みなさん、こんにちは! 富山在住のフォトグラファー・イナガキヤスト(@inagakiyasuto)です。普段は家族の写真や「富山の本気」をテーマに地元の風景を撮っています。
これまで富山の風景をお届けしてきましたが、今回は私がよく使う「望遠レンズ」の特徴と、撮影効果を生かした画づくりの仕方について紹介していきます。
望遠レンズの特徴を知ろう!
「望遠レンズ」は遠くのものを大きく写すためのレンズで、スポーツシーンや野生動物、鳥や飛行機、月の表面など、近づけない被写体の撮影で活躍します。画角を絞れるため、伝えたいことがぱっと伝わりやすくなり、風景やポートレートでも力を発揮します。
Nikonの望遠レンズ「NIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR S」
望遠レンズの画角
レンズは画角によって、「広角レンズ」「標準レンズ」「望遠レンズ」の3種類にわけることができます。
一般的に広角は35mm以下、標準はおおよそ35~70mm、望遠は70mmより上です。
※70~135mmを、標準から望遠の間として「中望遠」と呼ぶこともあります。
図のように広角・標準・望遠で写り方が変わるのは、「写っている範囲=画角」という角度が違うからです。この角度が広いほど広角、狭いほど望遠になります。
同じ位置から50mm・200mm・400mmで撮り比べてみると、望遠になるほど背景の写る範囲が狭くなり背景が近づいたように写っていますね。
焦点距離:左から50mm、200mm、400mm
50mmが人間の視野に近いとされていますが、私の感覚としては200mm程度がその場所で感じた風景のイメージを表現できると考えています。周囲の風景も適度に入れられるため、場所の情報を伝える上でちょうどいい焦点距離です。さらに400mmまで寄ると、背景の山の迫力を強調することができます。
望遠レンズの「圧縮効果」
望遠レンズには、醍醐味とも言えるもう一つの特徴があります。被写体と背景との距離が圧縮されたように写る「圧縮効果」です。
焦点距離:左から24mm、50mm、200mm
24mm・50mm・200mmで、被写体が同じ大きさに写るように撮影位置を変えて比較してみました。
本来小さく写るはずの遠くの被写体(山)が、望遠にすることで大きく写っています。手前にある被写体(ポール)は近くにあるので大きく写りますよね。前景と遠景のサイズの違いが少なくなるため、遠近の距離感がなくなってしまうんです。
言い方を変えると、遠くの被写体がグッと手前に引き寄せられたような「遠近の圧縮」を感じるようになります。これが望遠レンズによる「圧縮効果」。人間の目ではなかなか体感できない、写真ならではの表現です。
前景と遠景を意識して圧縮効果を生かす
圧縮効果は「背景を大きく写す」とお話ししましたが、前景と遠景を意識することでより生きてきます。
道路の形状や山の迫力を強調する
焦点距離:350mm
望遠で撮影すると、道路のカーブの奥行きが圧縮されることにより、形状の特徴を強調できます。上の写真では、橋のカーブや傾斜を印象的に写し出すことができました。背景の山も迫ってくるように圧縮されることで、写真全体として迫力が出ています。
焦点距離:(左)50mm、(右)200mm
こちらは、道路と線路が並行する場所です。50mmではいろんな情報が入ってしまい並行する部分が目立っていませんが、200mmにズームすることで際立たせることができています。
焦点距離:200mm
望遠の撮影では画角整理も大事です。先ほどと同じ場所から縦構図で撮ることで、道路と線路により目がいく1枚になりました。左下のカーブしている線路や道路を入れたことも、形状のおもしろさを際立たせるポイントです。
複数のレイヤーを入れることで圧縮感アップ
焦点距離:375mm(35mm判換算)
こちらは手前に印象的なバスを写し入れました。手前からバス・人・船・山とレイヤーを意識することで、ギュッと圧縮感が強まっています。
前ボケを活用して奥行き感を出す
焦点距離:125mm
望遠で撮影すると、距離が詰まるため平面的になりやすい面もあります。そういうときに効果的なのが前ボケです。写真のように、手前の枝を前ボケにすることで、奥の景色へ視線が誘導されます。上の写真はF5ですが、望遠レンズでは十分にボケます。
望遠レンズでの撮影のポイント
望遠レンズを使う場合にはポイントや注意点があり、これらを意識することで撮影がスムーズになります。
被写体を探しやすいズームレンズがオススメ
構図を決めるとき、いきなり狭めた画角で景色を見ると、目当ての被写体を見つけるまでに時間がかかってしまうことがあります。望遠で風景やスナップを撮影するときはズームレンズがオススメ。広めな画角から徐々に寄っていくことで、周辺の要素に注意しながら構図を整えることができます。
焦点距離:(左)160mm、(右)340mm
上の写真では160mmくらいから寄っていき、背景の山の大きさや周囲の電線の入れ方が340mmで最適だと判断できました。
望遠になるほどボケやすい
風景の印象はどこまでピントを合わせるかで大きく変わります。
左:F2.8、右:F16
こちらの写真を比較すると、左の前景がボケているものは奥へと視線がいき、右は全体がシャープに写し出され圧縮感を強く感じます。私は全体をシャープに写し出すことが多いですが、前景をアクセントに奥行きを強調したいときは前ボケを使います。
なお、焦点距離が長くなるほど、ボケは大きくなる特徴があります。望遠で全体にピントを合わせたい場合はF16程度にするのがオススメです。
望遠側では手ブレの影響が大きい
望遠の撮影では、写る範囲が狭くなる&レンズが長くなる分、手ブレの影響が顕著に出やすくなります。
左:手持ち、右:三脚固定
この2枚は400mmの焦点距離で、左は手持ち、右は三脚に固定して撮影しました。シャッタースピードが速い撮影では手持ち撮影でもブレずに撮れることもありますが、しっかり画づくりをするには三脚を使ったほうが確実です。
望遠レンズの種類の違いを知ろう!
