こんにちは、フォトグラファーのべく(@bec_ilhs)です。
普段は、身近な風景や食べ物など、心惹かれたものを写真に収めてSNSを中心に発信しています。以前の記事では、日常をノスタルジックな雰囲気で表現するポイントを紹介しました。
僕は「自分が主役の日常」をテーマに動画も撮影していて、InstagramのリールやTikTokなどに投稿しています。動画編集では懐かしさを感じる温かい雰囲気にこだわっていますが、これまでさまざまなソフトを試してきたものの、その調整が写真よりも難しいと感じています。
そんな中で、2022年6月にLightroomの動画編集機能がアップデートされました。普段、写真の編集で使用している「Lightroom」で、写真と同じような感覚で動画編集できるということで、とても魅力を感じています。
そこで今回は、Lightroomを使った動画編集について紹介します。動画は、2022年8月に発売されたAPS-Cサイズのミラーレスカメラ「Z 30」で撮影してきました!
Lightroomで動画編集!
Z 30、NIKKOR Z 28-75mm f/2.8
こちらの動画をPCに取りこみ、Lightroomデスクトップ版で編集していきます。
【Lightroomで動画編集できる項目】
- プリセットの適用
- ライトの調整
- カラーの調整
- 効果の追加(周辺光量や粒子のみ)
- トリミング、回転、反転
写真編集とまったく同じというわけではなく、編集できない項目があります。そのため、ライト・カラー・効果をそれぞれ調整していき、動画用のプリセットを作成し、他の動画に適用していく…というやり方がオススメです。
注意点
「カラーミキサー」はLightroomデスクトップ版・モバイル版(Android)では調整できますが、Lightroomモバイル版(iOS)では対応していません(2022年10月25日現在)。
【ライト】自由度高く明るさを調整できる
他の動画編集ソフトに比べて、特に調整しやすさを感じたのが「ライト」です。
Lightroom編集画面
後から白とびを修正するのが難しいため、少し暗めに撮影しています。編集では、白とびしないように明るさを持ち上げ、シャドウ部分を明るくして、やわらかい雰囲気になるよう調整しました。
左:編集前、右:ライト編集後
【カラー】写真編集と同じ感覚で調整が可能
「カラー」では、色温度/色かぶり補正/自然な彩度/彩度/カラーミキサーが調整でき、Lightroomデスクトップ版とAndroid版であればカラーグレーディングでさらに細かく仕上げることができます。
※Lightroomモバイル版(iOS)では、カラーミキサーは調整できません。
ホワイトバランスや彩度の調整
Lightroom編集画面
まずは色のベースから。
今回はホワイトバランス「オート」で撮影し、色かぶりを微調整。全体の彩度を下げて落ち着いた印象にしつつ、自然な彩度を上げて鮮やかに見えるようにしました。
カラーミキサーやカラーグレーディングの調整
Lightroom編集画面
カラーミキサーでは、写真編集と同じく各色ごとに色相・彩度・輝度が調整可能です。
今回は、青を少し緑寄りにし優しい印象にしました。また、全体に薄い印象になりすぎないよう緑を深い緑にし、彩度を落として主張が強すぎないようにしています。
Lightroom編集画面
カラーグレーディングを活用すれば、ハイライト・中間・シャドウに対し、個別に色の補正ができます。
この動画では、シャドウに緑を加えてやわらかい印象にし、ハイライトにオレンジを加えて暖かい色味に仕上げました。
左:編集前、右:カラー編集後
【効果】周辺光量や粒子でフィルムライクな仕上げも
Lightroomの動画編集において「効果」で調整できる項目は、周辺光量と粒子に限られています。フィルムライクに仕上げたい方にとっては、これらが手軽に調整できるのはメリットだと思います。
Lightroom編集画面
僕は普段、テクスチャや明瞭度で質感を調整しているため、効果は使用しませんでした。
【プリセット】他の動画に適用して編集効率UP
各調整項目は、プリセットとして登録できます。
Lightroom編集画面
他の動画に登録したプリセットを適用すれば、編集効率が一気に上がります。Lightroomデスクトップ版やAndroid版であればカラーミキサーなども適用されるため、写真用のプリセットをそのまま使用すれば編集作業がかなり時短になります。
なお、被写体や撮影条件によって仕上がりが異なるため、こだわりたい場合はプリセット適用後にハイライトやシャドウなどを微調整することをオススメします。
以上で、明るさや色味を調整できました!
こちらは、Z 30で撮影した写真です。質感の細かい調整では違いがありますが、普段の写真編集の感覚で、動画を写真のテイストに近い雰囲気に編集できるのがLightroomの何よりの魅力だと感じました。
もうひと手間加えて、動画を仕上げよう!
