フルサイズミラーレス「Z f」レビュー – フォト/シネマトグラファーが本音で語る、デザイン・写真・動画性能

フルサイズミラーレス「Z f」レビュー – フォト/シネマトグラファーが本音で語る、デザイン・写真・動画性能

2023年9月に発表された、ミラーレスカメラ「Z f」。フィルムカメラ FM2 にインスパイアされたヘリテージデザインのフルサイズがいよいよ登場です!

 

フルサイズミラーレス「Z f」レビュー – フォト/シネマトグラファーが本音で語る、デザイン・写真・動画性能

【主なスペック】

  • 有効画素数:2450万画素
  • ISO感度:(写真)Lo、100-64000~Hi1.7、(動画)Lo、100-51200~Hi2
  • AF(検出):人物、犬、猫、鳥、車、バイク、自転車、列車、飛行機
  • 手ブレ補正:8段 ※CIPA規格準拠。NIKKOR Z 24-120mm f/4 S(望遠端、NORMALモード)使用時。
  • 液晶モニター:バリアングル式画像モニター
  • 新機能:モノクロ専用レバー、モノクロの新ピクチャーコントロール2種類
  • サイズ/重さ:約144×103×49mm/約710g ※バッテリーおよびメモリーカードを含む、ボディーキャップ、アクセサリーシューカバーを除く。

 

今回、“言語化”に定評のあるフォトグラファー/シネマトグラファーの林さんにレビューしていただきました。Z f の象徴的なデザイン、スチール(写真)・ムービー(動画)における撮影体験、性能・機能について、実際に使っていただき感じた“ホントのところ”を教えていただきます。
そして、林さんとコラボしたショートムービーコンテストを開催します。素敵なプレゼントをご用意しておりますので、記事の最後までぜひご覧ください!

 

林さん


林さん(@kotaronya

カメラ設計者を経て、フォトグラファー/シネマトグラファーに。クリエイティブスタジオbird and insectを立ち上げ、写真・映像・ブランディングを主に行う。現在はフリーとして活動。

 

こんにちは。林です。

まずは簡単な自己紹介をさせていただきます。

某メーカーでカメラ設計者として勤務の後、bird and insectという写真・映像・ブランディングを主としたプロダクションを立ち上げ、2023年6月に退社し現在はフリーで写真・映像を主に行っています。

よろしくお願いいたします!

 

レビューを行う上で大事なのが、レビュワーが過去どのような機材を使用してきていて、どのような傾向のカメラを好むかです。

【使用機材の変遷】

  • スチール:Nikon D600系 → Nikon D850 → Nikon Z 7 → Hasselblad X2D 100C が現在のメイン
  • ムービー:Nikon D600系 → SONY α7S II → Blackmagic Pocket Cinema Camera 4K、6K → Leica SL2-S が現在のメイン

 

マルチロールカメラ(スチールとムービー両方が高レベルで撮影できるカメラ)を好み、仕事で使うカメラであっても、趣味で使うカメラであっても、目になじみ手になじむことを重要視しています。

そんな立場から今回のフルサイズミラーレスカメラ「Z f」のレビューをしていきたいと思います。

 

フルサイズミラーレス「Z f」レビュー – フォト/シネマトグラファーが本音で語る、デザイン・写真・動画性能
フルサイズミラーレス「Z f」レビュー – フォト/シネマトグラファーが本音で語る、デザイン・写真・動画性能
Z f で撮影したスチール

 

Z f で撮影したムービー

 

「Z f」ってどんなカメラ?

Z f については登場が古くから噂され、APS-Cサイズ(DXフォーマット)ミラーレス Z fcの登場によって多くの方がフルサイズ版 Z fc として想像したカメラだと思います。大方の予想通り、Z fc の外観を踏襲して登場しました。

 

フルサイズミラーレス「Z f」レビュー – フォト/シネマトグラファーが本音で語る、デザイン・写真・動画性能

 

