写真の整理の仕方にフォーカスする「フォトグラファーの写真整理術」。前回はデジタル編を紹介しましたが、今回は【フィルム編】です。
フィルムはデータ化した写真に加えて、現像したフィルムやCDの整理も必要になります。特にどんどん貯まっていく現像済みフィルムやCDの整理に悩まれている方も多いのではないでしょうか?
そこで今回は、フィルムカメラで撮影しているフォトグラファーに写真整理の仕方をお聞きしました。
教えていただくのはこの人
もなみんさん(@and_mona)
季節をテーマに、日常や友人と過ごす瞬間をフィルムカメラやデジタルカメラで撮影している。
フィルム写真の整理「データとモノをどちらも手間なく」
私は約8年分、200本分以上のフィルム写真を持っています。
ネガフィルムで撮影した写真には、写真の「データ」とネガ・CDといった「モノ」の2種類の整理対象があり、どちらも手間が少なく続けられることが整理のポイントです。
フィルムの現像&データ化は郵送で
撮影したフィルムは写真店に現像&データ化をしてもらいます。
私は愛用している写真店に撮影済みのフィルムを郵送していて、現像されたネガとCDは写真店から郵送で届きます。
郵送のメリット
愛用しているお店が遠方という理由もありますが、郵送はお店に行く時間を作れないときにとても便利です。実際に足を運ぶ場合、依頼と受け取りで2回行くことになりますが、その点郵送は自分の好きなタイミングにできます。追跡付きの方法で送れば不安もありません。
なお、郵送では極力まとめて出したいので、撮影済みフィルムをチャック付きの透明袋に入れて保管し、5~10本ほど貯まったら出すようにしています。フィルムの順番などは指定しないため、ひとまとめになって届きますが、インデックスプリントで写真を確認してネガやCDを撮影順に並び替えています。
データの整理:各カメラの写真をHDDで一括管理
全体の整理方法は上の図のようになっていて、まずはデータの整理から紹介していきます。
①CD内のデータを2台のHDDに保存
CDをPCに読みこみます。私のPCにはCDドライブが内蔵されていないので、フィルム写真のためにCDドライブを購入しました。
PCに読みこんだら、CD内の写真を確認。どんなふうに撮れたか、写真を見返すこの時間が何よりの楽しみです! 数か月前に撮った場合もあり、当時の記憶がよみがえってきます。
そして、CD内の写真データはHDDに保存します。
このとき、露出不足で真っ黒など明らかな失敗写真は消しますが、ほぼすべてを保存。ネガ同様、撮影順になるようにします。
HDDは2台でバックアップ
この2台にはまったく同じデータを保存していて、どちらかが壊れてもデータを守れるようにしています。
元々は1台だったのですが、落として故障したりが不安だったので2台目を購入。1台目は3TBでしたが、2台目のときに容量アップを図り6TBにしました。まだ容量に余裕はありますが、少なくなってきたら見直しをしたいと思っています。
HDD内はフォルダわけでデータ整理
HDDには、フィルム写真の他にデジカメやスマホで撮影した写真なども一緒に保存。それぞれを区別するため、HDD内に以下のフォルダ階層を構築しています。
- 第1階層:フィルム/デジタルなどカメラ別
- 第2階層:撮影年
- 第3階層:撮影日(フィルムの場合は写真店のデータ作成日)
第3階層のフォルダは、写真店がCD内に作ったフォルダをコピーして名前もそのままです。同じ作成日のCDが複数ある場合は、「_1」「_2」と撮影順に枝番を振りフォルダをわけて整理します。
各ファイル名も写真店がつけたものから変えません。フィルム1本分の中で撮影順に名前がつけられているので、そのまま利用しています。
②スマホで編集&SNS投稿
私はフィルム写真も編集しています。
※フィルム写真の編集についてはこちら。
以前は「VSCO」と「Lightroomモバイル」の両方を使っていたのですが、写真店の仕上がりがイメージにかなり近いので最近はLightroomモバイルのみになりました。
編集するときは、HDDに保存した写真の中でお気に入りのものを共有サービス(AirDrop)でスマホに転送します。Lightroomモバイルに取りこみ、編集してスマホからSNSに投稿。編集後のデータは転送して、HDDの元のフォルダ内に「編集済」フォルダを作り保存していきます。
なお、カメラで撮影した編集前の写真は編集後にスマホから削除しますが、Lightroomモバイルで編集した作品はスマホ内に保存したままです。見返したりスマホで利用する機会が多いため、残しておいたほうが便利なんです。
新たな魅力に気づける「手書き文字」
スマホでの編集の他に、タブレットで写真に手書き文字を入れるというアートワークも行っています。
写真に言葉を書き入れると、ストーリーを感じられる作品になったり、ピンボケしていた写真も生きたり、新たな魅力に気づくきっかけになるんです。
こちらは過去にフィルムで撮影した写真に、手書き文字を加えてみたものです。白色で書くので、背景に色がついていて余白があるものを選びます。言葉は写真からイメージするので、写真からストーリーを思い浮かべる…という、普段とは違った写真の楽しみ方ができてオススメです。
モノの整理:ネガ&CDは紙のケース+ボックスに収納
続いては、ネガやCDのモノの整理についてです。頻繁にネガやCDを取り出すことはありませんが、必要になる場合があるため、取り出しやすいように収納しています。
こんなときにネガが必要
フィルム写真のデータサイズは印刷したときにL判程度になるものが多いため、引き伸ばしてプリントしたり、大きいサイズのデータにしたいときにネガが必要です。また、CDも予備のバックアップとして一定期間保管するようにしています。
①写真店の紙のケースを利用
ネガとCDの収納は、写真店から届いたときの紙のケースをそのまま利用します。複数本フィルムを現像した場合には、撮影順にネガとCDを並び替えて紙のケースに戻します。
そして、ケースには撮影時期を記入。頻繁に現像する場合は●月と書いたほうがわかりやすいですが、まとめて出すと各フィルムが何月に撮りはじめたか思い出すのが大変ですし、フィルム1本が複数月またがっている場合もあります。そのため「春」「冬~春」など季節を書いたほうが迷わず、届いたらすぐに整理できるんです。
②紙のケースはボックスに収納
プラスチックの収納ボックスに、右から順番に時系列で入れていきます。いっぱいになったら次のボックスに入れ、ボックスも右から順番に。これを本棚に入れています。
ネガの探し方
HDDで写真を見返して引き伸ばしたくなったときは、その写真のデータ作成日から紙のケースに記載の撮影時期を照合します。そして、中に入っているインデックスプリントを見てアタリをつけ、その写真が入ったネガを取り出します。
ネガとCDの整理を改良してみました!
