「モネの池」撮影ガイド – 地元フォトグラファーが教える時間帯や設定、構図のポイント

「モネの池」撮影ガイド – 地元フォトグラファーが教える時間帯や設定、構図のポイント

こんにちは、まちゅばら(@mpmb7)です。

普段は岐阜県を拠点に、四季の自然風景や都市景観、野生動物など幅広いジャンルの写真を撮影し、SNSなどで発信しています。以前公開された「オススメ紅葉撮影スポット」の記事では、岐阜県を中心に彩り豊かな東海地方の美しい秋の風景を紹介しました。

 

Z 7、NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR
Z 9、NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S
(左)Z 7、NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR、(右)Z 9、NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S

 

私が住む岐阜県には、四季折々の美しい景色を楽しめる場所が実にたくさんあります。その中でも、SNSで特に反響が大きかったのが「モネの池」です。

今回は、「モネの池」を撮影するために知っておくべきことと、より魅力的に写すためのポイントを詳しく紹介したいと思います。

 

モネの池とは?

「モネの池」は、岐阜県関市板取の根道神社境内にある小さな池です。

地元の人が畑に水を引くために利用していた名もなき貯水池でしたが、2000年頃に行われた整備で睡蓮を植えて鯉を放したところ、印象派絵画の巨匠クロード・モネの代表作『睡蓮』のように美しい池と、SNSでたちまち話題に。「モネの池」として、岐阜県屈指の観光スポットになりました。

 

私も何度か通っていますが、モネの池は水の透明度が非常に高く、眺めていると鯉が空中に浮いているような不思議な感覚になります。撮影に訪れるなら、新緑が美しい5月や緑豊かな夏場、彩り豊かな紅葉が楽しめる11月以降がオススメです。

 

【モネの池(通称)】

岐阜県関市板取字下根道上448
https://itadori-seki.jp/nature/60/

 

 

この夏、モネの池を撮影してきました!

早朝5時に到着すると、昼間は多くの観光客が訪れるこの場所も、写真を撮っている人が数人いる程度でとても静かです。周囲の邪魔にならないことを確認し、橋の前に三脚を立てました。

 

「モネの池」撮影ガイド – 地元フォトグラファーが教える時間帯や設定、構図のポイント

 

この日の天気はくもりのち晴れ。太陽が昇る前の早い時間帯は日が当たらず暗い分、全体を均一な露出で撮影することができます。

 

Z 7II、NIKKOR Z 24-120mm f/4 S

Z 7II、NIKKOR Z 24-120mm f/4 S

Z 7II、NIKKOR Z 24-120mm f/4 S

Z 7II、NIKKOR Z 24-120mm f/4 S

 

午後には、時折差しこむ日の光が池底に葉の影を落とし、立体感が生まれていました。

なお、鯉の様子は時間帯によって異なります。夏でも早朝は水温が低く活発ではなく、10時頃になると数も増えて元気よく泳いでいる様子が見られます。ただ、鯉が跳ねると水面が乱れてしまうこともあるので要注意。

 

Z 7II、NIKKOR Z 24-120mm f/4 S

Z 7II、NIKKOR Z 24-120mm f/4 S

Z 7II、NIKKOR Z 24-120mm f/4 S

Z 7II、NIKKOR Z 24-120mm f/4 S

 

この時期のモネの池は、木々の緑が鮮やかで、睡蓮の葉もカラフル。数日前に雨が降ったこともあり、水の透明度は最高とまではいきませんでしたが、それでも十分美しかったです。

モネの池をより魅力的に写すための撮影のポイント

ここからは、モネの池を訪れる前に知っておきたいことや、風景の美しさを表現するための撮影のポイントを紹介していきます。

【時間】太陽が低い午前中がオススメ

モネの池は撮影する時間帯によって写真の仕上がりが変わります。ポイントになるのが太陽の水面反射。太陽は池の奥側から昇ってくるため、午前の早い時間であれば光が弱く、反射を気にせずに水面をきれいに撮ることができます。

 

Z 7II、NIKKOR Z 24-120mm f/4 S
Z 7II、NIKKOR Z 14-24mm f.2,8 S
Z 7II、(左)NIKKOR Z 24-120mm f/4 S、(右)NIKKOR Z 14-24mm f.2,8 S

左:早朝は反射なし、右:日中は手前に反射あり

 

実は、はじめてモネの池を訪れたとき、到着したのが昼過ぎだったので、太陽が池の真上から当たって水面で反射してしまい、うまく撮れずに悔しい思いをしたことがあります。ただ、日中は光が強くなる分、泳ぐ鯉や水草の影が濃く出て、立体感や透明度を強調した写真を撮ることが可能です。反射光については、後ほど紹介するPLフィルターを使用すると抑えられます。

 

画づくりに集中し、混雑を避けるためにも早朝に

午前中でも、時間が経つにつれて観光客は多くなります。画面に人が入りこまないように、かつ他の方の邪魔にならないように、ピークの昼前後から時間をずらすようにしています。無料駐車場も11時過ぎにはいっぱいになる可能性が高いため、早朝の時間帯がオススメです。

