みなさん、こんにちは。フォトグラファーのjyota(@jt.333)です。
僕は、大学生のときに出席した結婚式で撮影しているフォトグラファーに興味が湧き、新卒で結婚式場の専属フォトグラファーとして就職しました。フリーランスになった今も撮影を続けていて、ウェディングフォト歴は4年になります。
ウェディングフォトでは、前撮り・結婚式・指輪撮影などシチュエーションがさまざまで撮影位置の制約もあるため、各状況に対応できるレンズの使いわけが大事です。その中でも、指輪撮影では接写できるマイクロレンズが活躍します。
今回はNIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR Sを実際の現場に持っていき、指輪撮影に加えて、前撮りや結婚式でも使用しました。プライベートでも使ってみたので、仕事と日常の両方から見たマイクロレンズの魅力を紹介したいと思います。
ウェディングフォト現場で活躍するマイクロレンズ
【指輪撮影】マクロ撮影で、指輪の輝きを強調
指輪撮影では、新郎新婦さんが準備されたブーケやリングピローなどのアイテムを使い、自らスタイリングとライティングをして撮影します。特にマイクロレンズは指輪の存在感を強調できるため、普段から指輪撮影で使っています。
最大で等倍撮影が可能で、ここまで寄れるとダイヤの繊細な部分まで写り、驚くと思いますよ!
NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR Sを使うのははじめてでしたが、描写力に優れ、大きくなめらかなボケが印象的です。最短撮影距離は0.29mと短く、指輪に近づいて撮ると後方の光源はボケて輝きを増し、花びらやぼかしたい色味のものを前ボケにすると世界観を演出できます。ファインダー越しで見るととてもきれいで、テンションが上がりながら撮影していました。
指輪撮影のポイント
結婚指輪や婚約指輪をご自身で撮影したい方も多いと思いますので、ここで撮り方のポイントを紹介したいと思います。
- セッティング:明るい写真を撮りたい場合は、ライティングの必要がない「自然光」が入る場所がオススメです。このとき、結婚式で使ったブーケや装花、装飾などを一緒に添えるとアクセントになりますし、記念にもなります。親御さんの手作りのリングピローなどを持ってきてくださる方もいるのですが、写真を見た親御さんもきっと喜んでくれると思います。
- 設定:開放F値で撮ると、背景や前景にきれいなボケが生まれて臨場感も出ます。俯瞰で撮るときは花などを前ボケにするのがコツです。マクロ撮影ではブレが写りに大きく影響するのでシャッタースピードを極力速く、「1/焦点距離」を目安に設定。このレンズではフォーカスはAFでも問題ありませんが、暗所などAFが迷う場合にはMFにしたほうが正確に写せます。
自然光がない場所で撮る場合はライティングが必要になりますが、身近なライトでも十分です。上の2枚の写真は100円ショップでも売っているイルミネーションライトを使用しました。セッティングが簡単な上に、マイクロレンズは大きくボケるので雰囲気よく写すことができます。
こちらは、指輪をスマートフォンの上に置いて、後ろからライティングしています。画面に反射した光が際立つようにアングルを調整すると、幻想的な雰囲気を表現できるのでオススメです。
このように式で使ったアイテムや身近なもので世界観をつくりこめるので、ぜひ自分らしい指輪撮影にチャレンジしてみてください!
【前撮り】中望遠のボケと圧縮効果で主役を際立たせる
前撮りは、さまざまなシチュエーションを想定して、対応できるレンズを用意していきます。
普段は50mm/16~50mm/85mm/130mm/70~200mmを使っているのですが、今回はそこに中望遠マイクロレンズを加えました。
前撮りは自然の中での撮影が多く、望遠によって豊かなボケ感で主役の2人を引き立てることができます。NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR Sは人と自然をナチュラルにきれいに描写でき、開放F値は2.8ですが十分なほどよくボケます。
圧縮効果により、空間を自然で埋め尽くせるのも望遠を使うメリットです。
上の写真は山道で撮影したのですが、圧縮効果により新婦が緑で囲まれた構図をつくり、大自然感を演出しました。
そして、このレンズは想像以上に軽くて、カメラ3台持ちでも全然疲れませんでした。ピントの合うスピードが速くて取り逃しがないのも、カメラ複数台持ちの状況ではとても助かります!
