Z 30で料理動画撮影!シズル感たっぷりな見せ方、ワンランク上に仕上げる撮影のポイントを解説

Z 30で料理動画撮影!シズル感たっぷりな見せ方、ワンランク上に仕上げる撮影のポイントを解説

こんにちは、トラノコク(@toranocoku)です。「こんな居場所があったらいいな」という会話から生まれた、SNS上で営業中の空想の喫茶店。4人の店員がレシピを考案、調理、撮影を手がけ発信しています。

以前は、写真によるおうち喫茶の楽しみ方を紹介しましたが、今回のテーマは「動画」です。

 

Z 6、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S
Z 6、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S
Z 6、NIKKOR Z 50mm f/1.8 S
Z 6、NIKKOR Z 50mm f/1.8 S
Z 6、(上)NIKKOR Z 24-70mm f/4 S、(下)NIKKOR Z 50mm f/1.8 S

 

料理を動画で表現することは、視覚・聴覚・味覚…あらゆる感覚を味わえるところに魅力を感じています。

ホットケーキのふつふつと焼けていく瞬間、具材を炒めていく音、食材に触れて、できあがった料理を食べるまで、一つの物語を紡いでいるような気持ちにさせてくれるのです。

 

Z 30、NIKKOR Z 28-75mm f/2.8、NIKKOR Z 17-28mm f/2.8、NIKKOR Z 85mm f/1.8 S

 

今回はこの動画をどのように撮影したか、順を追って紹介したいと思います。

 

Step1 動画で撮りたい内容を考える

まずは、何を撮りたいかを考えましょう。

 

題材を決める

“そのとき作りたいもの・食べたいもの”を軸に決めています。食と記憶は密接につながっていて、雑談からふと昔食べていた食べ物を思い出して作ることもあります。

 

Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

 

今回は、ハロウィンが近いということで、「かぼちゃプリン」を題材に動画を撮ることにしました。秋になると旬のかぼちゃのお菓子を街中で見かけるようになるのですが、中でもかぼちゃプリンを見たときはいつも気分が高まりました。季節限定の特別感と、プリンの鮮やかな黄色が目に焼きついています。

 

Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

 

 

流れを考える

題材を決めていきなり撮影ではなく、事前に大体の流れを書き出してみると撮りやすくなります。

私たちは、当初は絵コンテを作っていました。慣れてくると、頭の中でも構成を考えられるようになり、絵コンテにかける時間を準備や撮影時間に当てられるようになります。今ではメンバー内の雑談の中である程度の流れを決めています。

かぼちゃをそのまま器にするアイデアも、この雑談の中から生まれました。
「器に特別感があると気分が高まるよね」
「チーズの器の中で絡めるパスタみたいだね」
「中身も器も食べられたら、二重で美味しさを味わえるね」
このように、過去の思い出や出来事、「こうだったらいいな」という夢、複合的な要素を掛け合わせて、料理やレシピを考えています。

 

Z 30で料理動画撮影!シズル感たっぷりな見せ方、ワンランク上に仕上げる撮影のポイントを解説

今回は、こちらの流れで撮ることにしました。
調理工程を一通りリストアップして、すべての工程を撮っていき、編集で入れる・入れないを調整します。

 

 

見せ方を考える

動画のおもしろさは、さまざまなカットを組み合わせられるところです。寄り引きやアングルを変えながら、見てくれた方を引きこめるように構成します。

見せ方を考える上で大事なのが「料理の見せ場」です。見せ場は、カメラは動かず、食材が動いてくれるようなシーン。例えば「ボウルに卵を割って、揺れ動く黄身や白身の姿」「フライパンに生地を流しこんで広がっていく姿」など。日常的に料理をする中で、どこが見せ場になるか自然と考えられるようになりました。

 

Z 30、NIKKOR Z 28-75mm f/2.8

Z 30、NIKKOR Z 28-75mm f/2.8

 

今回の見せ場は、「8.くり抜いたかぼちゃに液を注ぐ」シーンです。プリン液を流しこむ動感や、かぼちゃを器としても使っていること、もうすぐ完成が近づいている期待感など、動画を通して伝えたいことが詰まっています。

 

Z 30、NIKKOR Z 28-75mm f/2.8

Z 30、NIKKOR Z 28-75mm f/2.8

 

そして、全体を通して意識しているのは「視点」です。誰が作っているのか、誰のための料理なのか、想像を膨らませるんです。「懐かしさ」を軸にしている私たちは、家族が料理を作っている姿を近くで見ている子供のような視点を取り入れています。

