はじめまして、小春ハルカ(@86ca86)です。
普段は、季節の花や夕焼け空、何気ない田舎の景色など、日々過ごしていく中で身近に感じる「心動かされる瞬間」を撮影しています。
7年前にはじめての一眼レフD5300を購入して、休日はよくテーマパークを中心に撮りに出かけていました。その後、写真を撮らなかった時期があるのですが、コロナ禍で遠出が難しくなってしまった中、普段見過ごしてしまうような景色の中にもたくさんの美しい発見があることに気づき、2021年秋に再び写真活動をはじめました。
再開を機に憧れだったフルサイズを購入しようと、Z 6IIを手に。
この Z 6IIには「タイムラプス動画」という撮影機能があるのですが、今回は星空写真家・タイムラプスクリエイターの成澤広幸さんに教えていただき、はじめてのタイムラプス撮影にチャレンジしました。写真とは違う観点で、どういう景色の流れが見られるのか楽しみです!
タイムラプス動画とは?
一定間隔で自動的にカメラが撮影し、静止画をつないで動画として記録したものです。Nikonの Z シリーズには、タイムラプス動画を自動生成する機能があります。
成澤広幸さんが Z シリーズで撮影したタイムラプス動画
こちらの動画では、夕焼け~星空~朝焼けの空の多彩な表情が表現されています。それぞれの時間ごとに魅力があるのですが、夏の夜空に広がる星を被写体にタイムラプス動画を撮影してみることにしました。星空も初挑戦です!
…そして、こちらが実際に撮影したタイムラプス動画です。
はじめてでも、こんな動画を撮ることができました!
この記事では、タイムラプス動画の撮り方を、順を追って紹介したいと思います。
星空×タイムラプス動画撮影のポイント
星空撮影・タイムラプス動画撮影は、事前の準備が大切です。ここからは、成澤さんに教えてもらった基本ポイントをもとにどのように準備したか、実際に撮影してみて感じたことを織り交ぜながらご紹介します。
星空×タイムラプス撮影に必要な機材
まずは機材です。タイムラプスでも、被写体が星空の場合に用意すべきものがあります。
- カメラ:タイムラプス機能があるもの。フルサイズで高感度耐性に優れたものほど、ノイズが少ない
愛用の Z 6IIは、目に見えない星までクリアに写っていてとても感動しました。ISO感度を上げても(最高でISO6400まで上げました)ノイズは気にならず、はじめてでも星空をきれいに写し出すことができます。
- レンズ:星空を広くとらえるには24mm以下の広角で、かつ極力F値の小さいもの
NIKKOR Z 20mm f/1.8 SとNIKKOR Z 14-24mm f/2.8 Sを使用しました。多くの星と空を写してスケール感を出すには14-24mmの超広角で撮影し、画角が足りる場合は20mm単焦点のほうが露出を確保しやすくさらに安心です。
- 三脚:長時間撮影する上で、風などの影響を考慮してしっかりしたものを選ぶ
VelbonのEX-540IIを使用しました。風によるブレはなく、安心して撮影できました。コンパクトに折りたためて持ち運びしやすく、重さによる負担を感じることはありませんでした。
- メモリーカード:極力大きい容量のものを。ダブルスロットならもう1枚入れておくと安心
私は64GBのXQDカードを使用していますが、1時間程度で300枚ほどのRAW撮影でも十分足りる容量です。もう1セット撮影できる余裕もありました。
- バッテリー:必ずフル充電しておく。撮影時間次第ではモバイルバッテリーで給電しながら
長くて1時間半ほどの撮影では、フル充電の状態でバッテリー切れの心配はありませんでした。
他にあったほうがよいアイテム
- レンズヒーター:レンズの結露防止。湿度が高い時期は結露しやすい
COOWOOのUSB式を使いましたが、モバイルバッテリーにつなぎレンズに巻きつけるだけなので、簡単に取り付けできます。6月で標高がある場所でしたが、結露せず、安心して撮影できました。なお、夜や朝方以外であれば、ヒーターは取り付けなくても問題ありませんでした。
- ライト:ヘッドライトで両手をフリーに。目が痛くならない光のものを選ぶ
Vixenというメーカーの天体観測用のヘッドライトを使いました。想像以上に暗い街灯のない場所でも、三脚の組み立てからカメラの設定まで、スムーズに行うことができました。
星空を撮るための撮影場所・時間
星空撮影は、星がいい条件で見られる場所や時間を調べておく必要があります。
- 場所:開けていて星の方角に明るい街がない場所。標高が上がるほど空気が澄んでいる
