みなさん、はじめまして! コハラ タケル(@takerukohara_sono1)です!
仕事では家族写真、SNSでは女性ポートレートをメインに撮影しているフリーのフォトグラファーです。
Z シリーズで撮り下ろしたポートレート写真を参考に、撮影方法やノウハウを紹介する連載『キミと彩るポートレート』。
ポートレートを撮り続ける限り、初対面のモデルさんとの撮影は避けることができません。撮影技術も重要ですが、まずは人と人との対話から始まります。
そこで僕、コハラタケルが「モデルさんとの初めましてのコミュニケーション」について、撮影前のやりとり編と、実際の撮影編とに分けてお話ししていきます。
今回は、撮影が始まるまでのやりとりについて。
よければ最後まで読んで、参考にしてみてくださいね。
SNSを中心にモデル活動をしている人の場合
ポートレートで撮るモデルさんといっても、様々なパターンがあります。
・プロとしてモデル業をやっている人
・SNSを中心にモデル活動をしている人
・友人、家族、カメラ仲間
などなど。
今回は2番目にあたる、「SNSを中心にモデル活動をしている人」との撮影を想定し、SNSでのメッセージのやりとりから実際の撮影まで、どのような流れで撮影を進めていくのかを話していきます。
ポートレートのポートフォリオを作る
早速、撮らせて欲しいモデルさんにDMを送ることになるのですが、その前にやっておかなければいけないことがあります。
それは”ポートレートのポートフォリオ”を作ることです。
例えば、あなたがカフェで撮影したコーヒーやケーキの写真だけをInstagramに投稿している状態でモデルさんのInstagramのアカウントにDMを送るとします。この状態でDMを送っても、ほとんどの場合において撮影を断られる可能性が高いでしょう。
なぜなら、モデルさんが「この人だったら撮られてもいいかな」という判断材料がないからです。
モデルさんから「撮られても大丈夫」「撮って欲しい」と思ってもらえるためには、これまでの実績やフォロワー数も関係しますが、もっとも重要なのは写真(ポートフォリオ)です。
もしもポートレートのポートフォリオがない人は、ポートフォリオを作ることを最優先しましょう。
※僕のInstagramのフィードです
最初のポートフォリオは家族・友人・撮影会などでOK!
「コハラさん! そのポートフォリオを作るためのモデルさんがいないんです!」
この記事を読んでいる人のなかには、こんな風に思われる人もいるでしょう。
この気持ち、よくわかります。なぜなら、僕も撮らせてもらう人がおらず、約1年半もの間、自分をモデルにしてセルフポートレートを撮っていたからです。
最終的に後輩の彼女や友達に協力してもらい、ポートフォリオを作っていったのですが、最初のポートフォリオを作る場合、例えば下記のような選択肢があると考えています。
・家族を撮らせてもらう
・友人、知り合いを撮らせてもらう
・撮影会に参加する
もしも女性ポートレートを撮りたい場合。ポートフォリオに関しても女性を撮るのが理想ではありますが、僕は男性でも問題ないと考えています。
重要なのはカメラマンがポートレートにおいて、どのような写真を撮れるかです。仮に男性ばかりを撮っていても、ポートフォリオにポートレートの写真が並んでいれば、それは判断材料のひとつになります。
また、ポートレートのポートフォリオと聞くと、複数人のモデルさんが登場しているほうがいいと思う人もいるかもしれませんが、僕の最初のポートフォリオは後輩の彼女、その子だけでした。
※僕が写真を始めて、1年10ヶ月ほど経った頃の写真です
そこからSNSで声をかけて、徐々にモデルさんが増えていきました。僕に対して、「コハラさんはたくさんのモデルさんを撮っている!」というイメージが強い人も多いかもしれませんが、実は女性ポートレートを撮り始めて最初の一年間くらいは5〜6人の女性しか撮っていないんです。
まずは男性・女性、どちらでも大丈夫ですので、知り合いに声をかけ、ポートレートのポートフォリオを作りましょう。
はじめて送るDMでは、フルネームで名前を名乗る
SNSを中心にモデル活動をしている人と撮影をする場合、まずはDMを送り、撮影可能かどうかの確認を取ります。ほとんどの場合は、SNSアカウントのDMに送ります。
では、はじめてDMを送る場合、どういったところに注意するべきなのでしょうか?
