はじめまして、フォトグラファーのYuri(@camel8326)です。
旅が好きなことから、旅先の魅力やカメラの楽しみ方を発信したり、ニコンプラザ大阪のワークショップ「First STEPS」では、講師も務めています。
旅の思い出を写真や動画で残される方は多いと思いますが、その写真や動画でInstagramリールを作ってみてはいかがでしょうか?
リールにまとめると旅の流れやストーリーを表現できたり、旅先のさまざまな魅力をぎゅっと詰めこんで紹介できます。
リールとは?
Instagramのリールは最大90秒のショートムービーを投稿でき、Instagramのアプリ内で作成したり、動画を読みこんで投稿することもできます。Instagram側で用意されている音源を追加でき、音源つきの動画を作れるのが特徴です。
今回は先日発表されたフルサイズミラーレス「Z f」を手に、滋賀県の「びわこ箱館山」を旅し、写真と動画を撮影してきました。この記事では、リールで旅の魅力を伝えるポイント、撮影時に意識すること、まとめ方のポイントを紹介します。
旅の魅力を伝えるリール
写真を素材にしたリールと、動画を素材にしたリールの2種類を作成しました。
写真で作るリールは初心者の方でもはじめやすく、動画で作るリールはリアリティのある情報を伝えられます。
- 写真で作るリール
- 動画で作るリール
びわこ箱館山は、ゴンドラで登った先に「びわ湖のみえる丘」があります。標高630mの展望台から眺める琵琶湖の大パノラマや、カラフルに舞う虹色のカーテン、涼しい音が響く風鈴のよし小道、一面に広がるコキア・ペチュニアなど、見どころ満載です。
そんな見どころを余すことなく伝えるため、各スポットでさまざまな角度や構図で撮影したり、何気ないシーンも入れることで、魅力を表現しました。
リールを作る上で意識している撮影ポイント
リールは旅の後に作るものですので、「旅を楽しむこと」が何より大事です。その上で、撮影のときに意識しているポイントを紹介します。
写真・動画共通の撮影ポイント
写真と動画とで、撮影ポイントに大きな違いはありません。
Point①縦構図で撮る
リールを画面いっぱいに表示させるには縦16:横9の比率になるため、縦構図でも撮影するように意識しています。
Point②何気ない光景でも「いいな」と思ったら撮っておく
素材が多いほうがリールは作りやすくなります。メインとなりうるシーンに加え、インサートカットになりそうなものなど、「いいな」と思ったものは撮っておきましょう。
メインは虹色のカーテンや空と人、風鈴など、その場所の見どころとなるカットです。このとき、その場所の様子を伝えるために、引きの風景は必ず撮影します。
インサートとして使えそうなカットは、ゴンドラや木漏れ日、足元のシーン、食事シーン(飲み物)などです。
複数の場所を訪れる際は、行く途中(電車やバス、フェリー、チケットを持つ姿など)も撮影しておくと、旅の様子を伝えやすくなります。
Point③同じスポットでもバリエーションを増やす
アングル違いや寄り引きのカットを撮っておくと、リールにまとめる際に前後のカットに合わせて調整しやすいです。
虹色のカーテンを例にすると、違う色をメインにさまざまな角度から撮影しました。背景や光の向きも変わり、印象が異なります。
先ほどの2枚は引きですが、こちらの2枚は寄りで撮影しました。1本のレンズでも、被写体との距離を変えることで、寄り引きを撮りわけられます。
人を入れる・入れないも、バリエーションを増やすポイントの一つです。風景だけでも素敵ですが、人を入れることで旅している様子が伝わりやすくなると思います。
上の2枚はどちらもリールに入れていますが、少し角度を変え、同じ画にならないように工夫しています。
顔を写す・写さないの違い
私は顔を写さないことで、見ている人にも「自分が旅しているような感覚」を楽しんでもらえたらと考えています。一方で、表情が写っていると楽しそうな様子が伝わりやすくなるので、顔を写して問題ない方は積極的に写すことでバリエーションを増やせると思います。
Point④「余計なものを入れない」と「余白を入れる」
構図を決める際、「余計なもの」と「余白」を意識しています。
- 余計なものを入れない:「余計なもの」は、他の観光客や看板、ポールなど、画角内に入ってほしくないものです。それらが入ってしまうと、その場所の魅力が伝わりにくくなってしまいます。特に動画は後から消すのが難しいので、人がたくさんいる場所などは避けて撮影するようにしています。困ったときはアップ気味やローアングルで撮影すると、人が写りにくくなります。
- 余白を入れる:「余白」は写真の中の被写体以外の空間。引きで撮る際は、余白があることでロケーションの広大さや美しさがより伝わると考えています。余白の入れ方として、広い空が印象的な場所では青空がたくさん入るように意識しています。あくまでも景色が主役なので、人を入れるときは主張しすぎないような大きさで写すのもポイントです。
動画撮影のポイント
普段写真を撮るタイミングで動画撮影ボタンを押すだけで簡単に撮れるので、これまで動画を撮ってこなかった方もぜひチャレンジしてみてほしいと思います。
なお、縦位置は水平垂直が取りにくいため、水準器表示をして確認しながら撮影するのもポイントです。
動画撮影時の設定
現状のInstagramリール動画の仕様はこちら(2023年10月時点)です。フレームレートは30p(またはFPS)以上、解像度は720ピクセル以上の必要があります。