外観は Z fc を一回り大きくした感じですが、フルサイズ(FXフォーマット)としてはかなりの小型軽量(約710g)です。

今回は発売前のカメラをお借りしての撮影ということで、外に持ち出す際には人目につかないよう細心の注意を払いましたが、正直見られても Z fc だと思う人がほとんどなのではないかと思うくらいには小型です。
Z f にはあらゆる強みがありますが、まず「このデザイン・この小型軽量でフルサイズ」というだけでも競合の少ないカメラだと思います。これだけで欲しいと思う人も多いでしょう(自分もその一人です)。

 

Z f を一言でいうと「フィルムカメラに似た外観を持ちながら、フラッグシップ譲りの性能を持ったカメラ」です。羊の皮を被った狼ですね。
マルチロールカメラとしての性能のバランスに優れており、スチールとムービーのどちらでも活躍してくれるカメラになります。
外観・触り心地などの「情緒的価値」と、実際に撮る際の「機能的価値」のバランスに非常に優れたカメラだと言えます。
そしてここで戦っているカメラは実は非常に少なく、競合の少ないカメラです。

外観・デザイン・外装設計

フルサイズミラーレス「Z f」レビュー – フォト/シネマトグラファーが本音で語る、デザイン・写真・動画性能

 

Z f の外観から見ていきましょう。
見た目はAPS-Cサイズミラーレス Z fc のフルサイズ版であり、フィルムカメラ FM2 のデジタル版であり、同時にフルサイズ一眼レフ Df のミラーレス版でもあります。

 

まずは「この見た目が好きかどうか。」それに尽きます。
個人的には、フルサイズのデジタルカメラでこの外観のカメラは待望です。そして多くの方にとってもそうであると思います。

 

フルサイズミラーレス「Z f」レビュー – フォト/シネマトグラファーが本音で語る、デザイン・写真・動画性能

 

Z f の大きな特徴は上部に配置されたダイヤルです。
アナログに設定を変更できるこのダイヤル群が、Z f のデザイン的なアイデンティティになります。
もし Z fc を触ったことがある方であれば、Z f のダイヤルを触ってみるとすぐ気づくことがあるかもしれません。操作感がカチッとしていて小気味がいいのです。また、ダイヤルも少しひんやりとしていて冷たい感触があります。

 

フルサイズミラーレス「Z f」レビュー – フォト/シネマトグラファーが本音で語る、デザイン・写真・動画性能

 

これは Z f の主なダイヤルが真鍮製になっているためです。これにより、従来のアルミのダイヤルよりも重く・硬く・ソリッドな感じの操作感になっています。
はじめて触ったとき、正直これだけで「欲しいな」と思ってしまうほどの違いでした。
電源を入れる前に欲しくなるカメラは貴重です。

 

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シャッターボタンも真鍮製な上に、ソフトシャッターレリーズを付けられるようにネジが切ってあります。
※ソフトシャッターレリーズをシャッターボタンのレリーズソケットにねじ込んで装着すると、よりソフトで軽快なレリーズ感が得られます。Nikon製のソフトシャッターレリーズはこちら
 
デジタルカメラでソフトシャッターレリーズ対応のカメラは少なく、使用したことがない方もいらっしゃるかもしれませんが、ソフトシャッターレリーズがあるとシャッターのフィーリングを自分用にカスタマイズできてとってもオススメです。
この時点で自分の中で購入は確定しました(まだ電源は入れていません)。

 

フルサイズミラーレス「Z f」レビュー – フォト/シネマトグラファーが本音で語る、デザイン・写真・動画性能

 

機能的には、液晶モニターがバリアングル式になっているのが大きな特徴です。
バリアングル式の利点は液晶モニターを自分に向けられることで、近年流行りのVlogカメラとしての使用を想定されていることがわかります。
フルサイズの中でも小型軽量であるので、Vlogカメラとしての Z f のポテンシャルは相当高いと思います。
また、バリアングル式なので縦型動画も撮りやすいのがポイントですね!