 

Z 30、NIKKOR Z 28-75mm f/2.8

Z 30、NIKKOR Z 28-75mm f/2.8

 

画角いっぱいにクローズアップすることもあります。現実的な見え方ではありませんが、「子供の頃に鮮明に覚えている記憶」にフォーカスする表現でもあり、リアルな視点と感情的な視点を両方取り入れて一つの動画に仕上げています。

 

Step2 撮影環境を整えよう

Z 30で料理動画撮影!シズル感たっぷりな見せ方、ワンランク上に仕上げる撮影のポイントを解説

 

料理は家の中で気軽に撮れる題材ですが、限られた空間という制約があるため、撮る場所や機材選びにポイントがあります。

【場所】自由度の高いダイニングをメインに

調理工程も撮る場合、キッチンなど固定の環境と、ダイニングのテーブル上など動かせる環境の主に2通りあります。

  • 固定の場所(キッチンなど):事前に太陽が当たる時間、環境を観察し、イメージの時間帯の目星をつけておきましょう。
  • 自由度のある場所(ダイニングなど):自然光が入り、料理と背景の色合いのバランスを意識して、テーブルの位置を決めます。テーブルの木の色やクロスの白、庭や植物の緑など、自然にかつシンプルにすることで、食材が引き立ちます。

 

Z 30、NIKKOR Z 17-28mm f/2.8

Z 30、NIKKOR Z 17-28mm f/2.8

 

今回は卓上ガスコンロがあればできる料理だったため、日当たりのいいダイニングで調理しました。水を使う工程はキッチンで撮る必要がありますが、食材をカットしたり、テーブルで完結できそうなものは位置を調整しやすいダイニングで撮るようにしています。

【光】自然光の入る日中にサイド光で

Z 30、NIKKOR Z 17-28mm f/2.8

Z 30、NIKKOR Z 17-28mm f/2.8

 

食材の色を自然に写すため、日中~夕方までの自然光の入る明るい時間帯に撮影しています。白いカーテン越しにすると部屋全体が明るくなり、優しい質感に仕上がります。

 

Z 30、NIKKOR Z 28-75mm f/2.8

Z 30、NIKKOR Z 28-75mm f/2.8

 

光の向きはサイド光が主体です。陰影が際立ち、立体感が生まれます。

【機材】小型カメラ+ズームレンズで機動力を重視

  • カメラ:料理は生きもののように流動的なため、機動性・操作性に優れたカメラで柔軟に対応する必要があります。AF性能・手ブレ補正機能がよいものがはじめての方にもオススメ。今回は軽量コンパクトな、APS-Cサイズのミラーレスカメラ Z 30を使用しました。AFが非常に速く、カメラ内手ブレ補正機能(電子)も備えています。
    ※動画撮影風景の記録用に Z 5でも撮影しています。

Z 30で料理動画撮影!シズル感たっぷりな見せ方、ワンランク上に仕上げる撮影のポイントを解説

 

  • レンズ:料理は途中でやり直しが難しいものも多いため、ズームレンズで画角やアングルを素早く切り替えて撮影していきます。F値は3.5あれば、背景をほどよくぼかせて十分です。
    私たちは標準域をメインとしていて、NIKKOR Z 28-75mm f/2.8(35mm判換算42~112.5mm)を主体に、NIKKOR Z 17-28mm f/2.8(35mm判換算25.5~42mm)、NIKKOR Z 85mm f/1.8 S(35mm判換算127.5mm)を使いわけました。

 

レンズの使いわけ

  • NIKKOR Z 28-75mm f/2.8:マルチに使える焦点距離域。液を流しこんでいるときなど撮影中に寄り引きの画角を切り替えたいときにも便利です。

Z 30、NIKKOR Z 28-75mm f/2.8

Z 30、NIKKOR Z 28-75mm f/2.8

 

  • NIKKOR Z 17-28mm f/2.8:周囲を広めに写し、雰囲気を伝えたいときに使用。

Z 30、NIKKOR Z 17-28mm f/2.8

Z 30、NIKKOR Z 17-28mm f/2.8

 

  • NIKKOR Z 85mm f/1.8 S:寄りの画角で、食べ物の質感を描写したいときに使用。

Z 30、NIKKOR Z 85mm f/1.8 S

Z 30、NIKKOR Z 85mm f/1.8 S

 

  • 三脚:俯瞰を含め、さまざまなアングルで撮影する上で、高さを出せる三脚を使用しています。2カメで撮影したいときや、臨機応変に画角を変えながら撮影したいときにはミニ三脚を使うこともあります。

