フォトグラファーが40mm単焦点をポートレートに使う理由「50mmと35mmのいいとこどりの万能レンズ」

フォトグラファーが40mm単焦点をポートレートに使う理由「50mmと35mmのいいとこどりの万能レンズ」

2021年10月1日発売の単焦点レンズ「NIKKOR Z 40mm f/2」。作例撮影をフォトグラファーの澤村洋兵さん(@yohei_sawamura)にしていただきました。今回は、特にポートレートレンズとしてのNIKKOR Z 40mm f/2の魅力や実際の使用感について、澤村さんに語っていただきます。

 

 

こんにちは、フォトグラファーの澤村洋兵です。
NICO STOPではこれまで旅の魅力を発信してきましたが、今回は「ポートレート」です!

 

ポートレートで大切にしていること

それは「距離感」「コミュニケーション」。「距離感」は“内面的な距離”も含みます。モデルさんとコミュニケーションを取りながら内面的な距離が近づくと、シンクロするように同じ世界にグッと入りこんで高め合える瞬間があるんです。そういうときは、1人では決して生み出せない、ものすごくいい作品に仕上がります。

この“同じ世界”に入りこめるのが35~50mmのレンズ。コミュニケーションが最も取りやすく、ゆがみも少ないためボクにとっての最適な距離感だと考えています。

 

Z 5、NIKKOR Z 40mm f/2
Z 5、NIKKOR Z 40mm f/2
Z 5、NIKKOR Z 40mm f/2
Z 5、NIKKOR Z 40mm f/2
Z 5、NIKKOR Z 40mm f/2

 

作例撮影として「NIKKOR Z 40mm f/2」を発売に先行して使わせてもらったのですが、これが想像以上によかったので、ポートレート撮影に40mm単焦点がオススメな理由をボクなりの視点で紹介していきたいと思います。

 

40mm単焦点がポートレートにオススメな3つの理由

NIKKOR Z 40mm f/2を使ってみて、40mm単焦点レンズがポートレートに最適だと感じた理由は3つあります。

【距離感】50mmと35mmのいいとこどり

1つ目は「距離感」です。普段は50mmと35mmの2本を以下のように使いわけて撮影しています。

  • 50mm:モデルさんの表情や仕草にフォーカス
  • 35mm:その場所の雰囲気を生かす

 

Z 5、NIKKOR Z 50mm f/1.8 S
Z 5、NIKKOR Z 35mm f/1.8 S
Z 5、(左)NIKKOR Z 50mm f/1.8 S、(右)NIKKOR Z 35mm f/1.8 S

 

使いわける理由は、35mmで寄るとどうしてもゆがみを感じてしまい、50mmで引くと若干圧縮がかかり普段見えている世界より一部にフォーカスしたような写りになってしまうからです。

そこでこの「40mm」。50mmと35mmの間にあたる焦点距離で、少しの距離調整でモデルさんの表情を際立たせることも、雰囲気を生かした撮影もできます。まさに「50mmと35mmのいいとこどり」のちょうどいい距離感です!

 

 

「寄り」で表情や仕草にフォーカス

Z 5、NIKKOR Z 40mm f/2

Z 5、NIKKOR Z 40mm f/2

 

40mmで寄ると、ゆがみはほとんど感じず、表情や仕草をナチュラルに切り取ることができます。さらに、50mmと同じ距離で撮るとほんの少しだけ広く写るため空気感も加味できる。その一味がなんともクセになる写りでした。

 

 

「引き」でその場所の雰囲気を生かす

Z 5、NIKKOR Z 40mm f/2

Z 5、NIKKOR Z 40mm f/2

Z 5、NIKKOR Z 40mm f/2

Z 5、NIKKOR Z 40mm f/2

 

一方で、引いたときはゆがみがなく、圧縮感もないため “自分の見ている世界”をそのまま切り取った感覚。モデルさんとの距離もさほど離れなくていいので、コミュニケーションも取りやすかったです。

 

寄り引きと撮影してみて、単に50mmと35mmの間のレンズという感じではなく、40mmだからこそ表現できる世界がありました。レンズのコンパクトさや写し出す雰囲気からも、理想である”自然体でありながらも作品性がある写真”を表現するのにもぴったりなレンズでした。

【描写】開放F2できれいにボケ、暗所にも強い

Z 5、NIKKOR Z 40mm f/2

Z 5、NIKKOR Z 40mm f/2

 

2つ目は「描写」です。開放F値は2ですが、ポートレート撮影ではF2~3.5をメインで使うため十分だと感じました。

 

