はじめまして。フォトグラファーのYuma Takatsuki(@yu_umaa06)です。関西を中心にポートレートや風景写真などさまざまな撮影を行っています。
僕は元々、バックパッカーとして海外の絶景を見にいくことが好きだったこともあり、風景写真を撮っていました。Instagramをはじめていろんな写真を見ていく中で、写真友達を撮りはじめたことがポートレート写真のきっかけです。そこから毎週友達と出かけては撮影するようになり、ポートレートにハマっていきました。
今回のテーマは“紅葉ポートレート”です。「秋」は四季の中で最も好きな季節であり、日本の紅葉の美しさを伝えられるのがおもしろさの一つだと感じています。また、紅葉は赤だけでなくオレンジや黄色もあり、彩りのバリエーションを出すこともできます。
この記事では紅葉ロケーションでポートレートを撮影するときの基本ポイントから、紅葉ならではの彩りを生かした表現を紹介していきます。
撮影の前に知っておくべきこと
【場所】モミジやイチョウの多い自然豊かな公園が撮りやすい
風景の中にモデルさんを入れる場合は、先にきれいな風景のスポットを見つけ、その場の雰囲気や空気感が伝わるようにモデルさんの位置を決めて撮影しています。
紅葉の場合は、色づく木が多い自然豊かな公園がオススメです。今回は関西の屈指の紅葉スポットである奈良公園で撮影しました。WEBなどを見ると、地域ごとに紅葉が見どころのスポットが紹介されているので、お住まいの近くで調べてみてください。行きたい場所が決まったら、SNSでその場所で撮られた最近の投稿をチェックすると、紅葉状況を把握できます。
撮る位置としては、モデルさんと紅葉の両方を入れるため、モデルさんの頭上より少し上の位置に紅葉が来る場所がベストです。紅葉している木が高い位置にある場合でも、ローアングル撮影によって背景を紅葉で埋めることもできます。
【服装】モミジは黄色系、イチョウは赤系の服がオススメ
服は紅葉の色によっても変わります。モミジなど赤色であれば服は黄色系、イチョウなど黄色であれば服は赤系にすると紅葉が映え、白・黒・茶はどんな背景でもマッチしやすいです。
今回は左のように赤いモミジをメインにするため黄色系の服を着てもらいました。周囲に緑があっても引き立ち、秋らしさを出せる色です。右の写真は同じ日に撮影したものですが、黒系のアウターがあれば黄色の背景でも際立ちます。
また、マフラーがあると秋の寒さを演出でき、「自然と顔まわりに視線がいく」「手をかけるなどポージングしやすくなる」という効果もあります。
【機材】軽量なカメラ+F2.8以下の明るいレンズ
- カメラ:紅葉スポットでは三脚禁止のところも多いため、ミラーレスなど軽くて持ち運びやすいカメラが◎。人がいないタイミングの一瞬で撮影できるようにAFが速く、手ブレ補正が付いたものが理想的です。今回は軽量なフルサイズミラーレス Z 5を使用しました。液晶モニターは可動式のため、ローアングルやハイアングル撮影がしやすく、表現の幅が広がります。
- レンズ:ポートレート撮影では35~85mmの焦点距離域で寄り/引きを撮りわけ、F値は2.8以下にできると表現の応用が利きます。今回はNIKKOR Z 50mm f/1.8 SとNIKKOR Z 24-70mm f/2.8 Sを使用しました。特にボケ感を強く出したい場合などは開放F1.8の50mmを使います。
紅葉の彩りを生かす撮影のポイント
紅葉の中で撮影する場合、モデルさんと紅葉のそれぞれの存在感を、表現したい意図に合わせて調整することが大事です。
【ぼかし方】モデルさんと背景の描写に合わせたF値に
設定:(左)F1.8、(右)F4
立体感を出してモデルさんを際立たせたいか、紅葉のディテールを残しつつモデルさんの表情もはっきり写したいかで、F値を変えます。F1.8で撮影した左の写真は奥が大きくボケ、手前のモデルさんが際立っています。
設定:F2.8
こちらはF2.8で写した写真です。ボケ感もありながら背景の紅葉の存在も感じられます。バランスのいい写りのためF2.8をベースにし、特に被写体を強調したいときはF1.8にして撮影するのがオススメです。
【構図】背景を紅葉で埋めるようにフレーミング
モデルさん・紅葉風景のどちらを際立たせたいかで、構図のポイントも変わります。
モデルさんと背景の画面構成の基本
画角によって背景である紅葉の存在感が変わります。左の写真はロケーション情報が多く紅葉の全体像がわかりやすいですが、右の写真のほうがモデルさんの存在感が際立っています。紅葉の存在をどこまで強めたいかで画角を決めましょう。
