【岩手】宮沢賢治童話の聖地巡礼旅。理想郷「イーハトーブ」を目指して冬の花巻へ

【岩手】宮沢賢治童話の聖地巡礼旅。理想郷「イーハトーブ」を目指して冬の花巻へ

こんにちは。旅が好きなフォトグラファーの片渕ゆり(ぽんず/@yuriponzuu)です。

普段の旅では映画や小説にゆかりのある場所や、ロケ地となった場所を巡るのが大好きで、「物語の世界のような一瞬が撮りたい」と思っています。

 

前回は雪と光の世界を求めて宮城県を訪れましたが、さらに北へ向かい、岩手県が今回の目的地です。岩手に行くのは人生初。知らない場所を訪れるのは、いくつになってもわくわくするものです!

 

…旅は物語を読むところから

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左:『注文の多い料理店』、右:『銀河鉄道の夜』(宮沢賢治、KADOKAWA/角川文庫)

 

突然ですが、みなさんは宮沢賢治の物語はお好きですか?

代表作は、『雨ニモマケズ』や『銀河鉄道の夜』『注文の多い料理店』等々。詩人・童話作家であり、教師や農業指導者などとしても多面的に活動した彼の人生は、故郷である岩手の花巻という町で培われました。

宮沢賢治による造語として「イーハトーブ」があります。これは心象世界にある理想郷を意味するもの。今回訪れるのは、その宮沢賢治の故郷・花巻。賢治が追い求めた「イーハトーブ」の姿を探して、物語にまつわる場所を巡ってみようと思います。

本のページをめくったら、旅のはじまり

旅は、目的地についてからがはじまり? いえいえ、そんなことはありません。
「チケットを取った瞬間、旅が始まる。」という大好きな広告コピーがあるのですが、さらに言うと「行こう」と決めた瞬間から旅ははじまっているのだと常々思っています。

今回の旅で言うと、宮沢賢治の本のページをめくった瞬間から、旅がはじまりました。

 

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小学生の頃、怒ると怖い担任の先生が、迫力いっぱいに『風の又三郎』を読み聞かせてくれたこと。『セロ弾きのゴーシュ』を読んで、チェロという楽器に淡い憧れを抱いた日のこと。隣の席のゆずきちゃんと、「クラムボンって結局なんだろうね」「意味わかんないね」と話しながら想像上のクラムボンを描いたときのこと。いつかもっと遠くへ行く列車に乗りたいと思いながら、高校の通学電車の中で『銀河鉄道の夜』を読んだ帰り道のこと。宮沢賢治の物語は生活の中に自然と刻まれていました。

そんなふうに子供の頃から繰り返し触れてきた物語だけれど、旅の前に読むのはまた格別です。

イーハトーブを求めて、いざ花巻へ!

朝のうちに、新幹線で新花巻駅に到着。駅を出てすぐ、ほんのり雪景色の中で、かわいらしいアーチが出迎えてくれました。

 

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降り立った瞬間から童話の世界のようで心が躍ります。いい旅になりそうな予感!

物語の中の料理店!? 注文の多い「山猫軒」

最初に向かうのは、「山猫軒」というお店。お昼前の空いてる時間を目がけて、少し早めのランチにします。

 

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『注文の多い料理店』を読んだことのある方なら、きっとピンときますよね…? そう、童話の中に登場する「山猫軒」にちなんだ名前なのです。

 

「その時ふとうしろを見ますと、立派な一軒の西洋造りの家がありました。」

『注文の多い料理店』より

 

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教会のような佇まい。物語の一節が頭に浮かんできます。

 

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「どなたもどうかお入りください。決してご遠慮はありません。」

『注文の多い料理店』より

 

怪しげな山猫に招かれて、さあ、中へ。

 

右の矢印をタップしていくと、お店からの「注文」がどんどん出てきます。

 

お店の中も、仕掛けがいっぱいです。さすが、注文が多い!

