NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plenaが描く幻想的なポートレート – フォトグラファーが描写性能・ボケ感をレビュー

NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plenaが描く幻想的なポートレート – フォトグラファーが描写性能・ボケ感をレビュー

こんにちは! フォトグラファーのKoichi(@Kfish1882)です。普段は、風景に人を溶けこませるような写真やアート写真など「心に響く写真」をコンセプトに日常を切り取っています。

 

これまでさまざまな被写体の撮り方を紹介してきましたが、今回は中望遠135mm単焦点レンズについてお話ししたいと思います。中望遠域の単焦点レンズで開放F値で撮影すると、標準域とは比べ物にならないほど背景がボケ、被写体が立体的に浮かび上がります。

 

今回ピックアップするのは、先日発表された「NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena」です。ポートレート撮影における中望遠単焦点の魅力や表現力、そしてNIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plenaの描写性能について作例とともに紹介します。

 

NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plenaの特徴

NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plenaが描く幻想的なポートレート – フォトグラファーが描写性能・ボケ感をレビュー

  • 焦点距離:135mm/開放F値:1.8
  • レンズ構成:14群16枚(EDレンズ4枚、非球面レンズ1枚、SRレンズ1枚、メソアモルファスコートあり、アルネオコートあり)
  • 最短撮影距離:0.82m
  • 最大撮影倍率:0.2倍
  • AF駆動:STM(ステッピングモーター)
  • フィルター径:82mm
  • サイズ:約98mm(最大径)×139.5mm(レンズマウント基準面からレンズ先端まで)
  • 質量:約995g

 

Z 7II、NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena
Z 8、NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena
(左)Z 7II、(右)Z 8、NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena

 

ポートレート撮影における135mm単焦点の魅力

Z 8、NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena
Z 8、NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena
Z 8、NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena

 

135mm単焦点は、望遠×開放F値の小ささにより異次元のボケ味を楽しむことができます。非現実的・幻想的な表現が叶うレンズです。望遠の効果で背景と被写体との距離感を圧縮でき、余計な要素を省いたまとまりのある写真を撮ることができます。

特にNIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plenaはピント面を驚くほどシャープに描写し、被写体以外を気持ちよくぼかしてくれました。

 

Z 8、NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena
Z 8、NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena
Z 8、NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena

左:寄り、右:引き

 

ポートレートを撮る際、寄りではモデルさんの表情や仕草を際立たせることができ、引きではロケーションの雰囲気を生かすことができます。標準域に比べると、135mmで引きの写真を撮るには、かなり距離をとる必要があります。上の写真では、左側は被写体から1~2m離れて撮影、右側は20mほど離れて撮影しました。

 

Z 8、NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena
Z 8、NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena
Z 8、NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena

左:寄り、右:引き

 

寄って開放で撮影すると、背景の色や光がきれいにボケ、被写体のまわりがとろけるような描写になります。

一方で、被写体から10~20mほどの距離で開放にすると、ピント面から徐々になめらかにボケ、風景に溶けこむようなポートレートを撮影できます。

135mm単焦点が生きるシチュエーション

Z 8、NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena

Z 8、NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena

 

ここからは、135mm単焦点の特性を生かすために、どのようなシチュエーションが合うか、どのような表現ができるかを紹介します。

【花火】一面が鮮やかに輝く幻想的な世界観

Z 7II、NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena

Z 7II、NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena

 

私が135mm単焦点を特に使いたいのが、花火を背景にしたポートレートです。背景いっぱいに鮮やかな火花が広がり、玉ボケにすることで輝きを増します。

 

Z 7II、NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena

Z 7II、NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena

 

撮影する距離は花火の規模によって変わってきます。上の写真は規模の大きな花火大会だったので、会場から5kmほど離れた場所で、モデルさんからは8~10m離れて撮影しました。花火を画角内にどれくらい写したいのかを先に決めてから被写体の位置を調整したほうが、構図を決めやすいです。

 

Z 7II、NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena
Z 7II、NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena
Z 7II、NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena

 

次々と打ち上がる美しい花火で背景が変わるのは、撮影していてとても楽しいです。

【夜景】何気ない街明かりでもドラマチックに

Z 8、NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena

Z 8、NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena

 

