フォトグラファーの鞄の中身 - nanoさんのフィルムカメラ街撮りスタイル

フォトグラファーの鞄の中身 - nanoさんのフィルムカメラ街撮りスタイル

「フォトグラファーが普段、どんなものを持ち歩いて撮影に出かけているのか」って気になりませんか?「本棚を見れば、その人のことがわかる」とよく言いますが、フォトグラファーの鞄の中身もきっと個性が出るところだと思います。

そこで今回は、フィルムカメラユーザーのnanoさん(@nanono1282)に、街撮りスタイルの持ち物をご紹介いただきます。人の鞄の中って、見るだけでワクワクしますよね!

 

nanoさん

nanoさん

  • メイン機材:フィルムカメラ
  • 作風:日常と非日常の中にある曖昧さ、そして感情を丁寧に表現
フォトグラファーの鞄の中身 - nanoさんのフィルムカメラ街撮りスタイル
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鞄の中身大公開!

こんにちは、フォトグラファーのnanoです。今回は街でスナップや人を撮影するときの持ち物を紹介したいと思います。

 

街撮りの日の持ち物

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  • リュック
  • カメラ+レンズ
  • フィルム
  • フィルター類
  • お手入れ道具
  • ヘッドフォン
  • 小説
  • その他(化粧ポーチなど)

 

Point

街撮りでは動きやすさが必要なので、物もそれほど多くないです。作品撮りでは決めたコンセプトに沿って必要なものを集めていくイメージですが、街でスナップ的に撮影する場合はそこにあるものをうまく使ったり、「偶然で遊べるか・気づけるか」を大事にしています。

 

 

リュックは大きさもありながら機能性を重視!

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半年前から愛用しているMILKFED.(ミルクフェド)のリュック。

 

もともと両手が使えるリュック派で、これは半年くらい前から使っています。以前はもっと大きいリュックだったんですけど、重くて…。「ある程度大きさもありながら、軽さや機能性もあるもの」と探しているときに、このリュックに出会ったんです。

 

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下のスペースには、わけておきたいフィルム一式やお手入れ道具など、硬くて壊れないものを入れています。

 

実はこれ、上と下が別々のスペースになっていて、さらにサイドにジッパーがあって横からも取り出せたりと、機能性に一目ぼれでした!

 

撮影アイテムは「どんなときでも撮れること」が大事

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左がEM(絞り優先オート専用機)、右がメインで使うFE2。

 

カメラはメイン1台+α

カメラはメインで使うFE2と、レンズはほとんど50mm1本だけです。気分に合わせて他にもカメラを持っていくんですが、EMは軽く外出するときや撮影目的ではないお出かけのときに持ち歩いたりしています。

 

 

ストラップはネックストラップ派

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カメラ1台を首から下げて、「いいな」と思う瞬間にすぐ構えられるようにしています。

 

首が痛くならないように太めの革ストラップ。これは、カメラをはじめたときから使い続けているもので、ノーブランドですが色が合わせやすいですし、なじみやすい革が気に入っています。

 

 

フィルムはどんなシーンでも撮れるようにISO違いを常備

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レギュラーメンバーである「FUJIFILM C200」「Kodak ULTRAMAX 400」「FUJIFILM SUPERIA Venus 800」。カメラにセットした後、間違って未使用フィルムの先端を巻き取ってしまったときのために「フィルムピッカー」も携帯しています。

 

毎回持ち歩くフィルムは8~10本くらいで、ISO200~800を常備しています。撮りたい瞬間に準備不足で撮れないということがないように、念のため余裕を持って準備しているんです。街撮りでは、くせが少なくて使いやすい「FUJIFILM C200」、色のりもよく安定感のある「Kodak ULTRAMAX 400」、夕方と夜の間や屋内用に高感度の「FUJIFILM SUPEIRA Venus 800」を持っていきます。

その他のオススメのフィルムはこちら

 

 

フィルムポーチの条件は「透明」であること

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フィルムが全部入る大きさで、透明なポーチ。未使用フィルムはケースに入れて、使い終わったフィルムはケースから出した状態のまま、とポーチ内で分別しています。

 

ポーチは、中が見えるように透明なものを最近は使っています。ちなみに、「チャック付きポリ袋」もオススメです。カメラを複数台使う場合はカメラごとにわけて現像に出したいので、各カメラ用に袋を用意しています。使用済みフィルムを袋に入れたままお店に渡すこともできるので、すごく便利です!

