こんにちは! フォトグラファーのKoichi(@Kfish1882)です。普段は、風景に人を溶けこませるような写真を撮影していて、日本の美しさやカメラの楽しさを日々発信しています。
今回は、1本のレンズのお話です。
先日発売された標準ズームレンズ「NIKKOR Z 28-75mm f/2.8」をご存知ですか? 開放F値が2.8通しのレンズとしては、非常にお手頃価格で軽量・コンパクト。私も気になっていたこのレンズを試せることになったので、使って感じた“実際のところ”を紹介していきたいと思います。
NIKKOR Z 28-75mm f/2.8は他の標準ズームと何が違う?
この Z 6IIに取り付けたレンズがNIKKOR Z 28-75mm f/2.8です。
- 質量:約565g
- サイズ:約75mm×120.5mm
私が今使っているNIKKOR Z 24-70mm f/4 Sと同程度の重さながら、価格は下回ります。さらに、憧れのNIKKOR Z 24-70mm f/2.8 Sに比べると3割ほど軽く、価格は半分以下!
F2.8通しのレンズというと「大きくて重い」イメージがありますが、このレンズは驚きの軽さで、普段使いの鞄の隙間に入れて持ち歩ける大きさです。
どんなシーンでも活躍してくれそうなレンズですが、「開放F2.8」「広角端28mm・望遠端75mm」「S(S-Line)ではない」という特徴がどう撮影に影響してくるのか、私なりの視点でチェックしてきました。
はじめて買う Z マウントレンズを何にするか悩んでいる方、キットレンズからステップアップしたい方は、ぜひ参考にしてみてください!
- Point①開放F2.8の描写力
- Point②広角28mm・望遠75mmの表現の幅
- Point③逆光撮影時のフレアやゴースト
- Point④0.19mと短い最短撮影距離
- Point⑤軽量・コンパクトでどこでも撮りたくなる
- NIKKOR Z 28-75mm f/2.8で撮影した作品ギャラリー
- Photographer's Note
Point①開放F2.8の描写力
F2.8とF4で、夜景を背景にして同じ位置・構図で撮影しました。結構違いますよね?
F2.8では大きな玉ボケが重なり、ドラマチックな雰囲気を強調できます。
F2.8まで被写界深度を浅くすると被写体と背景がくっきりわかれ、被写体の立体感が増します。シャッタースピードもその分速くできるので、動きの速い被写体でもブレなく写せます。上の写真では髪がなびいている瞬間を1/1600秒で写し止めました。F2.8の恩恵を受けていますね。
夜や室内など暗所での強さ
夜に三脚の使えない場所や人が多い場所では、手持ちで撮る必要があるためF2.8は非常に有利です。私は暗めに撮って後から編集で持ち上げることが多いので、ISO感度を下げて暗部のノイズを減らすために、F値を下げてシャッタースピードを稼いでいます。
設定:F2.8・1/13秒・ISO250
こちらは夜の店内で手持ちで撮影しました。ISO250まで抑えた上で、F2.8にすると1/10秒以上は稼げます。ミラーレスはカメラ本体の手ブレ補正がかなり優秀で、脇をしめて安定した姿勢で撮影すると、1/10秒も確保できればブレずに写せます。
設定:28mm・F2.8・15秒・ISO3200
広角でF2.8のレンズは、星空撮影にも使うことができます。
星空撮影が主目的の場合はもっと超広角なレンズを使うことが多いですが、少ない荷物での旅行や1本だけレンズを持って出かけるような撮影のときに、星まで選択肢に入れられるのは大きな魅力です。
Point②広角28mm・望遠75mmの表現の幅
左:28mm、右:75mm
さまざまなシチュエーションで使ってみましたが、28-75mmは1本完結の便利なレンズという印象です。このレンズがあれば、ほとんどのシーンを満足にカバーできます。
左:28mm、右:75mm
ポートレートにおいても、広角で情報量を増やして臨場感を出したり、望遠で背景を大きくぼかして被写体を浮かび上がらせたり、表現の選択肢の多さを実感しました。
ところで、標準ズームというと24-70mmをイメージする方が多いのではないでしょうか? 私も24-70mmを普段使っているのですが、広角側4mm・望遠側5mmの差がどう影響してくるかは気になっていました。
そこで、広角端と望遠端それぞれについて、撮影した実感をお伝えしたいと思います。
【広角】28mmでも十分遠近感を強調できる