 

本レビューは5000文字程度にまとめたいと思っていますが、その気になれば外観だけで軽く書けてしまうほど Z f の外観は魅力的です。

 

スチール・ムービー撮影の特徴

続いて、スチール・ムービーを撮る際の Z f の特徴を見ていきましょう。

スチール・ムービー共通の特徴

①強力な手ブレ補正

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スチール・ムービー共通の特徴としてうれしいのが強力なVR(手ブレ補正)です。
 
スチールにおいて8段という数字は驚異的で、この時点で Z f が見た目だけのカメラではないことがわかります。
例えば50mmのレンズを付けている場合、手ブレ補正なしでブレないシャッタースピードは大体1/焦点距離=1/50秒だと言われます。
これに8段分の手ブレ補正を加味すると、なんとシャッタースピードを5秒程度にしても手ブレしない計算になります。
5秒はさすがに怖い気がしますが…、実用上でも1秒であれば「余裕で」手ブレなしで撮れる感覚があります。
 
もちろん、ムービーにおいても手ブレ補正は圧倒的で、今回撮影させていただいた作例は通常であればジンバルを使用するところも手持ちで撮影しています。

 

 

②モノクロ

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また、もう一つの大きな特徴としてモノクロモードが挙げられます。

今回の Z f はモノクロに非常に力を入れたカメラで、
  • モノクロ専用レバーによるモノクロへの切り替え
  • 新しく追加されたモノクロのピクチャーコントロール2種(フラットモノクローム、ディープトーンモノクローム)
の2点が大きな特徴です。
今回モノクロの作例も撮影しましたので、詳しくは後述します。

スチールの特徴

Z f、NIKKOR Z 40mm f/2(SE)

Z f、NIKKOR Z 40mm f/2(SE)

 

Z f のスチールの使い方としては、小型軽量なボディーを振り回しながら8段のVRに頼って撮影していく、いわゆるスナップ的な撮影が最もしっくりくると思います。
画素数は2450万画素と必要十分で、取り回しのよい画素数です。
個人的にはDaVinci Resolveという動画編集ソフトでスチールの現像も行っており、画素数が大きくなりすぎると動作が不安定となるため、2400万画素程度という画素数はベストです。

 

Z f のプロモーションではムービーの作例を主に担当しましたが、スチールも撮影しているので見ていきましょう。
※撮影後に編集、自分が好きなアスペクト比にトリミングをしています。

 

Z f、NIKKOR Z 40mm f/2(SE)

Z f、NIKKOR Z 40mm f/2(SE)
朝方の江ノ島に行って撮影してきました。本レビューは7月に執筆しているのですが、最近の東京は日中35℃超えで朝と夜しか活動できません…。

 

画質はさすが2400万画素クラスのNikon機、安心感があります。
Z 6II と同等のスペックで、元から非常に定評のある画質だったこともあり、Z f の画質は Z 6II 同等の印象です。
高感度に関しては改善されているようなので、低感度画質= Z 6II 同等(「名作」として流行った2400万画素クラスのセンサーによる安心の画質)、高感度画質= Z 6II +αと考えておくといいかもしれません。

 

 

Z f、NIKKOR Z 40mm f/2(SE)

Z f、NIKKOR Z 40mm f/2(SE)
アジサイの前で撮影。カメラが軽快なので、静かな画を撮るために深呼吸しています。

 

Z f、NIKKOR Z 40mm f/2(SE)

Z f、NIKKOR Z 40mm f/2(SE)
少し動きのある画も。緑が落ち着いた色でとても好み。このあたりの発色の落ち着きにNikonを感じます。

 

Z f、NIKKOR Z 40mm f/2(SE)

Z f、NIKKOR Z 40mm f/2(SE)
ガラス越しのスナップ。「あ!」と思った場面ですぐにシャッターを切れるのが Z f の強みです。

 

セットで使った NIKKOR Z 40mm f/2(SE)は軽量でフォーカスも早く、画角も構図を作るのに苦労が少ない40mmなので、シャッターをすぐに切れます(自分の感覚では最も苦労しないのが35mmで、次が40mm)。

 

Z f、NIKKOR Z 28mm f/2.8(Special Edition)

Z f、NIKKOR Z 28mm f/2.8(Special Edition)
岩場まで行ってみました。こちらも落ち着いた描写でいい感じ。

 

レンズは明るすぎず、開放でも適度に背景の情報が残るので撮りやすいです。Z f とヘリテージラインのレンズはほんとベストマッチですね…。

 

ムービーの特徴

続いてムービーも見ていきましょう。

 

