みなさん、こんにちは。フォトグラファーのフジモリメグミ(@fujimorimegumi)です。
写真との“新しいつながりが生まれる場所”を訪ねる連載企画「ニコッとフォトめぐり」。第5回は、私の地元にある写真専門店で、昔からよく知っている「ポパイカメラ」さんをご紹介したいと思います。
自由が丘駅から歩いて3分ほどで、かわいいロゴがお出迎え。外観だけでもついつい写真を撮りたくなりますね。今回一緒に行ったのは、最近フィルムカメラをはじめた稀ちゃん(@marematsuura)。大の雑貨好きらしくウキウキしています。
かわいい雑貨に囲まれて楽しそうな稀ちゃん。かゆいところに手が届くオリジナルグッズに興味津々の様子。
店内に入ってすぐ目に入るのは、たくさんのカメラ雑貨たち。私がはじめて来た頃はこんなに雑貨はなかったと思います。店内に所狭しと並ぶ雑貨は見はじめると止まりませんね。どれもこれもかわいくて稀ちゃんも困っていました(笑)
ポパイカメラさんはもともと写真現像とプリントがメインのお店で、実は創業83年の3代続く老舗。常連さんもとても多いです。今回は、昔からの顔なじみで3代目、専務の石川さんにいろいろ話を聞いてみました。
お客さんに喜んでもらうために常に変化
フジモリ:10年以上前から知ってるけど、来るたび新しいことをやってる感じがする。昔はまだ雑貨をこんなに置いてなかったよね?
石川:自分がお店を継ごうとしたときに改革をはじめたんだよ。当時の写真店は若い人が入りにくいイメージがあったでしょ? 時代の変化も感じてて、お店のイメージを変えたかったんだ。悩んだ末に、雑貨の仕入れをはじめてみたんだよ。自由が丘はおしゃれな雑貨店が多いから、毎日見に行って雑貨を勉強してさ(笑) でも最初は、業者さんからは断られてばっかり。写真店に置いても売れないと思われたみたい…。
フジモリ:そうだったんだ。その状況で、最初は何を置きはじめたの?
石川:まず仕入れたのがフォトフレーム。写真店でもまだ取り引きしてくれるところがあってさ。
石川:それで、何かお店の特徴を作ろうと思ってフォトフレームだらけのお店にしたんだよ。当時はフォトフレームだけで3000アイテムくらいあったかな。おかげでいろんなメーカーさんとつながりを持てるようになって、アルバムや雑貨のラインアップが増えていったんだ。
フジモリ:そんな裏事情があったんだ…。今ではすっかり雑貨にあふれてる! かわいい紙雑貨も充実してていいよね。
石川:アルバムを置きはじめたら、アルバム作りのための雑貨にはまっちゃって。自称だけど、マスキングテープを置いた写真店はうちが最初だと思うね!
石川:そのおかげもあって、これまでお店に来ない客層の女子高生たちが興味を持ってくれるようになって、口コミで広まったり、友達を連れて来てくれたりして…。街中を歩いていて「ポパイカメラっていうかわいいお店があるんだよ!」と噂をしてるのを聞いたときは「やったー!」と思ったね(笑)
フジモリ:それはうれしいね! 今はもう写真店には雑貨も置いているイメージが定着したと思うけど、他店との差別化とかは考えてる?
石川:雑貨は自分がもともと好きで「これを置きたい!」というものを置いてるから、他店がライバルという感覚はないかな。ちなみに、monogramさんや西村カメラさん、エビスカメラさんとはよく情報交換をしたりしてるよ。主に飲みに行くのが目的だけど(笑)
フジモリ:お酒好きだもんね!
お客さん目線で作られたオリジナルグッズ
フジモリ:オリジナルグッズもすごく多いよね。いつ頃から作りはじめたの?
石川:10年前くらいだね。昔は機能優先でデザインがあまりよくないものが多くて、持ちたいものがなかったんだよ。だから、ファッション的にカメラを持ち歩けるようにしたくてさ。
フジモリ:アイデアはすべて石川さんが?
石川:「自分がお客さんだったらこんなのがほしい」というのを作ってみたり、お客さんとの会話の中からヒントをもらったりしてる。まず着手したのがインナーケースやストラップだね。実際に作る上でサイズ感や持ちやすさなど、お客さんの意見も取り入れて作るようにしてるよ!
ドライフラワーも販売しています。撮影の小物に使えますね! これも石川さんの発案だそうです。
フジモリ:稀ちゃんもすごく気に入ったみたいだね。稀ちゃん、ポパイカメラさんはどう?
稀:愛情がこもったオリジナルグッズはどれも細部までこだわりが詰まっていて、ずっと見ていられるくらいかわいいです。ストラップを生かしてバッグにするというポーチには驚きました!
