなるので写真は暗くなり、逆にF値を小さくと明るい写真になります。
ISOは単純に、数値を高くすると明るく、 低くすると暗い仕上がりになります。その上で、シャッタースピードやF値を組み合わせて、自分好みの明るさや写りに調整する必要があるんです。
下の表をご覧ください。写真の明るさのことを「露出」といいます。この表は、露出とシャッタースピード・F値・ISOの関係をまとめたものです。
表のように、3つの値を掛け算のように組み合わせて、それぞれを調整しながら明るさを決めます。「シャッタースピード・F値・ISO」を調整することは、明るさを決めるということ。それさえ分かれば、3要素なんて怖くない!
意外と単純だなと思いませんか?
では、なぜ3つの要素を理解すると写真表現の幅が広がることに繋がるのでしょう?
それは、3要素は明るさを決めるだけでなく、要素同士が写真の仕上がりに影響を与えることがあるからです。
次からは、「シャッタースピード・F値・ISO」が写真に及ぼす影響をそれぞれ詳しく見ていきましょう。
ブレ具合を決める、シャッタースピードについて
はじめに、シャッタースピードについて説明します。名前の通り、シャッターが開いている時間に関する要素です。3つの要素の中で、一番名前から想像しやすいかもしれませんね。
まずは、シャッタースピードによる明るさの違いを、作例で見てみましょう。下の2枚は、同じ条件下で、シャッタースピードのみを変えて撮った写真です。
【f/2.0 1/2500秒 ISO100】
【f/2.0 1/800秒 ISO100】
3つの要素の表であったように、速くなると暗くなり、遅くなると明るくなっていますよね。明るさをコントロールする以外にも、シャッタースピードは写真のブレにも大きく関わってきます。
こちらもまずは、写真を比較してみましょう。
1枚目はシャッタースピードを1/1000秒にしてモデルさんを走って追いかけながら撮ったものです。背景もモデルさんもしっかり写っていますよね。
【f/1.8 1/1000秒 ISO100】
では2枚目。
【f/1.8 1/100秒 ISO50】
全てがブレッブレですね(笑)。自分も走ってる勢いで、手ブレまでしています。2枚目はシャッタースピード1/100秒にして同じように走りながら撮ったもの。
このようにシャッタースピードを速くすると動いているものを止めて撮ることができ、遅くするとブレやすくなります。
【f/3.2 1/1000秒 ISO160】
【f/16 1/20秒 ISO160】
シャッタースピードをコントロールすることで、「写真をブラす・止める」という表現の幅を広げることができます。例えば、ジャンプしている瞬間を止めて撮ったこちらの写真。
シャッタースピードは速く設定して1/1600秒で撮っています。
【f/1.8 1/1600秒 ISO250】
逆にシャッタースピードを遅くして、髪の毛をあえてブラして撮ったこちらの写真。あえてブラして撮ることで、躍動感のある表現もできたりします。
【f/1.8 1/100秒 ISO1600】
シャッタースピードをコントロールして、自分なりの表現を探してみましょう。
★ワンポイントアドバイス1
ブラした表現は少し難しい。はじめはできる限り、シャッタースピードは速く設定しましょう!
狙いがないブレは、ただのミスに見えてしまうかも……。
ボケ具合を操る、F値について
スマホやコンデジで撮った写真と、一眼レフやミラーレスで撮った写真。それらの違いといったら、何を思い浮かべますか?
「一眼レフで撮った写真は、背景を大きくボカすことができる」と答える人も多いのではないでしょうか?実際にボケを使った写真が撮りたくて、一眼レフやミラーレスを買うことも多いですよね。僕もはじめはそうでした。
実はF値とボケは密接に関わっていて、F値を理解すれば思い通りにボケ具合をコントロールできるんです。
F値の変化によって、写真のボケ具合はどのように変化するのでしょう?百聞は一見に如かず!ということで、実際に写真で見てみましょう。
【f/1.8 1/1000秒 ISO100】
【f/16 1/160秒 ISO160】
2枚の写真を見比べると、 F1.8で撮影した上の写真の方が背景がボケていて、F16で撮影した下の写真は背景もくっきり写っています。比べてみると一目瞭然ですね。
簡単にまとめると、F値を小さくするとピントの合っているところ以外がたくさんボケます。逆にF値を大きくすると、ピントの合う範囲が広くなりボケが少なくなります。
【f/1.8 1/1600秒 ISO160】
【f/16 1/50秒 ISO250】
このボケを使った撮影技術として、“被写体を浮かび上がらせる”ことができます。背景をぼかすと、被写体だけに集中できるようになるんです。
【f/1.8 1/250秒 ISO100】
人が多くごちゃごちゃした街中でも、被写体だけが目立っていますよね。また通行中の人の顔など、写したくないものもごまかすこともできます。
逆に被写体も背景もしっかり見せたい時は、F値を大きくして広範囲にピントを合わせることも可能。
【f/6.3 1/80秒 ISO2500】
F値を大きくすると全体がはっきり写るので、ディテール(細部)をしっかりと見せることができます。この写真の場合、葉っぱや水の質感などが伝わる情報量の多い写真になりました。風景と一緒にモデルさんを見せたい時に有効です。
このようにF値を理解することでボケをコントロールできるようになり、表現の幅を広げることができるようになります。
ぜひチャレンジしてみてくださいね!
