はじめまして、フォトグラファーのSHUN(@shun_chan20)です。
私は夕焼けを撮り続けています。カメラを購入して間もない頃、時間など関係なく好きなものを撮っている中で、自然と夕方の時間帯の景色を撮るようになっていました。
夕焼けは、1日の中の限られた短い時間、日中とは別世界になるところに魅力を感じています。
上の写真を撮影したときは、「くもりで夕焼けは見れないかも」と思いつつ待っていると雲が瞬く間に広がり、このような夕焼けを見ることができました。この写真をきっかけに夕焼けにより惹かれ、見晴らしのいい場所や何気ない夕方の街並みを撮るようになったのです。
夕焼けの風景をSNSに投稿すると、「見たことのない景色のはずなのに、なぜか懐かしいと感じてしまう」「日本の景色は本当にきれいですね。日本に行きたいです」など、国内外から多くの反響をいただきました。
今回は、どこか懐かしさを感じる「夕焼け」風景を撮るためのポイントを紹介します。
夕焼け撮影のために知っておきたいこと
まずは、美しい夕焼けが見られる条件を知ることから。撮影チャンスがぐんと広がります。
【時間帯】撮影は日没1時間前から
日没時間はWEBで簡単に調べられるので、私はその時間を確認して1時間前から撮りはじめています。
- 日没1時間前:周囲がオレンジ色に染まりだし、淡く優しい雰囲気を表現できます。徐々に濃くなり、夕方の雰囲気が強まっていくのを撮影できるのも楽しいです。
- 日没約15分前から:「マジックアワー」と呼ばれるこの時間、真っ赤に染まる別世界が広がります。
※マジックアワーについては、こちらで詳しく紹介しています。
季節による違い
夕焼けは季節によって、色味や濃さなどに違いを感じます。
左:夏、右:秋
夏は、他の季節に比べ赤が強い印象です。湿度が高く雲ができやすく、雲が赤く染まった空と幻想的な夕景を見られるのは、夏の大きな魅力だと感じています。
右の写真は秋の夕焼けです。澄んだ空の日が多く、オレンジに染まる夕焼けがとてもきれいです。
【場所】開けた場所や慣れ親しんだ街がオススメ
左:開けた場所、右:街
きれいな夕焼け空を撮りたい場合、海辺や高台、田園や建物が少ない場所など、見晴らしのいいところが確実です。
また、住んでいる場所や通学・通勤でよく通う場所であれば、「夕日がどこから見えるか」「どんな夕焼けになるか」がよくわかると思います。そういった場所で撮ると、日常や懐かしさを感じる夕焼け写真を撮影できます。
〈夕焼けと相性がいいロケーション〉
情感や懐かしさを抱く夕焼けが撮れる場所をいくつか紹介します。
- 街:日常感のある何気ない道や建物が夕日に包まれることで、懐かしさを感じます。このとき、電線や信号、カーブミラーや標識、バス停など、日常的に存在するものを入れるのが、懐かしさが増すポイントです。
- 水辺:夕焼けが水面に反射し、地上もオレンジに染まります。右の写真のように、小物を生かした夕日撮影も楽しいです。
- 花畑:夕日に照らされて花畑がオレンジ色に染まり、情感豊かな光景になります。逆光で撮ると花びらが透けて、美しいです。
夕焼けを魅力的に撮影するポイント
ここからは、実際に撮影するときに意識するポイントについてです。
夕日の位置による雰囲気の違い
夕焼けというと、「夕日を画角に入れること」をまず考えるかもしれませんが、夕日との位置関係によって印象が変わり、使いわけできると表現の幅が広がります。
- 夕日を入れる(逆光):夕日は目を引くポイントになり、夕焼けを背景にしたシルエットなどドラマチックな情景になります。夕日の下が地上に隠れはじめる頃が、日没感が出て、夕日の色が強く出るタイミング。夕日の一部が隠れることで、明るすぎず暗すぎない夕暮れの雰囲気を引き出すことができます。また、線路や道路などが夕日を反射し、ほどよい輝きとエモーショナルな雰囲気を強調できます。
左:サイド光、右:順光
- 夕日を入れない(サイド光や順光):サイド光では空や建物に色が強く反映され、夕方の雰囲気を表現できます。順光では淡く空が染まるので、やわらかく幻想的な雰囲気を醸し出してくれます。
夕焼けの魅力を引き出す表現のコツ
夕焼けの風景を撮る際、意識することでより美しく表現できるポイントがあります。
縦位置と横位置
左:縦位置、右:横位置
- 縦位置:街並みなど地上部分の要素が多い被写体でも夕焼け空の存在感を強調できます。InstagramなどSNSとの相性がいいのも特徴です。縦位置で撮る際、空の面積を1/3以上にするとバランスがよく、建物がない開けた場所などで空の表情を伝えたいときは2/3程度まで空を入れています。
- 横位置:見晴らしのいい場所で、夕焼け空と風景の広がりを写すときに適しています。空の面積は1/2以上を意識すると、空と風景のバランスをとりやすいです。
なお、縦・横位置共通ですが、空を撮る際、ローポジション×ローアングルにするほど広く写せます。
放射線構図を取り入れる