今回の場所は標高が高い地域で、一面畑が広がる街灯の少ない場所を選びました。場所選びの際、SNSに投稿されてる写真や、Google Mapなどで検索し、行ってみたいところをメモ。その候補の中から当日、天気予報やインターネットで星空観賞の条件が整っているか確認し、場所決めをしました。
※街明かりなどが障害となり悪影響を及ぼす「光害」は、「Light pollution map」から確認できます。
- 時間:夏の醍醐味「天の川」は南東に現れ、22時頃からがオススメ
22時半から撮影をしました。月の出や、天気の条件にもよりますが、夜が更ければ更けるほど街灯も少なく撮影しやすかったです。月の影響は大きく、新月~その前後であれば星空への月明かりの影響はほとんどなく、肉眼でも天の川を確認できるほど。月が出る日でも、月の出前や後であれば十分撮影ができました。
タイムラプス動画撮影の設定
ここからが、タイムラプスで重要な設定です。
Z 6IIには「タイムラプス動画」機能と「インターバルタイマー撮影」機能の2種類あり、前者は動画のみ保存され、後者は静止画も保存できます。今回は、静止画も保存したかったので「インターバルタイマー撮影」にしました。
設定で注意すべきは、撮影中に明るさが変わることでちらつく「フリッカー」が発生しないようにすること。漏れなく設定していけば、はじめてでも失敗なくタイムラプス動画が撮影できます。
<データ形式>
- 画質モード:後で編集をする場合はRAW、しない場合はJPEG
今回は静止画を後から編集することも想定して、RAWで撮影。RAWで撮影してもカメラ内にタイムラプス動画は自動生成されます。
<露出>
- 撮影モード:A(絞り優先オート)モードでF値を固定
- F値:F2.8以下で固定。小さいほど露出時間が確保でき、適正露出が得られやすい
ただ、NIKKOR Z 20mm f/1.8 Sの場合は、周辺減光を抑えるためにF値は1~2段絞ったほうがよりよかったです。開放F値でもきれいに撮影できたので、そこはお好みでよいかと思います。
- 露出補正:なし
- ISO感度:最低感度に設定すると、星空のみはもちろん、朝まで撮影する場合でもスムーズなタイムラプス動画が撮影可能
こちらは Z 7IIのメニュー画面です。
感度自動制御:ONで周囲の明るさに対応
制御上限感度:12800に(ノイズが気になる場合は6400)
低速限界設定:最長の露出時間を決める数値は10~15秒の間で設定Z 6IIの最低感度であるISO100にし、「低速限界設定」は星空のゆっくりとした流れを撮影したかったので15秒にしました。なお、ISO感度を最低感度に設定すると、カメラが前後の明るさを調整しながら適正露出にしていくため、真っ暗な画像からスタートしますが、10枚程度撮影したあたりから適正露出になります。動画的には映像が徐々に表れるフェードインのような演出になるので、気にはならないと思います。
<タイムラプス動画(インターバルタイマー)撮影の設定>
こちらは Z 7IIのメニュー画面です。
- 撮影間隔:「低速限界設定」よりも必ず長く設定(目安はプラス2秒)
- 撮影回数×1回のコマ数:撮影時間で決定
1時間なら約200枚。1時間半なら約300枚に。フレームレート30pの動画であれば、それぞれ6秒程度、10秒程度の動画になります。 - 露出平滑化・サイレント撮影・撮影間隔優先:ON
- 撮影間隔毎のAF駆動:ピントが動かないように必ずOFFに
オプション:カメラ内で動画を生成するため「タイムラプス動画」を設定
こちらは Z 7IIのメニュー画面です。
画像サイズ/フレームレート:「3840×2160 30p」(4K)か「1920×1080 30p」(フルHD)を選択
新規フォルダ作成&ファイル番号リセット:タイムラプス用フォルダを作り、他の写真と別に管理
<他の設定>
- 測光モード:中央部重点測光に。広い領域を測光するマルチパターンではフリッカーが発生しやすい
- フォーカスモード:MF
- 手ブレ補正:OFF
- 高感度ノイズ低減:OFF
- 長秒時ノイズ低減:OFF
<仕上がりの設定>
- ホワイトバランス:オート(A1)
- ピクチャーコントロール:スタンダード
JPEG撮影の際の雰囲気調整
ピクチャーコントロールは光がたっぷりある昼間用の色設定のため、夜では効果が薄い可能性があります。雰囲気を変える場合は、ホワイトバランスの設定がオススメです。
以上の項目を「マイメニュー登録」しておき、順番に設定していくと漏れがなく確実です。また、普段の撮影設定に戻す際にも便利でした。
>タイムラプス動画撮影の設定は、こちらで成澤さんが解説しています。
いよいよ星空のタイムラプス動画撮影に挑戦!
