みなさんは、フィルムカメラで撮影した後の現像・データ化をどこにお願いしていますか?
スピード重視のお店もいいですが、せっかくならオーダーして自分の色を出したいですよね。でも、はじめてのお店にお願いするときは不安がつきもの…。
そこで今回は、フィルムカメラをメインに撮影している5人の写真家に、おすすめの現像店をお聞きしました。
そもそも現像とは?
フィルムは、そのままでは撮影した写真を肉眼では確認できず、薬品で処理することによって像が現れます。この処理のことを「現像」と呼びます。
現像はどこでできる?
自宅でできるキットも販売されていますが、写真店で現像してもらうのが確実です。家電量販店でも対応している店舗があります。また、店頭注文だけでなく、郵送対応をしているところもあり、遠くのお店でも依頼することが可能です。
現像だけをお願いすればいい?
写真として出力するにはプリントするか、デジタルデータ化(スキャン)をする必要があります。
そこで、お店には以下のようにセットでお願いします。
- 現像+プリント
- 現像+データ化
※データの受け取り方法として、CD書きこみやUSB書きこみ、メール送付など、お店によって異なる場合があります。
現像+データ化(CD書きこみ)を依頼した際に受け取るもの
データ化すれば、フィルムで撮影した写真をPCやスマホに取りこむことができ、SNSに投稿することも可能です。
仕上がりをオーダーするってどういうこと?
明るさや色味など、オーダーに合わせて調整してくれるお店があります。このとき何を調整しているかというと、データやプリントなどの出力です。現像したフィルム自体に手を加えるわけではありません。そのため、現像したフィルムをお店に渡せば、同じ写真でもまったく違うオーダーで明るさや色味などを変えることも可能です。
5人の写真家の行きつけフィルム現像店
フィルムカメラをメインに撮影している写真家たちに
- なぜそのお店に通っているのか?
- 仕上がりはどうか?
- どんな人におすすめか?
をお聞きしましたので、ぜひ参考にしてみてください!
Fujikawa hinanoさんの行きつけ「Prism Lab.KICHIJOJI」
教えていただいたのは…
Fujikawa hinanoさん
(@nanono1282)フィルムカメラをメインに、日常と非日常の中にある曖昧さや感情を丁寧に表現している。
「Prism Lab.KICHIJOJI」店主の西村さんと知り合ったのは、前にいたお店のときに「好きなフィルム写真を撮る人が、そのお店に出している」と友人から聞いたことがきっかけです。
依頼しはじめた頃の写真。青色にこだわっていたときだったので、西村さんが表現してくれる「青」に魅力を感じました。
そこから親交が深まり、新たなお店をオープンされるということで、そのまま依頼しています。プライベートでも仕事でもお願いしているので、「写真制作のパートナー」のような存在です。
お気に入りポイント
オーダーの柔軟性や仕上げの丁寧さ、親身に相談に乗っていただけるところが、通い続ける理由です。
仕上がりについては、お店らしさはあるものの、「お店の色」の主張は強くなく、使用したカメラやフィルムの描写を丁寧に表現してくれます。
また、その人の希望やそのときの雰囲気・シチュエーションに合わせて、調整してくれるのも特徴です。何回か出しながら、「コントラストはこう」「彩度はこう」と好みを次に出した際に依頼していくと、自分ならではの色味になっていきます。
寒色と肌の暖色の表現がとても気に入っています。今までは、本来黄色の部分にも青かぶりしていましたが、肌の色再現を調整していった結果、本来の色味を生かしながら自分の個性を出せるようになりました。
お店で印象に残っていること
Prism Lab.KICHIJOJIの新しい試み「コンタクトシートスキャンサービス」のサンプル撮影でお声がけいただいたのは、すごくうれしかったです。
※このサービスを依頼すると、大きなピクセルサイズのデータにスキャンしてもらえます。
コンタクトシートは表現の一つとして、私自身興味がありました。36枚すべてを見ても、仕上がりのきれいさ・丁寧さがわかります。
「Prism Lab.KICHIJOJI」はこんな方におすすめ!