Z f のムービー機能の代表的なスペックは
  • 4K オーバーサンプリングUHD 10bit 4:2:0 N-Log 24,30p(FXフォーマット)
  • 4K UHD 10bit 4:2:0 N-Log 60p(DXフォーマット)
  • 強力な手ブレ補正
  • Z 9 譲りのAF性能
です。

 

ざっくり、「10bitの動画を4Kで撮れて、60pで撮りたいときはDXフォーマットになる」と覚えておけば大丈夫です。
今回は10bitでスナップムービー、8bitのモノクロモードで短いドキュメンタリーを撮影しました。

 

補足
モノクロムービーは今回、完全撮って出しで後から明るさの調整などをしないため、8bitと10bitはほぼ同等の画質になるということをテストで確認した上で、収録時間の関係から長く収録できる8bitを選択しました。後から明るさの変更がある場合には、より情報量の多い10bitがオススメです。

 

 

【スナップムービー】

フレームレート30pと60pを織り交ぜて、身近な場面を切り取ったスナップムービーです。

 

 

①レンズ
レンズはヘリテージデザインの NIKKOR Z 40mm f/2(SE)と NIKKOR Z 28mm f/2.8(Special Edition)に加え、マイクロレンズ NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S を使用しています。

 

フルサイズミラーレス「Z f」レビュー – フォト/シネマトグラファーが本音で語る、デザイン・写真・動画性能

 

主に40mmで撮影したのですが、とっても取り回しのいいサイズ感と画角で気に入ってしまいました。
ヘリテージデザインも Z f にぴったりで、今回ベストマッチなレンズはこの NIKKOR Z 40mm f/2(SE)であったと思います。
価格も安いので本体と同時購入するのがオススメだな…と思いました。

 

40mmという画角は、遠めから撮れば俯瞰的にも撮れ、近づくと親近感や臨場感が出てくる美味しい画角です。
今回のムービーでも、引きのドリーショット(カメラを移動させながら撮影する技法 ※ジンバルなどは使わず手持ちで撮っています)と、近めの画を交互に組み合わせていますが、どちらも40mmの画角がしっくりきていると感じます。

 

 

②撮りやすさ
今回は手持ちで強力な手ブレ補正を生かして撮っていくスタイルで撮影しましたが、Z f の小型軽量なボディーと取り回しのよさで非常に快適に撮影できました。
AFが迷わず決まるので、猫や鳥の撮影も失敗することなく1カットずつで撮ることができ、非常にサクサクと撮り進めることができました。

 

フルサイズミラーレス「Z f」レビュー – フォト/シネマトグラファーが本音で語る、デザイン・写真・動画性能
フルサイズミラーレス「Z f」レビュー – フォト/シネマトグラファーが本音で語る、デザイン・写真・動画性能

 

誰かと一緒に出かける際など、「何度も撮り直して待たせるわけにもいかない…」という場面では Z f のAFは非常に心強く、フラッグシップ譲りの機能がこの小型のボディーに収められていることに感謝です。
全体としてレスポンスがよく、同じ時間の撮影であっても他のカメラよりも撮れ高の多いカメラであると感じました。

 

 

③グレーディングについて
さすがの10bit N-log、グレーディング耐性も高く、スチールっぽさの少ない自然な画だと感じます。

 

グレーディング後
グレーディング前
左:グレーディング前、右:グレーディング後

 

グレーディングには、私が開発したDaVinci Resolve用のグレーディングシステム「Monet(モネ)」を使用しました。
※「Monet(モネ)」は、記事の最後で紹介するショートムービーコンテストのプレゼントにもなっています。

 

補足
  • N-log:ダイナミックレンジをカメラが持つ最大値に確保できる(そのためぱっと見ではコントラストが低く薄く映る)ので、グレーディングの幅が広いというメリットがあります。
  • スチールっぽさ:きれいすぎる(雑味がない)、生っぽい(リアルである)とも言えるかと思います。
ムービーのグレーディングにはあらゆる方法で画質を「適度に」落とす工程があり、その工程を踏まないと映像がきれいでリアルすぎて「長く見ていると疲れる」「作り物に見えてしまう」という現象が起きます。きれいすぎないこと(画質落としの工程が楽であること)がムービーカメラの必須条件だと感じます。