 

音楽と小説で、写真の世界観を広げる

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私は、音楽や小説から写真のイメージを広げることが多いです。もともと、写真をはじめる前からこの2つは常に近くにあるものでした。また、写真にはなるべく私個人のバイアスをかけたくないので、SNSのキャプションはノンフィクションもフィクションもごちゃまぜにしています。

 

音楽で写真のイメージを膨らませる

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音楽は撮影前に必ず聴きます。準備や移動中、待っている時間も。歌詞やPVからこんな世界観を撮りたいと思うことも多いですね。特に「羊文学」の世界観が大好き! 言葉選びやメロディーがシンプルでメッセージ性が強くて、そこに繊細な歌声が調和することで生まれる“浮遊感のある世界観”が好みです。

 

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季節や気分に合わせたプレイリストを作って、撮影前に聴いています。

 

それと、季節や気分ごとにプレイリストを作っているんですけど、そのイメージに合う自分が撮った写真をアイコン画像にしています。そうすることでより気分が上がるんです!

 

季節のプレイリストのアイコン画像

haru(春)「haru」
summer(夏)「summer」
A/W night(秋冬)「A/W night」
秋冬

 

シーンや気分に合わせたプレイリストのアイコン画像

my(最近のお気に入り)「my」
最近のお気に入り
深夜散歩(夜に聴く)「深夜散歩」
夜に聴く
light(明るめで軽い)「light」
明るめで軽い

 

 

小説は私の世界観の原点

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左は『ショパンゾンビ・コンテスタント』(町屋 良平、新潮社刊)、右は『夜は短し歩けよ乙女』(森見 登美彦、 KADOKAWA/角川文庫)。

 

小説を読むことが昔から好きで、自分以外の人生を歩めるようなヒューマン系ばっかり読んでいます。不器用でリアルな感情描写がある作品は、写真表現でも参考になります。「こーゆー状況のときにこの立場の人はこんなふうに思うんだ」とか、「一言で済ませられる感情をこんな表現をするんだ」とか…。

中でも『夜は短し歩けよ乙女』は、私が写真で表現したい世界観の原点です。主人公の女の子が先斗町で飲み歩くただの一夜の話なんですが、この子のまわりでいろんなストーリーが生まれて、ファンタジーと現実が混ざったポップでかわいくてシュールなお話。「現実なのに現実っぽくない世界観」が好きですね。

 

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あと、最近読んでいる『ショパンゾンビ・コンテスタント』は、感情描写が絶妙です。町屋良平さん作品の主人公たちは、本の中でしっかり生きてるなぁと感動します。

 

私の好きな一節

うらやましいとともに感謝している。才能あるひとたちに。ぼくには才能がない。ぼくは才能がないという地点からぼくの“いま/現在”を出発したい。だれかの“いま/現在”に繋がりたい。

『ショパンゾンビ・コンテスタント』より

 

おそらく誰しも感じたことがあるけど、うまく言い表せない感情が文章として表現されていて、読んでいて救われます。こういった感情描写がいたるところにちりばめられているんです。そして、カバーは大好きな木村和平さんの写真。一歩踏み出す前の葛藤や苦悩、でもやっぱり希望…といった内容とぴったり合っていて、最後まで読むのが楽しみな一冊です。

 

特殊効果で遊びたいときに使えるアイテムたち

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私はフィルター類がすごく好きで、おもしろそうなものがないか、よくネットで探しています。その中で最近使うのは以下です。

  1. ソフトフィルター
  2. 多重効果フィルター
  3. 接写リング
  4. クロスフィルター

 

1.輪郭を曖昧にするためのソフトフィルター

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愛用している「ブラックミスト No.1」(ケンコー)。

 

ソフトフィルターはコントラストを弱める効果もありますが、私は輪郭線を曖昧にしたくて使っています。よりフィルムらしさを出したいというときです。「ブラックミスト No.1」は、そこまでコントラストが弱まらず、眠たくならない描写が好きです。

 

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松庵文庫」の記事で撮影した写真。フィルムらしい曖昧さもありながら、しっかり暗部も出しています。

 

 

2.遊びたいときの多重効果フィルター

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多重効果が得られる「ミラージュ」(ケンコー)は、レンズの先端に取り付けます。ソフトフィルターの上につけることもあります。※現在、「ミラージュ」は販売されておらず、中古で入手。

 

重なり方はフィルターの種類によって違うんですが、私は平行に像が重なるものが好きで、遊び感覚で使っています。

 

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多重効果フィルターで撮影した写真。目の上から重なっているのがわかると思います。

 

+α:サンキャッチャーで手軽に遊びを入れる

これも遊び感覚なんですが、ガラスでできたインテリアアイテム「サンキャッチャー」を手持ちすると、前ボケや光の屈折が写真に入りこんでおもしろい画になります。

 