少しずつ自分の好きを開拓していきたい方にぴったりです。
好きなものはすぐ固まるものではないですよね。私自身、季節ごとに違います。
左:夏は彩度が少し高め&寒色寄りではっきり、右:冬は彩度が低め&暖色寄りでやわらかい
変化の過程を楽しみながら、「自分の写真」を探していきたい人には絶対的におすすめです。
実は多くの写真家さんが依頼に来るこのお店。仕事で柔軟な対応が求められる場合でも相談に乗っていただけますし、何より丁寧できれいな出来上がりなので、安心してお願いできます。
Prism Lab.KICHIJOJI
<サービス内容>
- フィルムの現像
- スキャン(データ化)
- 写真プリント
- 郵送フィルム受付
所在地:東京都武蔵野市吉祥寺本町1-28-3 ジャルダン吉祥寺113
営業時間:12:00~19:00/定休日:月・火曜日 ※祝日の月曜日は営業
https://sun-prism.net/
※料金など詳細は、HPをご確認ください。
kamosanさんの行きつけ「Photolabo hibi」
教えていただいたのは…
kamosanさん
(@kamo_san2)京都在住のフォトグラファー。フィルムで日々を綴っている。
「Photolabo hibi」には、2018年頃から本格的にお願いするようになりました。スタッフの方の対応がいつも丁寧で、どんな質問や要望にも真摯に向き合ってくれるので、フィルムをはじめたばかりの頃の自分は、その優しい雰囲気にどんどん惹かれ、足しげく通うようになりました。
仕上がりをはじめて見たとき、白や青の抜けのよさと透明感に驚きました。「これは何かできそうだな…」とフィルムに可能性を感じたのを覚えています。
お気に入りポイント
オーダーにはとても柔軟・丁寧に相談に乗っていただき、好みを反映してくれます。幅広く対応してくれるので「お店の特色」は一概に言えませんが、僕の写真に限って言えば、青と緑の抜けがよく心地よい透明感のある色味がとても気に入っています。
他にも別のお店にお願いしていましたが、青や緑の色の仕上げは、Photolabo hibiがいちばん好みです。
雨の日のしっとりとした写真と、このお店の相性は抜群だと思っています。しっとりとした優しい色味がガチッとハマるんです。
また、店内の空間作りにもこだわられていて、居心地がとてもいいです。
カフェスペースでゆっくり過ごすもよし、ギャラリースペースの展示を見れば、写真のアイデアやイメージが湧いてきます。そこでスタッフのみなさんや、お客さん同士で自由な話が交わされてどんどん発展していくので、何時間でもお店に入れてしまうわけです。ここで知り合って仲良くしている友人がたくさんいます。
お店で印象に残っていること
初の写真展「日々のこと」を開催したときのことです。完全初心者の僕に、展示のノウハウや準備の方法まで、ありとあらゆることを、最初から終わりまでとことんレクチャーしていただきました。あの展示に関わるすべての時間が、写真をはじめた頃から今日までの中で、最も心に残っている思い出です。
「Photolabo hibi」はこんな方におすすめ!
フィルムについてまったく知識がない方には、ぜひ一度足を運んでもらいたいですね。いろんなことを丁寧に聞いてくれるので、フィルム現像に不安を感じている方ほどおすすめです。
Photolabo hibi
<サービス内容>
- フィルムの現像
- スキャン(データ化)
- 写真プリント
- 郵送フィルム受付
所在地:京都府京都市左京区正往寺町462-2
営業時間:12:00~19:00/定休日:火・水曜日
http://labo-hibi.com/
※料金など詳細は、HPをご確認ください。
久莉さんの行きつけ「エビスカメラ」
教えていただいたのは…
久莉さん
(@kuri_sss303)フィルムならではの風合いが生きた花の写真は、ポートレートのように生き生きと魅力が表現されている。
「エビスカメラ」には、フィルムを撮りはじめた頃、最初の1本からお願いしています。
ネットで郵送でもお願いできるお店を探している中で気になり、その後カメラ雑誌でも見かけて、依頼してみることに。現像+CDを注文すると、サービスで写真を1~2枚プリントしてつけてくれることを知って、おもしろそうだなと思いました。
フィルムのことがよくわからない中でお願いし、このお店に「写真にしてもらえた」と感じました!
お気に入りポイント
仕上がりイメージなどを依頼できる「オーダーシート」があるのもありがたいです。
郵送用のオーダーシート。こちらからダウンロードできます。
私は「店長おまかせ」か、自分の好みをプラスする感じで「明るめ」にしたり、「シアンをプラス」と記載してお願いすることもあります。仕上がりは、現実の色と記憶の色をバランスよく混ぜ合わせたような色の表現が、とても素敵だと感じています。
「おまかせ」でお願いした写真。提灯の赤も空の青も現実的な色でありながら、自分の記憶の中に残ったように鮮やかな赤とやわらか青色で、見返すたびに懐かしくなります。
「明るく優しい感じ」「シアンをプラス」をオーダーしました。優しい花の雰囲気が伝わるように仕上げてもらえました。
お店で印象に残っていること
現像完了メールで未感光のフィルムがあったときはそっと書いてくれて、心の準備ができました。
「エビスカメラ」はこんな方におすすめ!