どこかとぼけた猫ちゃんたちに連れられて、どんどん奥へ進んでしまいます。

 

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出迎えてくれたのは、やっぱり山猫…ではなく、やさしいお店の方でした。クラシカルで落ち着く雰囲気の店内。この日は、窓際に差すやわらかな光が素敵でした。

さて、鉄砲も弾丸もネクタイピンもカフスボタンも、ぜんぶ置いたらごはんの時間です。

 

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花巻の郷土料理・すいとんを食べてみたくて、「山猫すいとんセット」をいただくことに。焼きおにぎり、サラダ、お新香もセットになっています。

 

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湯気を立てる、熱々のすいとん。もっちりつるつるの食感と、じんわりやさしい甘みで、ついつい箸が進みます。手作りのすいとんがこんなに美味しいなんて、知りませんでした。

そして、ころんとした形がかわいい味噌の焼きおにぎり。味噌も特製だそうです。カリッとした焼き目とやわらかいお米のバランスがたまりません。

 

すいとんセットで十分おなかいっぱいになりますが、せっかくここまで来たんですもの。「でくのぼう」というお餅も注文してみることに。

 

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こちらが「でくのぼう」。稲穂の芯を使って食べやすい大きさに切っていただくというユニークなスタイルです。

あずき、ごまペースト、なます、花巻の名産・金婚漬がセットになっていて、好きな組み合わせで食べることができます。一品でいくつもの味を楽しめて、なんだかお得な気分に。

 

金婚漬とは…?

瓜の中にニンジンやゴボウなどを差しこんで漬けたものです。熟成させ、時が経つほどにいい味が出てくることから、夫婦になぞらえて「金婚」漬と呼ばれるようになったのだとか(諸説あります)。なんとハッピーなネーミング!

 

 

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つい、たくさん注文してしまいました。

最後に一服…。湯のみも山猫柄です。ほんのり怖いけど、かわいい姿の山猫。こんな姿なら、許してしまいそうです。

 

【Wildcat House 山猫軒】

岩手県花巻市矢沢3-161-33
営業時間:[レストラン]10:00~17:00(L.O.16:30)/[売店]9:00~17:00
定休日:12月28日~1月1日
https://www.yamanekoken.jp/

 

 

Z 6II、NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR

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レストランを出たところには、展望スポットもあるんです。

ズームレンズの望遠サイドを使って、遠くの山をパシャリ。この日は空がとても澄んでいたので、白い山々がいっそう際立ちました。

雪で白く染まった山は神々しいほど美しい。賢治もこんな景色を眺めていたに違いありません。

別世界への入り口のような、367段の階段

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山猫軒から次の目的地「宮沢賢治童話村」までは、367段の階段を下りて移動します。

 

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実は、この階段にも粋な仕掛けがありまして。階段の脇には、一段ずつに『雨ニモマケズ』の詩が書かれているんです。今回は下りだったので逆からになってしまいましたが、時間があるなら、一音ずつ声に出しながら上っても楽しそう。

 

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こちらが階段の入り口(今回は階段を下りてきたので“出口”でしたが)。古い駅を思わせるデザインは、どこか知らない世界への入り口みたいにも思えます。

賢治の世界にどっぷり浸る「宮沢賢治童話村」

階段を下りてすぐのところに、今回のメインの目的地「宮沢賢治童話村」があります。ここは、敷地まるごと賢治の童話の世界に入りこめる場所。じっくり味わいたいと思います。

 

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Z 6II、NIKKOR Z 35mm f/1.8 S/撮影協力:小さな貨車のお店「白鳥の停車場」

Z 6II、NIKKOR Z 35mm f/1.8 S/撮影協力:小さな貨車のお店「白鳥の停車場」

 

入り口の「銀河ステーション」。本物の駅舎みたいですね。ランプがいい味を出しています。近くには、『銀河鉄道の夜』の中に登場する「白鳥の停車場」もありますよ。

 

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ベンチに座って待っていたら、ジョバンニとカムパネルラにも会えるかもしれません。

 

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遠目から見ても遊び心が伝わってくるこの建物が、童話村のメイン「賢治の学校」です。季節によってはまわりの屋外展示も散策できるそう(今回は積雪などの影響で、残念ながら見ることができませんでした)。

 

 

「賢治の学校」の5つの空間で、めくるめく不思議世界を探検!

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入ってまず出会うのが「ファンタジックホール」。夢の中のような真っ白なホールに、賢治の童話の世界が映し出されます。

 

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巨大な万華鏡の中に迷いこんだような気持ちになる「宇宙の部屋」。ゆらゆらと揺れる天の川や星座たちを楽しめます。

ここはかなり暗いので、ISO10000以上に、シャッタースピードは1/100秒程度までなるべく遅くして撮影しました。

 

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続いて「天空の部屋」では、床下に風景が映し出され、風になった気持ちで地上を眺められます。

四つ目は「大地の部屋」。大地に戻ったら体が小さくなっちゃった…!? 小さな虫の気分になって、巨大な虫たちの間をぬうように歩きます。

 