【機材】広角~中望遠をカバーするレンズが最適

  • カメラ:池や森を鮮明に写すためにも、今回使用した Z 7IIのような高画素機が好ましいです。
  • レンズ:モネの池の手前の歩道は幅が狭く、後ろに下がって撮影できないため30mm以下の広角域があるといいでしょう。また、中望遠域があると、泳ぐ鯉や睡蓮をアップでとらえることができます。今回はNIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S とNIKKOR Z 24-120mm f/4 Sの2本で撮影しました。

 

Z 7II、NIKKOR Z 24-120mm f/4 S
Z 7II、NIKKOR Z 24-120mm f/4 S
Z 7II、NIKKOR Z 24-120mm f/4 S

左:24mm、右:99mm

 

  • 三脚:日中は明るいため手持ち撮影も可能ですが、早朝は暗いため三脚の使用をオススメします。このとき、レリーズがあると三脚使用時のブレを防ぐのにも効果的です。
  • PLフィルター(円偏光フィルター):できるだけ水面に光の入らない時間帯に撮影しますが、その場合でもPLフィルターを使うことで水面や葉に光が反射するのを抑制してくれます。PLフィルターで反射を抑えれば、太陽の光が入る日中でも十分に撮影は可能です。

 

Z 7II、NIKKOR Z 24-120mm f/4 S
Z 7II、NIKKOR Z 24-120mm f/4 S
Z 7II、NIKKOR Z 24-120mm f/4 S

左:PLフィルターなし、右:PLフィルターあり

【設定】鯉がブレないシャッタースピードに

  • 撮影モード:マニュアルで、F値とシャッタースピードを調整。
  • F値:池全体にピントが合うようにF8程度に。
  • シャッタースピード:泳いでいる鯉がブレないようにシャッタースピードは1/30秒以上を確保します。

 

Z 7II、NIKKOR Z 24-120mm f/4 S
Z 7II、NIKKOR Z 24-120mm f/4 S
Z 7II、NIKKOR Z 24-120mm f/4 S

左:1/2.5秒、右:1/200秒。素早い動きでなければ、1/30秒程度でブレずに写せます。

 

  • ISO感度:F値とシャッタースピードに応じて、ISO感度で露出を調整。なお、日が出ているときは、木々の葉や睡蓮の葉、白色の鯉などが白とびしないように注意します。
  • ピント合わせ:暗くてわかりにくいときは、奥の橋に合わせればOKです。MFが確実ではありますが、Z 7IIはAFが優秀なので、AF後に念のためライブビューで拡大表示して確認しています。

【構図】橋中心の日の丸構図を基準に

正面の橋を真ん中に配した日の丸構図を基準にするのがオススメです。池と森を1:1の縦に分割する際、森の比率をやや多めにしたほうがバランスよくまとまります。

 

Z 7II、NIKKOR Z 24-120mm f/4 S

Z 7II、NIKKOR Z 24-120mm f/4 S

 

アングルは、三脚を使い170cm程度のハイアングルで、手前の池を平面的に写すことで、絵画のような「モネの池」の魅力を詰めこんだ1枚を撮ることができます。アクセントとして、赤色の美しい鯉が画角に入ってきたらシャッターチャンスです。

 

また、横構図と縦構図で雰囲気が変わります。

  • 横構図:全体的なバランスがよく、森に囲まれた神秘的な池の雰囲気で写せます。鯉が活発に広範囲で泳いでいる際、余すことなく生かせるのもメリットです。
  • 縦構図:奥行きを出し、かつ情報量を制限できるため、池の後ろに広がる森の深さや薄暗そうな雰囲気、鯉の美しさなどを強調することができます。寄りで池から森まで写す際にも効果的です。

 

Z 7II、NIKKOR Z 24-120mm f/4 S
Z 7II、NIKKOR Z 24-120mm f/4 S
Z 7II、NIKKOR Z 24-120mm f/4 S

【編集】水の透明度と森の雰囲気を引き出す

編集では、背景の深い森の薄暗さと、対照的に色鮮やかで透き通った池の雰囲気が伝わるように意識します。
※編集にはLightroom Classicを使用しています。

 

Z 7II、NIKKOR Z 24-120mm f/4 S

Z 7II、NIKKOR Z 24-120mm f/4 S

編集前

 

まずは露出などの基本調整でベースをつくります。

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Lightroom編集画面

 

  • 露光量:白とびを抑えるために暗く撮った分、露光量をプラス。
  • ハイライト/シャドウ:白とび・黒つぶれしないようにしつつ、撮影時の明るさに合わせて明暗差を調整します。
  • かすみの除去:プラスして全体を引き締めます。

今回は森側が暗すぎたため黒レベルをプラスにしていますが、通常は黒レベルを下げることで池の底の水草などの影を強調します。

 

 

水の透明感を出す編集のポイント

池の部分にマスクをかけ、露出や質感調整で水の透明感を出していきます。

 

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Lightroom編集画面

 