★ワンポイントアドバイス2
ポートレートではF値を小さくして、背景をボカして被写体を目立たせると雰囲気が出ておすすめ!
実際に僕が撮影する場合も、開放(F値が最も小さい状態)気味で撮ることがほとんどです。中にはF値が大きく、ボケが少ない写真の方が好きな人もいるので、色々試して自分の好みを見つけてみてくださいね。
楽々明るさ調整できる、ISOについて
最後に「ISO」についてです。
聞き馴染みがないかもしれない、ISOという言葉。読み方はそのままアルファベットで「アイエスオー」と読む人もいますが、「イソ」と読む人が多いかな。僕も「イソ」と読んでいます。
このISOは、簡単に言えば“カメラがどれくらいの感度で光を捉えるか”というもの。
例えば、ISO100だったら100の光を取り入れて、ISO200だったら2倍の200の光を取り入れるようなイメージです。ISOは単純に明るさを決める役割が大きいので、他のF値やシャッタースピードよりは理解しやすいかもしれません。
では、早速作例でISOによる明るさの違いを見てみましょう。
【f/1.8 1/400秒 ISO200】
【f/1.8 1/400秒 ISO1600】
ISOの値を高くすると、写真が明るくなっていますよね。「じゃあ、暗い時はISOを高くすればいいんだ!暗い時はISOをどんどん上げて撮影しよう!」そう思われるかもしれません。
確かにそれでも明るい写真を撮ることはできますが、実はISOを高くするとひとつ問題点が生まれます。
それは、写真がザラついてしまうことです。ISOを高く(感度を高くする)と写真が荒くなり、ザラつきの目立った写真になってしまいます。試しに、ISO感度を極端に高くして撮影をしてみました。ご覧の通り、写真にザラつきが出ていますね。
【f/2.2 1/5000秒 ISO20000】
★ワンポイントアドバイス3
ISOを高くしすぎるのは要注意! 夜間や室内など、暗いところではISOを高くして撮影しますが、できれば低い設定で撮影するのがオススメ。
マニュアル設定で撮影してみよう
シャッタースピード・F値・ISOの理解ができたら、ぜひオートではなくマニュアル設定での撮影に挑戦してみましょう。「絞り優先」や「シャッタースピード優先」の設定も便利ですが、 シャッタースピード・F値・ISOをマスターするためにはマニュアルでの撮影をおすすめします。
練習あるのみ!
僕が撮影の時に設定する順番は、①F値を決める→②シャッタースピードを決める→③明るさを見ながらISOを決定するという流れが多いです。理由としては、僕はF値を小さくして開放気味で撮ることが多いので、まずボケ具合を決めることが多いからです。
下の写真も、その流れで設定して撮影をしました。
【f/1.8 1/100秒 ISO1000】
●これさえ注意すればOK!失敗知らずのアドバイス
1.F値を小さくして、背景をボカして被写体を目立たせると雰囲気のある写真に
2.ブラした表現は少し難しいので、慣れるまでシャッタースピードは速めの設定を
3.写真がザラつかないよう、ISO値はできれば低い設定で
まとめ
はじめは難しく感じる「シャッタースピード・F値・ISO」の設定も、理解してしまえば全然難しくありません。それぞれの要素を理解して作品に活かせば、写真を撮るのがもっと楽しくなると思います!まだマニュアルで撮影したことない方も、ぜひこの機会にチャレンジしてみてくださいね。
次回は「構図」についてお話ししたいと思いますので、お楽しみに!
キミと彩るポートレート
Model:ayano(@ayano_4stone)
Edit:Anco Oshita
Supported by CURBON
酒井貴弘
長野県生まれ。東京在住のフォトグラファー。ポートレートを得意とし、広告写真や企業案件、ポートレートなどの撮影案件から雑誌掲載、WEBメディアでの執筆、写真教室やプリセットのプロデュースなど幅広く活躍。SNSでは約2年間で総フォロワー10万人を超えるなど、SNSでの強みも持っている。