「ひまわりポートレート」の撮り方 – くもりや雨でも、ひまわりの色彩を生かして夏らしく写す秘訣

「ひまわりポートレート」の撮り方 - くもりや雨でも、ひまわりの色彩を生かして夏らしく写す秘訣

はじめまして、MahooO(まほぉ/@mahooo_33)です。私はフリーランスフォトグラファーとして、カップルやウェディング、ファミリーを中心に撮影しています。

ポートレート撮影ではロケーションがとても大切で、季節感も意識したいポイント。そして、夏といえば「ひまわり」畑で写真を撮りたくなりませんか?

 

Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S
Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S
Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

 

ひまわり畑で撮影する魅力は、モデルさんを自然と元気に写し出してくれることです。

ベストはやはり青空ですが、撮影の日が必ず晴れるとは限りません。今回も撮影期間はずっと雨予報でした。そこでこの記事では、くもりや雨でも、ひまわりの持つ元気さや明るさを生かして、夏らしいポートレート写真を撮るためのポイントを紹介したいと思います。

この記事を読んで、ぜひみなさんも晴れじゃなくても諦めずに撮影してみていただきたいです!

 

ひまわり畑で撮影する前の準備

まずは、撮影前の準備です。天気によらず、押さえておきたいことを紹介します。

【場所】背景一面をひまわりにできる花の密度

Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

 

ひまわりが咲くロケーション選びは、背景一面をひまわりにするため、花の密集具合と広さ、背景の抜け感がポイントです。

今回は愛知県にある「観光農園花ひろば」で撮影しました。6月下旬~12月上旬までと非常に長い期間ひまわりを楽しめ、花の密度も高く、撮影にオススメのスポットです。入園時にハサミが渡され、ひまわりを5本持ち帰ることもできます。

 

Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S
Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S
Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

左:奥のひまわり畑は傾斜になっています。右:園内にはピンクの軽トラックがあり、荷台に乗って撮影も可能です。

 

ここは遊歩道が傾斜になっていて、また通路が畑より少し高くなっているため、撮影者とモデルさんとの立ち位置で高低差をつくり、ローアングルで空を背景にしたり、ハイアングルで背景をひまわりで埋め尽くすという撮り方ができます。

【被写体選び】笑顔が素敵なモデルさん

Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

 

ひまわりの持つ「明るい・元気」なイメージに合う、明るい笑顔の方をお願いしました。ひまわりはパンツスタイルともマッチするため、その服装が似合う方にお願いすると、他の花を撮影する場合との差別化もしやすいです。

【服装】夏らしいアイテムを合わせる

太陽のようなひまわりには、「麦わら帽子」が欠かせません。色味や素材感はひまわりの存在を邪魔せずになじみながら、夏らしさを演出してくれます。

 

Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S
Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S
Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

 

「白いワンピース」も夏の定番です。何色の風景にもなじみ、写真をパッと明るくしてくれます。顔まわりが明るいとレフ板効果も期待できます。白いパンツスタイルも元気さが際立ってオススメです。

また、今回は花畑へピクニックに来た女の子をイメージして「かごバッグ」を用意しました。麦わら帽子の色や素材感ともリンクするので、全体としての統一感が出ます。

【機材】ミラーレス+標準ズームで機動性重視

  • カメラ:手持ちで動き回りながらの撮影のため、軽量なミラーレスがオススメです。今回は機動性の高いフルサイズミラーレス Z 5を使用しました。液晶モニターが可動式なので、アングルを変えての撮影も楽です。
  • レンズ:広い風景の中でポートレートを撮る際には、24~70mmの焦点距離域をよく使用します。

 

Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S
Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S
Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

左から、24mm、70mm

 

広角は風景の中で全身を写したいとき、標準は背景の情報を入れつつアップで撮影したいとき、望遠はモデルさんの表情を撮影したいとき…と使いわけています。今回は雨予報でレンズ交換を避けるためにも、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 Sを使用しました。F2.8あれば十分に背景をぼかすことができます。

ひまわり畑でポートレートを撮影するポイント

ここからは撮影編。くもりや雨の条件下でも魅力的なポートレートを撮るためのポイントを紹介します。

【設定】絞り気味で背景のひまわりを生かす

  • F値:かわいらしいひまわりの存在を生かすには少し絞ります。雨が降っている場合、絞りすぎると雨粒が写りこむため、F4.5~5.6程度に。

 

Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S
Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S
Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

左:F2.8、右:F5.6

 

  • ISO感度:なるべく低く固定します。くもりや雨で光が弱い場合、ISO200~400程度に。
  • シャッタースピード:F値とISO感度に合わせて露出を調整します。

【光】ひまわりの咲く方向に顔を向ける

Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S
Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S
Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

左:光の向きと反対、右:光の向きに顔を向けた写真

 

太陽が雲に隠れていても、必ず光の向きがあります。左の写真は逆光状態になり顔が暗くなっていますが、右は順光になり顔が明るく写っているのがわかるでしょうか?