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最後は水中へ。「クラムボンはかぷかぷわらったよ。」と、『やまなし』の一節を思い出すような空間。壁と柱に、ゆらゆらと水をイメージした光が映し出されます。

 

「賢治の学校」では、宇宙から空へ、空から大地、そして水中へと移り変わる視点を体験できました。

 

 

童話に登場するものを展示した「賢治の教室」

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童話村の左側にある「賢治の教室」では、賢治の童話に登場する植物や動物、鳥や石などが展示されていて、楽しみながら学ぶことができます。

 

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その中でも「星の教室」では、『銀河鉄道の夜』などに登場する星も展示されているんです。

北斗七星やカシオペヤ座、ほうき星などを表現したライトアートにカメラを近づけると、美しい星々に目を奪われます。

 

【宮沢賢治童話村】

岩手県花巻市高松26-19
営業時間:8:30~16:30
休館日:12月28日~1月1日
入館料:大人350円
https://www.city.hanamaki.iwate.jp/miyazawakenji/dowamura/
※メンテナンスなどで臨時休館になる場合があります。詳細はHPをご確認ください。

宮沢賢治の店「林風舎」でティータイム

童話村をたっぷり堪能した後は、お茶の時間。向かったのは花巻駅近くにある「林風舎」という喫茶店です。

 

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イギリスのお屋敷に迷いこんだような、別世界感漂うお店。もちろんこちらも宮沢賢治ゆかりの場所です。店主である宮沢和樹さんは、宮沢賢治の弟・清六のお孫さん。店名の由来は、『北守将軍と三人兄弟の医者』に出てくる「リンプー医師」だそうです。彼もお茶にくるのかもしれませんね。

 

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『注文の多い料理店』の世界観をイメージしているそうで、イギリスのアンティーク家具が並んでいます。同じ物語がモチーフですが、「山猫軒」は絵本のような雰囲気、こちらは小説といったイメージでしょうか。一つの物語からいろんなイメージが生まれるのも、賢治の物語の魅力ですね。

 

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なんと、日本では珍しい暖炉まで。「薪がないのに、どうやって燃やしているんだろう?」と不思議に思っていたら、ガスなんだそうです。暖炉のあるティータイムは、心まであったかくなりますね。

 

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今回いただいたのは、人気の逸品「ロールケーキ・オリザ」。米粉で作ったスポンジ生地はふんわり儚い口溶け。上品な生クリームとフランボワーズの酸味が完璧にマッチして、あっという間に食べ終えてしまいました。優雅にゆっくり食べたかったけど、美味しさに負けてしまった…!

 

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こだわりの詰まった店内を眺めながら、コーヒーでほっと一息。

 

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林風舎は、1階がショップになっていて、2階の喫茶の入り口でも賢治ゆかりのグッズやお土産を購入できます。私もとっておきのお土産を購入しました。何を買ったのかは、またのちほど紹介しますね。

 

【林風舎】

岩手県花巻市大通り1丁目3-4
営業時間:11:00~17:00(L.O.16:30)
定休日:木曜日
http://www.e-haweb.com/home/rinpoosha/
※営業時間などに変更が出る場合があります。詳細はHPをご確認ください。

賢治が命名した「イギリス海岸」へ

少し時間があったので、足を伸ばして「イギリス海岸」へ向かうことにしました。

「え、岩手にイギリス…?」はじめてこの地名を見たとき少し驚いたのですが、この地名は賢治がつけたもの。北上川西岸がイギリスのドーバー海峡に面した白亜の海岸に似ていることから、こんな愛称をつけたのだとか。

 

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歩いて向かう道すがら、またしても「白鳥の停車場」を発見! 童話村に続き、2か所目です。町の至るところで、賢治が愛されていることが伝わってきます。

「はくちょう=はくてふ」と仮名遣いも昔のままなのが、いっそう雰囲気を醸し出しています。

 

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のんびり歩いて30分ほど。イギリス海岸へ到着です!

