オートで気軽に撮れるコンパクトフィルム - L35ADで拾い集める大切な記憶のかけら

オートで気軽に撮れるコンパクトフィルム - L35ADで拾い集める大切な記憶のかけら

はじめまして、Rinco Koyama(@RincoKoyama)です。日常の風景の中で琴線に触れた被写体を、毎日日記をつけるようにフィルムカメラで撮影しています。

写真をはじめたのは2年前。「あなたが写真を撮ったら、きっと素敵なものが撮れると思う」という友人の言葉をきっかけに、すすめられたフィルムカメラで撮りはじめ、どこか懐かしいレトロな写りにすっかりはまってしまいました。

それから10台近くのフィルムカメラを使ってきた私が、これからフィルムをはじめたいと思っている方にオススメしたいのが、コンパクトフィルムカメラです。今回は、スナップにぴったりな「L35AD」の基本の使い方から写りの魅力・楽しみ方をお伝えしたいと思います。

 

L35AD、Kodak ULTRAMAX 400
L35AD、Kodak PORTRA 400
L35AD、(左)Kodak ULTRAMAX 400、(右)Kodak PORTRA 400
L35AD、Kodak PORTRA 400
L35AD、Kodak PORTRA 400
L35AD、Kodak PORTRA 400

 

コンパクトフィルムカメラがオススメな理由

私がはじめて機械式のフィルムカメラを使ったとき「フィルムの装填ができない!」「撮りきったの?えっ?まだ撮れるの?」「撮りきったはいいけど、巻けない〜!」…などのたくさんの苦労がありました。

 

その点、コンパクトフィルムカメラは

  • シャッターを切るたびに行うフィルムの「巻き上げ」や、フィルムを取り出すときの「巻き戻し」が自動で操作が簡単
  • 露出やフォーカスがオートのものが多く、失敗が少ない
  • フラッシュが内蔵されているものは、暗いところでも撮れる

とはじめてでも安心な機能が充実しているんです!

 

 

「撮りたい!」瞬間を写す、スナップにぴったりなL35AD

オートで気軽に撮れるコンパクトフィルム - L35ADで拾い集める大切な記憶のかけら

 

これまで4台ほどコンパクトフィルムカメラを使ってきましたが、最初の1台にオススメしたいのが L35AD。中古で数千円~1万円台と比較的お手頃なんです。

まず魅力を感じたのは、何と言ってもこの見た目。シンプルだけどかっこよく、右側のグリップが握りやすくなっているので手ブレもしにくいです。

 

L35ADの特徴

  • フィルムの巻き上げ・巻き戻し:オート
  • フォーカス:オート
  • レンズの焦点距離:35mm
  • F値:F2.8で固定
  • 内蔵フラッシュ:あり

 

レンズをつけた一眼レフよりも小さくて軽いのですが、今まで使ってきたコンパクトに比べると少し重い印象。でも、その分描写力の高いレンズがついていて、オート機能が充実しています。シャッターボタンを押してから撮れるまでのタイムラグが少なく、いいと思った瞬間をぱっと撮影する私のスタイルに合っているところも気に入りました。それでいて、写真はくっきりと撮れているところが「心強いな」と感じます。

L35ADの使い方

まずは、L35ADの使い方からです。

 

電池を入れる

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カメラ底部から単三電池を2本入れます。カメラによっては特殊な電池が必要な場合がありますが、単三電池はコンビニでも手に入るので、旅先で電池が切れても安心です。

 

L35ADは日付機能つき

オートで気軽に撮れるコンパクトフィルム - L35ADで拾い集める大切な記憶のかけら

 

L35Aシリーズの中でも、L35ADは日付を写しこむデート機能付きで、背面にボタン電池を入れると使うことができます。

 

 

フィルムをセットして撮影

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オートで気軽に撮れるコンパクトフィルム - L35ADで拾い集める大切な記憶のかけら

 

カメラの裏ぶたを開けて、先端を引き出したフィルムをセット。ふたを閉じて空シャッターを切ると、自動でフィルムが巻き取られます。

撮るときは、シャッターボタン半押しでフォーカスロックされ、シャッターを切るたびに自動でフィルムが巻き上がるので楽ちんです! 撮影枚数は、フィルムカウンターで確認できます。

 

 