また、画面内が紅葉とモデルさんで埋まるように配置します。この写真では右上が紅葉で埋まるようにし、左下の紅葉のない空間にモデルさんを配置して際立つように。モデルさんを主役にする場合でも寄りすぎず、人と紅葉をバランスよく配置するのがポイントです。
モデルさんを際立たせる、寄り×ローアングル
寄ってモデルさんを主役にする場合、人より背の高い紅葉を背景として生かすにはローアングルが基本です。背景が紅葉で埋まるようにアングルを調整しましょう。なお、赤の補色となる緑がある場合、取り入れることで赤がより映えます。
紅葉した木のすぐそばで撮影する場合、しゃがんでもらいローアングルで写すと、背景の紅葉の広がりが見えるようになります。空の光も入ることで、開放感も出てきます。
紅葉の位置に合わせたアングルの使いわけ
左:水平アングル、右:ハイアングル
高い位置に人が上がれる場所では水平アングル、離れた低い位置に紅葉がある場合はハイアングルなど、紅葉と人との位置関係に応じてアングルを使いわけられると、紅葉をより生かすことができます。
風景を際立たせる、ポツン構図
続いて紅葉風景のほうを主役にする場合、思い切り引いてポツン構図にして、モデルさんをアクセントにします。
紅葉が画面の1/2~2/3ほど占めるようにし、人との大きさの違いでスケール感を強調するのがポイントです。上の写真では面積の多い緑に囲まれた紅葉が印象的で、そのライン上にモデルさんに立ってもらい、画面中央に視線がいくように意識しました。モデルさんの動きが大きいとそちらに目が奪われるため、溶けこむように上を見上げて立ってもらっています。
モデルさんをアクセントにする場合の場所選び
風景の中に溶けこむようにモデルさんを撮りたい場合、風景だけで成り立つところを見つけ、そこに立ってもらうとなじみやすいです。立ち位置を決める際は、視線の流れを考えてモデルさんのすぐ後ろに紅葉が見えるように。また、その位置への光の入り方がきれいかどうかも意識します。
モデルさんと風景の両方を際立たせるには視線の流れを意識
紅葉の美しさを生かしながらモデルさんを際立たせるには、両方に目がいくように視線の流れを意識します。
この写真では、撮影者側の近くにある紅葉を前ボケにして画面に彩りを加えながら、右上:紅葉→左下:モデルさんと視線がいくように。モデルさん近くの紅葉にしっかりピントを合わせることで、立体感も強調しています。
※写真の視線誘導の考え方についてはこちら
【光】順光で質感を、逆光でやわらかさを
紅葉は光との相性がよく、向きによって印象が大きく変わります。
順光・斜光:被写体の前方から光が当たるようにすると、肌や紅葉の質感・色味がしっかりと描写されます。なお、光の当たった部分が白とびしないように注意しましょう。
また、位置を調整すると、顔や体に紅葉の特徴的な影を落とすことができます。太陽の位置を考え、紅葉の影が見える位置を探して、そこに顔を近づけてもらいましょう。太陽が高い位置にある昼間ではなく、早朝や夕方など光が斜めから入る時間帯に撮影すると、きれいな光や光と影の対比を生かすことができます。
逆光・半逆光:被写体の後方から光が当たるようにすると、やわらかさを表現でき、紅葉が透けると透明感もプラスできます。なお、顔が暗くなりやすいので、極力F値を小さくするのがポイントです。
F値を小さくするため背景は大きくボケますが、紅葉の彩りは生かせます。また、モデルさんと同じ距離感の紅葉はしっかり描写されるため、写したいモミジの下に来るよう立ち位置を調整しましょう。
低い位置から光の入る夕方は、ノスタルジックな雰囲気を表現できるオススメな時間帯です。太陽を取り入れる際、太陽とモデルさんの位置関係によって陰影のでき具合が変わります。真後ろに太陽が来るようにすると、右の写真のように顔が暗く見えなくなり、想像力をかき立てる1枚に。なお、夕方の撮影は開放F値にすることで、速いシャッタースピードを確保できて手ブレしにくくなります。
光を生かす撮影~編集のコツ
夕日など明暗差の大きい中での撮影の場合、露出は暗くてもよいので、ハイライト部分やモデルさんの肌が白とびしないように気をつけて撮影することが大切です。
左:編集前、右:編集後
編集では露出・シャドウ・ハイライトを上げて明るくしつつ、白とびしないように白レベルを少し下げ、イメージした明るさに仕上げます。また、明暗差の大きい状況では撮って出しのコントラストが高いため、コントラストを弱め、肌の色や夕日の光がきれいに見えるように微調整。光のやわらかさと紅葉の美しさを表現します。