【結婚式】「近づけない・暗い」状況下でも雰囲気よく写せる
結婚式中のスナップでは、レンズ交換をしている余裕はないので、カメラ2~3台にそれぞれ1本レンズをつけて臨みます。
メイン1台に50mm単焦点を、チャペルや披露宴会場の臨場感を出すため16~24mm程度をカバーできる超広角ズームを。フォトグラファーの移動制限がある場合は、どこからでも撮影できるように望遠レンズを3台目につけることが多いです。今回は3台目に中望遠マイクロレンズをつけて、実際の結婚式を撮影してきました。
近づけないシーンでも主役を際立たせながら撮影
チャペルのバージンロードなど近づくのが難しい場合に、105mmの望遠は便利です。入場シーンや動きのある場面で遠くから被写体を狙えるため無駄に動くことなく撮影に集中できます。効果的にボケるので、背景ボケや前ボケで新郎新婦だけを際立たせられるのもポイントです。
また、望遠で引いて撮るとパースがかからずナチュラルな雰囲気で切り取れますし、距離を確保できるため新郎新婦や出席者がカメラを意識しない状態で撮れるというメリットもあります。
特にお子さんは離れて望遠で撮ることで、自然な表情を撮れる確率が上がりますよ。
暗い中でも式の様子を華やかに写し出す
披露宴中は照明が消えたりついたりと明るさが目まぐるしく変わっていきますが、このレンズは暗所でもピントが迷子になったりブレたりすることはありませんでした。
ゲストとして出席したときに「撮影した写真がブレてしまっていた」という失敗はよくありますが、このレンズは安心して使えます。
設定のコツ
F値は基本開放に固定して、シャッタースピードは手ブレしないよう1/160~1/200秒は確保。ISO感度だけをその場に合わせて変えると、明るさの変化に対応しやすいです。
暗所での描写も優れていて、暗つぶれや白とびもなく、ディテールがしっかり残ります。空気感がより伝わりますし、レタッチでの仕上げもしやすかったです。また、暗い中ではキャンドルなどの光源を望遠で大きくぼかすことで華やかさを演出でき、新郎新婦の仕草を際立たせることもできます。
こちらは、新婦さんがサプライズ映像で涙している瞬間を狙ったのですが、キャンドルや装花を前ボケに入れることでナチュラル感を演出しました。
式中にマクロ撮影としても活用
式中はウェディングケーキや卓上の装飾なども撮影するのですが、マイクロレンズならぐっと寄ることができ、新たな視点で撮影することができました。引きだけでなく、こういった寄りのカットが入ると、式の写真をまとめる中でメリハリを出せます。
日常の見え方が変わるマイクロレンズ
ウェディングフォトのさまざまなシチュエーションで活躍してくれたマイクロレンズを、日常でも使ってみました。
【マクロ撮影】日常を新たな視点で楽しめる
普段見慣れているものも思い切り近づいて撮影すると、実際に目で見えている世界とマイクロレンズを通して見える世界は全然違っています。
上の写真はレモネードですが、右のようにマクロ撮影すると炭酸の気泡一つ一つまで写し出すことができ、目で見ているときとは違うところに注目できておもしろいです。
水滴がついたベリーを最短撮影距離で撮影してみました。奥のベリーや水滴をぼかすことで彩りや輝きが増しています。
特に水滴は周囲の風景を反射したり光で輝きが増したり、「“虫の見ている世界”はこんなにきれいで輝いているんだな~」と、ファインダー越しに見る光景にハマってしまいました。
写す範囲を広げたい場合は通常より絞りこむ
こちらは、レモンの実の水滴と手前の葉の水滴にピント合わせたかったのでF8に絞りました。マクロ撮影時はカメラと被写体の距離が非常に近く想像以上にボケるため、ピントの合う範囲を広げるときは普段より絞りこむのがコツです。
【中望遠】いいなと思った部分を際立たせるようにスナップ
マイクロレンズは単焦点レンズとして使えるので、スナップやポートレートにも向いています。
風景を離れた位置からクローズアップしたり、近づいて接写したり、マイクロレンズ1本でたくさんのバリエーションを撮影できます。
写りは、逆光で光を多く取り入れればやわらかい雰囲気に、暗所ではしっとりした色味のいい雰囲気になり、どんな場所にも連れていけるレンズだと感じました。
レンズ1本だけでスナップするときは24~70mmのズームレンズが多いのですが、105mmならより遠くまで撮れるのでいつもの風景も違って見えてきます。
ボケ感も強くなるため、気に入った部分を引き立たせる画づくりができ、人を入れて撮るときには特に際立ちます。中望遠で大きくぼかすと現実感が薄れるのか、自分のイメージした世界観を表現しやすくなるのも気に入ったポイントです。AF性能もよく、すぐに満足できる写真が撮れるので、さくさくスナップできました。
また、開放F2.8のこのレンズは暗所にも強いので、夕方~夜のスナップにもオススメです。夕焼けに染まるグラデーションや日没後の青く染まり出す空などを繊細に描くことができます。
夜になり人と月を一緒に写す際も、圧縮効果で月を引き寄せて撮影できるのが中望遠の強みです。
特に暗い部分だけを切り取り、アンダー気味に仕上げるのは自分の中では新鮮な楽しさがありました。右の写真ではISO100でかなりアンダー気味に撮影して、反射面のグラデーションを際立たせています。
Photographer's Note
中望遠マイクロレンズ「NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S」を使用してみた一番の感想は、「非常に便利」。さまざまなシーンに撮影距離を気にせず対応でき、イメージ通りに撮れるので、仕事で持っておきたいレンズです。
日常スナップでは、中望遠として普段より寄った切り取り方に加えて、ブルーベリーやレモネードをマクロ撮影するととても繊細な部分まできれいに描写でき、驚きがありました。
いつもの被写体を新たな視点で見つめられる「マイクロレンズ」。
今回はウェディングフォトやプライベートで使用しましたが、インテリアや店舗撮影、商品や料理撮影など幅広く使ってみたいです!
Supported by L&MARK
jyota tomonori
関西在住の写真家。彼女の写真をメインにしたSNSが人気で、Instagramのフォロワーは4.7万人を超える(2019年4月現在)。彼女のmisuzuさんと一緒に開催している動画講座も人気。