Lightroomでは、明るさや色味の調整がメインです。そのため、切り抜きや再生時間の調整、BGMの追加などは、別のソフトを使って編集していく必要があります。
ここからは、先ほどの動画を使って1本の映像に仕上げていきたいと思います。
※動画編集には無料版の「DaVinci Resolve」を使用しています。
BGMをつける
この動画は「夏の静けさ」がテーマです。楽しい散歩をイメージできるように、落ち着いた印象ながら明るい曲を選びました。
Paper Planes「Golden Love」
※ライセンスフリーの音楽サイト「Artlist」で音楽をダウンロードするには有料版の契約が必要です。
DaVinci Resolve編集画面
- 音源データを読みこみ、タイムラインに挿入すると、曲を追加できます。
- 元の動画の音量をミュートにすれば、BGMだけにできます。
再生時間や手ブレ補正などの調整をして完成
前後の不要な部分をカットして再生時間を調整します。InstagramのリールやTikTokのショートムービーでは、10~15秒程度で、短すぎず長すぎずを意識しています。
DaVinci Resolve編集画面
また、手ブレが気になる場合、「スタビライズ」をクリックすると、ブレを抑制できます。
こちらがBGMを追加し、手ブレ補正をした映像です。ゆっくり揺れている花で、暑い夏の中にある静けさを表現しました。
複数の動画を組み合わせる
InstagramのリールやTikTokの動画は横9:縦16の縦長の仕様です。横構図で撮った動画を投稿する際、複数を縦に組み合わせることがあります。
このとき意識するのは、時間帯や天気に違和感がなく、色の統一感があること。今回は「夏の静けさ」を全体テーマに、空や田舎道の動画を組み合わせました。
DaVinci Resolve編集画面
- 縦横比(タイムライン解像度)を横9:縦16になるように設定。
DaVinci Resolve編集画面
- 各動画を読みこみ、タイムラインに挿入。
DaVinci Resolve編集画面
- 「変形」の位置や、「クロップ」で縦サイズを調整して、3つを並べます。
※最新版では「Video Collage」という、画面を指定した行列数で分割できる機能が搭載されています。
この投稿をInstagramで見る
縦に3つ動画を並べた映像がこちらです。
BGMを入れ、せっかくなので夏らしいセミの声も小さく入れました。メディアの音量はそれぞれ調整できるため、元の音を生かしたい場合は1つだけ有効にして音量を調整するのがオススメです。
Photographer's Note
写真と動画、それぞれによさがありますが、動きのある動画はその場のシーンを想像させたり、感情を表現しやすいと感じています。
その上で、自分の表現したいことを具現化させるための動画編集は大切なプロセスです。Lightroom動画編集は、写真と同じ感覚で、なおかつ写真用のプリセットも活用できるという大きなメリットがあります。スマホ版でも動画編集が可能なため、これから動画をはじめたい方にとっては強い味方になります。
うまくLightroomを使いながら、今後も日常の風景を映像として表現していきたいと考えています。
Z 30を動画撮影に使ってみて
今回の動画は、APS-Cサイズのミラーレスカメラ「Z 30」とNIKKOR Z 28-75mm f/2.8で撮影しました。
第一印象はコンパクトで軽い! グリップが持ちやすくフルサイズ用の標準ズームをつけても、しっかりホールドできました。背面には写真と動画の切り替えがあり、手持ちで写真を撮っていて同じ構図で動画も撮りたいというときに便利です。
動画の性能として気になるのは、描写・手ブレ・音です。
- 描写:緑や黄の発色がよいところが気に入りました。
- 手ブレ:ボディ内「電子手ブレ補正」をONにした状態で手持ち撮影しました。標準ズームの広角側ではそこまで気になりませんが、望遠側では気になるレベルです。その点は三脚やジンバルでしっかり撮影すれば解決できると思います。
- 音:カメラの基本装備でしっかり録れていると感じました。風の音が入ってもいいと思い、ウィンドマフは使いませんでしたが、気になる方は別売りのSmallRig社製ウィンドマフを使用すると風切り音などが入るのを防げます。
Z 30、NIKKOR Z 28-75mm f/2.8
今回の撮影では、レンズはNIKKOR Z 28-75mm f/2.8を使用しました。35mm判換算で42~112.5mmとなり、動画撮影には非常に使い勝手がいい焦点距離域。開放F2.8は、十分明るくボケも出せます。F値が小さすぎるとピント合わせが難しくなるので、ちょうどいい数値です。
最後に、Z 30はVlog向きのカメラではありますが、AF性能がよく、写真も気軽に撮れるカメラだと感じました。ライブビューで画角を確認しながら、動画も写真も「いいなと思った瞬間」に撮れる。ファインダー撮影へのこだわりがなければ、動画も写真もこれ1台でいけます!
※この記事は、2022年10月25日現在の情報を基に作成しております。
Supported by L&MARK
べく
愛媛県出身、関東在住の写真家。街の風景や暮らしの中にある日常を撮影している。相棒はスーパーカブ。カブに乗って、知らない街へ行ってみたりキャンプへ行ったり。景色の探索をしている。