【モデル】表情や仕草で世界観を演出する
背景となる紅葉の切り取り方について紹介してきましたが、モデルさんの表情や仕草もポートレートにおいて大切な要素です。
作品意図と光に合った表情を引き出す
光を生かした世界観をつくる上で、その雰囲気に合った表情を引き出しましょう。
くもりなど落ち着いた光の中で撮るときには、しっとりとした作品に仕上げるために“凛とした表情”をお願いしています。
夕日の暖かい光では、やわらかさを意識。光の雰囲気に合う優しい表情をした瞬間を切り取りました。事前に撮りたいイメージを共有しておくと、その表情を引き出しやすくなります。
指の表情でも世界観はつくれる
顔だけでなく、指などにも表情はあります。上の写真ではしっとりした雰囲気になるように、指をなめらかに曲げてもらいました。光によって手の甲に陰影ができるようにし、ツヤ感を強調しています。
引きでは、大きく動いてもらう
きれいな背景の中で全身を写す場合、大きな動きをしてもらうことでモデルさんの存在感が際立ちます。手を上げたり足を広げたり、上半身を傾けてもらったり、全身を動かしてもらうように声がけをします。
大きな動きを引き出すために少しふざけてもらうことも多く、笑顔の写真も自然と増えます。きれいな風景に楽しさなどの表現が追加されるのも魅力です。
落ち葉を使った表現のアイデア
紅葉の楽しみ方の一つとして「落ち葉」を使ってみましょう。
落ち葉は撮影小物として活躍します。口元やほほにかざすだけでアクセントになりますし、手持ちぶさたがなくなり自然なポージングになる…という効果も期待できます。
ポートレートではモデルさんの顔にピントを合わせるのが基本ですが、あえてピント位置を変えてみると新しい発見があります。
右のように顔のほうをぼかすと、見た人の想像力をかき立てる1枚に。しっかりぼかすには、腕をぴんと伸ばして顔との距離を極力離して、開放F値で撮影するのがポイント。さらに逆光状態にすることで、落ち葉が光に包まれ印象的に仕上がります。
思い切り寄って、指だけが入る写真も撮ってみましょう。複数枚で組むときなどメリハリが生まれますよ。このとき、逆光で透かし、開放F1.8で背景を可能な限りぼかすと、落ち葉が際立ちます。
Photographer’s Note
ひとくちに「紅葉」と言っても、色や形もさまざま。紅葉は1日を通して、光と影、夕日などいろんな組み合わせの撮影ができ、どう生かすのかを考えるのも楽しさの一つです。
また、僕はSNSに投稿する際には、モデルさんがいない風景写真も組み合わせています。元々風景写真を撮ることが好きなこともあり、風景を記録する意味でも撮影し、“自分が好きな風景”を見てもらいたいとも思っています。
紅葉は場所によっては12月まで楽しめます。美しい紅葉を堪能しながら、ポートレート撮影もぜひチャレンジしてみてください!
紅葉撮影にNikon機材を使ってみて
今回はじめて Z 5を使いました。フルサイズとしては軽量で、グリップ感がよく長時間でも疲れることなく撮影できました。画質や解像度は申し分なく、クリアでシャープな写りが好印象。ファインダーやモニターの映りが素晴らしく、撮影していて楽しくなります。
メインで使用した単焦点レンズNIKKOR Z 50mm f/1.8 Sは、Z 5にちょうどいいサイズ感・重さで使いやすく、描写力は「ここまで写るのか!」と思うくらいシャープでくっきり。ボケ感は非常になめらかです。NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 Sは、どの領域でもクリアで、このレンズさえあれば何でも撮れそうだと感じました!
紅葉撮影の注意点
- 枝や、枝になっている葉に触らない
- 場所を独占しない
自然を大切に、他の方の迷惑にならないように注意しましょう。
※新型コロナウイルスの感染症対策に十分にご留意いただくとともに、政府、自治体など公的機関の指示に従った行動をお願いいたします。
Model:小牧りさ(@risa_papillon__)
Supported by L&MARK
Yuma Takatsuki
学生時代にバックパッカー旅をきっかけに写真をはじめる。「その場の空気感や雰囲気が伝わるように」をテーマに、ポートレートや風景を撮影。本の執筆や写真教室、オンライン講座・写真展など、SNS以外にも活動の幅を広げている。「フォトサークルITTOKO」主宰。