ISO感度設定や撮影補助機能

オートで気軽に撮れるコンパクトフィルム - L35ADで拾い集める大切な記憶のかけら

 

  • ISO感度:光に対する感度のことで、数値が大きいほど明るい写真になります。感度表示部の下にある感度設定ダイヤルを回して、フィルムのISO感度と同じ数値に設定します。
  • 内蔵フラッシュ:暗いところでは自動で持ち上がり発光します。
  • 逆光補正:レンズ側面にあるレバーを押し引きながらシャッターを切ると+2補正できます。

 

 

フィルムの取り外し

オートで気軽に撮れるコンパクトフィルム - L35ADで拾い集める大切な記憶のかけら

 

撮り終わったら、カメラ底部の①をスライドさせて②を押すと、フィルムが自動で巻き戻ります。巻き戻しが終わったら、裏ぶたを開けてフィルムを取り外します。

写りや機能を試してイメージを膨らませる

コンパクトは機種ごとに写りに個性があるのがおもしろいポイントです。写りがシャープなものはスナップや風景用、ふんわりとしているものはポートレートメイン…など使いわけています。

試し撮りで写りの個性を確かめる

L35AD、Kodak ULTRAMAX 400

L35AD、Kodak ULTRAMAX 400

 

新しいカメラを使うときは、特徴を把握するために必ずフィルム1本分は試し撮りをしています。フィルムは日常でよく使うものが比較しやすく、私はKodak ULTRAMAX 400を使っています。

早速、よく撮影する時間・場所でL35ADを試し撮りしてみました。

 

試し撮りでは、以下の2つを意識しています。

  • 光が差しこむ壁などで、光と影の描写を確かめる
  • 空+建物、海+砂浜など、2色のシンプルな風景で色の出方を確認する

 

L35AD、Kodak ULTRAMAX 400

L35AD、Kodak ULTRAMAX 400

 

普段通る道で見つけた、きれいな光。光と影のコントラストが美しく、フィルムならではのなめらかな描写も表現できました。シャッターを切るだけでこんなにいい写真が撮れると、思わずうれしくなってしまいますね!

 

L35AD、Kodak ULTRAMAX 400

L35AD、Kodak ULTRAMAX 400

 

F2.8のレンズは比較的シャープな印象です。空をバックにして撮ると電線や家の輪郭がくっきりと描写され、とにかく写りがよくてびっくりしました。

 

L35AD、Kodak ULTRAMAX 400
L35AD、Kodak ULTRAMAX 400
L35AD、Kodak ULTRAMAX 400

 

35mmの焦点距離は目で見たままに近い画角で、F2.8でピントも全体に合うので、目の前の風景をそのまま切り取る感覚です。

 

L35AD、Kodak ULTRAMAX 400

L35AD、Kodak ULTRAMAX 400

 

彩度が高くコントラストが強めに出るULTRAMAX 400との相性もぴったり。風景は鮮やかに、日常の何気ないスナップはどこかあたたかみを感じる仕上がりになります。

 

L35AD、Kodak ULTRAMAX 400

L35AD、Kodak ULTRAMAX 400

 

また、動く被写体に対してもピントがしっかり合い、手ブレが少ないことがわかりました。「臨場感」を意識した撮影もできそうです。

 

試し撮りしてわかったL35ADの特徴

  • 35mm F2.8のレンズで見たままの風景を切り取れる
  • 光と影のコントラストがなめらかに写る
  • 被写体の輪郭がシャープに描写される
  • 動くものにもピントが合い、手ブレが少ない
  • F2.8では、ISO400のフィルムなら昼から夕方まで、くもりや雨の日でもしっかり写せる。晴れの日の屋外ならISO100や200のフィルムでも十分

シャープな写りなのでスナップに向いています。また、ピント合わせが早いので、ノーファインダーで撮ることもできそうです。

 

L35AD、Kodak PORTRA 400

L35AD、Kodak PORTRA 400

 

実際に日常を撮る中で気づいたのですが、強い光が入るとフレアとゴーストが写りました。うまく写真に取り入れると光を印象的に表現できます。

「失敗写真」を減らせる便利な機能

スナップは気の向くままにシャッターを切るのが醍醐味なので、特にテクニックは必要ありませんが、明るさ不足などの失敗がつきものです。L35ADには、そんな失敗を減らす機能があります!