135mm単焦点では、ビルの明かりや街灯などの何気ない光源も大きくぼかすことができ、ドラマチックに表現できます。

F1.8の明るさは暗所に強く、手持ちでもISO感度を上げすぎずにノイズを抑えて撮影ができるのもポイントです。

 

Z 8、NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena
Z 8、NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena
Z 8、NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena

 

左のように寄りもいいですが、右のようにモデルさんから3~5mほど離れて撮ると、ほどよくボケて夜景の雰囲気も残せます。

【奥行きのある場所】なめらかなボケのグラデーション

Z 8、NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena

Z 8、NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena

 

並木道や長いトンネル、橋、廊下など、奥行きのあるロケーションで開放で撮影すると、ピント面から離れるほどになめらかなグラデーションでボケていきます。

人を主題にした距離感で撮影すると複雑な背景でも浮き立ち、被写体への視線誘導としてもボケは効果的です。

 

Z 8、NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena

Z 8、NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena

 

かなり引いて撮影した場合でも、手前や奥の景色がじんわりボケ、ピントの合った被写体が浮かび上がってきます。

【海】開けた場所で、自由度高く撮影

Z 8、NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena

Z 8、NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena

 

開けたロケーションとして、朝の海でモデルさんとの距離を変えながら、135mmという画角でどのような表現ができるか可能性を探りました。

 

Z 8、NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena
Z 8、NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena
Z 8、NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena
Z 8、NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena

 

先ほどまでのように背景に大きくぼかせる要素はありませんが、寄り引きやアングルにより、さまざまな表現を引き出すことができます。

 

Z 8、NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena
Z 8、NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena
Z 8、NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena

 

普段好んで撮影している風景に溶けこむポートレートです。135mmでこの距離感で撮影をするためには10~20m程度と相当離れる必要がありますが、圧縮効果のおかげで海岸の余計な建物が入らず、海の波と空のグラデーション、濡れた砂浜への映りこみや、砂浜と海の境界線と、画角内にきれいに共存してくれました。

開放で遠くにいる被写体にしっかりピントを合わせて撮ると、前後の景色のなめらかなボケを味わってもらえると思います。右のように砂浜にカメラを近づけて地面を大きくぼかすと、同じ場所でも印象を変えることができます。

 

Z 8、NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena
Z 8、NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena
Z 8、NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena

 

開けた場所では、光の向きを変えた撮影もしやすいです。

順光では画面に吸いこまれそうなほど鮮明に写り、逆光ではシルエットが印象的に浮かび上がります。波打ち際を背景にして開放で撮影すると、反射光の玉ボケが美しいです。

NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plenaの描写へのこだわり

NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plenaが描く幻想的なポートレート – フォトグラファーが描写性能・ボケ感をレビュー

 

NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plenaは、S-Lineの中でも描写性能に強いこだわりを持つ「Plena」という新グレードのレンズです。

ここからは、詳しく描写性能をチェックしてみたいと思います。

Point.1 ピント面の解像感

Z 8、NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena

Z 8、NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena

 

自然光が当たる条件でこのレンズを使うと、肌の質感やその場の空気までも伝わる描写を体感できます。髪の毛の1本1本まで質感がわかり、データを見て感動しました。

 

Z 8、NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena

Z 8、NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena

 

こちらの写真では、浴衣の素材感や花火の光が当たった顔の部分の質感など、実際に本物を目の前で見ているように描写されていました。

雨などで水滴がついた肌や、身につけている金属のアクセサリーなど、質感を伝えたい撮影でも力を発揮してくれると思います。

Point.2 美しいボケ

NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plenaは何と言ってもボケが美しく、特筆すべきは以下の3つです。

 

①ボケのなめらかさ

Z 8、NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena

Z 8、NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena

 

奥行きのある場所で、開放で撮影しました。被写体のまわりにある景色の質感や雰囲気を損なわず、手前・奥とも自然にボケています。ピント面からのボケのグラデーションがなめらかです。

 

Z 8、NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena

Z 8、NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena

 

②玉ボケがしっかり丸い

Z 8、NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena
Z 8、NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena
Z 8、NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena

 

「点が点として写る」点像再現性が非常に高いレンズです。この焦点距離で開放で撮影すると、大きく渦を巻くようなゆがんだボケや画角の四隅がレモン型のボケになりやすいのですが、今回のデータを見てびっくり。ボケの一つ一つがきれいな円形をしていて、小さなボケから大きなボケまで乱れを感じませんでした。

 

Z 8、NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena

Z 8、NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena

 

これからの季節、イルミネーションや雪が降る中でのポートレートなど、玉ボケを生かしたいシーンでぜひ使いたいレンズです。

 

③エッジの少ない色づき

Z 8、NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena
Z 8、NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena
Z 8、NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena

 

ボケのエッジに色かぶりは感じられず、背景がハイコントラストな夜のネオンのシーンにおいても被写体の輪郭部で生じがちな色の収差などがなく撮影できました。夜間の輝度差のあるシーンでのポートレート撮影も安心です。

Point.3 逆光に強いコーティング

NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plenaには反射を防ぐメソアモルファスコートとアルネオコートが施されています。強い光が入りこむシーンでもフレアやゴーストの発生が抑えられ、クリアな描写をしてくれるのは、うれしいポイントです。

 

Z 7II、NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena

Z 7II、NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena

 

上の花火の写真は強い逆光状態でした。通常なら間違いなくフレアやゴーストが入りこむ条件でしたが、余計な線や光は写らず、はっきりと被写体が描写されています。この作例は強い光によって白とびしていますが、いかにこのレンズの逆光耐性が優れているかがわかる写真です。

晴れた日中の屋外や夕焼けを背景にした撮影、強いライトを使ったショーの撮影など、被写体の背後に強力な光源がある場面において性能を発揮してくれると思います。

Point.4 周辺光量が落ちない

Z 8、NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena

Z 8、NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena

 

海での順光のポートレート撮影で、周辺の光の落ちなさに驚きました。順光で背景がグラデーションになっている場面では特に四隅の暗さが目立ちやすいのですが、NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plenaで撮影した写真は減光することなく鮮やかな青色が隅々まで広がっていました。

 

Z 8、NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena

Z 8、NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena

 

晴天の空を背景にした撮影や、夕焼けのマジックアワーを背景にした撮影などでも効果が出そうです。

Photographer's Note

135mm単焦点レンズは、圧倒的なボケと圧縮効果で、人間の目では味わうことのできないインパクトのある表現を楽しむことができます。

 

Z 7II、NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena

Z 7II、NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena

 

今回使用したNIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plenaは、ピント面の解像度の高さやボケの点像再現性が段違いでした。透明感と空気感、その場所の雰囲気ごと写すことのできるレンズです。

 

NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plenaが描く幻想的なポートレート – フォトグラファーが描写性能・ボケ感をレビュー

 

レンズの存在感とデザインのカッコよさで使う楽しさが満たされ、ファインダーをのぞいたときに見える世界は一度体感したら虜になってしまうほど!

カメラは Z 8や Z 7IIを使用しましたが、サイズ感や重量バランスなどカメラとの相性抜群で、顔の前にカメラを構えたときの安定感が素晴らしかったです。海などで移動を繰り返しながら長時間撮影しても疲れませんでした。また、135mmでは背景にピントが合いがちなのですが、被写体検出性能に優れたカメラでAFでの撮影がスムーズでした。

 

ボケを楽しみたい方や、単焦点レンズをこれから使ってみたいという方は、間違いなく感動するレンズだと思います。ポートレートをメインで撮影している方は、一度使ったら他のレンズに戻れなくなるレンズだと思いました。普段、標準域や広角域を使う人にこそ使ってみてほしいです!

私は今回、人物撮影で使用しましたが、瓶や小物、動物など、より質感を際立たせられそうな被写体を撮影してみたいです。

 

 

Model:るか(@rk19_photo
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Koichi

Koichi

岐阜県高山市出身のフォトグラファー。東京を中心に風景とポートレートをメインで撮影。「心に響く写真」をコンセプトに、日常を切り取る。デジタルカメラでの作品づくりに加え、フィルムカメラやオールドレンズも収集し、常に新しい写真の楽しみ方を模索している。