約2年ほど実践している整理方法ですが、実は改良したいと思っていることがあります。
ネガとCDを一緒に保管していますが、
- ネガは引き伸ばしたいときに必要
- CDは予備のバックアップ用で、1年ほど経ったら処分したい
…と自分の中での扱い方が違うため、ネガとCDはわけて整理したいと前々から思っていたんです。そこで今回の記事を書くにあたり、ネガとCDの整理方法を見直してみることにしました。
ネックになるのはネガの整理
昔、ネガを1シートずつクリアファイルの1ポケットごとに入れていたのですが、数が増えて追いつかなくなりやめてしまった経験があります。今は写真店から届いた紙のケースに入れるだけの楽チン作業なので、楽さをそのままにCDとわけて整理する方法がないかを考えました。
用意したのがこちらです。一度は失敗しましたが、やはりクリアファイル。違うのは、ネガを1シートずつではなく、紙のケースに入っている数シートをまとめて1ポケットに入れることです。ネガは撮影順にするために必ず紙のケースから取り出すので、並び替えた後にクリアファイルのポケットに入れるのは今と手間は変わりません。
また、CDとインデックスプリントは、CDホルダーに入れます。ポイントなのが、クリアファイルとCDホルダーのポケット数です。これが同じものを選ぶことで、ネガとCDの整合性を保てます。今回は40ポケットのものを購入しました。
紙のケース40個分で、上の写真のボックス1個分を丸々入れることができました。ボックスが2個あるのでクリアファイルとCDホルダー各2冊で8年分を収納できたことになります。厚みが劇的に薄くなりました!
なお、ネガとCDをわける場合は、通し番号を振ると照合できます。いつ撮ったものかは、これまでと同じく撮影時期を記載すればいいので、これから整えていく予定です。
改良した感想
同じ形のものをまとめるだけなので、すっきりコンパクトになりました。ネガやCDを紙のケースから出す作業に比べて、改良後のファイルを開く動作だけでアクセスできるのはとても楽チン。早くやればよかったです(笑)この整理の仕方は、ネガやCDがたくさんあり、過去の写真をよく見返す方にオススメだと思います。
* * *
もなみんさんの写真整理はいかがでしたか?
フィルムの場合は特にネガやCDなど「モノの整理」がネックになるので、改良版はとてもコンパクトで効率的な整理方法だと思います。
最後にもう1人、デジタル編で一元管理をされていた片渕ゆりさん(@yuriponzuu)に、モノの整理方法についてお聞きしました。
ネガ・CDの管理をさらに徹底したい方へ
片渕さん:ネガは写真店から戻ってきた紙のケースにそのまま入れてボックスに収納し、CDはインデックスプリントと一緒にCDホルダーに入れて収納しています。
識別については、ネガを入れた紙のケースとCD&インデックスプリントに連動した通し番号を記入。そして、以下のような表を作り、PC上で管理しています。
ノートアプリ「Notion」で制作した管理シート
通し番号に現像日時、機種や使用フィルム、現像先などを記録。このシートから内容と番号を確認して、該当する番号のネガを取り出します。この整理方法は、ネガやCDに加えて、撮影や現像の情報もPCで一括管理したい方にはオススメです。
Photographer's Note
もなみんさん:写真の整理は、ストレスを感じず、続けられることが大事です。今回ネガとCDの整理を改良してみて、さらにそう感じました。また、「写真を見返す」のも楽しみの一つです。今まではPCを立ち上げてHDD内のデータを見返していましたが、今回の改良でCDホルダーを開くと一緒に入れたインデックスプリントをすぐ見られるようになりました。アルバムをめくる感覚で、ふと見返して楽しむ機会が増えそうです!
PCをお持ちでない方へ
私はPCを使ってデータをやりとりすることが多いので今の整理方法に満足していますが、フィルム写真データの整理をスマホ完結にすることもできると思います。
写真店によっては指定URLから写真データをダウンロードできるサービスも導入しているため、スマホにダウンロードしてクラウドに写真をアップロードすれば、PCがなくても大丈夫です。
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もなみん
東京在住のフォトグラファー。季節をテーマに、友人と過ごす瞬間をメインにフィルムカメラで撮影している。企業PRなどの撮影、旅行系メディアでの執筆など、幅広く活動中。「たいていワンピースを着ています」