 

 

暗いシーンで重宝する内蔵フラッシュ

L35AD、Kodak ULTRAMAX 400
L35AD、Kodak ULTRAMAX 400
L35AD、Kodak ULTRAMAX 400

左:フラッシュなし、右:フラッシュあり

 

ISO400のフィルムでも、室内では暗く写ってしまうことが多いです。「少し心配だな」と思うときは、内蔵フラッシュを活用します。被写体にフラッシュを浴びせるのではなく、右のように被写体+部屋の背景も照らすようなイメージで、少し離れて撮ると背景が黒つぶれすることなく写すことができます。

 

 

逆光のシーンで役立つ逆光補正機能

L35AD、Kodak ULTRAMAX 400
L35AD、Kodak ULTRAMAX 400
L35AD、Kodak ULTRAMAX 400

左:逆光補正機能なし、右:逆光補正機能あり

 

逆光のときに逆光補正機能を使うと、プラス補正されて全体のコントラストが抑えられます。左に比べて右は、窓から差しこむ光の繊細な色もちゃんと残っているのがわかりますね。

「好き」を集めるようにスナップする

一眼レフでは構図やボケ具合、ピントなどしっかり画作りするのが楽しいですが、コンパクトで撮るときは、気の向くままに、カメラを通して素敵なものを拾うように撮り歩きます。特に惹かれることが多い差しこむ光や影の形を、L35ADは繊細に描写してくれるところがうれしいです。

身近な場所で心が動いた瞬間を切り取る

朝の通勤時間帯や太陽の光が少しずつ落ちていく時間によく撮影します。冬場は13時~15時くらいが特に好きです。いつもと同じ道を撮っているはずなのに、光の当たり方で違う風景が撮れたりしておもしろいです。心が動いた一瞬を留めた写真には、その時に感じた気持ちまで写るような気がします。

 

L35AD、Kodak PORTRA 400

L35AD、Kodak PORTRA 400

 

この日は気持ちよく晴れていたので、がんばって少し早起きしました。冬の澄んだ空気を感じながら、少しずつ辺りを照らしていく光がきれいだなと感じて撮った一枚です。

 

L35AD、Kodak PORTRA 400

L35AD、Kodak PORTRA 400

 

午後のやわらかな光とフィルムの淡い描写との相性がとても好きです。何気ない風景ですが、この光があるからこそ、学校の帰り道のような懐かしさを感じるのかもしれません。

 

L35AD、Kodak ULTRAMAX 400

L35AD、Kodak ULTRAMAX 400

 

普段は見過ごすようなものにシャッターを切りたくなるのは、無意識のうちに「素敵だな」と感じているからだと思います。コンパクトで気の向くままに撮った写真を見返すと、「あ、私こういうのが好きなんだ」と気づくこともできて、写真っておもしろいなぁとあらためて感じます。

家族や友人の素の表情を写す

L35AD、Kodak ULTRAMAX 400

L35AD、Kodak ULTRAMAX 400

 

一眼レフでは撮られ慣れていないと表情が硬くなりがちですが、コンパクトでは自然な表情を撮れることが多いです。家族や友人などを、よくノーファインダーでパシャっと不意打ちで撮っています。

 

L35AD、Kodak ULTRAMAX 400

L35AD、Kodak ULTRAMAX 400

L35AD、Kodak ULTRAMAX 400

L35AD、Kodak ULTRAMAX 400

 

歩きながらおやつをつまみ食いしている妹を撮影。ノーファインダーだったので「え!今の撮ってたの?」と言われてしまいました(笑)

 

ノーファインダーで被写体を画角に入れるコツは、たくさん撮って感覚をつかむこと(コツじゃないですね)。常にカメラを持って、「あっ!」と思った瞬間にピントを気にせずシャッターを切る…というのを繰り返すと、だんだん感覚がつかめますよ。

旅は誰かに見せたい瞬間を残す

L35AD、Kodak ULTRAMAX 400

L35AD、Kodak ULTRAMAX 400

 

旅をするときも持ち運びやすいコンパクトが欠かせません。今回、地元・仙台の旅行にL35ADを持っていきました。

日常と同じく心が動いた瞬間を撮影していきますが、旅先でなんでも「素敵!」とシャッターを切ると、枚数が大変なことに…。なので、「旅から戻ったらあの人に見せたいな」と“お土産”のような気持ちで撮るようにしています。