 

私は「DaVinci Resolve」を使用して、N-logからARRI LogCへカラースペース変換をして、LogCベースでグレーディングしています(グレーディングシステム「Monet」では、カラースペース変換が組み込まれています)。
N-logは他社のLogと比較してくせがあると言われることも多いですが、カラースペース変換でスタートラインを合わせてしまえば、特に違和感なく使用できると思っています。非常に素直な画でグレーディングしやすく助かりました。

 

補足
ARRI LogCは業界のスタンダードなので、LogCに変換しておくとメリットがたくさんあります。
  • 複数のカメラの色を統一できる。
  • LogC用に作られたLUTを使用できる。
  • LogCベースで考えられたグレーディングのやり方をそのまま適用できる(海外の良質な情報はLogCベースで語られることが多く、その情報を使いやすい)。
  • グレーディングのスタートラインとして非常に素直な色で、扱いやすい。

 

 

【モノクロムービー】

モノクロムービーははじめてでしたが、今回から新設されたピクチャーコントロール「ディープトーンモノクローム」を使用して撮影しています。
「サクッと身近な人のドキュメンタリーを。」がコンセプトで、友人のフォトグラファー/シネマトグラファーである阿部くんをモデルに誘って撮影してみました。

 

こちらも手持ちでどんどん撮っていくスタイルで、撮影が中断されることなくサクサク撮り進められてとても快適でした。
また、ディープトーンモノクロームは非常に垢抜けた(洗練された)カラーモードで、今のSNSなどの感覚にもマッチしたモノクロだと感じました。Logもそうなのですが、Nikonのムービーのトーンは非常に垢抜けてきています。
同時にモノクロならではの重みもあり、垢抜けつつ重みがあるという非常にバランスのいいカラーモードだなと感じました。

 

Z マウントであること

フルサイズミラーレス「Z f」レビュー – フォト/シネマトグラファーが本音で語る、デザイン・写真・動画性能

 
Z f には間違いなく「Z マウントであること」という強みがあります。
Z マウントはミラーレス界屈指の大口径マウントで、明るく描写力の高いレンズが量産しやすいマウントです。
 
S-Lineの f/1.2のシリーズはまさに現代のレンズという感じで、大口径の開放=描写が甘い、大口径=味で勝負 という二つの先入観を吹き飛ばしてくれます。
S-Lineは総じて味のない、透明なレンズ(レンズがあることを感じさせないレンズ)です。
ここまで透明なレンズがそろっているマウントは、Z マウントだけだと思っています。
一方、味が欲しい場合にはVoigtlanderのレンズ群などを選べるのも Z マウントの強みです。

 

スチールは S-Line、ムービーは40mm・28mmのヘリテージラインやVoigtlanderのMFレンズなどを駆使することで、スチールであってもムービーであっても、メインカメラとして活躍できるだけのレンズ資産が Z マウントには存在します。

 

まとめ

フルサイズミラーレス「Z f」レビュー – フォト/シネマトグラファーが本音で語る、デザイン・写真・動画性能

 

Z f の◎なポイント

  • スチール2400万画素クラス、ムービー 4K UHD 10bitのマルチロールカメラとしてバランスのいい性能
  • 「画質三大要素」と考えているダイナミックレンジ・色深度・ノイズのバランスに優れた2400万画素クラスのセンサー
  • オーバーサンプリングによる美しい4K UHD画質
  • N-Logの「スチールっぽすぎない」素直なムービーとしての画質
  • 8段VRによる圧倒的な手ブレ補正
  • Z 9 譲りのストレスのないAF性能
  • 丁寧にデザインされた外装がもたらす情緒的価値
  • とにかく使っていて楽しく、持ち運びたくなるカメラ

 

Z f の▲なポイント

  • 撮影体験は「軽め」。上質なものを触っていると感じられる「重み」を重視される方、フィックスで落ち着いた画を撮る方はぜひ一度触ってみてご検討を。
  • 欲を言えばファインダーの倍率がもっと大きければうれしかった(最近1.0倍のファインダーをよくのぞいているので、それに比べると小さい)。

 

総じて「情緒的価値を最大限まで高めながら、機能的価値に妥協していないカメラ」が Z f であり、その特徴は非常に競合の少ないものになります。
ぜひ一度触れてみて、Z f の撮影体験を体感してみてください!