石川:そう言ってもらえてうれしいです! 今後はオリジナルグッズに若いスタッフの意見も取り入れる予定なんですよ。
ストラップつきのカメラをポーチに入れると、カメラカバーにもバッグにもなるグッドアイデア。
稀ちゃんが気になった栃木レザーのオリジナルグッズ。使いこむほど味のある色に変化していくそうで、お客さんの中には色の変化を報告しに来てくれる方もいるんだとか。
フィルムブームで増えた若いお客さん
フジモリ:フィルムカメラがここ数年ブームだけど、お店として変化は感じる?
石川:現像に来る若いお客さんが増えたね。どんなきっかけでも写真に興味を持ってもらえるのはやっぱりうれしい! 現像のオーダーがはじめての方も多いけど、お客さんの撮った写真を一番いい状態に生かすのが僕たちの仕事だから、なるべくこちらからキーワードを出して好みの方向性を引き出すような対話を心がけているよ。
フジモリ:それなら、はじめてでも安心だね!
店の奥にはカウンターとプリントコーナーがあります。平日でも現像やプリントに来るお客さんが多くて、いつもにぎわっています。
現像と一緒にデータCDを作ったり、プリントする人のためのオリジナルアルバムもあります。プリント写真と一緒に、ネガやインデックス、CDがすべて入れられるようになっているんです。
フジモリ: 雑貨に目がいきがちだけど、フィルムも充実してるね。そして、すごく安い!
石川:何気ない瞬間にこそどんどんシャッターを切ってほしいから、フィルムの値上がりで「お客さんの撮る楽しみ」を減らしたくないという気持ちでがんばってる!
販売終了前にストックしていたという、各種フィルムがそろっています。「違いがわかりやすいように、フィルムの特徴を表示したパネルと、その特徴に適したシーンでスタッフが撮影した作例を一緒にディスプレイしています」と石川さん。フィルムについての相談もウェルカムだそうです!
「やりたい」という気持ちを大事に
フジモリ:以前は2号店を作って、ギャラリーもやっていたよね? 私も展示をやらせていただいて。
石川:ギャラリーは「お客さんのため」が目的で作ったんだよ。せっかく撮影したら、誰かに見てもらいたくなるじゃない? その気持ちを叶えるのがコンセプト。他にも撮影ワークショップをやったね。最近はプリントすることが日常ではなくなっちゃったから、ワークショップで撮影からプリントまでして、プリントの楽しさを知ってもらいたくて。それに、プリントするとギャラリーで展示したくなるかなって。今はギャラリーやワークショップはお休みしているけど、ギャラリーをもう一度持ちたいし、いろんな「やりたい」という気持ちがつながるようにしていきたいと思ってるんだ。
左はみなとみらい店があったときに開催したワークショップで、撮影からプリントまで行うため丸一日がかりだったそう。右は自由が丘に2号店を移してから行った公募展の様子。予想を超えるたくさんの応募があったそうです。
フジモリ:ギャラリー以外で、今後「やりたい」ことは?
石川:根底にあるのは、「お客さん目線」で写真を撮る楽しみを応援したい!ということだね。その一つとして、写真をプリントする楽しさをもっともっと知ってもらいたいな。データで写真を見るのは便利だけど、プリントするとその瞬間に一つの形になって、思い入れのある“雑貨”になると思うんだよ。特にフィルムは今後も力を入れていきたいね。フィルムで撮った写真をプリントしたときの、独特のやさしい味わいをぜひ楽しんでほしいな!
店内にディスプレイされた写真は、スタッフさんが撮ったものに加えて、仲のいいお客さんが撮った写真も使わせてもらっているそう。
フレンドリーなスタッフのみなさん。普段からフィルムカメラを携帯して、使い方をすぐに説明できるようにしているそうです。
「みなさんやさしくてファミリー感があって、うれしかったです。ぜひまた遊びに行きたいです!」と大満足の稀ちゃん。スタッフみなさんの笑顔が絶えない理由は、お客さんと一緒に写真を楽しみたいからなんでしょうね。
楽しいフォトライフを追求していくポパイカメラさん、これからも目が離せません!
ポパイカメラ
東京都目黒区自由が丘2-10-2
TEL:03-3718-3431
営業時間:11:00~19:00
定休日:水曜日
http://www.popeye.jp/
※こちらに掲載している情報は2019年10月8日現在のものです。
Model:松浦稀(@marematsuura)
Supported by L&MARK
フジモリメグミ
清澄白河TAP Gallery に所属し、展示会やZINEを主体に作品を発表。「日常というものは奇跡なのかもしれない」という思いが2011年から強くなり、日常を撮ることをライフワークとしている。日本写真芸術専門学校講師。2017年、写真集『apollon』出版。