Z 30で料理動画撮影!シズル感たっぷりな見せ方、ワンランク上に仕上げる撮影のポイントを解説

Z 30で料理動画撮影!シズル感たっぷりな見せ方、ワンランク上に仕上げる撮影のポイントを解説
Z 30で料理動画撮影!シズル感たっぷりな見せ方、ワンランク上に仕上げる撮影のポイントを解説

 

Z 30のアクセサリーであるトライポッドグリップ(別売)は、リモコンをつけられるため、グリップを握りながら片手で撮影できました。このとき、ネックストラップをピンと張ることで、手ブレを抑えられます。

【設定】絞り気味&タッチAFで見せ場をとらえる

  • 画質:フルHD(1920×1080)or 4K(3840×2160)。
    記憶という抽象的なものを映像に落としこむ際、現実感を緩和できるフルHDと相性がいいと考えています。なお、静止画としてキャプチャする必要がある場合は、画質を優先して4Kで撮る場合も。
    今回は4Kメインで撮影しました。ただし、スローモーションは Z 30ではフルHD対応となるため、その部分のみフルHDで撮影しています。
  • フレームレート:24p or 30p。
    映画のようなイメージや空気感を軸に映像をつくるときは24p、人が出たり日常感を演出したいときは人の目に近い30pと使いわけています。
    今回は空気感を生かすため24pに設定。スローモーションは120pで撮影しました。

 

  • 撮影モード:オートでも十分ですが、画がしっかり決まっているシーンは、マニュアルでF値・シャッタースピードを調整します。

Z 30で料理動画撮影!シズル感たっぷりな見せ方、ワンランク上に仕上げる撮影のポイントを解説

 

  • F値:周囲を適度にぼかしながら料理を引き立たせられるF3.5~5.6の間をよく使います。少し絞るため、動きのある場面でもピント合わせがしやすいです。
Z 30、NIKKOR Z 28-75mm f/2.8
Z 30、NIKKOR Z 28-75mm f/2.8
Z 30、NIKKOR Z 28-75mm f/2.8

左:3.5、右:5.6

 

  • シャッタースピード:動画はフレームレートの2倍分の1秒がちょうどいいとされています(24pであれば1/50秒、30pであれば1/60秒)。今回は24pのため1/50秒に設定。
  • ISO感度:室内では明るさに応じて、160~1250の間で極力低く設定します。
Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S
Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S
Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

左:明るい状況でISO320、右:暗い状況でISO800で撮影

 

  • ピント:「ワイドエリアAF」とゆとりのあるエリア設定にすることで、動きのある中でもしっかり撮影できます。また、タッチAFにより、狙った位置にすぐ合わせられます。

Z 30で料理動画撮影!シズル感たっぷりな見せ方、ワンランク上に仕上げる撮影のポイントを解説

Step3 料理の動画を撮影しよう!

準備ができたら、いよいよ撮影です。
なお、本番の前に1~2回は試作し、撮影シーンや使用レンズ・設定の確認をするようにしています。また当日の撮影に合わせて、失敗時でも対応できるようにすり替えの料理を作ることもあります。

 

Z 30で料理動画撮影!シズル感たっぷりな見せ方、ワンランク上に仕上げる撮影のポイントを解説

 

こちらをもとに、各工程を撮っていきました。

 

Z 30で料理動画撮影!シズル感たっぷりな見せ方、ワンランク上に仕上げる撮影のポイントを解説
Z 30で料理動画撮影!シズル感たっぷりな見せ方、ワンランク上に仕上げる撮影のポイントを解説
Z 30で料理動画撮影!シズル感たっぷりな見せ方、ワンランク上に仕上げる撮影のポイントを解説
1.
かぼちゃを切る
2.
かぼちゃをくり抜く
2.
くり抜いたかぼちゃ
Z 30で料理動画撮影!シズル感たっぷりな見せ方、ワンランク上に仕上げる撮影のポイントを解説
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Z 30で料理動画撮影!シズル感たっぷりな見せ方、ワンランク上に仕上げる撮影のポイントを解説
3.
かぼちゃを裏ごし
4.
牛乳と砂糖を鍋にとく
5.
かぼちゃを入れて混ぜる
Z 30で料理動画撮影!シズル感たっぷりな見せ方、ワンランク上に仕上げる撮影のポイントを解説
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Z 30で料理動画撮影!シズル感たっぷりな見せ方、ワンランク上に仕上げる撮影のポイントを解説
6.
ボウルに卵を割り混ぜる
7.
卵とプリン液を混ぜる
8.
かぼちゃに液を注ぐ
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9.
湯せん焼きをする
10.
シロップをかける
11.
食べる