電線や道などを生かした放射線構図が効果的です。放射線構図は複数の線が1点から放射状に伸びる構図のことで、奥行きが出て、夕景をダイナミックに表現できます。なお、夕日を入れる際は放射線で視線誘導しながら、夕日がすっきりとした位置で、かつ邪魔にならないような構図で入るように意識します。
こちらの写真は、夕方の住宅街を歩いていると一本道があり、そこから夕日がのぞいていたので撮影しました。人影があることで、さらに奥行きのある立体的な写真になりました。
水面反射で輝きや色味を加える
雨上がりにできる水たまりをのぞくと、夕焼けがリフレクションして幻想的な光景が現れます。カメラを水面ギリギリに近づけて撮ることで、反射した空をスケール感たっぷりに写し出せます。
夕焼け撮影に適した機材・設定
【機材】手持ちしやすいカメラ+広角~中望遠域のレンズ
- カメラ:手持ちでの撮影が基本なので、軽さやグリップなどの持ちやすさは大切です。また日没間際の暗くなる時間帯のため、暗さに強く、暗部の描写に優れたカメラが◎。
- レンズ:24mm程度から中望遠域までカバーできるレンズが重宝します。暗い時間のため開放F値が低いほど有利ですが、F4でも十分です。また、逆光撮影が多くなるので、逆光コーティングが優れているものほど安心です。
【設定】夕日を入れるかどうかでF値を調整
左:F2.8、右:F4
- F値:夕日を入れないときは露出を確保するためF値を極力小さくします。夕日を入れるときは、明るすぎると夕焼けの色が薄れてしまうため、F4程度に絞って(開放F値から1~2段絞る)撮影します。
- シャッタースピード:手持ちで手ブレしないシャッタースピードを下限にし、車など行き交う街では1/800~1/1000秒程度を確保します。
- ISO感度:100をベースに、露出を確保するため200程度まで上げることがあります。
情感豊かに表現する編集のポイント
最後に編集のポイントです。私は、自分が見て感じた夕焼けを表現することを大事にしています。
※編集はLightroomを使用しています。
編集前
こちらは、通勤や通学といった日常を切り取った写真です。明部が白とびしないように暗めに撮影しているため、明るさを調整し、空の色味を深く仕上げようと考えました。
Lightroom編集画面
- 明るさ:暗めに撮影をしているので、全体的に夕焼けの色を引き出すために露光量をプラスします。さらに、白とびや黒つぶれがないよう、ハイライトやシャドウ、白レベル・黒レベルを微調整します。
- 色味や彩度:「懐かしさ」を引き出す上で大切なポイントで、実際に見た光景に近づけて、少し色を強く深く入れるように。自然な彩度をプラスに調整し、色相で違和感ない程度に変えています。過去には、色味が強すぎる写真や「これは夕方の写真?」と疑うほどに色のない写真も投稿していましたが、現在はその時間帯・場所に合った色味に調整しています。
左:編集前、右:編集後
Photographer's Note
見慣れた風景を一変させる夕焼け。
夕焼けが見せる情緒的な日常風景を、自分で探して撮ることが楽しさの一つです。
夏らしい赤い夕焼けに、レトロな建物と電柱など日常的な要素を取りこむことができた、お気に入りの写真です。
私は今後も変わらず、日常の中にある夕焼けの世界を撮りながら、日本各地の夕焼けスポットや日常風景を撮っていきたいと考えています。
みなさんもぜひ、夕焼けを懐かしく「何かいいな」と意識して見ていただけたら幸いです。もし夕焼けを撮るときにこの記事の撮影方法が少しでも役に立ってくれたら、そして、夕焼けを好きになってくれる人が増えたらとてもうれしいです。
夕焼け撮影におけるNikon機材
現在愛用している Z 6IIは、夕焼けをメインに撮りはじめるようになり、SNSで夕焼けを投稿されているNikonユーザーの写真を見て「これしかない!」と思い購入しました。今回使用した Z 7IIを含め Z シリーズは描写が素晴らしく、ちょうどいいサイズ・重量感で持ちやすいです。また、設定や操作は慣れると非常に使いやすいのも気に入っています。
Z マウントレンズはNIKKOR Z 24-70mm f/4 Sを愛用していますが、手持ちしやすく、日没間際でも描写力をしっかり発揮してくれるところに魅力を感じています。型式の最後に'S'がつく「S-Line」は、優れた逆光コーティングが施されているため、逆光時にフレアやゴーストが発生しにくいのもポイントです。
今回の撮影ではじめてNIKKOR Z 14-24mm f/2.8 Sを使いましたが、とても気に入りました。超広角ズームレンズで、迫力のある空や写真全体に奥行きを出すことができ、このレンズでしか見られない世界を表現できると感じました。
※ Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/4 Sで撮影された写真は、過去に撮られたものです。