はっきり自分の仕上がりイメージを言葉にできる方はもちろん、まだよくわからないという方もおまかせできますし、専門的な言葉ではなく「優しい感じで」などでもオーダーシートを書けるのでおすすめです。そして、サービスでいただくプリント写真を見るたび、「フィルムっていいな」と思えます。
エビスカメラ
<サービス内容>
- フィルムの現像
- スキャン(データ化)
- 写真プリント
- 郵送フィルム受付
所在地:東京都港区白金6-6-1
営業時間:8:30~19:30/定休日:日曜日・祝日・第二水曜日
http://www.ebisucamera.com/
※料金など詳細は、HPをご確認ください。
madoca uchimuraさんの行きつけ「山本写真機店」
教えていただいたのは…
madoca uchimuraさん
(@madoca_uchimura)フィルムカメラをメインに、独特な距離感で被写体を切り取ることを得意としている。
「山本写真機店」は、写真家の濱田英明さんの写真を見て感動し、使っているカメラ、フィルム、現像店を調べてたどり着きました。LLサイズはA3まで引き伸ばしできるので、大きくプリントしたい写真は絶対にここにお願いしています。
カメラがシャッター幕不良でしっかり露光できていない部分があったにも関わらず、全体的に違和感のない写真に仕上げてくださったことがうれしかったです。
お気に入りポイント
いい意味でざっくばらんに露出について意見をくれたり、オーダーシートに「おまかせ」としか書いていないのに、好みを把握してイメージ通りに仕上げてくださるところがありがたいです。僕はいつもおまかせですが、とにかくクリアで雑味がなく、撮影時の天候に関係なくすっきりした雰囲気に仕上がります。
服は冬ですが、実は夏に撮影した写真。日差しがきつく、コントラストが強い写真になるかと心配していましたが、仕上がってきた写真は非常にクリアで、冬のようなすっきりした仕上がりに驚きました。
光と影のバランスが半々で、スキャニングしにくいシチュエーションかと思いますが、白とびせず黒つぶれせず、かつしっかりと影として認識できるような仕上がりは流石です。
お店で印象に残っていること
同じ写真で、スキャニングの雰囲気を変えて2パターン仕上げていただいたのがうれしかったです。また、データを送っていただく係の方が、いつも素敵な文章を添えてくれるのも楽しみの一つになっています。
「山本写真機店」はこんな方におすすめ!
仕上がりのイメージが明確にあり細かいオーダーをしたい方、すっきりクリアな写真を求めている方におすすめです。
山本写真機店
<サービス内容>
- フィルムの現像
- スキャン(データ化)
- 写真プリント
- ネットプリント
- 郵送フィルム受付
所在地:山口県宇部市中央町1-9-15
営業時間:(月~土曜日)9:00~19:00、(祝日)9:00~18:00/定休日:日曜日
http://yamamotocamera.jp/
※料金など詳細は、HPをご確認ください。
wakanaさんの行きつけ「桜カメラ」
教えていただいたのは…
wakanaさん
(@nanaaa_photo)フィルムカメラで、日常にある美しい瞬間を残している。さまざまな写真現像店を利用し「#現像メモ」として特徴や作例をまとめている。
※掲載写真は、受け取ったデータから微調整程度の編集をしているものを含んでいます。
全国のいろいろな写真店を利用し、特徴や作例をまとめるという取り組み(#現像メモ)をはじめた頃、そのうちの一つのお店として利用したのがきっかけです。現像+データ化で400円台という価格に驚いたのを覚えています。
コントラスト・赤みが強い、どこか懐かしさを感じる仕上がり。普段は「さっぱり・青み」が目立つような仕上げにお願いすることが多かったので、新鮮でした。
お気に入りポイント
対応がスムーズで、丁寧で納期も早く、いつも安心して利用しています。私はフィルム消費が早く、月10~15本現像することもあるので、現像+データ化で460円という価格がとてもありがたいです。
仕上がりはやや温かみ・赤みがある傾向で、懐かしさを感じる“フィルムらしい”写真に。オーダーも可能で、私は「透明感のあるイメージの仕上げ」と色味指定しています。青みを追加してもらうのですが、このお店らしい優しい雰囲気は残っているのが気に入っています。
青みを追加した写真。爽やかな青空になっていますが、すべてに青がかぶる感じではなく、芝生の緑色は自然に、白色の部分は少し温かみを感じるような仕上がりです。
輪郭のやわらかさと透明感を感じられる仕上がり。アジサイの薄青色、ガラスの水色、背景の緑色それぞれが優しく美しい色味で、とても好きです。
お店で印象に残っていること
ハーフカメラで撮影したことを失念して注文してしまったことが何度かあったのですが、丁寧にご対応いただきました。メッセージのやり取りからも、お店の方の温かい人柄を感じています。
「桜カメラ」はこんな方におすすめ!