 

最後の「食べる」シーンは、食べている人の目線になってみたり、後ろ姿を写すなど、複数パターンを撮ることで想像がよりかき立てられると考えています。

 

撮る前提での調理の仕方

見る人の立場に立ち、見ていて気持ちいい映像かどうかを意識します。

 

Z 30、NIKKOR Z 28-75mm f/2.8

Z 30、NIKKOR Z 28-75mm f/2.8

 

例えば、プリン液をかき混ぜるときは、鍋が動かないよう片手で固定し、ヘラのみを動かします。鍋がガタガタ動いてしまうとそちらが気になってしまいますが、鍋をしっかり固定することで液体のなめらかな動きを魅せられます。

単調にならないよう構図を変える

見てくれた方を引きこむために、寄り引きやアングルを変えて撮るようにしています。

 

寄り引きの使いわけ

  • 寄り:シロップを注いだり、料理のシズル感を出したい場合
  • 引き:動作や状況をしっかり見せたい場合
Z 30、NIKKOR Z 28-75mm f/2.8
Z 30、NIKKOR Z 28-75mm f/2.8
Z 30、NIKKOR Z 28-75mm f/2.8

 

寄りは、「子供の頃に鮮明に覚えている記憶」を表現する際にも効果的です。子供の頃の目線は何もかもが大きく見えていて、料理が作られていく過程や引きこまれていく心情を“寄り”によって映像上で表現できると考えています。

 

 

アングルの使いわけ

寄り引きの組み合わせにより動画に緩急が生まれ、場面展開時にも効果的です。このとき、何を見せたいかでアングルも変わってきます。

なお、料理の動画では安定感も大事なため、水平がとれていることは意識しています。

 

Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S
  • アイレベル:何をしているか動きがわかりやすいアングル。上のシーンでは、かぼちゃの移し替えや裏ごししているところを一緒に見せることができます。

 

Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S
  • ハイアングル:材料を入れたり、かき混ぜるなどの様子が伝わりやすいアングル。低すぎると鍋の中が見えなくなってしまうため、調理器具の高さによっても調整が必要です。

 

変化をつける「後ろ」からの撮影

Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

 

調理工程は、わかりやすく伝えるための構図で、ある程度決まったもので構成していますが、最後の食べているシーンなどでは、後ろからの構図も取り入れています。1本の動画を通して画角のバリエーションを出すことができ、より想像が膨らむような画づくりができるからです。

中断できる工程かで撮り方を決める

料理は工程によって、撮影を止められるものと止められないものがあります。撮影シーンの切り替えは、食材が変化しやすいものか、そうでないものかで事前に判断をしています。

 

  • 止められる工程:皿を置くシーンや形の変化しない食材を盛り付けるシーンなどは途中で止められるため、シーンの流れの中で寄り引きやアングルなどを変えながら撮影を進められます。

Z 30、NIKKOR Z 17-28mm f/2.8

Z 30、NIKKOR Z 17-28mm f/2.8

 

  • 止められない工程:卵を割る瞬間やシロップを注ぎ入れるシーンなどは、途中で止められないため一気に撮りきります。そのため、満足がいかなかった場合はもう一度やり直しに。卵を割るシーンは3テイクほど撮影しました。

Z 30、NIKKOR Z 85mm f/1.8 S

Z 30、NIKKOR Z 85mm f/1.8 S

 

途中で止めることが難しいシーンでは、2カメで撮影する方法もあります。サブでスマホや別のカメラを持っている方は、2つのカメラで別の画角から押さえておくことで、編集時に選択肢を増やせます。

Step4 1本の動画に仕上げよう

撮影の後は編集です。ここからは、どのようなことを意識して1本に仕上げていくのか考え方のポイントを紹介します。

起承転結を意識して1本に仕上げる

今回撮影した動画はトータルで30分程度でしたが、それを2~3分程度にまとめていきます。私たちはSNSを軸に動画を発信しているため、短い中でも伝えられる凝縮した映像づくりをしています。

物語を組み立てるように動画をつないでいくのですが、たくさん撮った中で短くまとめるポイントは、軸となるシーンをあらかじめ決めておくことです。

 