それは“自分の名前を名乗る”ことです。
「SNSのアカウントに名前が書いてあるから、DMでは名乗らなくても大丈夫」。
そう考える人もいますが、僕は必ずフルネームで名前を名乗るようにしています。
また、名乗る場合はアカウント名ではなく、本名のフルネームで名乗っています。(僕の場合、小原 威 と伝えています)
これは「撮影前・撮影中・撮影後」全体を通して言えることですが、”初対面での撮影では、信用してもらえるかどうか”がとても重要です。
相手の不安や心配をやわらげるためにも、まずは自分の名前を名乗るようにしましょう。
メッセージのやりとりは真摯に丁寧に
無事に撮影許可をもらった場合、そのあとは撮影に向けてSNSのDMやLINEなどでメッセージのやりとりをしていきます。
このとき重要なのは“真摯に丁寧に”対応していくことです。
元々、なにかのきっかけや繋がりがあるのであれば話は別ですが、僕は基本的に会うまでは敬語で話すことが多いです。
SNSで誰もが気軽に会話ができる時代だからこそ、メッセージのやりとりはとても大切にしています。
前述した“名前を名乗る”と同様に、メッセージのやりとりでも最初は慣れ慣れしくするのではなく、きちんと敬語で会話することで「この人は作品撮りに対して、真剣に取り組んでいるんだな」という信頼を得られるように気をつけています。
★ワンポイントアドバイス
撮影前からコミュニケーションは始まっている!
メッセージのやりとりは真摯に対応することが重要。
撮影前は必ずカフェで15分 〜 30分の雑談を
僕は撮影前に、必ずカフェでモデルさんと雑談をしてから撮影を開始するようにしています。時間にすると15分〜30分ほどです。
初めましてのモデルさんに限らず、2度目・3度目の撮影であっても、僕は必ず撮影前はカフェで雑談しています。
ちなみにフォトグラファーの酒井貴弘さん(@sakaitakahiro_)も僕と同じように30分ぐらいお茶をすると言っていました。
※酒井貴弘さんの記事一覧はこちら。
しかし、フォトグラファーによって対応の仕方は違います。
<フォトグラファーのnanoさん(nanono1282)の場合>
「当日は待ち合わせして、そのまま撮る場所に向かいながら話してる感じです! お昼ご飯の時間だったら一緒に食べたりしますけど。当日よりも前に一度会ったりとかも多いですし、初めましてだったらその距離感も面白いかなあと思っているので、あえて(距離感を)詰めたりもしてないです。距離感の経年変化みたいなのも好きなので……
でも、当日いろいろと話せるように、その人の好きなもの(音楽とか、服とか、場所とか)をインスタでチェックしたりして話しやすくはしてます!」
※nanoさんの記事一覧はこちら。
このようにあえて、初めましての緊張感などを大切にするフォトグラファーもいます。
「自分が撮りたいイメージに近づけるためには、どのように接すればいいか」
最初はなかなかイメージをつかむのが難しいかもしれませんが、試行錯誤を繰り返すうちに自分なりのイメージが見えてくるはず。僕の場合、撮影イメージはSNSの写真・好きな写真家さんの写真集から膨らませることが多いです!浮かんだ撮影イメージを実現するために、必要な方法を考えていくようにしましょう。
自分の撮影イメージをモデルさんに伝える
カフェでの雑談は、ただ話すだけでなく、モデルさんに撮影イメージを伝えておく内容があります。
といっても、そこまで具体的には話しません。
「今日はスマイリーな感じで撮りたい!」
「ちょっとクールな感じ。でも、笑っても大丈夫」
「ふだん通り、そのままでOK」
というように、簡単にですが、当日の撮影イメージを伝えるようにしています。
ただ、二つ目に挙げた「ちょっとクールな感じ。でも、笑ってもいいよ」というのは重要なポイントのひとつです。
僕が求めるクールな表情というのは、クールな表情を続けているときには訪れません。
緊張がほぐれたり、笑顔のあとにする静かな表情だったりが“本当のクールな表情”だと考えています。
「今日はクールな感じで撮りたい!」とだけ伝えてしまうと、モデルさんは笑わずにクールな表情ばかりしてしまうかもしれません。
それを防ぐためにも「クールな感じで撮りたいけど、撮影中は笑ってもいいよ」と伝えるようにしています。
★ワンポイントアドバイス
撮影イメージをモデルさんに伝えよう!
撮影イメージが”クール”だったとしても、笑顔禁止はNG。
このように、撮影する側にこだわりたい部分がある場合、事前にモデルさんへしっかり伝えることが重要です。
また、僕の写真のように自然体な雰囲気ではなく、作り込んだ撮影をするフォトグラファーは下記のようなスケジュールを組む場合もあります。
<フォトグラファーのnanoさん(nanono1282)の場合>
〜1ヶ月前
・撮りたいイメージ作り(あれば常時ストックしていく)
※インスピレーションは、好きな写真家さんや本、音楽のイメージが多いです・ピンタレストやインスタでイメージ画像収集
・モデルさん調整〜3週間前
・場所検討、押さえ
・ヘアメイクさんへ依頼〜2週間前
・場所、モデルさんをfix(フィックス)した状態で再度ブラッシュアップ(服とか髪型とか小物とか)〜1週間前
・小物や衣装の最終調整
このように自分の撮影イメージに近づけるために、どのような準備をすればいいのか、練りに練ります。
世界観を作り込んだ撮影というのは、最初は難しいと思います。しかし、もしも自分が目指しているものが世界観を作り込んだ撮影の場合、nanoさんのように、しっかりと準備する必要があるでしょう。
自分が目指す撮影イメージや完成写真がどういうものなのか、撮影を重ねていき、追求していきしょう!
