こんにちは、フォトグラファーのもなみん(@and_mona)です。普段は、フィルムカメラをメインに友人と過ごす時間や季節を一緒に撮影したり、旅写真を撮ったりしています。
今年の夏も暑いですが、みなさんは「夏」にどんなイメージを持っていますか?
私が思っているのは、
- キラキラした明るいイメージ
- 「青」など爽やかなイメージ
被写体としては、「ラムネ」「クリームソーダ」「スイカ」「麦わら帽子」「浴衣」「水辺」「素足」…等々。暑い中で涼しさを感じるものが多いですね!
夏休みがあるからか、「思い出」としてより強く残る夏写真。フィルムカメラで、思い出の1ページ1ページをつくっていくような感覚で、シャッターを1枚ずつ大切に切るのが魅力だと感じています。
今回は、夏の被写体ごとに、フィルムカメラで撮影するポイントを紹介していきたいと思います。
フィルム撮影の基本ポイント
「夏の思い出」を残すときに、純粋に自分が“普段見ている視点”と同じように撮影したほうが、見た人にも伝わりやすいと考えています。
【機材】35mmレンズなら夏の空気感まで写せる
- カメラ:今回はフルマニュアルのフィルムカメラ「FM2」で撮影しました。フルマニュアルは「しっかり大事に撮りたい」というときにぴったりで、1枚1枚を大切に撮っている感覚になります。このカメラはシャッタースピードを1/4000秒まで上げられるため、明るい屋外でF値を下げても露出オーバーになることが少ないです。露出計がついているので、撮りたいときにサッと取り出して、失敗も少なく撮れるところがオススメです。
- レンズ:50mmに加え、35mmがあると夏の空気感まで写し出せます。50mmは自然な画角で、物だけを撮るときにちょうどいいレンズです。35mmは人物+背景を撮るときや、被写体を手に持っている場合に少しでも背景を入れたいときに活躍してくれます。
- フィルム:「FUJICOLOR 100」を使用しています。色味にクセがなくノーマルな写りで、後から編集する上でも扱いやすいです。現在販売されている中でリーズナブルなのも決め手の一つです。
【設定】ボケで主役を際立たせる
- F値:開放~F2.8でぼかし気味で撮影することで、主役を際立たせることができます。
水面の反射や木漏れ日は、背景としてぼかすと玉ボケになり、キラキラしてきれいです。
また、視線を主役の被写体へと誘導させるために前ボケをつくることもあります。
上の写真は窓際でカーテンを前ボケにしました。カーテンだとわかるようにF値は2~2.8程度に。被写体をさえぎらないように画角に入れました。主役から離れすぎると「意図せず写りこんでしまったのかな?」という印象になるので、そのバランスを意識しています。
【光】夏の日差しを取り入れる
夏らしさでもある「日差しの強さ」を写真にも取り入れています。特に透ける被写体は、逆光や半逆光で撮るとその日差しを生かすことができます。
こちらは、左斜め上からの半逆光で撮影しました。青い空を透かしながら、瓶に光が反射して輝いています。太陽を画角に入れた逆光の場合には、光がふんわり入った写真になります。
アイテムを空に掲げて太陽を画角に入れたい場合、夏の日中は太陽がかなり高い位置にあるため、午前中や夕方の太陽の低い時間帯に撮影するのがオススメです。
7つの夏の被写体と撮影のポイント
ここからは、被写体ごとに撮影のポイントを紹介していきます。今回は7つの「夏らしさ」をピックアップしました。
【クリームソーダ】人の存在を入れて切り取る
夏の飲み物として「クリームソーダ」が好きな人は多いのではないでしょうか。アイスとソーダと、見ただけでひんやりしてきます。緑や青などいろんな色があるのもいいですよね。
単体で撮るのもいいのですが、複数並べたり、人がストローやスプーンに手を添えているところを写すことで、シーンやその場の雰囲気が感じられる写真になります。