Z 30、NIKKOR Z 28-75mm f/2.8
Z 30、NIKKOR Z 28-75mm f/2.8
Z 30、NIKKOR Z 28-75mm f/2.8
Z 30、NIKKOR Z 28-75mm f/2.8
Z 30、NIKKOR Z 28-75mm f/2.8

 

こちらが、今回の動画の軸となるシーンです。

  • プリン液を混ぜるシズル感のある場面
  • かぼちゃをくり抜くことで器にする場面
  • できたプリン液を流しこんで完成前の想像を膨らませる場面
  • 最後のお楽しみのひとすくいの場面

この4シーンを軸に前後を組み合わせていくことで、起承転結がしっかりした1本が作れると考えました。

 

Z 30、NIKKOR Z 28-75mm f/2.8、NIKKOR Z 17-28mm f/2.8、NIKKOR Z 85mm f/1.8 S

 

こちらが1本につなげた動画です。
編集のポイントは、冒頭に入れたダイジェスト。プリン液を混ぜる→注ぐ→完成料理をテーブルに置く→食べる…という見せ場からはじめることで、目を引くように編集しています。ここでいかに興味を惹きつけるかが大切なので、先に説明した軸となるシーンを組み合わせることが多いです。

 

スロー撮影を入れるポイント

必ずではありませんが、スロー撮影を入れることがあります。それは、人の目では追いにくい瞬間、動きの速いものを映すとき。何気ないワンシーンも印象的に仕上げることができるため、動画の表現の幅を広げてくれます。

 

Z 30、NIKKOR Z 85mm f/1.8 S

 

今回は卵を割り入れる瞬間をスロー撮影しました。スロー撮影では、しっかりピントを合わせておくこと、何テイクかやり直しても支障のない工程に絞るのが全体の撮影を円滑に進めるコツです。

雰囲気を際立たせるBGMをつける

トラノコクでは、世界観や動画のテンポに合わせたBGMをつけるようにしています。大切なのは、動画と曲のどちらのよさも生かすこと。両方のバランスがとれるような選曲を心がけています。

なお、撮影前に曲のジャンルやイメージ(ゆっくりした曲、アップテンポの曲…等々)を膨らませますが、最終的には実際の映像を見て決めています。動画制作の可能性を広げるためにも、他の選択肢も検討しながら実験感覚で取り組んでいるんです。

 

かぼちゃプリンの動画のBGMは、以下の曲にしました。ややアップテンポで疾走感がありながら、優しい曲調。ハロウィンの楽しさと日本の秋の落ち着きを兼ね備えた世界観に合いそうだと感じたからです。

Jamie Rutherford 「Far Away Feelings」
※ライセンスフリーの音楽サイト「Artlist」で音楽をダウンロードするには有料版の契約が必要です。

今回は収録した音を使用しませんでしたが、グラスに飲み物を注ぐ音や氷のカランコロンなど音が生きる場合は収録音を使うこともあります。

 

Z 30、NIKKOR Z 28-75mm f/2.8、NIKKOR Z 17-28mm f/2.8、NIKKOR Z 85mm f/1.8 S

 

こちらがBGMを入れた完成動画です。
ハロウィンのワクワク感と、肌寒い時期になり日が沈む時間も早くなってくるこの「秋」という季節感を表現するような動画に仕上がったかなと感じています。

多くの人にとってもなじみ深い食材である「かぼちゃ」は、私たちトラノコクメンバーの小さい頃の思い出とリンクする食材の一つ。この動画が秋を思い出すきっかけになればいいなと考えています。

Photographer's Note

Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

 

写真と動画は「美味しそうな瞬間をとらえる」という点では共通部分があると思いますが、動画は前後のカットを含めてさまざまなシーンを組み合わせた複合的な作品としてよさを出せるのが大きな魅力です。

 

Z 30、NIKKOR Z 28-75mm f/2.8

Z 30、NIKKOR Z 28-75mm f/2.8

 

工程から完成まで日常的なものであるからこそ、料理のおもしろさを味わいながら撮影できているのかなと感じます。撮影を繰り返す中で料理の工夫や気づきも得ながら、カメラの技術を模索していけるところに日々楽しさを感じています。

私たちは動画や写真を通して、美味しそうで懐かしい食べ物を作り続けていますが、いつか、その食べ物を実際に届けることができたらうれしいです。

動画撮影にNikon機材を使ってみて

動画撮影は1秒ごとに流れが変わる流動的なものなので、臨機応変な対応が必要となります。今回 Z 30を使ってみて、AFのスピードの速さ、手ブレ補正の安心感など、動画をはじめて撮る人にとってもうれしい機能が詰まっているなと感じました。APS-Cサイズのカメラですが、35mm判換算で焦点距離が1.5倍となるため、寄りも撮りやすくテーブルフォトにぴったりです。

