こんにちは、フォトグラファーのHana(@kie0087)です。
私はこれまで、主に女性ポートレート作品を撮影してきましたが、その中でも取り入れてきたのが「手書き文字」です。その写真にこめた想いを伝える「手書き文字の入れ方」について、今回はご紹介していきたいと思います。
手書き文字をはじめたきっかけ
そもそものきっかけは、1枚の写真だけで私の伝えたいことは伝えきれない…という想いからでした。写真の中に文字を入れることで、その内容に“まるで表紙のタイトル”のように興味を注いでくれる人がいるのではないかと思ったんです。
文字を入れたいと思ったものの、なかなかいい文字の感じや質感が見当たらず…。たまたまiPhoneの機能を使ってみたところ、それがうまくハマりました!
約1年前にはじめた頃の手書き文字。
手書き文字を写真に入れるようになってから多くの方に共感やコメントをいただけるようになりました。「タイトルに何か響くものがあればみんな読んでくれるんだな」と、言葉の強さをあらためて知った気がします。「写真と言葉で私の想いや世界観を共有したい!」手書き文字を写真に添えることによって、 少しずつ実現できているという実感が生まれました。
手書き文字で、ポスターのような1枚に仕上げる
ここでは、上の作品をどのように作っていくのか紹介したいと思います。
撮影するときのポイント
文字を入れた作品を作るときは、撮る前にモデルさんたちに合う曲を考えてその歌詞を入れたり、自分の好きな言葉や気持ちを思ったままに書きこむことが多いです。そういったイメージを膨らませながら撮影します。
また、普段から意識しているのは、「これは必ず撮る」というシーンを頭の中で構図やポージング、表情などストーリーを考えておくこと。もちろん、考えすぎずに自由に撮るのも好きです。
テーマをあらかじめ設定しておく
今回のテーマは、「Yokohama Story」です。私は生まれも育ちも神奈川の横浜。写真を撮るのも横浜がほとんどです。都内に行かなくても、たくさんの撮影スポットに溢れていますからね。そして、「この記事を読んで、少しでも多くの人に来てもらいたい!!」という想いからこのテーマにしました。
私にとって思い入れのある場所で撮影。
文字入れを考慮して余白を残す
あえて余白の部分を増やすように撮ると、あとから文字を入れやすくなります。ただし、いろんなところに余白を作りすぎないことがポイントです。モデルさんを中心に上下左右に余白を作ってしまうと作品が散漫な印象になってしまうと思います。あくまでもモデルさんが主人公なので、余白をメインにしないようにしましょう。
手書き文字の入れ方
撮った写真を自分好みに編集したら、いよいよ手書き文字を入れていきます。ここでは、私が普段愛用しているiPhoneの「マークアップ」機能を使った書き方を紹介したいと思います。手書き文字を入れるアプリはたくさんありますので、好きな雰囲気のものでOKです!
※「マークアップ」はiPhoneに標準で入っている機能で、「マークアップツール」という4種類の筆のタイプや色を選択できます。
作品にタイトルをつけるように文字を決める
入れる文字を考えながら撮影しますが、実際の写真とマッチするかも含めてあらためて考えましょう。今回の写真は、まわりの様子も入れて広告ビジュアルのような印象を持たせたので、気持ちやメッセージを入れるよりもタイトルをつけるイメージ。最初に決めたテーマ「Yokohama Story」を入れることにしました。
iPhone「マークアップ」画面。マークアップツールから使いたい筆を選ぶと、太さや透明度を調整できます。
作品の雰囲気に合わせて筆の種類を選ぶ
いくつか筆の種類を選べますが、私がよく使うのは少しかすれ感のある「鉛筆」の白です。すべて指で書いていて、濃くせず、透明感を出すように心がけています。どんな写真にも合いやすく、世界観にマッチするという理由から「白」をよく使うんですが、写真によって白が見えない場合もあるのでそこは臨機応変に。白か黒のモノトーンで文字を入れるのがいいと思います。
サラっとした印象で切ない雰囲気を出したいときは、一番左の「ペン」をセレクト。気分やそのときの感情に合わせて筆の種類を選択するのも、大事な表現の一部分だと思います。