F2~3.5に設定する理由

ほどよくボケるため、やわらかさの中にも締まりのある表現ができ、その場所の雰囲気も伝えやすいのが大きな理由です。また、絞ることで質感をしっかりと見せられ、写真全体としての立体感も表現できます。

 

Z 5、NIKKOR Z 40mm f/2

Z 5、NIKKOR Z 40mm f/2

 

 

場の雰囲気を生かしながらモデルさんを際立たせる

Z 5、NIKKOR Z 40mm f/2
Z 5、NIKKOR Z 40mm f/2
Z 5、NIKKOR Z 40mm f/2

 

F2であれば、モデルさんの近い部分からぼかすことができるので、見せたい部分がしっかり浮かび上がります。この距離感の撮影で、F2.8以上では出にくい雰囲気です。

 

 

暗所でも精細な描写ができ、きれいな玉ボケも添えられる

Z 5、NIKKOR Z 40mm f/2

Z 5、NIKKOR Z 40mm f/2

 

暗所においてもF2は強みを発揮します。

しっかり露出を確保でき、黒つぶれすることなく鮮明に写し出すことができます。街明かりや車のライトをぼかしましたが、絞り羽根が9枚ということもあり玉ボケが非常にきれいです。かといってそのボケは大きすぎず、ささやかな感じがムードを盛り上げてくれました。

 

Z 5との組み合わせで“やわらかさ”と“くっきりさ”を両立

Z 5、NIKKOR Z 40mm f/2

Z 5、NIKKOR Z 40mm f/2

 

ボクは Z シリーズの中で特に Z 5が好きなのですが、最上位機種に比べて画素数が少ない分やわらかく感じ、かつ、くっきりさとのバランスがいいと常々感じています。

そこにNIKKOR Z 40mm f/2をつけたとき、小さいレンズだったので描写性能に少し不安はありました。しかし、撮った瞬間に不安は吹っ飛びました。ツヤのある表現ができ、暗部にしっかり質感が残されている。光の当たる部分から影になっていくさまもナチュラルに階調豊かに再現できていて、Z 5の“やわらかさ”と“くっきりさ”が生きていました。

 

【サイズ】コンパクトで軽快、威圧感もない

フォトグラファーが40mm単焦点をポートレートに使う理由「50mmと35mmのいいとこどりの万能レンズ」

重さ:約170g、サイズ:約70mm(最大径)×45.5mm(レンズマウント基準面からレンズ先端まで)

 

3つ目は「サイズ」です。

NIKKOR Z 40mm f/2は非常にコンパクトで、ものすごく軽快。手ブレしにくいので、夜の撮影にも有利です。下の写真は仕草に合わせて位置を変えながらシャッターを切っていましたが、手ブレは感じられませんでした。

 

Z 5、NIKKOR Z 40mm f/2

Z 5、NIKKOR Z 40mm f/2

 

また、レンズが小さいとモデルさんへの威圧感が少なくなり、「緊張がほぐれやすくなる」という効果もあります。

 

Z 5、NIKKOR Z 40mm f/2
Z 5、NIKKOR Z 40mm f/2
Z 5、NIKKOR Z 40mm f/2

 

実際、「レンズすごく小さいですね!」とモデルさんは純粋にびっくりしていて、リラックスした状態でお互いに撮影を楽しめました。40mmといういい距離感で日常会話をしながら、ナチュラルな表情や仕草をとらえることができたと思います。

 

Z 5、NIKKOR Z 40mm f/2

Z 5、NIKKOR Z 40mm f/2

 

このレンズは最短撮影距離0.29mと近距離撮影も可能なのですが、ここでもサイズが効いてきます。0.29mまで近づいてもレンズの全長が短いので、モデルさんも抵抗が少なく撮影に集中できるんです。

普段ここまで近づいて撮ることは少ないですが、開放F2の被写界深度はかなり浅く、ピンポイントで魅力を引き出すことができます。

40mm単焦点によるポートレート撮影のコツ

今回撮影した中から、特にお気に入りの作品をピックアップしました。

室内で撮影した写真では全体を通して、光が窓からきれいに入っていたので陰影が印象的な作品づくりを目指しました。また、モデルさんの雰囲気を生かすために“品のある美しさ”をテーマに撮影しています。

 

Z 5、NIKKOR Z 40mm f/2

Z 5、NIKKOR Z 40mm f/2

 

この写真は普段50mmでよく切り取る「寄り」の構図。

モデルさんと光以外に特徴的なものがないため、シンプルになりすぎないように壁から少しだけ離れた場所にモデルさんを配置し、手前のカーテンで前ボケをつくることで奥行きを表現しました。また、頭の部分を少しカットしたバストアップで切り取ることで表情や仕草を際立たせています。

35mm以下の広角レンズでは少しゆがみが発生してくるのですが、40mmでは理想通りに撮影できました。

 