 

Z 30で料理動画撮影!シズル感たっぷりな見せ方、ワンランク上に仕上げる撮影のポイントを解説

 

また、手持ち撮影時はコンパクトなため片手ですんなり持つことができました。グリップのフィット感がよく、フルサイズ用のズームレンズをつけても持ちやすいため、レンズの選択肢が広がります。写りについては、特に暗いところでの描写に驚きました。室内の光の弱い環境でその強みが生きてきます。

 

Z 30で料理動画撮影!シズル感たっぷりな見せ方、ワンランク上に仕上げる撮影のポイントを解説

 

レンズは、NIKKOR Z 28-75mm f/2.8(35mm判換算42~112.5mm)をメインに、広く写したいときにNIKKOR Z 17-28mm f/2.8(35mm判換算25.5~42mm)を、寄りでボケ感もほしいときなどにNIKKOR Z 85mm f/1.8 S(35mm判換算127.5mm)をスポット的に使用しました。

 

Z 30で料理動画撮影!シズル感たっぷりな見せ方、ワンランク上に仕上げる撮影のポイントを解説

 

NIKKOR Z 28-75mm f/2.8は同じ工程でも寄り引き両方をちょうどいい画角で収められて、料理撮影において柔軟に対応できます。F2.8の開放F値も動画では申し分ありません。

 

Z 30、NIKKOR Z 28-75mm f/2.8

 

こちらはこのレンズで撮ったお気に入りの動画です。寄りすぎてもわかりにくく、引きすぎてもインパクトに欠けるシーンを、ズームで微調整することで、躍動感を表現できる画角で切り取ることができました。

 

Z 30で料理動画撮影!シズル感たっぷりな見せ方、ワンランク上に仕上げる撮影のポイントを解説

 

サブで使用したNIKKOR Z 17-28mm f/2.8は、Z 30とのセットが非常に軽く軽快に撮影できました。広めの画角で、部屋が狭い場合にも活躍し、その場の雰囲気も写し出すことができます。焦点距離域としては、APS-Cサイズ機では標準域までカバーできるのも使いやすいポイントです。

 

Z 30、NIKKOR Z 17-28mm f/2.8

 

お気に入りの動画はこちら。完成したかぼちゃプリンをテーブルに置くシーンなのですが、少し暗がりの中で部屋全体の空気感を描写するのにちょうどいいレンズでした。

 

かぼちゃプリンのレシピ

最後に、今回撮影したかぼちゃプリンの作り方を紹介します。

Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

 

【材料】

  • 坊ちゃんかぼちゃ 2個
  • 牛乳 100ml
  • 生クリーム 50ml
  • 砂糖 30g
  • 卵 1個

[お好みでトッピング]

  • メープルシロップ
  • シナモンパウダー

 

【下準備】

  • オーブンを160℃に予熱しておく
  • お湯を沸かしておく

 

【作り方】

  1. 濡らしたキッチンペーパーでかぼちゃを包み、耐熱容器にのせて600Wの電子レンジで3~5分加熱する。※加熱しすぎると皮底が弾けるので注意
  2. かぼちゃは上部を小さめに切り落として種とわたを取り除き、実をくり抜いて熱いうちにこし器でこす。
  3. 鍋に牛乳、生クリーム、砂糖、(2)のかぼちゃペーストを入れて火にかけ、沸騰直前で火を止める。
  4. ボウルに卵を割りほぐし、(3)を加えて混ぜる。
  5. 中をくり抜いたかぼちゃの容器をアルミホイルで包んで天板にのせ、(4)を注ぎ入れる。
  6. 天板に熱湯を張り、160℃のオーブンで50分湯せん焼きする。
  7. 焼き上がったら粗熱をとり、冷蔵庫で冷やす。

お好みでメープルシロップやシナモンパウダーをかけてお召し上がりください。

Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

Z 5、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

 

 

Supported by L&MARK

 

 

※動画撮影風景は Z 5+NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 Sで撮影しています。

喫茶トラノコク

喫茶トラノコク

SNS上で空想喫茶店を営み、「いつかの夏休み」「食べたかった絵本のおやつ」など、どこか遠くにしまってある記憶の中の料理や光景を、写真や動画で提供している。いつかは本当の喫茶店を開くのが夢。