実りの秋、食欲の秋…「秋」は果物や穀物などの収穫が多くなる季節。今回は、旬の味覚を新鮮なまま味わえる「果物狩り」がテーマです。自然の色彩に溢れた果樹園での撮影の楽しみ方をご紹介します。
果物狩りに行くのは、スナップ・ポートレート・旅をテーマに撮影するフォトグラファー宮治規人さん(@norihitomiyaji)と、モデルとして共に作品づくりを行うsu_uさん(@soonononono)。NICO STOP初登場となるお二人にぶどう狩りを体験していただきました。Z 7IIで撮影した、心躍る1日をたっぷりとお届けします!
はじめまして、宮治規人&su_uです。私たちは長い期間一緒にさまざまなロケーションで撮影をしているのですが、果樹園ははじめて。ちょうど「いつか果物狩りの撮影をしたいね」と話していたところで、ワクワクしながら当日を迎えました。
秋の味覚を求めて果樹園へ by su_u
みなさんは果樹園に行ったことがありますか? 頭上にたくさんの果物が実っている非日常感や、美味しそうな果実を見つける宝探しのようなワクワク感は、想像するだけでも楽しい気分になりますよね。
今回私たちが体験するのは、秋の果物の中でも人気のぶどう狩り。宮治さんに撮ってもらいながら、私は果物狩りを存分に楽しみたいと思います。
果樹園撮影が楽しくなるコーデ
いつもロケーションに合わせて服装やメイクを考えています。
今回は、緑の中でも埋もれず、浮きすぎないように意識しました。ナチュラルなアースカラーの色味を中心にして素材もコットンで統一。クラシックなチェックのエプロンをワンピースに重ねて、カントリー風の雰囲気を楽しむのがポイントです。
普段着のようなカジュアルさもほしかったので、エプロンのデザインはフリルが控えめなものを選び、麦わら帽子と足元にはローファーを合わせました。
自然素材のかごやレースなどの小物があると、果物の魅力が引き立つだけでなく世界観をつくるのにも役立つのでオススメです。
千葉県流山市の「水代果樹園」に到着!
私たちが訪れたのは、流山市の「水代果樹園」です。南柏駅から車で5分ほどで、近くにバス停もありアクセスしやすい場所。県道沿いの街中にあり、観光農園にイタリアンレストラン、直売なども行っています。
入園すると、頭上にキウイがなっているのが見えてワクワク心が踊ります。果樹園撮影がはじめての宮治さんは、到着するとせっせと果物にカメラを向けて、撮影欲がかり立てられている様子です。
この日は天気が不安定でしたが、果樹園全体がビニールハウスになっていたので雨を気にせず楽しむことができ、木漏れ日もしっかり入って素敵な雰囲気でした。
果樹園はとても広々としていて、街中にあることを感じさせないほど。時期的にぶどうのシーズンは終盤でしたが、まだまだきれいな状態のものも多く、園内はぶどうの香りに包まれていました。
今回の撮影では、果物狩りの自然な様子を伝えたかったので、できるだけカメラを意識しないように。この素敵な雰囲気のおかげで、純粋に楽しんで過ごせそうです。
はじめてのぶどう狩りに挑戦
園内の散策を楽しんだら、いよいよぶどう狩りのスタートです。
ぶどうの木はそれほど高くはなく、身長が低い私でも採りやすくて助かりました。
巨峰とマスカットを同時に好きなだけ食べられるなんて、ぶどう好きの私にとってうれしいポイントです!