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実はサンキャッチャーとして売られているものではなくて、友人からもらったシャンデリアの先端なんです。

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ガラス表面で光が屈折するので、サンキャッチャーをかざした部分だけ光の入り具合が変わります。

 

 

3.そのままのレンズでクローズアップできる接写リング

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接写リングはレンズとカメラの間に取り付けます。

 

手元や小物だったり、接写したいときに便利なのが「接写リング」です。以前は、マイクロレンズやエクステンションチューブを使っていたんですけど、大きくて持ち運びに向かなくて。それで見つけたのが薄型の接写リングです。組み合わせで撮影距離が変えられるんです。コンパクトで持ち運びやすく、撮影の幅も広がるので重宝しています。

 

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パーツに寄りたいときに接写リングを使って撮影します。上の写真では、瞳を切り取りたくて使いました。

 

 

4.光の表情を引き出すクロスフィルター

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8本線のクロス効果のある「R-サニークロス」(ケンコー)。

 

光の線を創るクロスフィルターは、イルミネーション撮影でよく使われると思いますが、光が強く差しこむときに活用します。私は水辺の反射とかミラーボールを使った作品撮りで使うことが多いですね。

 

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水辺の反射を、クロスフィルターをつけて撮影。光が強いほどクロス効果が発揮されて、輝きが増します。

 

お手入れ道具は、携帯性の優れたものを

お手入れ用として、ブラシやレンズクロスは携帯していますね。特にオススメしたいのが「レンズペン」です。ブラシとチップがついていて、レンズやフィルターのホコリや指紋を取り除くことができます。

 

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ブラシとチップが各先端に収納されている「レンズペン」(ハクバ)。

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ブラシでまずホコリを取って、チップで指紋などを吸着します。

 

メンテナンスに関して気をつけていることは、機材を定期的にまんべんなく使うことです。そうすることで状態確認にもなりますし、状態維持にもつながると思います。

 

 

Photographer's Voice

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撮影に使うアイテムを探したり、実際に試してみることは、自分の写真表現を探す工程でもあるので楽しいですよね。

私はよく、写真がきっかけで知り合った友人や写真屋さんとお話しして情報交換しています。好きな写真家さんがいればどんな機材を使っているのか調べたり、写真展で在廊しているときには本人にどんなふうに撮っているのか聞いたり。それを参考にしながら自分の写真に取り入れていく…ということをやっています。なので、自分の鞄の中身をお見せするのは恥ずかしい部分もありますが、少しでも何かの参考になればうれしいです!

ちなみに私は今、発色のいいカラーフィルター(特にピンク)を探しています。何かいい情報をお持ちの方はぜひ教えてください(笑)

※記事内で紹介している商品はフォトグラファーの私物であり、すでに販売されていない可能性があります。メーカーやブランドへの問い合わせはご遠慮ください。

 

撮影:ユウスケ(@syrup93g
Supported by L&MARK

 

TOPICS フィルムカメラの新企画「#NICOSTOPと日々」がスタート!

 フィーチャーアカウント「日々」(@hibi_jp)とコラボし、フィルムカメラで撮影したみなさんの日々の写真を募集します。

※本イベントは終了しました。

 

  • テーマ:フィルムカメラだから気づけた“身近にある被写体、かけがえのない日々”
  • 募集期間:2019年12月27日(金)~2020年1月13日(月)
  • 応募方法:公式Twitterアカウント(@nicostop_editor)もしくは公式Instagramアカウント(@nicostop_official)をフォローし、ハッシュタグ「#NICOSTOPと日々」を付けて、タイトルとその写真への想いやエピソードを添えて投稿
  • 投稿先:Twitter、InstagramのどちらでもOK
  • 機材条件:フィルムカメラ(メーカー、フィルムサイズは問いません)
  • 審査員:「日々」モデレーター&NICO STOP編集部
  • 結果発表:2020年2月公開の記事で、選ばれた方の「日々」を紹介します

 

#NICOSTOPと日々
#NICOSTOPと日々
#NICOSTOPと日々
#NICOSTOPと日々

 

令和に時代が変わり、また新しい年を迎えるこのタイミングで、「かけがえのない日々」の大切さにあらためて目を向けてみませんか?

みなさんの投稿をお待ちしています!

Fujikawa hinano

Fujikawa hinano

Instagramで作品を投稿。グループ展やメディア執筆など、幅広く活動中。「日常と非日常の中にある曖昧さ、そして感情を丁寧に表現したいと思っています」