女性の「かわいい」を引き出す写真家・花盛友里さんのルームツアー「生活の場はシンプルに。作業の場は好きなものが詰まった秘密基地」

f:id:nicostop4:20210519132855j:plain

部屋は、暮らす方の人となりが見えるもの。独自の視点で世界を切り取るフォトグラファーは、一体どのような部屋を作り、暮らしているのでしょうか? 部屋から見えるその人らしさは、きっと写真にも映し出されているはず。

そこで今回は、女性誌や音楽誌、広告で主にポートレートの撮影を手がけるフォトグラファー花盛友里さん(@yurihanamori)のご自宅を訪問! リビングと仕事部屋、お気に入りのアイテムをご自身のお写真でご紹介いただきました。

D4S AI AF Nikkor 50mm f/1.8D
D4S AI AF Nikkor 50mm f/1.8D

D4S AI AF Nikkor 50mm f/1.8D

左)キナリノ「キナリノマガジン No.156」 右)GISELe

花盛さんは写真集『寝起き女子』、『脱いでみた。』などを発表し、健康的で飾らない女性のかわいらしさを引き出した作品が多くの女性から共感を集めています。2021年3月にはランジェリーブランド『stock』をスタート。さらに私生活では、2人の男の子を育てる母親としての一面も。

D4S AI AF Nikkor 50mm f/1.8D
D4S AI AF Nikkor 50mm f/1.8D
D4S AI AF Nikkor 50mm f/1.8D

左)U by SPICK&SPAN OCTOBER '20 ISSUE 右)AKIARIM

フォトグラファーとして幅広く活躍される花盛さんの、お部屋作りへのこだわりとアイテム選びのポイント、それらにまつわる創作へのインスピレーションを伺いました。

家族に愛される&撮影にも使えるアイテムを揃えたリビング

―今日はよろしくお願いします。窓が大きくて明るいリビングですね! 広くてすっきりした印象です。

f:id:nicostop4:20210519132742j:plain

花盛友里さん(以下、花盛):リビングは家族の場所で、生活の場所なので、自分のものをあまり多くは置いていないんです。もし今、一人暮らしをしていたら、壁をポスターや絵、写真でもっと飾っていると思うし、好きなものに囲まれた生活をしているでしょうね。

もちろん、気に入っていないものを妥協して置いているわけではないですよ! 小物は「撮影にも使えるもの」という観点でも吟味しますが、まずは家族にとっても自分にとっても、好きなアイテムを置いています。

大きなラグ:撮影の万能アイテム!

f:id:nicostop4:20210519132747j:plain

―リビングの主役と言えるくらい目を引く、大きくて珍しい柄のラグですね!

花盛:撮影でもよく使うアイテムです。柄が超かわいくて一目惚れしました。ポートレート撮影のときにベットの上に敷くといいアクセントになるんですよ。『脱いでみた。』などの作品撮りでは、Airbnb(エアビーアンドビー)やホテルを使用することが多いので、毎回違う部屋に見えるようにラグやキルトでアレンジしています。物撮りするときに敷いたり、壁に貼ってタペストリーとして使ったり、ブランケットのように身体に巻いてもいい。布は、撮影アイテムとして万能ですね。ときめく布小物がないか、常にアンテナを貼っています。

 

―布小物を選ぶポイントはなんでしょう?

花盛:基本的には、派手でアクセントになるものを。手に取らないのは、量産型のものや、ベーシックな柄です。そういったアイテムや柄にはそれ自体にすでに印象がついてしまっているので、私らしい表現の邪魔になるから。派手だけれども、あまり見かけない、撮影のサポートにも使える、という観点で選びます。

フィットネス器具:頭を空っぽにできる運動の時間

f:id:nicostop4:20210519132752j:plain

Fitness Mirror

―これは全身鏡ですね。……あれ、人が写っています! モニターでしょうか?

花盛:これはミラー型のモニタにインストラクターが投影されて、それを見ながらトレーニングできる「Fitness Mirror」というデバイス。仕事はタクシー移動ばかりですし、年齢による体の変化を感じることもあって、週に1回、ピラティスに通うなど、意識して運動の時間を作っていますね。体力的に撮影が辛いと感じたことはないですが、フォトグラファーは体が資本ですから。

道を歩いていても仕事や創作のことを考えてしまう性格の私にとって、自分の体に意識を集中して運動しているときは、何も考えないでいられる大切な時間。仕事も創作も大好きですが、ずっと考えているのはやっぱりしんどい。生活の場と仕事の場を分ける以外にも、仕事のことを忘れられる時間を意識的に作ることが私にとって必要なんでしょうね。

