こんにちは!フォトグラファーの酒井貴弘(@sakaitakahiro_)です。
前回の「今日からはじめる写真編集。Capture NX-Dを使ってみよう!」に引き続き、編集についてお届けします。前回の記事では「編集を始めてみよう!」というテーマで基礎的な部分に触れてみましたが、今回は実際にCapture NX-Dを使って写真編集を行いながら解説してみたいと思います!
Capture NX-D
ニコンが提供しているソフトウェア。画像の明るさや色味などの調整を行ったり、ニコンのデジタルカメラで撮影したRAW画像の調整や、ファイル変換を行うことができます。
- 今回編集する写真について
- まずは写真を整えてみよう!
- 色味を調整しよう!
- ディテールを調整していこう!
- カラーコントロールポイントを使ってピンポイントで色味を整える
- 作ったプリセットを保存しよう!
- プリセットダウンロード
- まとめ
今回編集する写真について
早速実際に編集した流れに沿って説明していきたいと思いますが、まずは今回題材にする写真について。
こちらが編集前の写真データ。夏の晴天の日、強い日差しの中での撮影でした。爽やかな青空のイメージを表現しつつ、モデルの魅力を引き出すナチュラルな仕上がりになるように意識して編集していきます。
撮影はRAWで行っています。前回の記事でもお伝えしましたが、編集を行う場合は、色調整の自由度が高まるのでRAWで撮影することをおすすめします。
いつもは作ってある自分なりのプリセットを当ててから編集を始めることが多いですが、今回は1から行っていきたいと思います。
撮影時のポイント
まずは撮影時の露出の調整。白飛びしたデータは編集でも戻すことができないので、色を残したい部分が極力白飛びしないように撮影しています。この写真の場合だと肌の露出に合わせて、白飛びしないようにしています。少し順光気味だったので空の色はある程度しっかり出ていて、どちらかというと肌のハイライトの方が飛びやすい状況でした。逆光だと空の色を出しにくくなるので、モデルさんと布の立体感も出せるサイド光を利用しました。
「空の色をはっきりさせる編集にしたい」とか「フワッと淡い色味の編集にしたい」とか、予め撮影時にどんな作品にするかイメージしながら撮影すると編集もうまくいくと思います。
まずは写真を整えてみよう!
自分なりの色味を作っていく前に、まずは写真の明るさや色温度など基礎的な部分の調整を行っていきます。
露出を整える
まずは露出補正で全体の明るさを整えます。撮影時の液晶でみる印象とPCで確認する明るさの印象は違うので、編集時の自分の感覚を頼りに調整していきます。
撮影時には肌のハイライトに合わせて少し暗めに撮影しているので、白飛びしないように気をつけながら少し明るさを上げて調整しました。
ホワイトバランスで色温度を整える
撮影した写真では、事前に考えたイメージとマッチした色温度になっていたのでそこまで大きく変えてはいませんが、より爽やかでナチュラルなイメージに近づけるため、色温度を調整してみました。ここでは少しマゼンタが強い印象だったので、色味のパラメータを少しグリーンよりに調整しています。
調整するとこのような違いがでます。
![](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/n/nicostop2/20200316/20200316001251.jpg)
![](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/n/nicostop2/20200316/20200316001259.jpg)
左が編集前、右が露出とWBを調整したものです。基本の部分を編集するだけでもガラッとイメージが変わりますね!
色味を調整しよう!