袋に包まれたぶどうは大切に育てられているのを感じます。ぶどうの状態は、袋の透明な部分から確認でき、色がきれいで粒の大きなものをじっくり選んでいきました。
ぶどうの甘い香りに誘われて、宮治さんも撮影をしながら、時折ぶどうをつまんで楽しんでいました。
持ち手の長いバスケットを持参してきたのですが、大正解! 巨峰とマスカットの彩りも絶妙で、バスケットに入れるとそのビジュアルだけでとてもかわいらしくて、そのままインテリアにしたくなります(この後しっかり食べました…笑)。
※果樹園では、バケツを借りることができるので、手ぶらで大丈夫です。
2、3時間ほどかけてぶどう狩りを楽しんだ私たち。自分で収穫したての美味しいぶどうをその場でいただくという経験は、とても新鮮でした。
撮影を終えた頃には、イートインスペースが多くの人でにぎやかに。私たちも収穫したぶどうをこの場所でいただきました。葉の隙間から入る木漏れ日に癒やされながら、ゆったりとした時間を過ごせました。
果物狩りでの撮影のポイント by 宮治規人
ここからは、果物狩り撮影のポイントを紹介していきたいと思います。
相方のsu_uさんと、はじめての果樹園での撮影。しっかり美味しいぶどうも味わって楽しい時間となりました。
私は普段、はじめての場所は事前にインターネットで画像を検索し、雰囲気を確認するようにしています。自分がこれまで撮影してきた写真や構図を現地のロケーションに照らし合わせて「どんな写真が撮れそうか」をイメージし、当日は今までの経験をもとに現地で考えながら撮影をしていきます。
なお、果物狩りでは、他の方や果樹園の迷惑にならないように、同じ場所を独占しないなどマナーやルールを守った上で撮影を楽しみましょう。今回の水代果樹園は、撮影にはとても好意的でした。
【機材】動きながらの撮影では機動力が大事
- カメラ:果樹園では、背景やアングルを変えたりと動きながらのため、手持ちしやすいカメラがオススメ。使用したフルサイズのミラーレスカメラ Z 7IIは重さも苦にならず、チルト式モニターのため中腰などの撮影も楽です。
- レンズ:果樹園の雰囲気を写したり、人や果物にフォーカスしたり、寄り引きをバランスよく撮るため、広角~中望遠域をカバーできる組み合わせが◎。今回はNIKKOR Z 40mm f/2、NIKKOR Z 85mm f/1.8 S、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 Sを使用しました。
【設定】背景と明るさでF値・ISO感度を調整
- F値:F5.6程度をベースに、周囲の環境を写す際には絞り、人を際立たせたい・他のお客さんが写りこんでしまうときなど背景をぼかしたい場合にはF5.6以下にと使いわけます。
左:F5.6、右:F3.2
- シャッタースピード:被写体がブレないスピードに設定。ゆっくりと落ち着いた雰囲気での撮影だったため、下限は1/100秒を目安にしました。
- ISO感度:場所によって明るさが異なり、ISO100~500で随時調整しています。
左:明るい場所でISO125に、右:暗い場所でISO400に設定
【光】果樹の密度が低い明るい位置を探す
今回のようにビニールハウスの場合、(天気がくもりだったこともあり)拡散されて全体的にやわらかい光が回ります。ですが、果樹の密度によって、光がしっかり差しこむ場所と、そうでない場所があります。その中で、被写体に光を当てるため、できるだけ明るいところを探して撮影場所を決めていました。
左:明るい位置、右:暗い位置
右の写真は特に果樹の密度が高く、いちばん暗かった場所ですが、細く差しこむ光を生かすことで、印象的な写真を撮ることができます。
【背景】地味すぎないよう地面比率や色を意識
園内は土の部分が多いため、背景が地味にならないように気をつけます。画角内の地面比率や色彩、物の配置などのバランスを見ることが大切です。
人を主体とする場合、バストアップ程度まで寄ることで背景整理がしやすくなります。他のお客さんが多いときには、人がいない背景を選びますが、どうしても写りこんでしまう場合には十分に背景をぼかすのがコツです。
全身を写したかった上の写真では、地面比率がどうしても増えるシチュエーションでした。立ち並ぶポールで斜めのラインを取り入れて奥行き感を出し、上部に緑を入れるなど、背景の入れ方を工夫しています。
足元を写すときは、さらに地面比率が増え、どうしても地味な印象になってしまいます。少しでも緑が入る場所を選び、収穫した果物を取り入れるなど、アクセントとなる色を加えて変化をつけるのがポイントです。
【構図】寄り引き・アングルを切り替えて場面展開
果物狩りをしている流れの中で、写真を見た方もワクワクするように、画角やアングルを切り替えながら撮影していきます。
寄り引きで、見せたい主題を明確に
まずは画角ですが、見せたいものやシーンに応じて寄り引きを使いわけます。
- 寄り:被写体の質感や表情などを見せたいとき。収穫シーンは寄りにすることで、ぶどうの瑞々しさや、喜びなどの感情面も表現できます。なお、背景をぼかすことで主役が引き立ちますが、主役の輪郭までボケないようにF値を調整しましょう。
