撮影の基本を解説する『写真家と学ぼう! カメラ初心者ガイド』。今回は「猫」の撮り方です。おうちで猫のかわいい瞬間を収めるためのポイントを、フォトグラファーの鎌田風花さんに教えていただきます。
photo by 鎌田風花
ナツキちゃん
スマホで写真を撮っていたが、「もっと素敵な写真を撮りたい」とカメラを購入。相棒はAPS-Cサイズのミラーレス「Z fc」と単焦点レンズ「NIKKOR Z 28mm f/2.8(Special Edition)」。モットーは「とりあえずやってみる」。好奇心旺盛で、少しうっかりやさんな女の子。鎌田風花さん
ナチュラルな風景や人物写真を得意とするフォトグラファー。家族写真の出張撮影や広告撮影なども行っている。
実家で猫を飼ってるんですけど、部屋の中で撮るのって結構難しくて。コツを教えてほしいです!
かわいい瞬間を残したいよね! 任せて。
猫撮影に向いているカメラとレンズ
- カメラ:おもちゃを持ちながら片手で撮ったり、とっさのシャッターチャンスを逃さないように軽量なものがオススメ。可動式モニターなら猫目線で撮るのも楽ちんです。また、シャッター音で驚かせないように、サイレントモードがあるものが◎。
Z fcは片手でも持てる軽いカメラで、とっさの動きも対応しやすいです。
- レンズ:室内は光が弱いため、F値が小さいほど撮りやすいです。最短撮影距離が短いレンズなら、目元や足元など寄った撮影もできます。
NIKKOR Z 28mm f/2.8(Special Edition)は最短撮影距離が0.19mと、被写体にかなり近づいて撮影することができます。
部屋で猫を撮るときの設定
光が弱い室内での露出設定
部屋の中は外より暗いから、露出の設定がポイントだよ。
- 撮影モード:A(絞り優先オート)モードでF値を調整する。
- F値:明るさ確保のため、いちばん小さい値にしておくと撮りやすい。
- ISO感度:オートでOKですが、目安はISO400~1000。部屋が明るければ極力ISO感度を下げるように。
※Z fcの場合、ISO感度ダイヤルではなくメニューからオート(感度自動制御)を設定します。設定の仕方はこちら。
まずは明るさを確保することが大切なんですね。
F値を小さくして背景をぼかせば、すっきり猫が際立つ写真が撮れると思うよ。
F2.8で背景をぼかした写真
たしかに、部屋の中って物がたくさんあって、生活感が出ちゃいますもんね。
ただ、白い猫の場合は明るすぎると質感が失われちゃうから注意が必要だね。
うちの猫も白い部分が多いので、気をつけます!
猫にはどうピントを合わせる?
ピントは、猫の顔を狙えばいいんですかね?
そうだね! Z fcは「動物AF」があるから、顔や瞳を自動で認識してくれて便利だよ!
「動物AF」で撮影した写真
そうでしたね。設定しなきゃ!
あとは、動くことも想定しておく必要があるね。
フォーカスモードを「AF-C」に設定すると、ピントを合わせた被写体を追ってくれるよ。このとき、見切れないようにある程度余白をつくった構図にしておくのもポイントなんだ。
「AF-C」で撮影した写真
私は今、止まってる被写体が得意な「AF-S」と「AF-C」を自動で切り替えてくれる「AF-A」に設定してるので、それなら動きも大丈夫ですかね?
そうだね!
フォーカスモードの種類
- AF-S:シャッターボタンを半押ししている間、被写体にピントを固定する。
- AF-C:シャッターボタンを半押ししている間、動く被写体にピントを合わせ続ける。
- AF-A:カメラが被写体を判別し、AF-SとAF-Cを自動で切り替えてくれる。
行動パターンに合わせて、撮影モードを変えておく
…あれ、動くことを想定すると、F値とシャッタースピードを調整できるようにMモードのほうがよかったりしませんか?
Mモードだと露出の調整も必要だから、素早く動く瞬間を撮りたいときはSモードで連写がオススメかな。1/500秒~激しい動きなら1/1000秒に設定すればブレずに撮れるよ。
止まってるときのボケ感ややわらかい雰囲気にしたいときはAモードが撮りやすいから、切り替えできるといいね。
私はまだ慣れてないので、Mモードで露出調整してるといい瞬間を逃しそう。…でも、撮影モードをうまく切り替えるコツってありますか?
行動パターンを知ることが大切だね。猫それぞれに1日のルーティーンがあると思うから、どんな過ごし方をしてるか観察してみてね。
例えばうちの猫は、朝は外を眺めたりごろごろして、昼ごはんを食べた後はおもちゃとかで遊んで、遊び疲れて昼寝をして、夜には活動的になる…と時間帯で動きの活発さが違うんだ。
ごろごろしてるときはAモードで好きなF値に調整して、動きが活発なときはSモードでブレないように切り替えられるといいね!