植物とフラワーベース:飾る心の余裕が愛おしい

f:id:nicostop4:20210519132757j:plain

―お花を飾っていらっしゃるんですね。花瓶がとてもユニークです。

花盛:花は、飾るだけでシンプルに気分が上がります。すごく疲れて帰ってきても、部屋に入って目に留まると元気が出るんです。自分で手掛けたアパレル「STOCK」のブランド名も、花の名前に由来しています。昔は、わざわざ花を買うってことが信じられなかったのだけれど、今は花を選ぶ時間が大好き。花を飾る心の余裕を意識的に持ちたいと思っているのかもしれません。

花は仕事の撮影でもしょっちゅう使います。ロケやハウススタジオなど自然光での撮影で、雨や曇りで光量が足りないときでも、花があるだけで絵が明るく華やぎますから。花瓶もこだわって探したお気に入りで、自前のものを撮影に使うことも。布と同じく、量産型じゃないもの、シンプルすぎないもの、柄のある印象的なものを選びます。

f:id:nicostop4:20210519132918j:plain

D4S AI AF Nikkor 50mm f/1.8D

©Seventeen2020年5月号/集英社

f:id:nicostop4:20210519132801j:plain

―グリーンの観葉植物も、家の至る所に置かれています。

花盛:リビングに2つ、キッチンに1つ、土間にもいくつか。どれも育てるのが難しくない種類で、たくましく育ってくれています。キッチンの植物には、毎朝「おはよう、今日もがんばろうぜ!」って挨拶してみたり。人でも植物でも、生命が育つことって素敵だと思います。成長する過程の命を見られることが癒しです。

作業部屋は、自分らしい自分に戻れる「好き」を詰め込んだお城

f:id:nicostop4:20210519132806j:plain

―それでは作業部屋にお邪魔します。広いリビングとは雰囲気の異なる、コンパクトなお部屋ですね。

花盛:子どものころから秘密基地に憧れていたので、あえて狭くしてみました。生活の中に自分のための場所があるのは嬉しいですね。仕事と写真が大好きだから、それに集中できる唯一の場所で、自分の城。リビングにものを置かない分、作業場には自分がハッピーになれる好きなものをどんどん詰め込んでいます。

とはいえそうやってアイテムを置いていったら、最近はものが増えすぎてしまってかなり手狭になりました。アシスタントさんもこの部屋で作業することもあるので、もう少し広くするか、自宅とは別に仕事部屋を探すか検討中です。

本:世界が広がる体験が作品のインスピレーションに

f:id:nicostop4:20210519132811j:plain

―作業スペースの周りが棚でぐるりと囲われているのも、秘密基地のようでわくわくします。本がたくさん収められていますね。読書がお好きなんですか?

花盛:年間で100冊くらいは読みたいな、と思っているくらい本は好きです。移動中や撮影のメイク待ち、休日の時間があるときなど、隙間時間で読んでいます。棚に並んでいるのは今年に読んだもの。

本は自分の知らなかった世界を教えてくれるアイテムです。例えば原田マハさんの絵画をテーマにした数々の小説作品は、これまで想像もしなかった絵画の魅力や鑑賞の仕方を教えてくれました。ジャンルはフィクションの小説が好きで、読書を通じて想像力を培ってきたと思います。小説を読みながら、「こういう写真が撮ってみたい」という、インスピレーションを受けることもあります。

ラジオ:家も撮影現場も、音楽をかけるのが習慣

f:id:nicostop4:20210519132815j:plain

―古そうなラジオカセットがありますが、現役ですか?

花盛:愛用しています。少し古い見た目のものが好きなんです。電波の調整が悪いときはカセットを聞くんです。ラジオは作業部屋でも、家事をするときもずっとかけていて、キッチンにも置いてありますよ。

f:id:nicostop4:20210519132820j:plain

―生活にとてもよく馴染んでいる佇まいですね。

花盛:中学を卒業してアメリカに留学したとき、上京したばかりでテレビがなかったとき。いつもラジオを聞いていて、とても身近な存在です。DJが友だちのようにおすすめの音楽を教えてくれるところ、スイッチを押したらすぐに音楽が流れるところがお気に入り。地震情報が流れるときでさえ、いつも聞いているDJの声が安心させてくれます。

聞いているのは主に音楽番組です。音楽は大好きで、撮影でもまずは音楽をかけます。雑誌の媒体に合わせて曲のテイストを変えることはありますが、基本的には自分の好きなものを流していますね。モデルさんの緊張も解れますし、音楽の話題で盛り上がることもありますから。子どもと一緒にお風呂入るときも90年代の音楽をかけて、バスタイムを楽しんでいます。