ひまわりは太陽の方向に咲くといわれているので、ひまわりと同じ方向に顔を向けるといちばん強い光を生かすことができ、自然と背景のひまわりもカメラに顔を向けてくれることになります。

 

Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

 

また、くもりや雨の日は、弱い光が全体に回ります。まるで巨大なレフ板のように雲が光を拡散し、肌をきれいに写し出してくれるので、実は人を撮りやすい条件でもあるんです。

晴れの日に太陽のほうを向くとまぶしい顔になってしまいますが、くもっていれば自然な表情のまま、目にキャッチライトも入ります。

【構図】高低差を生かしたアングル・ポジション

Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S
Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S
Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

左:アイレベルで撮影、右:少し高い位置から撮影

 

ひまわり畑では高低差を生かすことで、モデルさんの魅力を引き出したり、背景による写真のイメージを変えることができます。特にひまわりは背が高いので、高い位置から撮影するほうが花をより多く写せます。

 

Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

 

撮影者とモデルさんがひまわりより高い位置で撮影すれば、背景にさらにひまわりを入れることができ、華やかさがアップします。

 

 

モデルさんの顔まわりにひまわりを配置

Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S
Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S
Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

左:アイレベルで撮影、右:ハイアングルで撮影

 

モデルさんの顔近くにひまわりを配置するように、アングルを調整するのもポイントです。そのためにも、モデルさんに少し高い位置に上がってもらいましょう。

このとき、モデルさんの目線の高さで撮影すると、多くの花を顔付近に収めることができますが、奥の花以外の情報も入ってきます。右のように少し上から撮影することで背景をスッキリさせることができます。なお、引きでハイアングル撮影した場合、地面の土が入ってくる可能性があるため、構図の微調整が大切です。

 

 

空を背景に取り入れる

Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

 

ローアングルで広角にすると、空を背景に取り入れて抜け感を出すことができます。ただし、ローアングルすぎるとひまわりの顔が写りにくくなるのでバランスが大切です。この場所はトラックの荷台に乗れるため、モデルさんが高い位置に移動することで、奥のひまわりもしっかり写るように調整しました。

 

Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

 

雲が黒かったり、空模様がイメージと違う場合には、空は入れずにひまわりだけで画づくりしてみましょう。ひまわりの持つイメージによって、青空でなくても明るい写真が撮れます。

【ポーズ】楽しむ姿/風景に溶けこむ姿の使いわけ

Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S
Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S
Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

 

ひまわりの「明るい・元気」なイメージを強調するには、手足を広げるなど大きめのポージングや、弾けるような笑顔がポイントです。その場にある小道具で遊びながら撮るのも、楽しさが伝わると思います。

 

Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

 

また、麦わら帽子で目元を隠すと、見た人の想像が膨らむような抽象的な雰囲気を演出できたり、風景に溶けこむような表現ができます。

ひまわりポートレートの表現のアイデア

ここからは、さらに表現を広げるためのアイデアを紹介します。雨の日ならではのアイテムも登場しますよ。

小物で「夏らしさ」「かわいらしさ」の演出

ひまわりの花を手に持つ

Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S
Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S
Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

 

ひまわりの花束を持つことで、より明るい印象になります。今回の撮影場所は花を持ち帰ることができますが、そうでない場所でも使えるアイテムが造花です。夏のシーズンには100円ショップなどでも購入できると思います。

花を手に持つ際のポイントは、葉っぱが花にかからないようにすること。顔まわりに華やかさを出したいときは花の正面が見えるように持ってもらいます。

 

Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

 

手元だけを写すと、人の存在を感じながら、主役のひまわりが際立ちます。背景のコツは、本物のひまわりを背景にして、花の高さを合わせて一体感を出すこと。その上でぼかすことで、花畑の中で手持ちの花だけが浮き上がります。

 

 

ドーナツでかわいい色味をプラス

Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

 

「花畑でピクニック」をイメージして、ドーナツを用意しました。私は断然、色がかわいいイチゴ味推しです。顔の近くで持ったり、穴の中をのぞくような仕草などポージングの幅も広がります。

 

Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

 

ドーナツを持つときは、モデルさんが座った状態で撮るのが自然です。今回はひまわり畑の前にある車の荷台に腰かけてもらいました。このとき、ひまわりの花をひざの上に置くなど、華やかさを演出することもポイントです。