 

L35AD、Kodak ULTRAMAX 400
L35AD、Kodak PORTRA 400
L35AD、(左)Kodak ULTRAMAX 400、(右)Kodak PORTRA 400
L35AD、Kodak ULTRAMAX 400
L35AD、Kodak ULTRAMAX 400
L35AD、Kodak ULTRAMAX 400

 

コンパクトの「気になったものを拾い集める感覚」と、旅のスナップは相性がいいです。

フィルム特有のノスタルジックな描写が好きなので、被写体もレトロな味のあるものを選んで撮りました。古い建物ならではの懐かしさやちょっと切ない雰囲気が、フィルムの質感によってより感じられます。

 

L35AD、Kodak PORTRA 400

L35AD、Kodak PORTRA 400

 

妹にもコンパクトを持ってもらうと、気になったものを見つけては、子供に戻ったようにはしゃぎながら撮影していました。

 

L35AD、Kodak PORTRA 400

L35AD、Kodak PORTRA 400

L35AD、Kodak PORTRA 400

L35AD、Kodak PORTRA 400

 

旅では自然豊かな風景に浸ることも醍醐味で、そのときはKodak PORTRA 400を持っていきます。日常使いのULTRAMAX 400と比べて落ち着いた彩度で、自然の色や空気感をなめらかに表現できます。

 

L35AD、Kodak PORTRA 400/撮影地:アキウ舎

L35AD、Kodak PORTRA 400/撮影地:アキウ舎
L35AD、Kodak PORTRA 400/撮影地:アキウ舎
L35AD、Kodak PORTRA 400/撮影地:アキウ舎
L35AD、Kodak PORTRA 400/撮影地:アキウ舎

 

散策中に発見した古民家カフェ。普段よりテンションの高い妹に思わずシャッターを切りました。コンパクトはテーブルの上にあっても邪魔にならないですし、サッと撮れるのでこういうシーンで活躍してくれます。

 

一泊二日の短い旅でしたが、生まれてから学生時代までを過ごした仙台の街をフィルムで堪能できました。新しい視点で「こんな素敵なところだったんだ」と気づくことができて、もっと故郷が好きになりました。

簡単に撮れるコンパクトだからこそ「シャッターボタン押すだけだから撮ってみて!」と、一緒に行った人とも写真を楽しめていいなと感じます。

Photographer's Note

オートで気軽に撮れるコンパクトフィルム - L35ADで拾い集める大切な記憶のかけら

祖父から父、父から私へ受け継がれたNikon F2で撮影してもらった写真。普段は撮る側なので、ちょっと恥ずかしいですね。

 

私は、日常や旅の中で目に映った景色を写真に残していくことで「生きている」と実感できるような気がしています。

素敵な光景に出会えたことや、友人や恋人、家族と楽しい時間を過ごしたこと。「当たり前」のことでも、10年、20年経ったときに、それはきっと「愛しいもの」になっていく。フィルムは枚数に限りがあります。だからこそ、人生のように美しい。そういうところが、フィルムカメラの魅力なんです。

 

撮った後の写真の楽しみ方

写真は撮るだけではなくプリントして楽しむことで、その魅力をより感じられます。

 

L35AD、Kodak PORTRA 400

L35AD、Kodak PORTRA 400

妹の笑顔が写った写真を見返すと、そのときの笑い声が聞こえてきそうです。

 

オートで気軽に撮れるコンパクトフィルム - L35ADで拾い集める大切な記憶のかけら

 

私は、旅先で撮った写真の裏にメッセージを書いて、一緒に行った人に送るのが好きです。楽しかったなぁという気持ちも伝わればいいなと思っています。

 

フィルムは手間がかかることもありますが、やっぱり「フィルムでしか残せない写真」があると思うので、写りの雰囲気や描写を楽しむのが一番です!

 

※こちらの記事は、2020年12月5日に撮影したものです。

Supported by L&MARK

 

 

L35AD

L35AD

Rinco Koyama

Rinco Koyama

宮城県出身のフォトグラファー。「寂しくて、愛おしい」をテーマに、日常の中で琴線に触れた被写体をフィルムカメラで撮影している。作品シリーズごとに自ら写真集を制作。フィルムフォトウォーク「TakePic」主催。