主役と文字がリンクする位置に文字を書く
文字を入れたい部分を拡大して、指で書いていきます。
文字を書き入れる際、どこに配置するかも大切です。今回はあえて、モデルさんの服に文字が重なるようにしました。そうすることで、表情と物語がリンクしてくると思います。
また、慌ただしい朝の様子を写しているので、モデルさんのまわりに動きがありますよね。それに合わせて、文字を斜めにして動きをより感じてもらえるように意識しました。逆に、まっすぐに文字を書き入れるときは、その言葉をしっかり伝えたいときが多いです。
※主役はあくまで人なので顔に文字がかかりすぎないように注意しましょう(特に目には文字がかからないように)。
手書きの言葉が入ることでグッとストーリー性のある1枚になったと思います。最初のうちは書きこむ場所や文字と写真のマッチングに悩んだりしますが、慣れてくると5分ほどで書けるようになりますよ。
大切な人へのメッセージをこめる
先ほどはタイトルをつける作例でしたが、こちらはメッセージ性のある言葉を入れた作品です。この撮影の日は彼女の大事な誕生日。衣装・ヘアメイクをさせてもらい普段とは違う雰囲気の彼女を残すことをとにかく意識しました。
「君と恋をした」
日々歩んでいく中で、多くの人との出会い、別れがありますよね。そんな中で好きな人ができて、恋をして…。たとえその恋が報われなくても、恋することに、恋をできた人と出会えたこと自体が、まるで運命のように感じたんです。
そこからこの言葉が生まれて、文字を加えた作品全体として表現しました。
メッセージ性の文字が入るだけで、作品から読み取れる背景などが大きく変わってくると思います。また、この作品はあえて正方形にしました。余白を削り正方形にすることで、自分の中の伝えたいことがより明確になる気がするんです。
手書きで人の輪郭線を入れる
自分の想いを伝えるためのアプローチは「手書き文字」だけではありません。ここで紹介するのは、手書き文字の入れ方と同じ方法で「輪郭線」を描くというアレンジです。人の輪郭線が写真に加わると、モデルさんの心情表現がプラスされると私は思っています。オシャレな雰囲気も出ますよね。
こちらは「PicsArt」の機能で輪郭線を入れた作品。自動で輪郭線が追加されます。
もともとは「PicsArt」というアプリの輪郭線を自動で追加する機能を使っていました。最初は自分の描いたものじゃないのでとまどいましたが、うまくハマってしまって。何枚かそのアプリを使って投稿したものがあります。でも、絵を描くのが好きなので、最近は自分で描くようにしています。
ここでは手書き文字と同じく、「マークアップ」機能を使って自分で描く場合のフローを紹介します。
一番細い筆で、少しラフに輪郭線を描く
iPhone「マークアップ」画面。
一番左にある一番細い筆「ペン」を使って、細かく輪郭を指で描いていきます。
輪郭線をすべてしっかり描くのではなく、少しラフに描くのがポイント。「足りないな」「ここをもっと主張したい」と感じるところを付け足していく感覚です。時間は多少かかりますが、完成したときの達成感と、撮ったときの時間がよみがえってくるような気持ちにハマってしまいます。
輪郭線を描くコツをつかむために
輪郭線をどう描いていくかは難しいところですが、一度「PicsArt」の輪郭線機能を使って試してみると自分で描くときの感覚がつかめてきます。その上で、作品に合うペンの濃さや色を決めていくと、より自分の世界観を表現できるようになると思います。
完成作品。手書き文字も入れ、彼女の心情を表現してみました。
「I wish」
この写真は、千葉の海に朝陽を見に行った日に撮ったものです。私の中で「海と言えばこの映画」というイメージがあって、そのワンシーンを自分なりにリメイクしてみました。
太陽の光に当たれない病気を持つ少女。そんな彼女の願いは、美しい朝陽を大切な人と見ること。
彼女の心情をより強く表現するために輪郭線を加え、「I wish」と手書き文字を添えました。朝焼け撮影は今回がはじめてでしたが、映画の主人公に気持ちがリンクできた気がします。
組写真と、手書き文字や輪郭線を組み合わせる