  • 色温度:青さを際立たせるためマイナス。
  • ハイライト/シャドウ:絵画的にするためハイライトを下げ、シャドウを上げてコントラストを抑えます。黒つぶれや白とびを防ぐ効果もあります。
  • 白レベル/黒レベル:水草の影などメリハリを出すために調整。
  • 明瞭度:全体のメリハリを出すためにプラス。
  • テクスチャ:明瞭度を上げると印象が固くなりすぎるため、テクスチャを下げてバランスを取ります。

 

 

深い森の雰囲気を出す編集のポイント

編集後の池と違和感がないように、森部分の露出や色味、質感などの調整を行います。

 

「モネの池」撮影ガイド – 地元フォトグラファーが教える時間帯や設定、構図のポイント

Lightroom編集画面

 

池と同じ項目を調整し、さらに以下を調整します。

  • 白レベル:森の薄暗さを強調するために、白レベルはかなり下げます。
  • 色かぶり補正:緑すぎないようにマゼンタ側に寄せます。今回の写真は木の表面がかなりマゼンタになっていたので、違和感のない程度まで調整しました。

 

編集後
編集前
Z 7II、NIKKOR Z 24-120mm f/4 S

左:編集前、右:編集後

 

こちらが編集後です。水の透明度を出しながら、森との調和も取れていると思います。

モネの池周辺のオススメ撮影スポット

モネの池だけでも十分行く価値がある岐阜県関市ですが、周辺にも撮影欲をかき立てるスポットがたくさんあります。ここでは、その中から特にオススメの2か所をピックアップしました。モネの池を訪れた際には、ぜひ足を運んでみてください。

厳かな雰囲気が漂う「根道神社」

モネの池のすぐそばにある根道神社は、小さな規模ながらも荘厳な趣が感じられます。石段を上がった先に本殿があり、木々の間からモネの池を見下ろせます。

 

Z 7II、NIKKOR Z 24-120mm f/4 S

Z 7II、NIKKOR Z 24-120mm f/4 S

 

残念ながらこの日はまだ開花前でしたが、6月中旬~7月上旬頃には美しいアジサイと鮮やかな緑の森とを合わせて撮ることができます。

 

Z 7II、NIKKOR Z 24-120mm f/4 S

Z 7II、NIKKOR Z 24-120mm f/4 S

 

根道神社周辺にはアジサイが咲いているところも。アジサイの季節になると、このあたりは朝霧が発生することが多く、それを狙って撮るのもオススメです。

 

【根道神社】

岐阜県関市板取字下根道上448

断崖絶壁の壮観な景色「川浦渓谷」

モネの池から車で25分ほどの場所にある川浦(かおれ)渓谷は、40~50mに切り立った花崗岩が約7kmにわたって続く美しい断崖の渓谷です。

 

Z 7II、NIKKOR Z 24-120mm f/4 S

Z 7II、NIKKOR Z 24-120mm f/4 S

 

この日は雨が降り出していましたが、晴れの続いた日に撮影に行くとエメラルドグリーンの水面を撮ることができます。「飛騨・美濃紅葉33選」にも選ばれていて、紅葉のシーズンには圧巻の景色が楽しめます。

 

【川浦渓谷】

岐阜県関市板取杉原

Photographer's Note

これまで何度も訪れたことがある「モネの池」ですが、そのたびに美しさに魅了されてきました。
規模として決して大きくなく、実際に目にするとイメージと違うと感じる方もいるかもしれませんが、水の透明度や睡蓮、鯉などが創り出す色鮮やかな自然の空間はとても美しいです。

夏だけでなく季節によってさまざまな表情を見せてくれるので、岐阜を訪れた際にはぜひ「モネの池」で撮影を楽しんでみてください!

 

モネの池の撮影にNikon機材を使ってみて

今回の撮影で使用した Z 7IIは細かい部分までしっかり写すことができ、撮った写真を確認するときも現像のときも楽しかったです。暗い場所での撮影も問題なく、早朝の時間帯にISO感度を500に上げて撮っても、クリアに写すことができました。

また、愛用しているNIKKOR Z 24-120mm f/4 Sは描写が◎。「モネの池」撮影に最も適した焦点距離を使うことができ、池の水面と背後の森とをバランスよく撮れました。

 

Z 7II、NIKKOR Z 24-120mm f/4 S

Z 7II、NIKKOR Z 24-120mm f/4 S

 

「モネの池」撮影の注意点

  • 山間部とはいえ暑い地域なので、夏場は熱中症対策と虫対策を万全にして行きましょう。
  • 早朝は観光客が少ないものの、写真を撮りに来ている人がいることも。お互いに場所を譲り合うなどの気配りが大切です。
  • 観光客が多い時間帯は、三脚を使うときも手持ちで撮影するときも、長時間同じ場所を占有しないように。混雑しているときには、時間をあけてからもう一度訪れてみるのもオススメです。

 

 

※こちらに掲載している情報は2022年8月18日現在のものです。

 

 

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まちゅばら

まちゅばら / Hiroki Matsubara

岐阜県を拠点に、四季の自然風景や都市風景を撮影している。印象的な光を取り入れた色鮮やかな光景や、物語のワンシーンをとらえたような作風が注目を集めている。