当日は18時には現地入りし、撮影位置を決めるために明るいうちにロケハンしました。特に慣れていない暗所での撮影は、あらかじめ撮影位置を決めておくとスムーズです。
- セッティング:三脚を安定させ、水平をしっかりとります。
- 構図:地上風景は1~2割程度、星空を8~9割程度にすると、空の表情がよくわかります。
一本松のシルエットが印象的だったので、星とのバランスを考えて左下に入れました。なお、ライブビューでは横3:縦2の比率で見えますが、動画は横16:縦9と上下が切れることを忘れずに。
- ピント合わせ:いちばん明るいと感じる星を選び、ライブビューで拡大表示して、確認しながら合わせます。ヘッドライトを使うことで、暗所でもボタンの位置を確認できて、ピント合わせが楽でした。
左:ピントが合う前、右:ピントを合わせた状態
- 撮影:インターバルタイマー撮影は、撮影開始から数秒間おいてシャッターを切ってくれるので、手押しでも問題ありません。
こちらが約1時間撮影し、カメラ内で生成されたタイムラプス動画です。空の色がじんわりと変わっていく瞬間や複雑な雲の動き、ゆっくりと動いていく星、普段は見過ごしてしまいそうなリアルな世界の美しさに感動しました。
「動画」と聞くとさまざまな編集が必要というイメージがあったのですが、カメラ内生成機能で撮影後にその場ですぐに確認できるのもうれしかったです!
タイムラプス動画の編集
写真の編集では「淡く青みのある空の色」にするのが好きなので、いつものような雰囲気に仕上げるために動画編集にもチャレンジしました。
私は普段Lightroomで写真を編集していますが、2022年6月のアップデートで簡易的な動画編集ができるように! カメラ内生成のタイムラプス動画データを使って編集してみました。
※Lightroomモバイル版の場合、有料版が動画編集に対応しています。
- 明るさ調整:露光量とシャドウ、黒レベルを上げ、全体の明るさを調整します。地上付近の明るい部分を抑えるためハイライトは少し下げ、星の明るさを際立たせるために白レベルを上げました。
Lightroom Classic編集画面
- 色味調整:好みの色に近づけるため寒色寄りにし、カラーミキサーで青の彩度を上げ、夜空の青を強調しました。
Lightroom Classic編集画面
この調整を、大体の秒数ごとにカーソルを持っていき、全体的にバランスを見ながら調整していきます。
こちらが編集した完成動画です。カメラ内生成の撮って出しでも十分きれいでしたが、編集することで好きな世界観を表現でき、改めて感動しました! 普段撮影しているような写真の雰囲気を、動画として見ることははじめてで、写真とは違う魅力が感じられます。
同じ場所で、違うタイムラプス動画も撮影してみました。
一面畑が広がる中にそびえ立つカラマツの木が印象的で、そこを中心に流れる星空を写し出しました。
動画編集をしてみて
Lightroomの動画編集は、写真に比べて調整項目が限られているものの、プリセット適用や基本的な編集が可能です。モバイル版は有料プランにする必要はありますが、パソコンがなくてもタイムラプス動画を編集できるのはとても魅力的だと思います。
編集をもっとこだわりたい方は、Lightroom ClassicやNX studioで静止画の代表1枚を編集して全データに適用し、動画編集ソフトでつなぎ合わせるといいそうです(DaVinci Resolveという無料の動画編集ソフトもあります)。
普段撮影する被写体でタイムラプス動画撮影!