Z 5、NIKKOR Z 40mm f/2

Z 5、NIKKOR Z 40mm f/2

 

対して、この写真は普段35mmで撮影する「引き」の構図。窓からの光によって床にできた光と影が美しかったので、それを生かせる切り取り方を探ります。

光とモデルさんの露出を合わせるためにイスを動かしながら光の当たるいいポジションを探し、そこに座ってもらうことで理想的な構図を見つけることができました。少し物足りなかったので、カーテンや手前のテーブルで前ボケをつくり奥行きを。画角の上の余白を多めにとって空間の広さを表すことで雰囲気をプラスしています。

室内では距離がとれないため35mmで広く撮ることが多いのですが、40mmでも同様の表現が可能でした。

 

Z 5、NIKKOR Z 40mm f/2

Z 5、NIKKOR Z 40mm f/2

 

こちらは先ほどの2枚のちょうど間ぐらいの距離感。広すぎず狭すぎず、ほどよい雰囲気が感じられる40mmらしい切り取り方です。

カジュアルにナチュラルさを表現したかったので、モデルさんにリラックスして本を読んでもらいました。ポイントは“引きつつも引きすぎず”。引いて家具を含めた雰囲気のよい空間を表現しながら、窓からの光が床に到達するまでのラインを画角に収め、モデルさんに注目がいくように引きすぎないように。開放F2のおかげでモデルさん近くのイスやテーブルが形を崩さない程度にほんのりボケ、モデルさんがくっきり浮かび上がりました。

 

Z 5、NIKKOR Z 40mm f/2
Z 5、NIKKOR Z 40mm f/2
Z 5、NIKKOR Z 40mm f/2

 

今回のようにあまり広くない部屋では、50mmと35mmを何回も付け替えて撮影することが多かったのですが、40mmでは1本ですべてをこなすことができます。レンズ交換の時間ロスがなく、テンポよく撮影できたことに、このレンズの万能さを実感しました。

ポートレートだけでなく、スナップにも活躍!

ポートレートについてお話ししてきましたが、コンパクトさ・寄り引きしやすい40mmの画角・F2の明るさはスナップ撮影にも向いています。

 

Z 5、NIKKOR Z 40mm f/2
Z 5、NIKKOR Z 40mm f/2
Z 5、NIKKOR Z 40mm f/2
Z 5、NIKKOR Z 40mm f/2
Z 5、NIKKOR Z 40mm f/2

 

かなり歩くこともあるので、軽さ=疲れにくさは重要。寄りも引きも撮りやすいので1本だけでふらっと出かけられますし、F2という明るさは暗所やボケがほしいときに助かります。描写に関して、特に逆光時の撮影で驚きました。右下の写真がそうなのですが、質感を失わずコントラストがしっかり残っています。

撮影者の表現を制限することなく、自由に撮影できるレンズだと感じました。

Photographer's Note

「NIKKOR Z 40mm f/2」を使ってみた正直な感想は、「これからはこのレンズがメインになりそう」でした。

レンズ1本でバリエーション豊かに撮影でき、小さくて軽いので撮影の負担にならない。明るさは十分で、Z シリーズのレンズらしいクリアで繊細な描写をしてくれる。あら探しをするわけではないですが、本当にダメなところが見当たりませんでした。

そして驚いたのが、3万円台という価格です。はじめて聞いたときに「本当にこの価格でいいの?」と思ってしまいました(笑)
※希望小売価格は35,530円(税込)

 

汎用性の高さと手の届きやすい価格。これからポートレートに挑戦したいという方向けのファーストレンズとしてオススメですし、すでにバリバリ撮っているという方にも一度使ってみてほしいです。
…ボクは使います!

 

 

ニコンプラザ東京・大阪にて作品を展示中です!

澤村洋兵さんにNIKKOR Z 40mm f/2で撮影いただいた作品を、ニコンプラザ東京・大阪にて展示中です。ショールームでは、実際にNIKKOR Z 40mm f/2を試用できますので、ぜひ足を運んでみてください!

※所在地や営業時間についてはこちらをご覧ください。

 

 

Model:柳原史佳(@yana_aya
Supported by L&MARK

 

 

20190523173955

Z 5

製品ページ ニコンダイレクト
NIKKOR Z 40mm f/2

NIKKOR Z 40mm f/2

製品ページ ニコンダイレクト
澤村洋兵

澤村洋兵

美容師、和食料理人、バリスタ、珈琲焙煎士など様々な職業を経験してきた異色のフォトグラファー。
それぞれの職業で培った感性と器用さを武器に、ポートレートから風景、カフェ写真など幅広く活躍している。