“主観”と“客観”の使い分けを意識しよう!日常を青春映画のワンシーンのように残す5つのポイント

“主観”と“客観”の使い分けを意識しよう!日常を青春映画のワンシーンのように残す5つのポイント

はじめまして、tomosaki(@photono_gen)です。生まれ育った福井県の日常風景を背景に、青春の1ページや物語を表現した写真をSNSに投稿しています。ずっとNikonのカメラを愛用していて、Z 5のアンバサダーとしても活動中です!

 

Z 5、NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR
D5600、AF-S DX NIKKOR 35mm f/1.8G
(左)Z 5、NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR(右)D5600、AF-S DX NIKKOR 35mm f/1.8G
Z 7、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S
Z 7、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S
Z 7、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S

 

写真をはじめたきっかけは「友達との思い出をきれいに残したい」という思いから。今では、友達の他にも依頼をいただいた学生の方の青春を記録する活動もしています。卒業や学校行事などのハレの日はもちろん、何気ない日常も思い出として振り返ることができるのが青春写真の魅力です。

今回は「青春や物語を感じる写真」を撮る際のポイントと表現のアイデアを紹介します。

 

青春や物語を感じる写真の要素

青春や物語を感じてもらうために、多くの人の思い出にリンクする要素を写真の中にちりばめています。特に意識しているのが、次の3つです。

  • 構図
  • 時間帯

また、被写体の感情を想像してもらえるように、表情がわからないように写すのもポイントです。

【構図】視点を変えてシーンを立体的に見せる

「客観」と「主観」でとらえるとシーンに奥行きが生まれ、写真を見る人が世界観に入りこみやすくなります。このとき、前景・中景・背景の3層を意識して画づくりするとさらに臨場感が出ます。

  • 客観:被写体+風景を引きで写して状況を説明するカット
  • 主観:被写体が見ている景色をイメージしたカット

 

下の写真は、待ちわびた春の訪れにわくわくする様子をイメージして撮りました。何かに手を伸ばすポーズは、憧れや期待を表現したい場面にぴったりです。

 

Z 5、NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR
Z 5、NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR
Z 5、NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR

 

左は客観的にとらえたカット。主人公がわかりやすいように中心に配置し、ローアングルで地面を菜の花の前ボケで埋めて春爛漫な雰囲気を強調しました。前景:菜の花、中景:主人公、背景:桜の3層構造を意識して、空間を立体的に写しています。

右は主観的にとらえたカット。実際に目で見ている自然な印象になるようにパンフォーカス気味に。このときは空を広く見せたかったので焦点距離24mmですが、視野に近い35mmで撮ることが多いです。手に桜の影を写すことで光が強調され、春の日差しのあたたかさも感じられると思います。

【時間帯】青春を感じる晴れた日の日中か夕方

「青春の1ページ」を表現するには、空の表情や時間帯も大切です。私は青春といえば「青い空」と「放課後」を思い浮かべるので、晴れた日の昼間か夕方によく撮影します。

 

D5600、AF-S DX NIKKOR 35mm f/1.8G

D5600、AF-S DX NIKKOR 35mm f/1.8G

 

若さや活発さを表現したい場合は昼間がオススメ。太陽から遠い空(約90度の位置)が青くきれいに写ります。太陽に近いと白っぽくなってしまうので注意が必要です。

 

D5600、AF-S DX NIKKOR 35mm f/1.8G

D5600、AF-S DX NIKKOR 35mm f/1.8G

 

過去を振り返るような、懐かしく少し切ない雰囲気には夕方がぴったりです。夕日を直接画角に入れてフレアやゴーストを発生させると、記憶の中のような曖昧な描写になり、見る人の思い出とリンクする情景が生まれます。

【光】表現したいシーンによって光の向きを決める

光の向きによって、被写体やシーンの印象が変わります。

 

D5600、AF-S DX NIKKOR 35mm f/1.8G

D5600、AF-S DX NIKKOR 35mm f/1.8G

 

空を大きくフレーミングするときは、青がきれいに写る「順光」で撮ります。平面的で少しアニメチックな印象になるので、ポーズをつくると「絵にかいたような青春」を表現できます。

 