カフェなど室内では、自然光を取り入れるために窓に近づいて、半逆光で撮ると、ソーダが透けて透明感が出ます。
【スイカ】青果ならではのツヤを意識
「スイカ」も夏ならではの食べ物で、ツヤ感やシズル感が特徴です。
手に持ったり、かじりあとをつけたり動きを入れるのがポイントで、背景は室内よりも外を写すことで「夏の思い出」を切り取った雰囲気になります。屋外の強い光の下では、スイカの表面が白とびしないよう、光の向きの調整も大切です。
以前「夏のスイカ記事」で撮影したこの写真は、あえて二人の顔をスイカで隠しました。「二人はどんな表情をしているのかな」「楽しそうに話しているのかな」と写真を見た人が想像をかきたてられるような「想像できる余白」をつくるように意識しています。
【ラムネ】より夏を感じる背景にかざす
夏の飲み物としてすぐ思い浮かぶ「ラムネ」は、透明な瓶で、光を反射して輝き、青色という夏らしさが詰まった被写体。写真からビー玉の“からんころん”と音が聞こえてきそうな、五感をくすぐられるところも好きです。
ラムネは手に持ち、空や水辺など背景を透かして撮りたい被写体です。1本だけではなく複数にすると、誰かと夏を過ごすワクワク感のある写真になると思います。
上の写真では、35mmレンズで少し広めに撮ることで浴衣姿まで入れています。自分の手に持ったラムネはほのかに前ボケにして、奥行き感もつくっています。
【麦わら帽子】顔を隠すことで想像が膨らむ写真に
夏に外に出るときは「麦わら帽子」が欠かせません。顔を写さなくても、その場の雰囲気が伝わる魅力的なアイテムです。
強い日差しから守ってくれる麦わら帽子ですが、隙間から特徴的な形状の光が差しこみます。左の写真では、顔を隠すことで麦わら帽子を際立たせながら、光を手に落とすことで夏の日差しも表現しました。
また、やさしい色合いの麦わら帽子は、夕方のやわらかい光にもマッチします。右の写真では逆光で全体をふわっとさせ、帽子のリボンを触ってもらうことで動きを出しました。光と動きによって、どんな場面なのかと想像が膨らむと思います。
【浴衣】風景を入れて夏の情感を伝える
見ているだけで涼しげな「浴衣」は、浴衣→夏祭り→夏休みの思い出といった連想から「夏の切なさ」も感じます。道を歩いたり、ふとした仕草にも情感を感じるので、何気ない瞬間こそ切り取りたくなります。
こちらは、夏祭りなのかどこかに向かう途中をイメージできるように道を歩く様子を撮影しました。人と風景をふんわりと光で包むため、逆光で。手前に伸びる影からも日が暮れゆく時間帯が伝わると思います。
浴衣は、最初に紹介した「ラムネ」とのかけ合わせで「夏らしく」なり、より「シーン」を感じる写真になると思います。上の写真では、ラムネを飲む様子を、浴衣の青・ラムネ・青空と全体を青でまとめて爽やかに切り取りました。
他にも夏祭りや浴衣に関わる、下駄やりんご飴、水風船がマッチします。
【水辺】反射した夏の日差しを玉ボケに
涼を求めて訪れる水辺では、夏の日差しを反射した水面のきらめきに夏を感じます。反射した光は玉ボケにすることでよりきれいに写るので、何かをメインにして背景ボケとして生かすのがポイントです。
上の写真では、手に持った麦わら帽子にピントを合わせ、水面のきらめきが玉ボケになるようにしました。水面の中でも特にキラキラしているところを探し、撮影位置と角度を調整しています。このとき、麦わら帽子の隙間から落ちた光の粒を手のひらで受け止め、水面のきらめきとリンクさせています。
【素足】水しぶきで涼しさと楽しさを表現
水辺に行ったら、素足になって涼みたいですよね。水辺で素足を写す際は「水しぶき」を足すことでより涼しげに、動きが出ることで楽しい思い出を切り取ることができます。
上の写真では、手ですくって水しぶきを立ててもらい、タイミングよくシャッターを切りました。手元が前ボケになるようにし、写真全体に奥行きをつくっています。