基礎的な調整ができたら、次は色味の作成に入っていきます。
色味の調整で僕が一番重要視しているのがトーンカーブです。コントラストや色調など、トーンカーブだけでも写真全体の印象をコントロールできます。
トーンカーブというのは、カーブの傾き、形を変更することにより、画像の明暗を調整するツールのことをいいます。この辺りは説明するよりも実際に触っていただいた方がわかりやすいかもしれません。
コントラストを上げて鮮やかな印象にしよう
トーンカーブを使って全体のトーンを作ります。
個人的には少し明暗のはっきりした感じが好きなので、コントラストがつくような調整をしてみました。
まず暗めの中間くらいの位置、全体の真ん中、明るめの中間くらいの3つの位置にポイントを打って、それぞれどの辺りがどれくらい変わるかを見ながら適宜調整を行っています。一度大きく動かしてみて、どの辺りが影響しているのか確認してから戻してゆっくり微調整をするのがおすすめです。順番はどこからでもいいので、しっかりと写真を見て、違和感がないように調整しましょう。
コントラストをつけたい場合はトーンカーブの曲線をS字気味に、逆に反S字気味にするとコントラストの弱い写真にできるので試してみてください。
RGBで色味を調整しよう
トーンカーブの調整は明るさやコントラストの調整だけでなく、色をRGBに分けてその組み合わせのバランスなどを調整することができます。RGBとは色の三原色を表すもので、赤・緑・青の3色をかけあえわせて色を再現するものです。理科の授業でなんとなくやった記憶が…という方もいるかと思いますが、編集で色味を作る際には大切な部分なので覚えておきましょう。
細かい調整は写真によっても異なりますし、説明では掴みにくいことも多いと思うので今回はこの写真の編集をそのままプリセットとして配布します。そちらをダウンロードして、RGBをどんな配合で調整しているか確かめてみてください。
![](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/n/nicostop2/20200316/20200316001948.jpg)
![](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/n/nicostop2/20200316/20200316002001.jpg)
左がトーンカーブ調整前、右が調整後です。トーンカーブを調整したことにより肌の明るさは少し明るくなりつつシャドウ部分は抑えられ、全体のコントラストも少し上がり鮮やかな印象になりました。
ディテールを調整していこう!
トーンカーブで大まかな色味の調整ができたら細かくディテールを調整していきます。
陰影の調整
トーン(ディテール)の機能を使って、ハイライトとシャドウのバランスを整えていきます。
これまでの編集ではハイライトが明るい印象になっていたので、ハイライトのパラメータを上げてハイライトの明るさを抑えました。逆にシャドーの部分では黒が強い印象だったので、シャドーのパラメータを上げて暗部を持ち上げています。
LHCエディターで細かい色味の調整
次に色味の調整を行っていきます。
今回は肌色の微調整を、画像の明るさやカラー明度などのチャンネルを切り換えて個別に調整できる「LHCエディター」で行いました。
LHCエディターの項目は、
「彩度」
「色相」
「カラー明度」
「明度(マスターモード)」
の4種類があり、今回は「彩度」と「色相」を使っています。
今回の写真では少し肌色が強く出ている印象だったので、透明感を出すために肌色の調整を行います。
肌に影響するオレンジ色付近を選択して、好みの色に調整しました。
顔の肌色が強く出ていている印象で、主張が強いように感じたので、肌色に影響するオレンジ付近の彩度を下げています。この時にあまり色を限定的にしすぎるとそこだけ影響が出て、違和感に繋がる可能性があるので、影響する幅を少し広くして自然な印象になるようにしています。
また、顔の肌色が少しマゼンタ寄りな印象があったので、色相を使って顔の肌色に関わる色をイエロー寄りのオレンジに調整しています。
この時にも局所だけ変化しないように同じく幅を広げて調整を行いました。例えば肌の色でも写真によってどのあたりの色が影響してくるのかなどは変わってくるので、どの色がどの部分に影響するのかを確認しながら行いましょう。
左がトーンカーブまで編集した写真と、右がディテールの調整を行った写真です。
![](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/n/nicostop2/20200316/20200316002451.jpg)
![](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/n/nicostop2/20200316/20200316002501.jpg)
カラーコントロールポイントを使ってピンポイントで色味を整える