- 引き:場の空気感を伝えたいとき。果物や果樹園の特徴的な要素を写しこむことで、非日常空間を満喫する様子を表現できます。このとき、前景と背景、前ボケなど奥行きを意識するのが見せ方のポイントです。
シーンがより伝わるアングルの選択
果樹園という限られた場所の中では、アングルによって被写体や背景の見せ方を変えることができます。
- 水平アングル:人と果樹の位置関係や、見たままの印象を伝えやすいアングル。バストアップ程度に寄ることで、人と果物が際立ちます。
- ローアングル:果物がどういう状態でなっているかが伝わりやすいアングル。果樹の隙間からの光も生かしやすいのですが、ビニールの屋根が気になる場合は、果樹の密度を見ながら画角を調整しましょう。
- ハイアングル:果物狩りをしているときの自然な表情をとらえやすいアングル。地面が多く写るため、画角を絞る・茶色ばかりにならないアングルにするなど、調整が必要です。
楽しい雰囲気を切り取るには会話をしながら
これまでお話ししてきたテクニック面は撮影の際に選択していく“引き出し”で、果物狩りの楽しい雰囲気を引き出す上で特に大事なのは、撮影者と一緒に来た人が「その瞬間を楽しむこと」です。
自然な表情や笑顔を収めるには、会話をしながらシャッターを切っていきます。上の写真は、ぶどう狩りを楽しんでいるsu_uさんの名前を呼んで、振り返った瞬間を撮りました。
立ち位置などの指定はしますが、あとはその場の流れや感覚にまかせ、その中で「素敵だな」と思った瞬間を撮影しています。上の写真では、su_uさんが果物越しにこちらをのぞくように顔を出したところをとらえました。やわらかく自然な表情で撮れていると思います。
果物を主役に魅力的に写すポイント
せっかく果樹園で撮影をするなら、果物の瑞々しさや美味しさはしっかり伝えたいもの。果物を主役に魅力的に写すためには、十分に明るい場所で逆光を取り入れつつ、果物の光沢感や立体感、質感などを表現することがポイントです。果物が木に実っている状態、収穫するところ、食べている様子などの流れを意識しながら撮影しましょう。
果物がどうなっているのか伝えるために、果樹や幹の密度が低く、光が届く場所を選びました。一房のぶどうを際立たせるため、日の丸構図にしています。
su_uさんがぶどうを採ろうとしている瞬間。ここでも果物とsu_uさんに光が当たるように意識しています。
収穫の様子。エプロンの上にぶどうをのせて、採れたての美味しそうな様子が伝わる1枚に。
ぶどうを洗っているところでは、ぶどうに光が当たる位置を意識して立体感を出しています。
ぶどうの皮をむいて、いよいよ食べる直前。ぶどうのツヤ感や瑞々しさを表現するため、より光が当たる場所へ移動して撮影しています。
美味しそうに食べている瞬間も忘れずに。楽しそうなsu_uさんの表情をよく見ながらシャッターチャンスを狙いました。
Photographer's Note
果物狩りは、収穫した果物を新鮮なまますぐに味わうことができたのが、何よりうれしかったです。また、果物がどのような環境で作られているのかを知ることができ、新しい発見もあって収穫する以外の楽しみもありました。
水代果樹園では、ぶどうが終わると、次はキウイのシーズン(例年10月下旬~11月末頃まで)。季節ごとに異なる果物の収穫体験ができるのも果樹園の魅力で、同じ場所でも時期を変えて何度も楽しめると思います。
ぜひ、旬の味覚を堪能しながら、非日常空間での撮影を楽しんでみてください!
Nikon機材を使ってみて
フルサイズの Z 7IIは、安定感がありながら重さも気にならず、動き回ったり中腰になったりの撮影も苦になりませんでした。特に気に入ったのが、質感表現と描写性の高さ。明部から暗部まで色の階調が豊かで、暗い場所にも強く、色再現性が高いと感じました。
レンズはNIKKOR Z 40mm f/2をメインに使いました。コンパクトで軽くとても扱いやすいレンズ。寄りでも引きでも撮りやすく、さまざまなシーンで活躍してくれる1本です。
水代果樹園
千葉県流山市向小金3-179
味覚狩り 10:00~15:00
http://www.orchard-garden.com/
※収穫できる内容は季節によって異なります。詳細はHPをご確認ください。
※こちらに掲載している施設の情報は2022年11月1日現在のものです。
※掲載写真は2022年9月に撮影したものです。
果樹園で撮影する際の注意点
- 撮影の際は、足元や頭上に注意する。
- 同じ場所を独占しない。
- 混雑時などはまわりのお客さんに注意しつつ、撮影する距離感を保つ。
- 暑い時期には、虫除け対策を忘れずに。
- ビニールハウスであれば雨の日も安心ですが、そうでない場所では雨天時の対応を確認しておく。
果樹園ごとに果物狩りのルールがありますので、しっかり守った上で撮影を楽しみましょう。
Model:su_u(@soonononono)
Supported by L&MARK
宮治規人
趣味で写真をはじめて以来、旅先での出来事を自身の視点で気ままに撮り歩いている。レトロな街並みや喫茶店などが好き。相方のsu_uさんとともにファッションを絡めた独自の作品を展開中。