みなさん、こんにちは。フォトグラファーのwakana(@nanaaa_photo)です。
私は、光と影が印象的な場面や、日常の中にある美しい瞬間が好きで撮影しています。カメラはデジタルとフィルムの両方を使いますが、特にフィルムが好きで、全国のフィルム現像屋さんを利用して「#現像メモ」で作例を紹介したりしています。
今回は、表現手法としてよく使う「クロスフィルター」を紹介します。このフィルターは、光がクロス状に伸びる効果があります。
私がクロスフィルターに興味を持ったのは、カメラ友達にプレゼントしてもらったことがきっかけです。その友達はクロスフィルターを使って印象的な写真を撮る人で、その写真を見て以前から気になっていました。
実際に使ってみると、きらきらと幻想的な世界に魅了されました!
この記事では、クロスフィルターの特徴、どのような状況・被写体に効果的かを、私なりの視点で紹介したいと思います。
クロスフィルターとは?
クロスフィルターは、点光源からクロス状の光の筋が出る効果があります。
左:フィルターなし、右:フィルターあり
フィルターにより輝きが増し、主題を強調したりアクセントにしたり、きらびやかな印象になります。
このフィルターは、以下のときに使いたくなります。
- 光を印象づけたいとき
- 幻想的な雰囲気を表現したいとき
左の写真では、太陽の光が強調され、印象的な写真になりました。右の写真では、イヤリングの金属部分と透明部分が輝き、幻想的です。
クロスフィルターの種類と特徴
クロスフィルターは、線の本数や線の出方により、さまざまな種類があります。
左:4本線、右:8本線
大きな違いは本数で、4本・6本・8本などバリエーションがあります。私はケンコー製の4本と8本のものを持っていて、メインで使っているのは4本線です。
※今回は、レンズ径に合ったフィルターをお借りし、撮影しています。
※今回は、レンズ径に合ったフィルターをお借りし、撮影しています。
4本線「PRO1D R-クロススクリーン」
ガラス小物やアクセサリーなど、特定の被写体に反射した光を品よく目立たせたいときに使います。
8本線「PRO1D R-サニークロス」
太陽光や光源が複数あるとき(夜景)など、光の強さを強調したり、輝きを増したいときに効果的です。
クロスフィルターの重ねづけ
同じ径のフィルターは、重ねづけもできます。
上の写真は4本線と8本線のフィルターを重ねました。少しずらすことで、計12本の線が出ています。指輪のエメラルドの輝きが、さらに強調されました。
フィルター径の選び方
レンズの口径に合ったフィルターを取りつけできます。径違いのフィルターをつけたい場合、ステップアップリングやステップダウンリングを介することで装着可能になります。ただし、大きいレンズに小さいフィルターをつける場合、画面端にフィルターが黒く写りこんでしまう可能性があるため注意が必要です。
使いこなすためのポイント
クロス状の光の筋を強調させるには、いくつかのポイントがあります。
①点光源を写す
左:点光源あり、右:点光源なし
特にクロス状に伸びるのは点光源です。点光源をフォーカスし、ファインダーやモニターで光の筋の出具合を確認しながら撮影します。
なお、右の写真のように点光源がない場合でもクロスフィルターの効果は出ています。白い服に反射した光がふわっと広がり幻想的です。
②背景が暗いほど線がはっきり出る
光は背景が暗いほどはっきり写ります。上の2つの写真では、同じ水面反射でもクロス状の光の背景が暗い右のほうが際立っています。
③F値は極力小さく
左:F2.2、右:F4.5
クロスフィルターは絞ると線が途切れる場合があり、メーカーとしても開放近くの絞りがよいとされています。
ただ、開放にすると明るすぎる・ボケすぎるなど表現に合わない可能性もあり、撮りたいイメージに合わせて絞ることも必要です。ファインダーやモニターで写りを確認しながら撮影することをオススメします。
白とびしないようアンダー気味に光が強すぎると光線がぼやける・爆発しているような画になる場合もあるため、そうならないようアンダー気味で撮影するのがポイントです。上の写真では、花瓶を主体に逆光が強くなりすぎないように、光(窓)から少し離れて暗い室内から撮影しました。全体的に落ち着いた雰囲気の場面で、光がアクセントになるようにしています。
④光る部分に寄るほど輝きを強調できる
輝きを印象つけたい部分に寄り、ピントを合わせることで、クロス効果がより強調されます。逆に、ささやかにクロス効果を取り入れたい場合は引いて撮影します。
⑤位置や角度を調整して目立たせたい箇所に光を当てる
「ここを輝かせたい」という部分にピンポイントでクロス効果を出すには、被写体の位置や角度を調整して光を当てます。そして、その部分にしっかりピントを合わせ、背景を極力シンプルにして余計なものを入れないのがポイントです。
⑥フィルターを回し、光の伸びる方向を調整
左右:クロス方向を変更
クロスフィルターの枠は回転できるようになっていて、角度に応じて光の伸びる方向が変わります。被写体とのバランスや撮影イメージに合わせて調整しましょう。
クロスフィルターが効果的な被写体
ここからは、クロスフィルター撮影でオススメの被写体、撮り方のポイントを紹介します。