タイムラプス動画の撮り方を覚えたので、何気ない風景と夕日や朝日など、普段撮影する被写体でも試してみました。
夕日×タイムラプス動画
1日中雲が多い日でしたが、夕方に雲間から太陽が顔を出す瞬間があり、素敵な夕焼け空が見られそうだと思い撮影しました。4秒あたりからぶわっと姿を変えていく雲が見どころです。今まで見た中でも印象に残る夕焼け空になりました。
朝日×タイムラプス動画
星空を撮った帰り道、月から太陽へのバトンタッチの瞬間を写したくて撮影しました。朝と夜が混ざり合う空に、この日は月と一緒に金星が並んでいます。月→雲→太陽と、空の変化を楽しめる動画を撮影することができました。
Photographer's Note
星空、さらにタイムラプス動画撮影は「難しそう」と思いこんでいましたが、基本的な設定を覚えれば、後はカメラ任せで初心者の私でもきれいな動画を撮影できることにびっくりしました。暗所での撮影は不慣れで大変なこともありましたが、撮り終わった後に完成した動画を見たときの感動はすごいです!
また、タイムラプス動画撮影はカメラ任せなので、もう1台カメラがあれば、その間は写真撮影もできます。アングルを変えたり、星の流れに合わせて構図を変えたり、動画とは違う視点で風景を楽しめます。実際、写真撮影をしていたので、タイムラプス動画撮影もあっという間に終わっていました。
動画撮影に興味があるけど「難しそう」と思っている方は、タイムラプスからはじめてみてもいいかもしれません。夕景など暗くないシチュエーションであれば、タイムラプス動画撮影機能がついたカメラと三脚があれば撮影できますから!
今回、タイムラプスという撮影を通して、気に留めなかったようなことも意識するようになりました。この一瞬一瞬にも色や形を変えながら、さまざまな“出来事”が起きてると思うと、どんなに見慣れた景色や身近に感じる空も今まで以上に好きになりました。
タイムラプス動画撮影はぜひ続けたいと思っていて、私が普段よく撮影する被写体の花に注目したいです。流れていく時間と同時に美しい姿に変化していくまでの過程は、実際には見たことがないのでとても興味があります!
愛機 Z 6IIをタイムラプス動画撮影、星空撮影に使ってみて
まず、普段使っているカメラで、初心者の自分でも簡単にきれいな動画が撮れたことがうれしかったです。星空も今回初挑戦でしたが、開放F値でも地上や隅々の星までシャープに写る高い解像度に感動しました。
NIKKOR Z 20mm f/1.8 SやNIKKOR Z 14-24mm f/2.8 Sは、夕日など強い光源を入れて撮影してもゴーストやフレアもなく、風景や星空の写真はもちろんタイムラプスの撮影にも重宝するレンズだと感じました。それに、普段愛用している35mmのレンズでも星空を撮れたのがうれしかったです!
私は、花や風景を撮るときは温かい気持ちになるような写真を撮りたいと思っています。 Z 6IIとZレンズが写し出す透明感が大好きで、撮る人によって自由な表現力を引き出してくれる最高のカメラだと思っています。購入してからは写真を撮ることがもっと好きになり、どこへ行くにも欠かせないものとなりました。今後も大好きなNikonのカメラを手に、さまざまな瞬間を残していきたいです。
小春ハルカ
季節の花や夕焼け空、何気ない田舎の景色など、日々過ごしていく中で身近に感じる「心動かされる瞬間」を撮影。花と風景の淡色世界を表現している。