 

ショートムービー「1cutcinema」のすすめ

Z f はスチールの性能とムービーの性能の両方が高いマルチロールカメラです。
とはいえ、ムービーにハードルの高さを感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか?

 

YouTubeなどで見るムービーはたくさんのカットがしっかりと編集されているものが多く、敷居が高く感じてしまうのも無理がないと思っています。
私自身は「ムービーはもっと手軽に楽しめるものであってもいいのではないか」と感じていて、そのような思いから #1cutcinema というタグで「1カットの5~10秒くらいの短いムービー」をSNSに投稿しています。

 

Z f はいつでも持ち運べる手軽さと、ムービーがきれいに撮れる性能を併せ持ったカメラですので、ここでムービーを手軽に楽しむコツ「1cutcinemaのすすめ」についてお話したいと思います。

1cutcinemaの撮り方

 

撮り方と言っても、もちろんムービーは自由ですので、撮りたいと思ったタイミングでRecを押せばそれで大丈夫です。なのですが…それでも難しいと思ってしまう気持ちがとってもわかるので、コツのようなものをお伝えできればと思います。

 

 

①何かを動かす
ムービーがスチールと大きく違うのは、「何かが動いていないと成り立たない」ということです。
と考えると、被写体またはカメラを動かす必要が出てきますが、最初のうちはカメラを動かすのは結構難しいので、被写体を動かすことを考えるのがオススメです。

 

 

②身近なところで動いているものを観察してみる
改めて、身近な場所で「動いているもの」には何があるか観察してみます。
すると、動いているものの特徴が見えてきます。
  • 水面や風に揺れる葉などの「自然が動かしているもの」
  • 転がる、落ちるなどの「重力の影響」
  • 人や自転車、車などの「人が動かしているもの」
  • 鳥や猫などの「動物」
に注目してみると、動いているものをたくさん発見することができるかもしれません。

 

いくつか実際の例とともに紹介します。

 

水面や風に揺れる葉などの「自然が動かしているもの」

人工物(鉄塔)と木の対比がおもしろいなと思って撮りました。少しだけ草木が風に揺れています。

 

風に吹かれて服がたなびいています。風による影響は動画を撮る上でたくさんとらえることになります。

 

  • 自転車、車などの「人が動かしているもの」

こちらはバスや車の動きを使って撮影しています。本当はバスが停まってくれるとよかったのですが…

 

  • 鳥や猫などの「動物」

我が家には猫がいます。猫はいつも動いているので、1cutcinemaの題材としてはとっても助かります。

 

こちらはカメラの動きで見せるつもりでしたが、猫が動いてくれたのでその動きを使って最後の構図を作っています。

 

こちらは動き自体が少ないのですが、音声を使うことで動きを出しています。

 

 

③積極的にものを動かしてみる
②が「動いているものを探す」だとすると、③は積極的に動かしていきます。
映像で言う「演出」という領域が③です。

 

水を使って動きを作っています。夏の清涼感を感じるような動画にしたいと思って撮りました。

 

「人に水を動かしてもらう」というかなり積極的な動きの演出です。

 

 

④カメラを動かしてみる
最後は、カメラを動かしてみたムービーです。

 

こちらは、背景は動かず、カメラが動いています。手前に草木を入れることで、前景と背景の速度差で動きを出しています。

 

シャワーの水で動きを作っていますが、見た目の変化が少ないのでカメラの動きを併せています。

 

こちらは花を生ける動作を、さらにカメラを動かして撮ってみました。猫の動きとも相互作用があるので、ここまでいろいろと動くと、複雑性のある印象のムービーになります。

 

このように、「動きを探す」「動きを作る」のいくつかのパターンを紹介しました。
1cutcinemaを撮っていると単純に「動いているっておもしろい…」という気分になってきます。
ぜひお気軽に動画を撮るための一助として、1cutcinemaのハッシュタグをご利用いただけたらうれしいです!

 

ショートムービー「1cutcinema」のコンテストを開催!