★ワンポイントアドバイス
小道具が必要な場合は事前に準備!
撮影イメージを具体的にし、必要なものを揃えよう
モデルさんが遅刻しても雑談の時間は削らない!
例えば、あなたが撮影時間を2時間確保していたとします。
しかし、当日になって急遽モデルさんが1時間遅れることになってしまいました。
お互い撮影後に予定があるため、時間を延長することはできません。このままだと撮影時間は1時間になってしまいます。
撮影する側としては予定していた時間が短くなるため、とても焦りますよね。
ですが、僕はモデルさんが遅刻して、撮影時間が短くなったとしてもカフェでの雑談の時間は絶対に削りません。
やっぱり焦って撮影しても、良い写真は撮れないと思います。
写真って撮影する側の感情が色濃く反映されるものだと考えているので、焦りの気持ちがあれば写真にそのまま出てしまいます。だから僕はカフェでの雑談の時間は、絶対に削らないようにしています。
★ワンポイントアドバイス
モデルさんが遅刻してきても笑顔で対応!
「いいよいいよ。のんびりいこう」と声をかけ、その後の撮影にのぞむ。
敬語をなしにする、あだ名で呼ぶなどして距離を縮める
僕はSNSやLINEでのメッセージでは敬語を使いますが、カフェでの雑談のときに敬語なしでも大丈夫かどうか確認します。
ちなみに僕自身に対しても敬語を使わなくていいと伝えます。(ほとんど歳下の女性を撮影する場合が多いため、敬語なしでいいと提案しても、敬語を使ってくれる子が多いです)
敬語をなくすメリットは、「より仲が深まる」こと。
これに尽きます。
さらに仲が深まることで、下記のような対応が可能になります。
・モデルさんがカメラマンに相談しやすくなる
・お互いの失敗や遅刻などを許せるようになる
・過酷な撮影もチャレンジできるようになる
あと、モデルさんの呼び方ですが、「◯◯ちゃん」というふうにちゃん付けで呼ぶことが多いです。
シンプルに苗字や名前にちゃんを付けることありますが、もしもあだ名があれば、あだ名で呼ぶようにしています。
僕のように男性が女性ポートレートを撮る場合、どうしても男性の立場が上になりがちです。
しかし、作品撮りというのは互いに協力し、目指すべき写真を”形”にすること。どちらかが上ではなく、お互いが対等であるべきだと僕は考えています。
また、仲が深まれば多少の失敗や遅刻は許せるようになるでしょう。さらに過酷な現場での撮影もチャレンジしやすくなります。
例えば、初対面でいきなり「川に入ってくれ」と言うのは関係性を壊す引き金になりかねません。(お互いが最初から納得しているのであれば話は別ですが……)
濡れたり、汚れたり、極度に寒かったりといった過酷な条件での撮影の場合は、モデルさんと仲が深まってからチャレンジするほうが良いでしょう。
また敬語をなしにするタイミングは、一度逃すと難しくなることがあります。なるべく早い段階で敬語をなしにしても良いかどうか、尋ねたほうがいいでしょう。
撮影時は楽しむことも大切ですが、お互い作品づくりをしていることを忘れずに!
撮影前のコミュニケーション
・まずはポートレートのポートフォリオを作成しよう
・DMの文章は丁寧に!
・敬語をなしにする、あだ名で呼ぶなどして距離を縮める
さて、ここまで撮影前にできるコミュニケーションについて話してきましたがいかがでしたか?
誰でも最初は、初めましての人にモデルをお願いするのは勇気がいるもの。
でも、丁寧に真摯に依頼をしたら、きっとその気持ちはモデルさんにも伝わるはずです。
やってみたい気持ちがあるのなら、まずは第一歩、勇気を持って踏み出してみてください。
次回は撮影中のコミュニケーションについて。
お楽しみに!!
キミと彩るポートレート
Model:もろんのん(@moron_non)
Edit:Anco Oshita
Supported by CURBON
コハラタケル
1984年、長崎県生まれ。フリーライター時代に写真撮影もはじめ、その後、フォトグラファーに転身。企業案件や家族写真を撮影するだけでなく、会員140名を越える月額制noteサークルの運営も行っている。SNSの総フォロワー数は12万人以上。