それを踏まえ、私は以下に設定しています。
- 画質:4K(3840×2160)。編集後に書き出す際は縦1980×横1080にすることが多いですが、撮影時点では極力高画質で記録しています。
- フレームレート(1秒間のコマ数):30p。スローにすることを想定している場合は60pに設定します。
- シャッタースピード:1/60秒(一般的にはフレームレートの2倍分の1秒がちょうどいいとされています)。
- F値:ぼかしたい場合は小さく、全体にピントを合わせたい場合はF7.1前後に。
- ISO感度:できるだけ低く設定。
Point①撮影時間は長めに
後からリールを作る際に「もう少し長く撮っておけばよかった…」と後悔しないためにも、気持ち長めに。1カットあたり、できれば7~10秒ぐらいは撮影するようにしています。
Point②手ブレに配慮した撮り方
動画は、手ブレがあると内容よりも気になってしまいます。そのため、手ブレに配慮した撮り方が必要です。
手持ちで撮る場合、カメラに手ブレ補正があってもゼロになるわけではありません。まずはカメラを動かさず、被写体が動いているシーンを撮るのがオススメです。その際、脇を締めてファインダーをのぞいて、しっかり固定しながら撮影しています。
例えば、風鈴や布が揺れる様子、人が歩いている様子、草花が風で揺れる様子や木漏れ日の動きなど。飲み物などは手に持って動かしたり、テーブルに置いてストローで混ぜるなどで動きを出すことができます。
手ブレが気になる際は後からスローに
カメラを動かして撮る際にどうしても手ブレが気になる場合は、60p以上で撮影してスローモーション対応できるようにしておくと安心です。
今回のリールでは、景観の美しさや広大さを伝えるため水平に動かすカットを入れました。カメラを動かさずに撮影した動画がほとんどの中、横の動きでメリハリをつける目的もあります。
ネックストラップをピンと張ってブレを極力抑えながら、同じスピードでカメラを左右に動かすように意識しました。スピードが途中で変わると違和感が出てしまいます。ゆっくり同じ速度で動かし続けるのは難しいので、スムーズに動かせるスピードで、速すぎた場合は後からスローに調整します。
Point③撮って出しでいい色味を目指す
後からカラーグレーディングで色調整を行うのは、初心者の方にとってハードルが高いと思います。そこで、編集なしでも自分好みの色味が出るように、コントラストや彩度、ピクチャーコントロールなどカメラの設定を調整してみましょう。
左:調整前、右:調整後
明るくやさしい印象に仕上げるため、以下の設定にしました。
[露出:+1~1.7程度、ピクチャーコントロール:スタンダード、コントラスト:-2、明るさ:+1、彩度:+1]
ぜひ参考にしてみてください!
※完成動画は、さらにDaVinci Resolveで微調整しています。
旅撮影における機材選び
特に動画はスマホで撮る方も多いと思いますが、カメラで撮ることで美しいボケ感や色味、立体感を表現でき、旅先の魅力を鮮明に伝えることができます。
- カメラ:軽く、手持ちしやすいほうが、旅を楽しみながら撮影できます。手ブレ補正も大事です。縦に構えて撮る際、横に構えるよりもブレやすくなるため、補正がしっかりした機材が◎。
その点、今回使用した Z f はグリップがあり持ちやすく、強力な手ブレ補正をそなえています。スマホアプリの「SnapBridge」により遠隔でシャッターが切れるため自撮りしやすく、バリアングル式画像モニターで写りの確認もしやすく非常に便利です。
- レンズ:せっかくカメラで撮るならボケ感のある動画を入れたいので、F値が小さいものが理想です。今回はNIKKOR Z 40mm f/2(SE)をメインで使用しました。携帯性に優れたコンパクトサイズで、広すぎず狭すぎない絶妙な焦点距離なので、1本で広い風景やクローズアップした撮影ができます。
- 三脚:セルフで誰かに撮ってもらったような自然な画角にするには、自身の身長と同じぐらいかそれ以上まで伸ばせる三脚が◎。持ち運びが苦にならない、比較的軽量なカーボン製がオススメです。なお、小さい三脚は移動に便利ですが、撮影時の画角が限られる上に、カメラを縦位置にすると安定しない可能性があるため注意が必要です。
- その他:天気のいい屋外では、白とびしないようNDフィルターをよく使います。NDフィルターはレンズから入る光の量を減らす効果がある、サングラスのようなものです。使用しているのは、減光度合を調整できる可変NDフィルターで、レンズの口径に合わせてステップアップリングをつけて使うようにしています。
※動画撮影におけるNDフィルターの使い方はこちらでも紹介しています。
旅の写真・動画でリールを作るポイント
リールは以下の流れで作成しています。
【リール作りの流れ】
- 写真で作るリール:①曲を決める→②写真をどんなテーマでまとめて紹介するか考える→③順番とバランスを考えて、曲に合わせながら写真を入れる→④簡単なテキストを入れて完成(①と②が逆の場合も)
写真を素材にしたリールは、Instagramのアプリ内で作成しています。挿入した曲を聴きながら、かつ波形も見ながら再生時間を調整できるため、曲のテンポに合わせたカットの切り替えが可能です。
Instagram画面
使いたい曲のテンプレートを活用すると便利!