雨の日は透明な傘で写る要素をコントロール

Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

 

雨が降ってしまったら終了ではなく、傘を持って撮影してみましょう。暗い空を隠したり、足元の土を隠したり、要素を整理して、モデルさんとメインで写したいひまわりだけを強調することができます。
※傘をさす際は、周囲をよく見て他の方に当たらないように注意しましょう。

 

Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

 

手元の花を、雨が降ってからも撮影してみました。傘の表面に水滴がついたり、透けて見えるひまわりがとてもかわいらしいです。

ロケーションの特色を生かす

ひまわり畑によっては、写真撮影を楽しめるようにさまざまな工夫を凝らしているところがあります。

ピンクのドアがあったり、今回の場所ではピンクの軽トラックがありました。その特色を生かすことで、この場所ならではの写真が撮れますし、訪れた思い出が残ると思います。

 

Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

 

濃い色を取り入れる際は、ひまわりの存在が薄れない程度に。また、色がモデルさんの顔に反射してかぶらないように、顔に光がしっかり当たるように意識します。

夏らしさを引き出す編集

最後に編集ですが、今回は特にくもり空を調整しました。
※編集にはLightroom Classicを使用しています。

 

Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

編集前

 

Lightroomでは、マスクで空を選択して色温度で青を足し、かすみの除去とシャドウを少し上げると、青空のように調整することができます。違和感が出ないように、空の青を濃くしすぎないのがポイントです。

 

「ひまわりポートレート」の撮り方 - くもりや雨でも、ひまわりの色彩を生かして夏らしく写す秘訣

Lightroom編集画面

 

雨が本格的に降っていない場合は、青空のように簡単に編集できるので、どんよりした雲でも諦める必要はありません。

 

編集後
編集前

左:編集前、右:編集後

 

私は普段、色をきれいに出すために適正露出で撮るようにしていて、白とびしそうなときに少し暗く撮るようにしています。今回使用した Z 5は撮って出しが非常にきれいで、ひまわりの花や人はイメージ通りの色味がきれいに出ていたため、そこまで大きな調整はしていません。

なお、人の肌は黄色すぎず、赤すぎないように意識しています。調整する場合は、色温度を下げすぎると肌がグレーっぽくなってしまうので、背景の色温度と肌の色温度は別物として考えるとバランスよく仕上がると思います。

Photographer's Note

晴天には恵まれませんでしたが、雲がきれいなレフ板になって光が回ってくれて、さらに雨予報で観光客の方が少なく、トータル的に撮影しやすいという発見がありました。

もちろん、青空の下でのひまわりは、ぜひとも撮影したいロケーションです。次こそはかごバッグの中に入れていったピクニックセットを広げて撮影したり、浴衣とひまわりなど夏らしく透明感のある写真も撮影してみたいですね!

 

Nikon機材を使ってみて

今回、 Z 5+NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 Sを使用しました。
携帯性もさることながら、本格的な撮影を楽しむことができるカメラだと感じました。「ここにほしい!」という場所にボタンがあり、操作性も抜群。非常に軽く、グリップ感も絶妙であらゆる角度での撮影がしやすかったです。

また、撮って出しの特に黒の描写がきれいで、くもりの日でもぼやけないコントラストのしっかりした写真を撮ることができました。レンズがF2.8通しということもありますが、開放でも解像度の高い写真に大満足です。

 

Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

 

ひまわり畑でポートレート撮影をする際の注意点

  • ひまわりに触れてよいかなど、ひまわり畑のルールに従う
  • 場所の占有など、他の方の迷惑にならないように注意
  • 土で汚れてもいい靴で行く
  • 雨の日はレジャーシートやタオルなど、座るときに敷くものを持参する
  • 暑さ対策を万全に

ポートレート撮影では鏡を持ち歩くようにしています。口紅が歯についていたり指摘しにくいときは、さっと鏡を出して撮影前の確認を促すと、お互いに気持ちよく撮影に臨めます。

 

 

撮影協力:観光農園花ひろば
愛知県知多郡南知多町豊丘高見台48/営業時間8:00~17:00/入園料700円
※こちらに掲載している情報は2022年8月10日現在のものです。

 

Model:arisa(@ari1101sa
Supported by L&MARK

 

 

MahooO(まほぉ)

MahooO(まほぉ)

カップル、ウェディング、ファミリーと幅広いジャンルを得意とし、撮影件数は延べ300件に及ぶ。フリーランスとしても活動し、SNSの総フォロワーは2.5万人を超える。岡山県倉敷市や愛媛県松山市のPR事業に参加するなど、インフルエンサーとしても活躍している。