はじめまして、フォトグラファーのフジモリメグミ(@fujimorimegumi)です。「誰かにとっての日常、自分の身のまわりを写すこと」をライフワークにしていて、所属するTAP Galleryで展示会をベースに作品を発表しています。近頃コーヒーの街として有名な清澄白河にあるギャラリーなので、ぜひ遊びに来てくださいね。
オールドレンズやフィルムカメラを手に、ノスタルジックな世界に浸る「晴れ、ときどきレトロ気分」。第3回は、新木場にある「CASICA(カシカ)」というお店にやってきました。民藝品や古家具を扱うインテリアショップやカフェ、ギャラリーが一体になった複合施設で、「福清」の文字が目印です。
材木業者や木材の加工工場が多いことから“木材の街”と呼ばれる新木場ですが、駅に降りると木のいい香りがして気分が盛り上がります!
古くからある銘木倉庫をリノベーションしたという建物は、倉庫の雰囲気を残しながら海外のガレージ風な外観。蔦でおおわれて、四角い建物がやわらかい表情になっていますね。晴れていたら青空にとても映えそう! ヴィンテージ好きの咲子ちゃん(@sakiko_takizawa)は、早速お店の雰囲気にはまったみたいです。お店の中に入ると、巨大な本棚が私たちの視線を奪いました。
和ダンスや歯車、時計やはく製などが複雑に絡み合っていて、からくり細工のようで圧倒されます…。店内は「さすが倉庫」という広さと天井の高さで、開放感が気持ちいいです。お店の方によると、「CASICA(カシカ)」は「可視化」という意味。“生きた時間と空間を可視化する”がコンセプトだそうです。自分が思い描いた世界を可視化する写真とも通じるところがありそうですね。
まずは、奥に見えるグリーンエリアから散策開始です。
大きなエアプランツが目を引くこのエリアは、植物との関係を新しく再構築するプロジェクトチーム「園藝と再生」が手がけているそう。ユニークで存在感のある植物たちが、アンティーク家具や雑貨と一緒にディスプレイされて、不思議な一体感があります。植物の中にある木製の馬の組み合わせもちょっぴりメルヘンですね。
“幸せを呼ぶ木”といわれる「ガジュマル」が気になったみたい。やわらかい自然光で手のしなやかさが際立っていました。グリーンエリアを抜けると、おしゃれな博物館のような空間が…。
和の器や国内外の作家さんのプロダクトが木製の古家具にディスプレイされていて、“レトロ”と“新しい”がうまく融合している感じ。陶器や雑貨、民族の布などが同じ空間にあるのが楽しくて、シャッターを切る回数が一気に増えました!
世界各国の民藝や日用品などが国や時代の垣根を越えて共存することで、モノとモノの新しい関係性を可視化しているんだそうです。デジタルカメラ×オールドレンズの今日のスタイルも、今の時代ならではの新しい関係性でなんだか似ている気がします。
さらに奥にはもう一部屋。趣のある家具たちは、大正や昭和初期に作られたものをリペアしているそうです。和家具と一緒に馬のゆりかごやトルソーなどが置かれていて、懐かしさと同時に新鮮さを感じました。
天井には古い工場にあるような木の椅子が吊るされている…どういう意図があるのかな? 独特な世界観がおもしろいですね。
この日はくもりだったせいか、窓からの光がやさしくてノスタルジックな雰囲気が漂っていました。やわらかい光と馬のたてがみのグラデーションがきれいです。くもりの日は光の量が少なくなるのでやさしい雰囲気の写真が撮れますが、暗くにごった印象になりやすいので露出を少し明るめにするのがおすすめですよ。
この部屋で印象的だったのが、天井に吊るされたたくさんのライトです。まわりのガラスや食器に反射して輝きが増していました。
昔の書斎にあったような机の引き出しをのぞきこむ咲子ちゃん。引き出しに添えた手の美しさに見とれながら手元だけを切り取りました。残しておきたいもの、心に引っかかる瞬間を見つけたときは、シャッターを切りたくなります。自分自身の心が動いた瞬間に撮影した写真は、見た人の心を動かす力があると思っています。
ここでは、日用品や家具だけでなく、ユニークなものにもたくさん出会えます! 北海道のお土産でよく見かける木彫りのクマやシカのはく製がいたるところにあったり、スタンプもかわいい。アニマル探しもおもしろいですよ。そして、“木材の街”らしいウッドチップ…木のいい香りが漂っていました。抗菌や防虫に効果がある青森ヒバをザクザクとスコップで掘って、好きなだけ詰める体験も楽しかったです。
CASICAでは、ショップと併設のギャラリーも見どころの一つです。かわいい形のゲートをくぐった先には、壁一面にたくさんの絵が展示されていました。ヨーロッパで買いつけた蝶や動物、植物の絵をオリジナルフレームで額装したものなんだとか。陶器や照明などの作品展なども行われるそうで、建物の雰囲気にぴったりな展示が楽しめるんです。
いろんな国や地域のモノに出会い、旅した気分を味わった後は、カフェで体を癒やしましょう!デリカテッセンスタイルのカフェは、食に関する企画提案を行う「南風食堂」の三原寛子さんが監修していて、薬膳やアーユルヴェーダ(インド大陸の伝統的医学)の考えをベースにしているんだそうです。
ショップスペースやテラスでも食事ができるので迷いますが、せっかくなので古家具に囲まれてみました。このとき頼んだのは「抹茶と黒豆のムース」、添えられた黒豆は体に必要なうるおいを補うそうです。抹茶ムースは甘さ控えめで大人な味でしたよ。
「チャイが大好き」という咲子ちゃん。つられて注文したのが、漢方薬局がブレンドした「和漢チャイ」です。ルイボスティーベースにナツメや朝鮮人参、桂皮などがブレンドされているそうで、ほのかな甘さとほどよいスパイスのバランスが◎。薬膳ドリンクを飲めば、スイーツを食べても罪悪感ゼロですね。
薬膳で心と体を癒やされながら、CASICAのコンセプトをあらためて思い出してみました。「生きた時間と空間を可視化する」 別々の時間を生きてきたモノたちが時代や国を越えて一つの空間に存在する… “未知との遭遇”のわくわくがここにはありました。
— ANOTHER SIDE STORY —
私は植物が好きでよく撮ってしまうのですが、いたるところに置かれた植物たちがこの空間に生命力を与えているように感じました。“レトロ”と“新しい”の出会いを見守るように佇む植物にも、ぜひ注目してみてください!
— photo&text by フジモリメグミ
CASICA(カシカ)
東京都江東区新木場1-4-6
TEL:03-6457-0826
営業時間:火〜日曜日11:00〜18:00
定休日:月曜日(月曜日が祝日の場合は営業、翌火曜日休館)
https://casica.tokyo/
※お店での撮影はお店の方に許可を得てから、お店や他のお客様に迷惑にならないようご注意ください。また、撮影のみのご利用はご遠慮ください。
※こちらに掲載している情報は2019年6月25日現在のものです。
Model:滝澤咲子(@sakiko_takizawa)
Supported by L&MARK
※Z シリーズカメラでNIKKOR Fレンズをご使用するにはマウントアダプターFTZを装着する必要があります。
フジモリメグミ
清澄白河TAP Gallery に所属し、展示会やZINEを主体に作品を発表。「日常というものは奇跡なのかもしれない」という思いが2011年から強くなり、日常を撮ることをライフワークとしている。日本写真芸術専門学校講師。2017年、写真集『apollon』出版。