広角で期待する「遠近感」ですが、28mmは遠近感を十分に出すことができました。
遠近感を出す場合は、レンズの画角以上に実は構図が大切です。上の写真は2枚とも28mmで撮影していますが、前景・中景・後景を意識して画づくりできれば、奥行きのある写真に仕上げることができます。
では「広角は28mmまでで満足か」というと、私の作風として情報量をより詰めこむために「もっと広角を使用したい」のが正直なところです。
左:14mm、右:16.5mm
ただ、上の写真のように24mmよりもさらに短い広角域がほしいので、14-24mmなどで超広角域をカバーできれば、標準ズームとしての広角端は28mmで十分だと感じました。
28mmは、広角の中でもゆがみづらいという印象があります(24mmになると周囲のゆがみが結構気になります)。広角域の撮影に慣れていない方にも扱いやすい画角だと思います。
【望遠】75mmは想像以上に寄れる
広角域に比べて、望遠域では数mmの違いによる写りの差は出にくいと言われています。私もそう思っていたのですが、実際に使ってみると5mmの差は「想像以上に寄れた」でした。
上の写真のように展望台では窓ギリギリにレンズを近づけて撮るわけですが、普段70mmで撮っている景色が75mmではさらに寄れて新鮮に写りました。
こちらは、望遠端より少し短い72mmで撮影した写真です。標準ズームで一般的な70mmはほどよく情報量を絞る上で使いやすい焦点距離ですが、望遠レンズにつけ替える必要がないとしても気持ち寄れるだけで納得のいく画角になることがあります。
また、焦点距離が長いほど大きくボケ、75mmで開放F値で撮影すると豊かなボケ表現を味わえます。
75mmという焦点距離を使うのはなかなか難しいと思っていましたが、使用頻度は想像以上に多かったです。
クロップ機能でさらに寄れる
24-70mmの標準ズームで風景を撮影する際、「もう少し近くで撮影できたらな」と思う場面ではカメラのクロップ機能を使うことがあります。
※Nikonの場合、撮像範囲をDXに変更すると焦点距離の約1.5倍相当の画角になります。
70mmでクロップすると105mmですが、75mmでクロップすると112.5mmと約120mmの望遠撮影ができることになります。
左:75mm、右:112.5mm(撮像範囲をDXにして撮影)
展望台から見える夕景を、空の色に着目してクロップしました。夕焼けは、雲の条件や天気によっては全体がオレンジに染まらず青空と混ざることがあります。このときの空も青とオレンジが混ざった空だったので、クロップして夕焼け色の空を画角いっぱいに写し入れました。
ズームレンズの便利なポイントは、実はクロップ機能がその一つで、クロップを使うことで28-75mmと42-112.5mmの画角をカバーできます。
Point③逆光撮影時のフレアやゴースト
Z マウントレンズには語尾に「S」とつくものがあります。「S-Line」というグレードで、より高品質なレンズのこと。中でも特徴的なのが逆光に強いコーティングで、フレアやゴーストの発生を抑制してくれます。
上の写真はNIKKOR Z 24-70mm f/2.8 Sで、早朝の強い逆光の中で撮影しましたが、コーティング(ナノクリスタルコートとアルネオコート)によってフレアやゴーストを抑え、隅々まで鮮明に写し出してくれました。
その点、NIKKOR Z 28-75mm f/2.8は「S-Line」ではないため、このコーティングがありません。
実際に、レンズに直射日光が入る夕暮れ時に撮影してみました。
やはりフレアは発生していますね。ですが、オールドレンズでフレアやゴーストを取り入れる楽しみ方があるように、これも表現の一つだと思います。
ピントの合っている部分はシャープに、ボケている部分はやわらかく、そして派手すぎないほどよいフレアが出てくれるので、映画のようにエモーショナルな逆光写真を撮影できます。
Point④0.19mと短い最短撮影距離
焦点距離28mmの最短撮影距離で撮影。
NIKKOR Z 28-75mm f/2.8には、もう一つうれしい特徴があります。それは最短撮影距離が短いこと。
撮影中にもっと寄って撮りたいのにピントが合わないという場面があると思いますが、このレンズでは広角端28mmで0.19mと想像以上に近づけます。フードをつけた状態では、被写体にフードがつきそうになるほど寄ってもピントが合ったのには驚きました。
※50mmで0.3m、75mmで0.39mと焦点距離により最短撮影距離は変動します。