Instagramリールには「テンプレート」があります。テンプレートの曲と各再生時間に自身の素材を当てはめるだけでリールが作成できるという便利な機能で、使いたい曲のテンプレートがあった場合にそれを活用すると簡単に作れます。
Instagram画面
テンプレートとして使えるリールは「テンプレートとして使用」と表示されます。また、リール作成画面で「テンプレート」をタップするとオススメが表示されます。
- 動画で作るリール:①使いたい動画から、ざっくりですが尺やテンポを考える→②合う曲を探す→③順番とバランスを考えて、曲に合わせながら動画を入れる→④簡単なテキストを入れて完成
動画はデータ容量が大きいので、PCで編集することが多いです。PCでは「DaVinci Resolve」で編集しています。
【音源】流行りの曲&テンポがいい曲を選ぶ
より多くの方に興味を持ってもらえるよう、トレンドの曲を選ぶことを意識しています(もちろん、お好きな曲でOKです!)。
Instagramリールの音源ページで試聴できますし、実際にフィードに表示されているリールから探すこともあります。その中から自分の作りたいリールとイメージが合い、長さが合いそうな曲を選びます。
今回は明るくポップなイメージが合う場所だったので、テンポのいい曲を選びました。
- 写真を素材にした場合の選曲
リズムがハッキリしているものを選ぶと、写真の切り替えタイミングが合わせやすく、見てもらいやすいリールになると思います。
歌があると歌詞の内容と合わない場合も多く、間奏やイントロなどの部分を使うことも多いです。
- 動画を素材にした場合の選曲
テンポのいい曲を選ぶことで、旅の楽しそうな雰囲気を表現できます。テンポがいいと1カットを短尺にでき、多少手ブレが気になる動画でも問題なく使えることが多いのも理由の一つです。
選曲:Jane & The Boy「Starry Eyed」
※ライセンスフリーの音楽サイト「Artlist」で音楽をダウンロードするには有料版の契約が必要です。
いくつものシーンを短時間で切り替え、多彩なスポットがあることを表現できると思い選びました。歌の有無はそこまで重要ではありませんが、歌があるほうが明るさや楽しさをより伝えられると考えています。なお、日本語の場合、歌詞と動画が合っていないときに目立ってしまうので注意が必要です。
【素材】冒頭にメインを入れ、前後のメリハリを意識
トータル時間は10~30秒程度で区切りよく終えるように、曲が中途半端にならない長さにします。短すぎると魅力を伝えきれないですし、長すぎると素材が足りなくなる場合もあります。
素材は以下をポイントにして選び、曲のテンポ・長さに合わせて入れていきます。
- 冒頭に旅のメインカットを入れる
- 同じようなカットを連続させない
Point①冒頭に旅のメインカットを入れる
ショートムービーは、冒頭2~3秒で「見てもらえるかどうか」が決まると感じています。そのため、冒頭にいちばん見てもらいたい数カットを入れるようにしています。
- 写真で作るリール
- 動画で作るリール
※動画のキャプチャ
今回のリールでは、見晴らしのよさやカラフルで明るいイメージの素材を入れました。「カメラを使って」というサブテーマもあったため、動画で作るリールの2カット目にカメラを持つシーンを入れています。
なお、曲によっては一部分だけ長くなる場合もあります。長めに表示される部分には、お気に入りカットを入れるのもポイントです。
Point②同じようなカットを連続させない
多彩な旅のシーンを表現するため、連続して似ているカットは入れないように。例えば、人が入るカットを二つ入れたい場合、別カットを挟んだり、全身→手元と寄り引きを変えたりしています。また、カラフルな場所の場合、同じ色味が連続しないように気をつけています。
【文字入れ】シンプルにどんな内容か伝える
文字が入っているリールのほうが、内容が伝わりやすくなります。文字があることで、目を引く効果もあると考えています。
旅の魅力をきちんと伝える&動画の雰囲気を壊さないためにも、文字はできるだけシンプルにするのがポイントです。
※動画のキャプチャ
【カバー画像】旅先の特徴が伝わるカットを選ぶ
カラフルなスポットや青空がきれいなロケーションなど、旅先で撮影した中でもっとも魅力が伝わるカットをカバーとして選ぶようにしています。また、文字が入っている場合、文字の視認性がよいカットを選ぶことが多いです。
左:写真で作るリールのカバー画像、右:動画で作るリールのカバー画像
あらためて完成したリールを見てみましょう!