「望遠レンズ」とひとくちに言っても、焦点距離域はもちろん、サイズや重さ、逆光耐性、価格などの特徴が違います。今回はNikonの Z マウントレンズ4本を例に、特徴とどんな場面で活躍するか紹介したいと思います。
- NIKKOR Z DX 50-250mm f/4.5-6.3 VR:約405g/逆光耐性のコーティングなし
- NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR:約570g/逆光耐性のコーティングあり(アルネオコート)
- NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S:約1440g(三脚座を含む)/逆光耐性のコーティングあり(アルネオ・ナノクリスタルコート)
- NIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR S:約1435g(三脚座を含む)/逆光耐性のコーティングあり(アルネオ・ナノクリスタルコート)
NIKKOR Z DX 50-250mm f/4.5-6.3 VR
焦点距離:375mm(35mm判換算)
APS-Cサイズ用ですがフルサイズでも使用可能で、35mm判換算75~375mm相当になります。普段使っているどっしりした望遠レンズと比べて、かなり軽いのでびっくりしました。手持ちで超望遠を楽しめて、スナップ感覚で使えるレンズです。
NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR
焦点距離:(左)24mm、(右)200mm
広角~200mmと風景撮影で使い勝手が非常にいいレンズ。軽いので手持ちでも撮影でき、取り回しがいいです。また逆光耐性に優れたコーティングがされているため、写真のように逆光が強い場面でも活躍してくれます。
NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S
焦点距離:200mm
F2.8通しのため、ぼかしたり、暗所撮影で特に力を発揮します。上の写真は、霧に包まれた街と奥にある雪山を望遠の圧縮効果を使ってダイナミックに撮影しました。開放F2.8とすることで、シャッタースピードを稼ぐことができます。
焦点距離:200mm
こちらはF16で撮影した夕方の風景。隅々までシャープに描写できました。操作性がいいレンズで、NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR以上の逆光耐性を備えているのも頼もしいです。
NIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR S
焦点距離:400mm
私自身、普段から富山の風景を撮影するときは100~400mmのレンズを使うことが多いのですが、1本で100~400mmカバーできるのはとても便利です。上の写真では、海に浮かぶ大型船と背景の立山連峰をダイナミックに切り取りました。周囲に余計な情報を入れないことで山が海に浮かんでいるようにも見えます。
NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S同様、逆光耐性に優れていて、シャープな描写なので風景撮影には最適なレンズだと感じました。
焦点距離がもっとほしいときに便利な「テレコンバーター」
左:200mm、右:2倍テレコンバーターをつけ400mmにして撮影
レンズの望遠端よりもっと寄りたい場合、テレコンバーターをつけると、レンズはそのままに数倍の焦点距離が得られて便利です。上の写真は、望遠端200mmのレンズに「Z TELECONVERTER TC-2.0x」という2倍のテレコンバーターをつけて撮影しました。
Z TELECONVERTER TC-2.0x
ただし、焦点距離が2倍になると明るさが2段分落ちるという特徴があります。私はF値を固定にしてシャッタースピードを2段分遅く、三脚がなくシャッタースピードも遅くできない条件ではISO感度を2段分上げて対応しています。
Photographer's Note
私が望遠レンズに本格的にハマったのは、富山の風景をしっかり撮影するようになったのがきっかけです。富山から見える立山連峰のダイナミックさを伝えようと望遠レンズを使いはじめたところ、背景が圧縮される印象的な写真が撮れることに大きな魅力を感じました。
望遠の圧縮効果を生かすなら、やはり背景に山がある風景が撮っていて楽しいです。さらに前景には街や乗り物、人など、普段目にするものがあるとイメージしやすいので、なおいいと思います。
望遠レンズは画角が狭くなる分、必要な情報だけを構図の中に入れることができるので、整理がしやすく伝わりやすい写真になると感じています。被写体との距離がとれない場合など苦労することもありますが、肉眼で見る以上の光景に出会える望遠レンズの撮影はとてもおもしろいです。
ぜひみなさんも、望遠レンズでの撮影を楽しんでみてください!
Nikonのお気に入り望遠レンズ
望遠レンズだけでこれだけ種類がそろっていると、撮影の環境に合わせて選べるので便利だと感じました。1本で広角から望遠まで撮れるNIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR(しかも軽い!)は、ぜひ山に持って行って使いたいです。
そして、今回のレンズの中で特に気に入ったのがNIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR Sです。
100~400mmは普段よく使う焦点距離ということもありますが、解像力が高くきれいな描写に驚きました。つくりがしっかりしていて操作しやすく、高級感があるので、持っていると高揚感がありますよ。
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イナガキヤスト
富山県在住のフォトグラファー。家族写真の他、「富山の本気」をテーマに地元の風景を撮り続けている。ファミリーキャンプで「カシャッとな」運営。T&D×東京カメラ部「Try & Discover フォトコンテスト2019」優秀賞、土屋鞄 2019ランドセルフォトコンテスト大賞、長野県観光インスタアワード優秀賞。