連載企画『写真家と学ぼう! カメラ初心者ガイド』では、Step1~16の全16回でカメラの使い方や撮影の基本を解説してきました。今回からは被写体ごとの撮影の基本を紹介していきます。
最初の被写体は「花」です。外で花を魅力的に撮るためのポイントを、フォトグラファーの鎌田風花さんに教えていただきます。
photo by 鎌田風花
ナツキちゃん
スマホで写真を撮っていたが、「もっと素敵な写真を撮りたい」とカメラを購入。相棒はAPS-Cサイズのミラーレス「Z fc」と単焦点レンズ「NIKKOR Z 28mm f/2.8(Special Edition)」。モットーは「とりあえずやってみる」。好奇心旺盛で、少しうっかりやさんな女の子。鎌田風花さん
ナチュラルな風景や人物写真を得意とするフォトグラファー。家族写真の出張撮影や広告撮影なども行っている。
ナツキちゃん、これまでカメラや撮り方の基本を紹介してきたけど、どんな被写体を撮ってみたいかな?
いろんなものを撮ってみたいんですけど、まずは身近に咲いてる花をきれいに撮りたいです!
花だね! ナツキちゃんが持ってるカメラとレンズは、花撮影にもぴったりだよ。
花撮影に向いているカメラとレンズ
- カメラ:可動式モニターがついていると、ローポジションで花目線になったり、ハイポジションで下に向けて撮るときもしっかり写りを確認できます。Z fcのようにバリアングル式モニターなら、低い位置や高い位置で縦に構えるのも楽です。
左:ローポジションで花目線で撮影、右:ハイポジションで眼下の植物を背景にして撮影
- レンズ:ぼかして花を際立たせるには開放F値が小さいものが◎。最短撮影距離が短いものは小さな花にぐっと近づいて撮ることができます。
NIKKOR Z 28mm f/2.8(Special Edition)で花に近づいて撮影。このレンズは最短撮影距離が0.19mと、被写体にかなり近づいて撮影することができます。
私のカメラとレンズは花撮影に向いてるんですね。安心しました!
主役を決めよう
花が咲く場所を見つけたら、主役を決めてみよう!
より際立つ花の選び方
たくさん咲いてる中で、どういう花に目をつけたらいいですか?
私は、どこか他と違う部分がある花を主役にしてるよ。
【主役に選ぶ花】
- 特にきれいに咲いている花
- まわりと色が違う花
- 他よりも頭ひとつ背が高い花
- こちらを向いている花や逆に1輪だけ背を向けている花
- 2輪が寄り添っているもの
- スポットライトのように光が当たっている花
左:特にきれいに咲いている、右:まわりと色が違う
左:2輪が寄り添っている、右:スポットライトのように光が当たっている
違いに目を向けるんですね! 今まで何となくで撮ってました…。
主役のどこにピントを合わせる?
主役を決めたら、そこにしっかりピントを合わせたいよね!
初期設定のAFでも大丈夫ですか?
AFの中でも「シングルポイントAF」が、主役にしっかり合わせやすくてオススメだよ。タッチすれば、好きな位置にすぐ合わせられるしね!
シングルポイントAFで、花にタッチしてピントを合わせている様子
花は花びらがたくさんありますけど、どこにピントを合わせるのがいいんでしょう?
花びらが開いている花を撮る場合は、「しべ」に合わせてみよう。
左:しべにピントを合わせた写真、右:しべではなく手前の花びらにピントが合った写真
同じ花でも印象が違いますね。
しべが見えない場合は、花びらの輪郭部分に合わせるといいよ。
主役の花を際立たせるボケ
花のまわりをきれいにぼかしたいので、設定はA(絞り優先オート)モードですかね?
AモードでF値をいちばん小さくして、それから被写体とカメラが近いほど背景がボケやすくなるよ。
同じF値でも、被写体に近いほど背景がボケる
こんな関係があるんでしたよね!
そう! それと、背景選びも大事だよ。木漏れ日があるとキラキラした玉ボケができるし、花が淡い色の場合は暗かったり濃い色の背景を選ぶと主役の花が際立つんだ。
左:背景の木漏れ日を玉ボケに、右:白い花を際立たせるため暗い背景を選択
うわぁ、玉ボケきれいですね!