D5600、AF-S DX NIKKOR 35mm f/1.8G

D5600、AF-S DX NIKKOR 35mm f/1.8G

 

「斜光」で撮ると、被写体に立体感が出て映画のワンシーンのような雰囲気になります 。前後を想像させるために動作の途中をとらえて、視線の流れができるように放射線構図で切り取りました。

 

D5600、AF-S DX NIKKOR 35mm f/1.8G

D5600、AF-S DX NIKKOR 35mm f/1.8G

 

夕焼けを背景に「逆光」で撮ると被写体がシルエットになるため、顔の向きやポーズの選択肢が広がります。私は空のグラデーションなど背景の美しさを際立たせたい場合や、向かい合ったシーンなどを逆光で撮ることが多いです。

レンズの効果で非日常感をプラスする

日常の光景に非日常感を足すことで、シーンをよりドラマチックに演出することができます。そのために重要なのは、レンズの描写で風景を少しデフォルメすることです。ここでは、望遠ズームと単焦点、広角ズームの効果を紹介します。

【望遠ズーム】圧縮効果で風景の魅力を強調

望遠ズームレンズは、圧縮効果で風景の美しさや入道雲の迫力など、シーンの魅力を強調したいときに使います。

 

Z 5、NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR

Z 5、NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR

 

やわらかい午後の光が反射する海を、圧縮効果で引き寄せて透明感のある優しい雰囲気で撮りました。2人が歩く方向に空間を開けて放射線構図にすることで、風景に奥行きが感じられます。

【単焦点】描写力と適度な距離感が魅力

単焦点レンズは、繊細な描写やなめらかなボケで空間を立体的に表現し、映画のワンシーンのように切り取ることができます。焦点距離35~85mmくらいまでは、自然な距離感で周囲の空気感を引き出せるので、青春や物語を表現するのに欠かせません。

 

Z 5、NIKKOR Z 85mm f/1.8 S
D5600、AF-S DX NIKKOR 35mm f/1.8G
(左)Z 5、NIKKOR Z 85mm f/1.8 S、(右)D5600、AF-S DX NIKKOR 35mm f/1.8G

 

左の写真では視線の先をやわらかくぼかすことで主人公が際立ち、右の写真では透明感のある描写が見る人に波の音や温度を想像させます。

寄りでも引きでもほどよく周囲が写りこんで、ロケーションを生かすことができ、ドラマチックに表現できます。

【広角ズーム】広い風景や清々しい空を演出

Z 5、NIKKOR Z 14-30mm f/4 S

Z 5、NIKKOR Z 14-30mm f/4 S

 

田舎のよさでもある広い空や、ダイナミックな風景を表現したいときには、広角ズームがぴったり。広角端は14mm程度あれば、パースを生かして奥行きを強調したり、ロケーションを生かしたポツン構図で撮影できます。また、雲の少ない青空を撮るときにも広角ズームの出番です。大きな雲があるときは望遠で迫力を出しますが、雲がない場合は広角で青の濃淡を引き出すと清々しさを表現できます。

 

Z 5、NIKKOR Z 14-30mm f/4 S

Z 5、NIKKOR Z 14-30mm f/4 S

 

こちらは、卒業式の後に記念で撮影した1枚です。春らしい薄い雲が広がった空を背景にして、卒業後の明るい未来や自由を表現しました。堤防など高い場所に立ってもらうと、建物などが入らない角度で撮影しやすいです。

風景の特徴に合わせてボケ具合を変える

青春の思い出を表現するには「季節感」も大切。ボケ具合をコントロールして、シーンをより美しく見せるのがポイントです。

  • F値:絞り優先オートで、風景の特徴によってF値を調整しています。春や秋の彩りが印象的な風景であれば開放F値でボケの表現を生かし、夏や冬の立体感が重要な風景であればF4~11程度に絞ってパンフォーカス気味にします。

 

Z 5、NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR
Z 7、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S
(左)Z 5、NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR、(右)Z 7、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S

 

春の桜や秋の紅葉など、彩りが印象的な風景は、開放F値でふんわりぼかすと、風景の中の色の割合が増えて季節感を強調できます。このとき、暗い部分をボケで埋めるのがポイントです。

 