焦点距離28mmの最短撮影距離で撮影。
広角で寄れるメリットは、周囲に多くの情報を入れられることです。ズームで寄ると画角が狭まりますが、広角で寄ると被写体をより印象的に、臨場感のある表現ができます。
Point⑤軽量・コンパクトでどこでも撮りたくなる
NIKKOR Z 28-75mm f/2.8は、質量約565g、サイズ約75mm×120.5mm。
描写性能についてお話ししてきましたが、このレンズは何といっても軽いです。
ミラーレスのよさは、コンパクトボディで長時間持っていても疲れないことでもあり、コンパクトで軽量なこのレンズは相性抜群です。
機材がコンパクトだと、どんな場所でも抵抗なくカメラを出せます。普段は仕事で大きくて重い機材を持ち歩いているのでカフェで出す気にはなりませんが、 Z 6IIとNIKKOR Z 28-75mm f/2.8の組み合わせでは、まったく気にすることなくカフェでも撮影ができました。
また、このレンズは沈胴式ではありません(NIKKOR Z 24-70mm f/4 Sは沈胴式)。繰り出さなくてもシャッターが切れるので「今撮りたい」という瞬間を逃さず、いつでもすぐ撮れるんです。旅先やスナップ撮影をする場面では、大きなメリットになると思います。
NIKKOR Z 28-75mm f/2.8で撮影した作品ギャラリー
今回、NIKKOR Z 28-75mm f/2.8を持ってさまざまなシチュエーションで撮影してきました。最後にギャラリーとして作品を紹介します。
設定:75mm・F8・1/320秒・ISO100
上半分は日陰、下半分は日向でシンメトリーになるように配置。75mmで印象的に切り取りました。
設定:75mm・F2.8・1/30秒・ISO320
日の出前の逆光でシルエットになる江ノ島と右上に浮かぶ月を、余計な余白を入れないよう最大ズームの75mmで切り取りました。F2.8でシャッタースピードを稼ぎ、手持ちで撮影しています。
設定:75mm・F11・60秒・ISO64
道路を走る車の軌跡を写すために、長時間露出で撮影しました。70mmよりさらに寄れるのは、展望台からの撮影では非常に役立ちます。75mmの画角は情報量をほどよく絞ることができ、使い勝手のよさが魅力です。
設定:51mm・F2.8・1/40秒・ISO2500
夜の温泉街。奥行きを出しつつ、空から降ってくる雪を写し止めるためには、F2.8は不可欠です。
設定:28mm・F2.8・1.3秒・ISO100
展望台から見下ろした夜景を、長時間露出で写し出しました。広角28mmにもかかわらず、周囲までゆがむことなく、くっきりと解像しています。
Photographer's Note
NIKKOR Z 28-75mm f/2.8を使ってみて感じたこと、それは「小型軽量のコスパ最強便利ズーム」です!
カメラをはじめたばかりでレンズを買いたいと思っても、いいレンズは高くてなかなか手を出せない(私もそうでした)。それでも純正のレンズの高画質とキレのよさは格別で、よくお店のショーウィンドーを眺めていました。このレンズは、そんな方に本気でオススメしたい1本です。
また、最初は撮りたいものが定まらず、いろんなものを撮りたくなるもの。その点、28-75mmの焦点距離域はどんなシーンでも対応してくれます。
描写性能については、さすが Z マウントレンズという印象です。広角側から望遠側までしっかり解像していて驚きました。ピントが合っている部分のディテールからボケ方までもキレキレです。逆光での写りについては、鮮明さでいえばS-Lineのレンズが圧倒的ですが、表現の好みかなと思います。
キットレンズからのステップアップや標準域の明るいレンズが気になっている方は、ぜひ一度手に取って試してみてください!
YouTubeでもNIKKOR Z 28-75mm f/2.8の特徴を紹介中!
ニコンイメージングジャパン公式YouTubeでも、NIKKOR Z 28-75mm f/2.8の特徴を紹介していますので、ぜひご覧ください!
Model:真愛/Mai(@mai_kimonogram)
Supported by L&MARK
Koichi
岐阜県高山市出身のフォトグラファー。東京を中心に風景とポートレートをメインで撮影。「心に響く写真」をコンセプトに、日常を切り取る。デジタルカメラでの作品づくりに加え、フィルムカメラやオールドレンズも収集し、常に新しい写真の楽しみ方を模索している。