フルサイズミラーレス「Z f」レビュー – フォト/シネマトグラファーが本音で語る、デザイン・写真・動画性能

 

林さんとNICO STOPとでコラボし、ショートムービー1cutcinemaのコンテストを開催いたします。林さんが審査し、最優秀者1名、優秀者5名を発表。入賞者には特典をご用意しております。
普段からムービーを撮る方はもちろん、スチールがメインの方もぜひ撮影してみていただきたいです。

 

審査員:林さん
募集期間:2023年9月22日(金)~2023年10月6日(金)
応募方法:X(旧Twitter)かInstagramのいずれかでNICO STOPのアカウントをフォローし、ハッシュタグ「#1cutcinema」「#NICOSTOP」をつけて投稿。
結果発表:2023年11月予定。NICO STOPの記事で発表いたします。

 

入賞者特典
  • 優秀者5名:NICO STOPの記事で紹介
  • 最優秀者1名:NICO STOPの記事で紹介+林さんのグレーディングシステム「Monet(モネ)」(DaVinci Resolve用)+NICO STOPカメラバッグ(トート+インナーセット)※色の組み合わせを生成りとブラックから選択可 
グレーディングシステム「Monet(モネ)」(DaVinci Resolve用)
NICO STOPカメラバッグ(トート+インナーセット)
※Monet(モネ)は林さんが販売しているグレーディングのシステムで、「誰でも簡単にレベルの高いグレーディングを、無限のバリエーションで」をコンセプトに開発したDaVinci Resolve用のパワーグレードです。今回のレビューに掲載した作例(写真・スナップムービー)もすべてMonetを使用して色調整されています。
https://monet-grading.studio.site/
※NICO STOPカメラバッグは、3周年記念で制作したオリジナルバッグです。
https://nicostop.nikon-image.com/entry/makuake/3way_camerabag/2022/06/13/1

 

応募条件
  • 1カットで撮影されたムービー
  • 音楽を入れるか否かは自由(音楽を入れる際は、著作権、その他の権利処理を済ませていること)
  • 使用機材は問いません
  • 複数作品の投稿可
  • 投稿者のオリジナル作品であること
  • 第三者の権利を侵害する内容が入っていないこと(肖像権など)
  • 撮影場所により撮影許可など取れていること

 

注意事項
  • 選ばれた方には、NICO STOP公式アカウントよりDM(ダイレクトメッセージ)にてご連絡させていただきます。メッセージ内に、ご連絡用のメールアドレスと詳細を記載いたしますので期限までにご返信ください。
  • 入賞者とのご連絡において、DM(ダイレクトメッセージ)で指定したメールアドレスに期限内にご連絡いただけなかった場合、入賞が無効となる可能性がありますのでご了承ください。
  • 記事などでご紹介させていただく際は投稿者(投稿者のアカウント、ユーザーネーム)がわかる形で記載いたします。
  • ご投稿いただく作品に使用される著作物、肖像については、ご本人が著作権を有するもの、又は権利者から事前に使用承諾を得たものであるものとします。ご投稿いただく作品に関して万一問題が生じた場合は当事務局は責任を負いかねますことご了承ください。
  • 作品をサイトに掲載する際、SNS投稿を埋め込みにて対応させていただきます。
  • NICO STOPアカウントをフォローされていない場合はDM(ダイレクトメッセージ)が送付できない場合がありますのでご注意ください。
  • 入賞権利はご本人に限られるものとし、第三者への譲渡・換金はできません。
  • 本キャンペーンは個人のお客様が対象です。販売店・業者等による参加、および代行参加は無効となります。

 

 

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Z f

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製品ページ ニコンダイレクト
NIKKOR Z 40mm f/2

NIKKOR Z 40mm f/2(SE)

製品ページ ニコンダイレクト
NIKKOR Z 50mm f/1.2 S

NIKKOR Z 28mm f/2.8(Special Edition)

製品ページ ニコンダイレクト
NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S

NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S

製品ページ ニコンダイレクト

 

 

Photographer / Cinematographer

林

フォトグラファー/シネマトグラファー。カメラ設計者としてメーカー勤務の後、写真・映像・ブランディングを主としたプロダクション「bird and insect」を立ち上げる。2023年6月に退社し、現在はフリーで活動。