まずは相手を知ることから…ですね!
お気に入りの場所に長くいることが多いから、撮りやすい場所に落ち着ける空間をつくってあげるのもいいと思うよ。いつでも撮れるように、カメラをすぐ取り出せる場所に置いておくこともポイントだね!
くつろげるソファを光が入る位置に
なるほど~!
いい表情をとらえるためのポイント
猫の特徴を知ると、いい表情もとらえやすくなるよ。
知りたいです!
明るさで変わる黒目の大きさ
まずは、黒目の大きさだね。暗かったり、おもちゃとか興味があるものを見てるときは瞳孔が開いて、黒目が大きく写るよ。
そんな特徴があるんですね。どっちもかわいいなぁ~!
猫と目線を合わせて撮る
もう一つのポイントは猫と同じ目線になることだよ。私は猫の様子に合わせて、アングルやポジションを変えて撮ってるんだ。低い場所にいるときはローポジション、高い場所にいるときはハイポジションという感じでね。
ローポジションで撮影
いつも、自分目線で見下ろすように撮ってました…。猫目線になってみます!
ハイアングルなら、甘えてくるときに目線が合うね!
ハイアングルで撮影
かわいい…!
コミュニケーションをとりながら撮影する
遊びの延長線上で撮影すると表情が生き生きして、猫もストレスなく撮影できると思うよ。それに声をかけると向いてくれることもあるから、その瞬間にシャッターを切ったりだね。
コミュニケーションとりながらはこちらも楽しいですし、いいですね!
…でも、片手でおもちゃを持つと、カメラを持つのも片手になってしまって少し不安です。
カメラを片手で持つときは、Sモードでシャッタースピードに気をつけるといいよ。動きは手元周辺だけになると思うから、1/500秒以上確保できればブレなく撮れると思うな。
やってみます!
集中している様子をそっと撮る
何かに集中してる様子をそっと撮るのも、表情を写すポイントの一つだよ。
いい表情ですね!
シャッター音に驚く場合もあるから、サイレントモードにしてシャッター音を消すのもコツだね。
シャッター音って消せるんですね! 忘れずに設定します。
顔以外のパーツにも注目
猫は顔を撮りがちだと思うけど、顔以外にもキュンとするポイントも探してみてね!
肉球も撮りたいです!
丸まらずに足を出して寝てるときなんかは、普段隠れてる肉球を撮影するチャンスだよ。
尊い…!
猫がいる空間の雰囲気を写すポイント
鎌田さんの、インテリアと一緒に写ってる猫の写真も素敵ですよね!
ソファでくつろぐ猫を引きで撮影
インテリアと一緒に写すときは、猫が主役じゃなくて「よく見たらいる」というふうに撮るようにしてるんだ。
「主役は猫じゃない」って盲点でした。
例えば、ソファのへりでくつろぐ様子を引きで撮ったり、キャットタワーの上にいる猫をフレームインさせたり。
あえて、キャットタワーを端にフレームイン
光も大事で、日中は照明をOFFにして自然光だけで撮るようにしてるよ。窓からの自然光と照明の色が混ざると統一感がなくなってしまう場合もあるし、影が複数方向にできてしまう場合もあるんだ。
たしかに、左の写真のほうが自然な印象ですね。
自然光で撮るときは、夕方の斜光を生かすと光と影がいい雰囲気になるよ。やわらかくて優しい雰囲気にしたいときは、逆光で露出を上げて撮ることもあるんだ。その場合は、AモードでF値をいちばん小さくするのがポイントだね。
わぁ、素敵!
部屋の中を生かす場合は、前ボケも効果的だよ。おもちゃや家具を前ボケにすると、部屋で過ごす様子が伝わりやすくなるし、奥行き感も出せるんだ。
早く家に帰って、撮りたくなってきました!!
鎌田さんが教える、猫撮影のアイデア
- 鏡越しで撮る:映った自分をじっと見ている、おもしろい瞬間を写せます。
- 猫と一緒にセルフ撮影:猫が抱っこさせてくれるときは、カメラを三脚やテーブルの上などに置いてセルフタイマー撮影すると、猫と一緒の写真を残すことができます。
猫撮影の注意点
- 撮影のために無理をさせない(無理やり抱っこしたり、起こさない、場所を移さない)
- フラッシュは禁物
嫌がることをして撮影しても信頼関係がなくなります。「猫は気まぐれ」ということをしっかり理解しておき、お互いストレスのないように撮影を楽しみましょう!
NEXT STEP!
次の被写体は、家族や友達など「身近な人」です。自然な表情を引き出すコツや、旅先などの風景を生かした撮り方、自撮りで一緒に写るときのポイントなどを、フォトグラファーのjyota tomonoriさんに教えていただきます。
キャラクターイラスト:福士陽香(@f___haru)
Supported by L&MARK
※画面キャプチャ―や機能名は Z fcのものを記載しております。