D5600、AF-S DX NIKKOR 35mm f/1.8G
Z 7、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S
(左)D5600、AF-S DX NIKKOR 35mm f/1.8G、(右)Z 7、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S

 

夏の入道雲や冬の積雪など、立体感を出すことでより魅力的に写る風景は、F4~11程度に絞ってパンフォーカス気味にします。キリっとした描写が強い日差しや寒さも演出してくれます。

 

その他の設定

  • ISO感度:基本的にISO100。動きのある被写体をパンフォーカス気味に撮りたい場合は、ISO200~400程度まで上げてシャッタースピードを稼ぎます。
  • 露出補正:白とびしないように-0.3補正で撮り、編集で明るくすることが多いです。

なお、走っている様子や水しぶきなどを写し止める場合は、シャッター優先オートで1/2000~1/2500秒を目安に設定します。

音楽やアニメ・季節からテーマを見つける

見る人に共感してもらえる写真を撮るには、テーマを決めて必要なものを用意するなど、撮影前の準備も大切です。撮りたいテーマを見つけるために、いつもしていることがあります。

  1. 音楽を聴く:歌詞から風景が浮かぶことが多いです。
  2. アニメのオープニング映像を見る:「こんなふうに撮りたい!」というシーンが見つかります。
  3. 季節やイベントから連想ゲームのようにイメージを膨らませる:春→桜→「卒業」というように。

 

テーマが決まったら、さらに連想ゲームを続けて服装や小物などを決めていきます。例えばテーマが「卒業」であれば、場所は学校、背景は桜、衣装は制服、手には卒業証書…という感じです。

 

Z 5、NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR

Z 5、NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR

 

春は出会いと別れの季節ということで、 「春の出会い」をテーマに撮影しました。

イメージは、アニメの1話目で主人公がヒロインと出会うシーン。ロマンチックな雰囲気にしたいと思い、「桜の下で本を読んでいる姿を偶然見かけた」という物語を想像しました。「どんな子なんだろう…」と主人公の気持ちになってもらえるように、桜の前ボケで表情をかくしています。

こんな理想のシチュエーションも、写真でなら叶えられます(笑)

 

撮影場所やイメージを記録しておく

普段、身近な場所をドライブしてエモーショナルな景色を探しています。河川敷や線路沿い、海岸などが特に青春を感じる風景に出会いやすいです。見つけた場所や時間帯、思いついた物語や小物はスマホのメモアプリに書きこんでいます。撮影前や撮影中に見返せるので便利です。

 

 

ポーズは大げさなくらいが伝わりやすい

ポーズも事前に決めて、モチーフにする映像を見せたり実演したりしてイメージを伝えるとスムーズです。普段よりも大げさな仕草を意識してもらい、理想の形で動きを止めます。

 

Z 5、NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR

Z 5、NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR

 

上の写真では、それぞれに手でハートマークをつくってもらうことも考えましたが、2人の仲のよさや元気さを表現したかったので、「2人で大きなハートをつくってください!」とお願いしました。指示をする際は私も同じポーズをしています。

撮影のはじめに体を大きく使ったポーズをお願いすると、緊張がほぐれて自然な動きを引き出しやすいです。写る人に楽しんでもらうことで、よりいい写真が撮れると思っています。

見る人の想像を膨らませるアイデア

ここからは、青春や物語を表現するために、私がよく取り入れる撮影のアイデアを紹介します。

 

 

空中で写し止めて躍動感を表現する

Z 5、NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR

Z 5、NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR

 

ジャンプする様子は躍動感があって、若さや青春を表現するのにぴったりです。また、空中で写し止めるのは、写真ならではの表現なので印象に残ります。

 

撮影ポイント

  • 設定:シャッタースピードは1/600~1/2000秒を目安にします。
  • 構図:被写体を真ん中にして際立たせ、シンプルな背景を選びます。

 

「せーの!」と声をかけて飛んでもらい、ジャンプの高さや空中でのポーズに満足いくまで何度かチャレンジします。ジャンプする側も盛り上がるので、楽しい雰囲気が伝わる写真になります。

 

 

シルエット写真で絶景と思い出を残す

D5600、AF-S DX NIKKOR 35mm f/1.8G

D5600、AF-S DX NIKKOR 35mm f/1.8G

 