【シャボン玉】表面に反射する光で幻想的に
シャボン玉に太陽の光が反射した部分がクロス効果で輝きます。このとき、たくさん飛ぶ中で、対象とする個体をいくつか決めてピントを合わせるのがポイントです。
シャボン玉だけではインパクトが薄かったり、サンプルイメージ感が出てしまうのを、クロス効果によりオリジナリティを出せます。
また、玉ボケを作るとクロス模様が写ります。光線を強調する以外にもこういった使い方もできるんです。
【ガラス小物】輝きにより透明感が生まれる
クロス効果により、ガラスの透明感やきらめきを際立たせることができます。シンプルになりがちな物撮りにアクセントをつけられます。
カメラのレンズも、クロス効果が得られる被写体です。
また、テーブルに置いた透明のコップや花瓶など、朝日や西日を当てるとクロスの効果が出やすいです。被写体に当たる光によって、クロス状に伸びる光の色も変わります。
【アクセサリー】非日常の世界観を表現
透明のパーツや金属の輝きを強調でき、「豪華・きれい」といった特別な印象を与えられます。
アクセサリーをつけた手元、ジュエリーケースにアクセサリーを入れた様子などもオススメです。
上の写真では、ネイルに反射した光が輝いて印象的でした。
【水面】反射光で美しいきらめきを強調
水面の反射光が、クロスフィルターによりきらきらと輝きます。
波打ち際に物や人を入れて手前にピントを合わせると、クロス状の光が被写体から離れるほどボケていき、光に変化が生まれます。
※撮影小物などを持参する場合、流されないように、撮影後は必ず持ち帰りましょう。
※撮影小物などを持参する場合、流されないように、撮影後は必ず持ち帰りましょう。
【瞳】輝きで希望を感じる1枚に
瞳の反射光は、クロスフィルターを介することで、生き生きとした印象になります。
瞳の輝きは、「希望」を表現できると感じています。
【夜景】きらびやかさを演出
夜景でクロスフィルターを使うと、暗い背景に白いライトの光線が映え、きらびやかな印象に。
あえて暗めの表情と合わせて対比させると、切ない表現になります。
上の写真のように、信号や街灯など、何気ない街明かりでも非日常感が生まれます。夜の遊園地のメリーゴーランド、都心の夜景、イルミネーションなどでもこのフィルターは効果的です。
デジタルとフィルムの使いわけ私はデジタルカメラとフィルムカメラの両方を愛用していますが、 クロスフィルターを使いたい条件が異なります。
- デジタル:夜景などの暗所、シャープな雰囲気、照明がきれいな室内などでよく使います。
デジタルは暗所に強く、パキッと写ります。全体的に暗めな色味に光線が映え、アンダーでかっこいい印象になります。
- フィルム:逆光ややわらかい光の雰囲気、透明な花瓶やアクセサリーなど幻想的な雰囲気を表現したいときにフィルムカメラを使いたくなります。
ふんわりした光と粒子の質感によりどこかノスタルジーを感じ、惹かれるのです。
Photographer's Note
クロスフィルターによる輝きは、撮影のアクセントにも主役にもなってくれて、とても重宝しています。
そして、今回紹介した以外にもクロスフィルターはたくさんあります。
写真の右側の大きなフィルターは、「アナモフレア」(ケンコー製)というものです(フィルター径は82mmのみ)。映画撮影に使用されるアナモルフィックレンズのような光線状のフレア効果が得られるフィルターで、6種類のカラーバリエーションがある中から、下の写真ではグリーンを使用しました。
信号機の光線が伸びた不思議な写真になりました。
これ以外にも、「PRO1D R-トゥインクル・スター(W)」(ケンコー製)という線が長く出すぎない、かわいらしい光を発するものも今後使ってみたいです。
これからの季節、イルミネーションやクリスマスのライト・キャンドルなど、クロスフィルター撮影にぴったりの被写体が多くなります。
ぜひ、みなさんもクロスフィルターを使った光の表現を楽しんでみてください!
Z f を使ってみてデジタルは Z f+NIKKOR Z 40mm f/2(SE)を使いました。持ちやすく安定感があり、片手でも問題ありません。操作もわかりやすく、はじめてでも使いやすかったです。40mmという画角は、目で見た景色に近く自然な印象で、引きや手元も撮りやすいのが魅力的でした。また、開放F2により、はっきりした描写ながらボケ感もあり、表現力を感じました。作品撮りにも使えそうです。Z f は、フォーカスしたい部分にピントを合わせやすく、クロスフィルターの光線も際立ちます。逆光や夜景などの場面でもしっかり撮影できました。普段はオールドレンズやフィルムメインのふんわりとした雰囲気の写真を撮ることが多いので、デジタルでの撮影は新鮮で楽しかったです。デジタル×クロスフィルターの組み合わせは、星空・イルミネーションなど、フィルムやオールドレンズでは撮影が難しい暗所、コントラストがはっきりしている場面、細かい部分まで鮮明に残したい場面などで使ってみたいです!
協力:ケンコー・トキナー
wakana
大学時代にカメラをはじめ、フィルムカメラの魅力に夢中に。光と影が印象的な場面や、日常にある美しい瞬間を残している。さまざまな写真現像店を利用し、「#現像メモ」として特徴や作例をまとめている。