私は組写真が好きで、1枚画像の組写真にしたり、Instagramのスワイプでページをめくるように1枚ずつ見せることもあります。その組写真のストーリー性をさらに深めるために、手書き文字や輪郭線を組み合わせるというアレンジを紹介したいと思います。
1枚画像の組写真に、手書き文字を組み合わせる
1枚画像に組むのは、ストーリーを濃くギュッと詰めこみたいときです。その1枚を見れば、「あ、こんなドラマがあるのか」…なんて想像がしやすいですよね。
この写真は、昨年行った個展「ONE day」のトークショーの際に質問されたことを参考に組んでみたものです。
「Hanaさんは恋していますか?」
まさかこんなことを聞かれるとは思っていなかったのですが、組写真を作っていて不意に思い出しました。
恋に落ちるのに時間ってあるのかな。どんなときにどんなふうに君を好きになるのか。人それぞれ好きになる瞬間って異なりますよね。一緒にいて数々のシーンを過ごしていく中で「少しでも好きになってもらいたい」恋してる人は絶対考えてるはずです。
- 光を浴びて透ける髪の毛、少し切なそうにファインダーを見つめる彼女。
- カメラを構え、1枚1枚想いをこめて撮ろうとする真剣な彼の横顔。
この組写真は、そんな男女の恋に落ちる瞬間を切り取っています。
組むときはサイズの強弱をつけたり、インパクトのある写真を1枚入れておくだけで、その物語を想像しやすくなります。今回は「二人が恋に落ちる瞬間」をイメージしたので、男女それぞれの写真を大きくしました。
そして、手書き文字を入れると、映画のポスターのようなメッセージ性の強い1枚に。文字が加わることで最初とは違ったストーリーが想像できると思います。
組写真に文字を入れる際は、主張したい写真にだけ入れるのがポイントです。文字と写真のバランス次第で作品の世界観が大きく変わってくるので、いろいろと試してみてください!
複数枚それぞれに、手書き文字や輪郭線を入れる
複数枚で構成する場合は、1枚1枚じっくり見てほしいという想いをこめています。1枚画像の組写真よりも見た人が自由にストーリーを想像できるという楽しさもあるのではないでしょうか。そこに手書き文字などを入れることでストーリー性が増し、さらに楽しんでもらえるのではないかと思っています。
「Come close to me」
この組写真は、「騒がしい朝。自然と遠くなる二人の距離。でも、そんな二人を溺れさせることはできない。」というストーリーをこめて作りました。
いつだって好きな人は特別輝いて見えるものですからね。2枚目に「Come close to me」というメッセージを入れ、そんな二人の距離を組写真で表してみました。このとき、文字を唇に重ねるように配置したのは、女性が実際に話しているようなイメージを強調するためです。
複数枚で構成する場合は、輪郭線は輪郭線だけ、文字は文字だけとわけるのがポイントです。要素を加えすぎずシンプルにしたほうが、見ている人がいろんな想像をしやすくなると思います。
Photographer’s Note
手書き文字の魅力、伝わりましたか?
自分の写真をSNSに載せるだけでなく、気に入った写真で名刺やポストカードを作ったり、形にしてみるのも楽しいです。昨年、個展をした際に手書き文字を入れた写真でDMを作りました。世界に一つだけしかない私のデザイン。DMが実際に届いたときは、すごく感動したのを今でも覚えています。
2019年11月に開催した個展のDM。「One day」というタイトルを手書きで入れました。
来月はバレンタイン・デー。大好きな人へのメッセージカードに手書き文字を入れてみてはどうですか? 世界に1枚だけしかないアナタへのLove Letter。最高じゃないですか?
「君が私に恋するまで あと何秒?」
普段、伝えられないことを文字にして伝えてみましょう!
Model: Natsumi(@choroo930)、Izumi(@izumi_photo)、みったん(@3ttan)
Supported by L&MARK
※Z シリーズカメラでNIKKOR Fレンズをご使用するにはマウントアダプターFTZを装着する必要があります。
Hana
横浜出身のフォトグラファー。ポートレートだけでなく、風景やスナップ撮影にも力を入れている。Instagramを中心に作品を発表し、2019年に個展を行うなど精力的に活動。