…そういえば、前ボケもやってみたいです。
前ボケは、主役の花と距離をとって、ぼかしたいものにレンズを極力近づけると、ふんわりした雰囲気になるよ。
すごく素敵です!
前ボケは明るい色で淡くぼかすのがポイントだよ。主役の雰囲気を盛り上げるのが目的だから、ボケが主役に重なりすぎないようね。
わかりました!
撮影位置や光を考えて、花をより魅力的に写そう
花の魅力を引き出すために、構図や光も意識してみよう!
花が際立つ撮影位置とアングルを探す
まず、引きか寄りかで印象は大きく変わるよ。
- 引き:花がどんな場所で咲いているか状況がわかる。
- 寄り:主役の花の存在を強調できる。
寄ったほうがボケやすくもなるんですね!
そうなんだ! それから、撮る位置を決めるときは、主役の花が生き生きして見えるようなポジションやアングルを探してみてね。
生き生き…ですか?
足元に咲く花はローポジションで花と同じ目線になったり、真上に咲く花なら見下ろして俯瞰で撮影したり、木に咲く花だったら見上げたり。ここで、可動式のモニターが生きてくるんだ。ローアングルで背景を空にすることもできるしね!
左:花と同じ目線で撮影、右:俯瞰で撮影
ローアングルで、背景を空にした写真
一つの花でも、いろいろ観察してみるのが大事なんですね!
光の当たり方を意識する
撮る位置を考えるとき、光の当たり方も意識してみよう。
被写体に前から光が当たる順光と、後ろから光が当たる逆光では印象が大きく変わるんだ。光に透けるような花びらなら、逆光で撮るときれいでオススメだよ。
- 順光:花の色をしっかり表現でき、空の青さもきれいに出る。近づいて撮影する際は、自分の影が写りこまないように注意。
- 逆光:特に夕方などはふわっとドラマチックな印象に。薄い花びらを透かす場合、真っ白に写ることがあるため明るさの設定には注意。
花が透けるとすごく素敵ですね!
晴れていればきれいに写ると思ってましたけど、今度から太陽の位置も意識してみます。
晴れた日中は真上からの光が強すぎて力強い印象になる場合もあるから、光が弱まる朝や夕方とか時間帯も気にしてみてね!
構図を決める
撮る位置やアングルについて徐々にわかってきたんですが、花でオススメな構図ってありますか?
主役をより強調するなら背景をぼかして「日の丸構図」に、まわりも含めてバランスよく切り取りやすいのは「三分割構図」かな!
日の丸構図で撮影
三分割構図で撮影
前に教えてもらった定番の構図ですね!
定番をベースにして、自分がいいなと思った構図で、主役の位置やまわりをどこまで入れるか決めるのがいいと思うよ。
花の写真を自分の好きな雰囲気に仕上げる
写真の雰囲気も花に合ったものに調整したいです!
花の場合、クリエイティブピクチャーコントールの「サンデー」や「ピュア」がオススメだね。
- サンデー:明るく鮮やかに、メリハリのある爽やかな印象に仕上がる。
左:適用前、右:適用後
- ピュア:ふんわりした優しい印象に仕上がる。
左:適用前、右:適用後
すごくいい雰囲気になりますね!
編集アプリを使えばJPEGでも撮影後に調整できるから、決めきれない場合はカメラの初期設定で撮影しても大丈夫だよ。
>撮影後の写真編集の仕方はこちら
気に入った写真をじっくり仕上げるのもいいですね!
早速、近所で花を撮ってみます!!
鎌田さんが教える、花撮影のアイデア
きれいな花を見つけたとき、花だけでなく自分の手や足元を写してみてはいかがでしょう。
人の存在が感じられて、主役の花の近くに入れることで際立たせることができます。なお、カメラを片手で持つことになるので、手ブレしないように速いシャッタースピードを確保する必要があります。
※咲いている花や枝には触れないようにしましょう。
NEXT STEP!
次の被写体は「猫」です。フォトグラファーの鎌田風花さんに、自宅で猫のかわいい瞬間を収めるためのポイントを教えていただきます。猫の行動パターンを観察したり、猫と遊びながら撮影したり、写真を通してさらに愛着が深まります。
キャラクターイラスト:福士陽香(@f___haru)
Supported by L&MARK
※画面キャプチャ―や機能名は Z fcのものを記載しております。
※一部、上記以外のNikon機材で撮影した写真が含まれております。