こちらは足で水しぶきを立ててもらいました。F2ほどにして、ピントは中心の足と水しぶきに合わせ、前後をぼかして際立たせています。
右の写真では相手に向こう側から水しぶきを立ててもらうことで、水しぶきに高さが出る撮り方をしています。同じシチュエーションでも、一人で過ごしているのか、二人で楽しんでいるのか…とシーンの見え方が変わると思います。
「青」を爽やかに編集するポイント
夏らしさは「爽やかな青」がポイントです。光をやわらかく描写するフィルムはあたたかみが出るので、私はそこに青を足しています。
※今回は、フィルムをデータ化する際の調整はせず、Lightroomモバイル版で編集しています。
編集前
主な調整項目は、以下の3つです。
- 色味:色温度をマイナスにして青を足す。
- コントラスト:日差しが強いため、コントラストを強めすぎない。
- 明るさ:透明感を出すために、全体の露光量を上げ、シャドウと白レベルも少し上げる。
左:編集前、右:編集後
フィルムのよさを生かしながら微調整するだけで、爽やかな写真に仕上げることができます。
夏をより思い出深くする撮影後の楽しみ方
写真の新たな魅力に気づける「手書き文字」
私は、スマホでの編集の他に、タブレットで写真に手書き文字を入れるというアートワークも行っています。写真に言葉を書き入れると、ストーリーを感じられる作品になったり、ピンボケ写真が生きたり、新たな魅力に気づくきっかけにもなります。
手書き文字は、以下のように入れています。
- 写真選び:手書きを入れられる余白のあるものをセレクト。
- 言葉選び:写っている被写体に関連した言葉をイメージ。上の写真では、夏のイメージの「青」、水辺と浴衣の「青」から、この言葉が思い浮かびました。
- 文字入れ:タブレットを使い、白色のペンで、背景と同化しない位置に書いた後に微調整で配置します。
ストーリー性が増す、組写真+手書き文字
手書き文字は、組写真との相性もよく、ストーリー性が生まれます。
- 写真選び:寄り+引き、人+物のバランスを意識してセレクト。すべて寄りだけ、人だけにならないようにしています。
- 言葉選び:セレクトした写真から言葉をイメージ。今回は「ラムネ」とあっという間に過ぎていく「夏」から思い浮かべました。
- 文字入れ:複数の写真にまたがる位置に配置。すべての写真のストーリーがつながって感じられます。
「ポストカード」として形に残す
撮影した写真や手書き文字を入れた作品は、ポストカードとしてプリントしたり、部屋に飾ったり、という楽しみ方もあります。写真データを持っていけば、手軽にはがき印刷ができるコンビニもあるので、ぜひ試してみてください。
※コンビニによってサービスが異なるので、お近くのコンビニでご確認ください。
写真を印刷してみて、手元に残ることで大切さが増すと感じています。誰かに贈るのも素敵ですね!
Photographer's Note
素足になったり、水を浴びたり、屋外イベントが多かったりと、“開放的な気持ち”になれるところも夏の好きな理由です。梅雨明けのトンネルを抜けたような開放感からはじまり、終わる頃には秋の静けさにのまれそうなしっとりとした寂しさがあり、その一連が夏の魅力だと思います。
今回紹介した以外にも、祭りや花火など夏らしい被写体はたくさんあります。また、被写体は同じでも、きっと人それぞれに感じることは違うはず。ぜひ、自分だけの夏の思い出を、たくさん写真に残してください!
Model:miyu(@07dokokanodareka17)
Supported by L&MARK
FM2
AI Nikkor 50mm f/1.4S
製品ページAI Nikkor 35mm f/1.4S
もなみん
東京在住のフォトグラファー。季節をテーマに、友人と過ごす瞬間をメインにフィルムカメラで撮影している。企業PRなどの撮影、旅行系メディアでの執筆など、幅広く活動中。「たいていワンピースを着ています」