写真で作るリール
動画で作るリール
カットの切り替わり方につける効果(トランジション)にこだわることもできますが、純粋に曲に合わせて並べていくだけでも十分素敵なリールができますよ!
Photographer's Note
写真も動画も簡単に撮れる分、カメラロールにどんどん貯まってしまって、見返すことがなかなかできないことも多いと思います。その写真や動画を「リール」にすることで、アルバムを見返すように、何度でもそのときの思い出が鮮明によみがえります。
また、リールは自分が旅した場所の魅力を、より多くの人に伝えられる可能性を持っています。たくさんの写真や動画を入れることで、一度に多面的な魅力を伝えられるのも気に入っているポイントです。
ぜひみなさんも、旅先で撮影した写真や動画でリールを作ってみてください!
そのとき、この記事が少しでも参考になるとうれしいです。
旅撮影でNikon機材を使ってみて
今回は Z f とともに旅をしてきました。
Z f はまず、見た目がとにかくかわいいです。
フルサイズ機はこれまでも使ってきましたが、カメラそのものを撮ろうとはあまり思わないようなシンプルなデザインのものばかりでした。Z f はクラシックなフィルムカメラのようなデザインがとても素敵で、ファッションとしても持って行きたくなります。
しかも強力な手ブレ補正があることに驚きました。カメラを動かして動画を撮ったときも手ブレが気にならず、動画を撮るのがますます楽しくなりそうです。かわいい見た目ながらグリップがしっかりしているので、持ちやすく、写真・動画ともに活躍してくれます。
メインのレンズは、Z f と見た目の統一感もあるNIKKOR Z 40mm f/2(SE)を使いました。
広すぎず狭すぎない画角なので、風景・人・カフェ・木漏れ日など、どんなシーンにも対応でき、このレンズ1本でほぼ撮り切ることができました。広すぎないからこそ、他の観光客など余計なものが写りにくかったのもよかったです。
開放F値は2と小さく、ボケ感がほしいシーンにも十分です。単焦点としてとにかく軽く、動画撮影もスムーズでした。レンズ1本しか持って行けない状況であれば、間違いなくオススメできるレンズだと思います。
今後は Z f を持って、1泊2日の旅などでさまざまなシーンの撮影をしてみたいです。花畑やカフェなど、屋外でも屋内でも素敵な写真・動画を撮ることができるカメラだと思うので、秋のおでかけシーズンを一緒に楽しみたいです!
【今回の旅先】びわこ箱館山
カラフルなカーテンや虹色の風鈴などかわいいスポットから、琵琶湖を望む絶景、花畑やブランコ、木漏れ日の中でのんびりできるカフェなど、一つの場所に魅力がぎゅっと詰まっています。
お気に入りカット
抜けるような青空と緑色の小さなコキアが並んでいる景色がかわいらしくお気に入りです。その中を歩いているところを撮影することで、旅の楽しさを表現できたと感じています。
所在地:滋賀県高島市今津町日置前
開園時間:9:00~17:00
https://www.hakodateyama.com/green/
※虹のカーテン、風鈴のよし小道、展望デッキ、BIWAKO SWINGは2023年11月12日(日)まで設置されています。
※営業日はシーズンごとに異なります。詳細情報はHPをご確認ください。注意点:通行の邪魔にならないように、また同じ場所を占有しないなど、マナーを守って撮影しましょう。
※こちらに掲載している情報は、2023年10月11日現在のものです。
Yuri
大阪在住のフォトグラファー。「ふんわりかわいい写真」をテーマに、旅先の魅力やカメラの楽しみ方を発信。観光プロモーションやウエディング・家族写真、企業SNSの撮影をはじめ、記事執筆、写真セミナー講師など幅広く活動中。