友達との楽しい時間と風景の美しさを一緒に表現したい場合は、シルエット撮影をしてみましょう。私は数人で遊んだ日の最後に、記念写真として撮ることが多いです。

撮影場所は、海岸や堤防、丘の上を選ぶと、背景がすっきりしているのでポーズが際立ちます。特にリフレクションがある場所は、実像と映りこみでダブルシルエットができるのでより印象的です。

 

撮影ポイント

  • 時間帯:日の入りまでの1時間が撮影しやすいです。暗すぎるとピントが合いづらいので注意しましょう。
  • 設定:F4以上でパンフォーカスにすると人や風景の輪郭がくっきりします。
  • 構図:大人数を撮影する場合は、端に背の高い人、中に低い人の順で並んでもらうとバランスがいいです。

 

シルエットが重なったり、ポーズがかぶらないように撮影者が指示を出します。戦隊モノの決めポーズをテーマにすると、みんながイメージしやすくまとまりがでるのでオススメです。

 

 

手元や足元のカットで季節感を強調する

D5600、AF-S DX NIKKOR 35mm f/1.8G
Z 7、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S
(左)D5600、AF-S DX NIKKOR 35mm f/1.8G、(右)Z 7、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S

 

手元や足元のみのカットは、要素が少ない分、風景の彩りやモチーフの印象を強調することができるので、季節感を出したいときによく用います。

 

撮影ポイント

  • 構図:日の丸構図で主題をわかりやすくします。
  • アングル:背景を空や地面などシンプルにして被写体を際立たせます。

 

また、複数枚で物語をつくる場合には行間の役割をします。引きの写真の間に挟むことで、メリハリをつけながら、さらに想像を膨らませることができるんです。バリエ―ションとして撮影しておくと、表現の幅が広がりますよ。

 

 

4コマ漫画のイメージで組写真をつくる

青春や物語を表現する写真は、数枚組み合わせることでよりイメージが膨らみます。Twitterに4枚組で投稿するときは「4コマ漫画」をつくるように、写真を選ぶのがコツです。

  • 1枚目:本の表紙のような印象的なカットに。ロケーションがわかりやすいものがいいです。
  • 2~3枚目:物語を説明するような風景や手元のカット。明るさの違う夕暮れの風景などを入れると時間の経過も感じることができます。
  • 4枚目:物語の結末を表現した写真。大げさな動作でしっかりと状況が伝わるものを選びましょう。

 

下の組写真は「告白の予行練習」をイメージした4コマです。放課後、神社で本番の告白に向けて練習している様子を表現しました。

 

Z 7、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S
Z 7、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S
Z 7、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S
Z 7、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S
Z 7、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S

 

別の日に撮った写真を組み合わせるときに注意するのは、時間軸がずれないようにすることと、写真の色味や服装を統一することです。また、寄りと引きや、静と動を取り入れるとメリハリがつきます。

 

 

Photographer's Note

「友達との思い出をきれいに残したい」という思いからはじめた写真。最初は旅行の記録として撮っていましたが、新型コロナをきっかけにカメラから離れてしまいました。そんなとき、SNSでAkine Cocoさんをはじめとする“福井カメラ部”の写真に出会い、地元・福井でも美しい写真が撮れることを知りました。「イベントがなくてもカメラがあれば日常が色づく」という思いで、福井の日常を背景に、青春や物語を感じる写真を撮っています。

 

私は少し疲れたときに、友達との写真を見返します。すると昔の自分たちの笑顔や思い出に元気づけられることがあるんです。前に進むことも大切ですが、時には立ち止まって過去を振り返ることで、心の休息になるのではないでしょうか。 私の写真をきっかけに、いつかの青春の日々を思い出していただけたらとてもうれしいです。

 

 

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Z 5

製品ページ ニコンダイレクト

NIKKOR Z 85mm f/1.8 S

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NIKKOR Z 14-30mm f/4 S

NIKKOR Z 14-30mm f/4 S

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※上記以外の機材で撮られた写真は、過去に撮影されたものです。
tomosaki

tomosaki

福井県出身のフォトグラファー。福井の日常を背景に「青春や物語を感じるシーン」を表現した作品をSNSに投稿している。青春を鮮やかに切り取った作品は、多くの人の共感を得ている。