 

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現在では水量が増え、名前の由来となった姿は見られないのですが、それでも雰囲気たっぷりの場所。静けさの中で、さらさらと川の流れる音だけが聞こえてきます。はじめて訪れるのに懐かしいような気持ちになる、郷愁をそそられる場所でした。

この日は雲の様子も美しかったので、たっぷり空を入れながら賢治が愛した風景を写しました。‬‬‬‬‬

 

特に好きな青色の美しさを表現するために

この日の空は、澄んだブルーとほのかに染まるピンクがとてもきれいでした。その美しさを引き出すため、Lightroomで編集しました。

青は色相を調整して水色寄りに。色かぶり補正でマゼンタ側に寄せて、全体的に少しだけ彩度を上げています。そのとき「きれいだな」と感じた、自分の中のイメージに近づけることを大切にしています。

 

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イギリス海岸の近くでも、賢治のモチーフがあちこちに。左は『月夜のでんしんばしら』、右はおなじみの賢治のシルエットですね。

 

【イギリス海岸】

岩手県花巻市上小舟渡(周辺)

住宅街に突如現れる壁画「未来都市銀河地球鉄道」

「イーハトーブ」を探す旅も、いよいよラストです。最後のスポットは、なんと壁画!
地図を見ながら歩いていて、「ほんとにこんな場所に壁画があるんだろうか…?」と少し不安になるくらい、普通の住宅街の中に突如出現します。

 

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「じゃーーん!」と登場音でも聞こえてきそうな迫力。高さ10メートル×長さ80メートルのコンクリートの壁いっぱいに描かれています。二次元なのに今にも飛び出してきそうで、なんだか遠近感が狂ってしまったような感覚に。

この壁画、実は特殊なインクで描かれているので、昼間は見えないんです。日没後にだけ現れる特別な光景。空も色を残したくて、適正露出より少し明るめにして撮影しました。

 

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日も暮れて、夜が訪れる時間にひとりでゆっくり壁画を眺めていると、すごく遠くまで来たような…。そんな不思議な気持ちを抱きながら、帰りの駅へと向かうのでした。

 

【未来都市銀河地球鉄道】

岩手県花巻市愛宕町(花巻駅北側)
ライトアップ:日没~22:00

旅の余韻は、とっておきのバウムクーヘンと一緒に味わう

終わった後も余韻に浸れる旅って、いいですよね。
林風舎でお持ち帰りしたのは、その名も「イギリス海岸〜ハードバウム〜」。ゴツゴツ部分には砂糖がまぶされていて、少しシャリッとしたユニークな食感です。

 

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イギリス海岸の岩肌にそっくりなバウムクーヘンをいただきながら、宮沢賢治の世界に思いを馳せたいと思います。

Photographer's Note

星、石、植物、動物…。さまざまな対象をつぶさに観察し、多様な詩や童話を残した宮沢賢治。ゆかりの場所を巡ることで、賢治の「目」の豊かさに気づかされる旅になりました。

目の前の景色や生きものに、どれだけのことを感じ、思いを馳せられるか。自然とファインダー越しにも、植物や空などを探したくなりました。

 

そして、物語にまつわる場所を巡った後、あらためてその世界に浸る時間は、幸せなひとときです。頭の中だけで想像していた世界が、“ほんものの風景”を見たことでよりいっそう広がりを持つようになりました。

これからもきっと、賢治の童話に触れるたびにこの旅のことを思い出すだろうな。

 

お気に入りの1枚

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花巻で出会った景色を、『銀河鉄道の夜』をイメージした1枚にまとめました。輝く星々と、夜空を駆け抜ける蒸気機関車。ジョバンニとカムパネルラの旅路に思いを馳せて。

 

雪景色の中の花巻は、しんしんと静かで落ち着く場所でした。さらに雪が深くなる時期も美しいだろうし、いつか緑豊かな時期に来られたら、それもきっと楽しいだろうなと思います。岩手にはまだまだ賢治ゆかりの場所があって、今回まわれなかったところもあるくらい。いつかもっとゆっくり滞在してみたいです。

 

 

※こちらの記事は、2020年12月27日に撮影したものです。
※お店での撮影は、お店や他のお客様の迷惑にならないようご注意ください。また、撮影のみのご利用はご遠慮ください。

 

〈記事で紹介した書籍〉
『注文の多い料理店』宮沢 賢治 KADOKAWA/角川文庫
『銀河鉄道の夜』宮沢 賢治 KADOKAWA/角川文庫
※カバーの絵柄は(株)かまわぬのてぬぐい・風呂敷柄を使用しています。

 

Supported by L&MARK

 

 

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NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR

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片渕ゆり

片渕ゆり

佐賀県出身、東京在住。大学卒業後、コピーライターとして働いたのち、どうしても長い旅がしたいという思いからフリーランスに。2019年から旅暮らしをはじめ、TwitterやnoteなどのSNSで旅にまつわる文章や写真を発信している。著書「旅するために生きている」(KADOKAWA)。