最後にNX-Dならではの機能を使ってよりピンポイントで色味を調整していきます。使うのは、NX-Dに搭載されているカラーコントロールポイントという機能。
これは色をダイレクトに選択して、その範囲内で選択した色のみ調整ができるというもの。今回はもう少し微調整を加えたかった空の青と顔の色味だけピンポイントで選択して編集していきます。
空の青色を調整
まずは空の青色をカラーコントロールポイントで選択。効果が影響する範囲のサイズを空全体がかかるように大きくします。
【カラーコントロールポイントの調整項目】
H:色相
S:彩度
B:明るさ
C:コントラスト
R:赤
G:緑
B:青
W:暖色系調整
次にイメージに合わせて各パラメータを調整していきます。
空の色をもう少し爽やかなイメージのエメラルドグリーンも入ったような色にしたかったので、まず色相を-5にして少しだけ緑寄りにしました。
彩度と明るさも少しずつ上げて明るい印象に近づけました。
赤、緑、青の微調整も必要に応じて行います。
今回の場合は緑と青をそれぞれ5ずつ上げて青緑感を強めました。
顔色の調整
顔の肌色が少しくすんだ印象に感じたので、顔の部分だけ調整を行いました。肌色を選択したら、顔の範囲が影響するようにサイズを決定します。
顔の部分も各パラメータを適宜調整していきます。肌色は少し赤みがかっている印象だったので色相をオレンジ色に少し寄せて調整しました。
肌の透明感を出すために明るさを+15にしています。顔の影の陰影をもう少し弱めるためにコントラストを下げて仕上げています。
この辺りの調整は人それぞれの好みによると思うので、ぜひ細かく自分の好きな色味に近づけていけるよう試してみてください。
左がカラーコントロールポイント調整前、右が調整後。空の青色がより鮮やかな水色になり、顔色もくすんだ印象がクリアになり爽やかな印象になりました。
![](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/n/nicostop2/20200316/20200316003017.jpg)
![](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/n/nicostop2/20200316/20200316003027.jpg)
作ったプリセットを保存しよう!
好みの編集が完成したら、プリセットとして保存しておきましょう。
NX-Dではそれぞれの項目ごと、または全体の調整を保存する事ができます。更にそれをベースにして、次の写真の編集に利用することができます。
プリセットダウンロード
今回は僕が行った編集をそのまま保存したプリセットをダウンロードできるようにしました。ぜひそれを編集の参考にしてみてください!
※下記のリンクから、NICO STOPのアンケートにご回答頂けますとダウンロードできます。
※その他Capture NX-Dの使用法についてはオンラインマニュアルをご覧ください。
まとめ
・まずは露出やWBなど基礎的な調整を行おう
・トーンカーブで大まかな色味やトーンの調整をしよう
・LCHエディターやカラーコントロールポイントで細かく色味を調整してみよう
・色味の設定を保存して、どんどんブラッシュアップしていこう
最後に編集のBefore & Afterを見てみましょう。
だいぶイメージ通りの仕上がりになったんじゃないかと思います。
![](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/n/nicostop2/20200316/20200316003447.jpg)
![](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/n/nicostop2/20200316/20200316003458.jpg)
始めは自分の色味を見つけるのは難しいかもしれません。
どうやったら好きな色味になるんだろうと悩むこともたくさんあると思いますが、そうやって試行錯誤している期間が大切で、それがあって初めて自分の色味と言えるものに辿り着けるんじゃないかと思います。
有料のソフトもありますが、無料で使えるNX-Dでもこれだけ色味の編集ができてしまうので、ぜひ一度試してみて欲しいです!
写真を撮ることももちろん楽しいですが、編集することも写真の醍醐味の一つ。編集も覚えてさらに写真を楽しみましょう!
キミと彩るポートレート
Model:さやお
Edit:高澤けーすけ(@saradaregend)
Supported by CURBON
![hiro](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/n/nicostop/20210624/20210624152811.jpg)
酒井貴弘
長野県生まれ。東京在住のフォトグラファー。ポートレートを得意とし、広告写真や企業案件、ポートレートなどの撮影案件から雑誌掲載、WEBメディアでの執筆、写真教室やプリセットのプロデュースなど幅広く活躍。SNSでは約2年間で総フォロワー10万人を超えるなど、SNSでの強みも持っている。