カード、写真:好きなものを壁にペタペタ

f:id:nicostop4:20210519132824j:plain

―このお部屋の壁にはポストカードや写真がたくさんレイアウトされていて、賑やかな雰囲気です。

花盛:好きなものに囲まれていたいから、いろいろと壁に貼るのが好きです。写真は外国を旅したときに撮影したもの。自分で手焼きしたカラープリントだからとても愛着があります。額縁に入っているのはドイツを旅行で訪れたときに撮りました。旅って、楽しいですよね。知らない街で知らない人に出会える。子どものころから冒険が大好きでずっと外国に憧れていたし、映画は『スタンド・バイ・ミー』に夢中でした。だから留学もしたし、何度も外国を旅しました。

本を読むことは好きで、読書からしか得られない経験もあります。けどそれとは別に、例えば聴いたことない歌手のTシャツを着ることや、行ったことない場所について語ることは苦手。実際に自分の目で見て、耳で聞かないと分からないっていう感覚もあって、だから私は旅をしたいって思うんです。

f:id:nicostop4:20210519132830j:plain

右上はドイツ、右下はモロッコにて撮影

一眼レフカメラと単焦点レンズ:こだわりの絵作りを叶える頼れる相棒

f:id:nicostop4:20210519132836j:plain

―「D4S」ですね。レンズは「AI AF Nikkor 50mm f/1.8D」。こちらはお仕事のときに使われているとか。

花盛:仕事の撮影で使っているカメラです。スペック重視で選んだ頼りになる相棒のような存在。手元で焦点距離を調整できるズームレンズは使わず、いつも単焦点レンズだけ。納得のいく角度と距離を自分で見つけたいから、かなり動き回って撮影しますね。あっちからも撮りたい、こっちからも撮りたいってなるので、一箇所に留まっていることってあんまりないかもしません。撮影は気分上げて臨みたいから、ストラップのかわいさには仕事用のカメラに付けるものでもこだわってますよ。

アクセサリー:身にまとうものが私らしいと、私らしく撮れる

f:id:nicostop4:20210519132841j:plain

―作業部屋にアクセサリーがかけられています。

花盛:置ける場所がなくなって溢れたものをPCの横にかけています。ここで毎日「どれにしようかな」と、その日身に着けるものを選ぶのが至福の時間。

アクセサリーは昔から大好きです。仕事で疲れているときでも、ふと身につけているアクセサリーが目に入ったらハッピーになります。自分の機嫌をとるための大切なアイテムですね。アクセサリーだけじゃなく、服で自分を表現するのも私の仕事の一部だと思っていて。その場にふさわしい服装でいることは必要ですが、フォトグラファーだからと言ってフォトグラファーらしい格好はしたくない。ファッションに限らずですが、自分らしい好きなアイテムを持ってこそ自分らしい写真を撮れると思います。

f:id:nicostop4:20210519132846j:plain

撮影中の花盛さんのファッション

誰かの「思い」を表現する傍ら、「自分の表現」を忘れないようしつらえて

f:id:nicostop4:20210519132850j:plain

―お部屋作りと花盛さんの創作活動のつながりを教えてください。リビングには普段の撮影に使えるものや暮らしの中で大切なものが、作業部屋には花盛さんが昔から好きなものや憧れが詰まっています。いまとこれまでの花盛さんが、部屋づくりを通じて繋がっているようなイメージを持ちました。

花盛:お仕事で広告や雑誌の撮影をさせていただくことはとても好きです。仕事は誰かの「思い」を代わりに表現する作業だと思います。それができたとき、とても達成感がある。

でも毎日忙しく仕事だけをしていると、自分が表現したいものが分からなくなることがあります。家事や育児をこなして、時間に追われることも。だから「私はこういうものが好き」っていうことを忘れないために、自分の写真や気に入ったラグ、花、本、ラジオ……そういうもので部屋を飾っているのかな。

部屋の中だけは自由です。普段の仕事とファッションでは取り入れられない好きなものであしらって、作品を作って。そうやって、本来の私を取り戻している感覚です。

 

撮影:花盛友里(@yurihanamori

Supported by 東京通信社 

花盛友里

花盛友里

大阪府出身。2009年にフォトグラファーとして独立。雑誌や広告を中心に活躍するほか、写真集『寝起き女子』『脱いでみた。』を発表。女の子の「ありのままの姿」を切り取った作品で注目を集める。現在も『脱いでみた。』シリーズの撮影を続けている。2021年にアンダーウェアブランド「STOCK」を立ち上げるなど、幅広く活躍している。