フィルムらしい懐かしさのある仕上がりが好きな方、そして、リーズナブルに利用できるお店を求めている方におすすめしたいです。
桜カメラ
<サービス内容>
- フィルムの現像
- スキャン(データ化)
- 写真プリント
- ネットプリント
- 郵送フィルム受付
所在地:愛知県碧南市栄町4-1
営業時間:(平日)9:00~19:30、(日曜日)10:00~18:00/定休日:月曜日
https://www.rakuten.co.jp/sakucame/
※料金など詳細は、HPをご確認ください。
フィルムの気になること
最後にフィルムで気になる、現像に出すまでの保管で注意することや、お店と郵送注文のメリット・注意点などについて紹介します。
フィルムの保管方法
フィルムは環境によって劣化する可能性があり、色あせなどにつながります。劣化を抑えるために、以下の点に気をつけましょう。
- 高温多湿を避ける
- 長時間、光に当てない
そして、5人の写真家はどう保管しているかも聞いてみました。
- Fujikawa hinanoさん:撮影したフィルムはジップロックに入れて、次の日には郵送
- kamosanさん:フィルム用のポーチに入れて保管
- 久莉さん:ポーチに入れてなるべく涼しいところで保管
- madoca uchimuraさん:撮影終わりですぐに依頼(保管しない)
- wakanaさん:1本ずつフィルムケースに入れ、高温多湿・直射日光を避けた場所で保管
店頭注文と郵送注文のメリットと注意点
今回紹介したお店は店頭注文・郵送注文のどちらにも対応していましたが、それぞれのメリットと注意点を5人の写真家にお聞きし、まとめました。
店頭注文
<メリット>
- 仕上がりを直接相談でき、スマホで画像を見せるなどイメージを伝えやすい
- 直接持ちこみ・受け取るため、仕上がりが早い
- お店の方に質問がしやすく、知識を得ることができる
- お店の雰囲気を直接知れる
- 店頭割引やポイントカード制度のお店もある
<注意点>
- お店に行くまでの移動時間がかかり、すぐに出せない場合がある
- 受け取りに再度行く必要がある
- 遠方のお店に実際に行くのは難しい
郵送注文
<メリット>
- 距離や移動時間を気にせず、すぐ出せる
- ポストに投函するだけで楽ちん
- 直接行けないお店にも依頼できる
<注意点>
- オーダーの細かいニュアンスを伝えるのが難しい場合がある
- 郵送分だけ、店頭依頼よりはお金がかかる
- 郵送往復の日数がかかる
まとめ
フォトグラファーのおすすめの現像店、いかがでしたか。それぞれに通い続ける理由があるのですね!
自分に合ったお店が見つかると、フィルムカメラの撮影がもっと楽しくなります。今回紹介した5つのお店は、郵送で依頼が可能なので、まずはお試しで1本お願いしてみてはいかがでしょうか?
みなさんの“好き”に合ったお店が見つかりますように。
>フィルム写真のオーダーについては、こちらで詳しく紹介しています。
5人の写真家のおすすめ現像店
- Prism Lab.KICHIJOJI:柔軟なオーダー対応と丁寧な仕上げが魅力。少しずつ自分の好きを開拓していきたい方にぴったり。使用したカメラやフィルムの描写を丁寧に表現してくれる。
- Photolabo hibi:オーダーに柔軟に対応・丁寧に相談に乗ってくれて、フィルムがはじめてな方ほどおすすめ。仕上がりは白や青の抜けのよさと透明感が特徴的。
- エビスカメラ:専門的な言葉ではなく「優しい感じで」などでもオーダーできる。「おまかせ」の仕上がりは、現実の色と記憶の色をバランスよく混ぜ合わせたような色の表現。
- 山本写真機店:仕上がりイメージが明確にあり細かいオーダーをしたい方、すっきりクリアな写真を求めている方におすすめ。依頼しているうちに好みを把握してくれる。
- 桜カメラ:現像+データ化で400円台とリーズナブルで納期も早い。「おまかせ」では温かみのある懐かしさのある仕上がり。オーダーも可能。
※こちらに掲載している情報は、2023年1月10日現在のものです。
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