連載企画『写真家と学ぼう! カメラ初心者ガイド』。カメラ初心者のナツキちゃんと一緒に、カメラや撮影の基本を学んでいきましょう!
Step5は「シャッタースピードとブレ」です。フォトグラファーの嵐田大志さんに“いい瞬間をブレずに撮る”ためのポイントを教えていただきます。
ナツキちゃん
スマホで写真を撮っていたが、「もっと素敵な写真を撮りたい」とついにカメラを購入。選んだのはAPS-Cサイズのミラーレス「Z fc」と単焦点レンズ「NIKKOR Z 28mm f/2.8(Special Edition)」。モットーは「とりあえずやってみる」。好奇心旺盛で、少しうっかりやさんな女の子。嵐田大志さん
家族写真や都市風景を中心に撮影するフォトグラファー。3児の父であり、子供の誕生を機に写真にのめりこむ。
暗い場所で写真を撮ると、どうしてもブレちゃうんです。どうしたらいいんですか?
夜に部屋で撮影した写真
これは「手ブレ」だね。ブレには、撮る瞬間に被写体が動いてしまう「被写体ブレ」と、カメラが動いてしまう「手ブレ」の2つあるんだ。
被写体ブレと手ブレ
左:被写体ブレ、右:手ブレ
- 被写体ブレ:シャッターボタンを押した瞬間に、被写体が動いてしまって発生するブレ
→動いたものだけがブレる。
- 手ブレ:シャッターボタンを押すときに、カメラを持つ手が動いてしまって発生するブレ
→写真全体がブレる。
同じブレでも原因が違うんですね!
そうなんだ。でも、解決するにはどちらも「シャッタースピード」が決め手になるよ!
「シャッタースピード」とは?
カメラには、光を通す量をコントロールする「シャッター」という部品があります。「シャッタースピード」は、このシャッターを開いている時間のことです。
Z fcでは上面のダイヤルで調整できます。白字は「1/○秒」、赤字は「○秒」を表しています。
1/2000秒、1/500秒、1/60秒、1秒…のように基準となる値が決まっていて、遅いほどシャッターが開いている時間が長くなり光の量は多く、速いほどシャッターが開いている時間が短くなり光の量は少なくなります。
シャッターが開いてる時間が、どうブレに関係してくるんですか?
シャッタースピードが遅くなるほど、ブレやすくなってしまうんだ。
シャッタースピードとブレの関係を知ろう!
シャッタースピードは、遅いほどブレやすく、速いほどブレにくいという特徴があります。
実際に車を被写体に1/8秒・1/60秒・1/2000秒と撮ってみたから、どう違うか見てみよう!
かなり違いますね。1/8秒まで遅いと、もう原形がわからない。
「シャッタースピードが遅い=イメージセンサーに光が当たる時間が増える」んだけど、その間にカメラや被写体が動くと「残像」として写ってしまうんだ。
ブレの正体は残像だったんですね!
例で見せたのは「被写体ブレ」だけど、「手ブレ」も同じだよ。だからシャッタースピードを速くするほどこのブレを抑えられるんだ。
じゃあ、シャッタースピードをMAXにすれば解決ですね!
おっと、前回言ったことを思い出してみて! 写真の明るさは何で決まるんだった?
写真の明るさを決める露出の3要素
あっ、そっか! シャッタースピードを速くするほど、写真が暗くなるんですね。
そう! だから「これより速ければ大丈夫」という目安を覚えて、写真の明るさも確保することが大事なんだ。
うっ、目安。覚えられるかな…。
3つ覚えておけば大丈夫だから、安心して!
ブレないシャッタースピードの目安
【被写体ブレを抑える目安】
- 人を撮る場合:1/500秒
- 素早く動く被写体(乗り物や鳥、スポーツなど)の場合:1/1000秒
1/500秒で撮影
【手ブレを抑える目安】「1/焦点距離」秒
例えば、フルサイズで50mmの焦点距離の場合は1/50秒が手ブレしない目安。APS-Cサイズでは、1.5倍した数値で割ります(50mmの場合は1/75秒)。
焦点距離42mmでは1/42秒が手ブレしない目安。左は1/15秒、右は1/500秒で撮影。
手ブレを抑える目安は、焦点距離によって変わるんですね。
望遠になるほど写る範囲が狭くてブレの影響が大きいし、レンズ自体が長く・重くなって手ブレしやすくなるんだ。
望遠で撮るときは、要注意ですね。
ブレない撮り方のコツを覚えよう!
あとは、構え方も大切だね。
構え方?
左手でレンズの下を支えて脇をしめる、そして脚を軽く開くと、カメラがブレにくくなるよ。
全然意識してませんでした。やってみます!
話は戻るけど、暗い場所ではシャッタースピードを速くできない場合もあるよね。そんなときはどうすればいいと思う?
スマホみたいにフラッシュを使えばいいんですか? でも、私が持ってる Z fcはフラッシュがないからどうしたらいいんだろう。
フラッシュも手だけど、まずはF値やISO感度を上げることだね。
露出の3要素ですね!
そう! ちなみにフラッシュを使うと、光が届く部分は明るくなるけど、それ以外は暗くなっちゃうから注意が必要なんだ。まわりに人がいるところでは迷惑になっちゃうしね。
左:フラッシュで撮影、右:F値とISO感度を調整して撮影
F値やISO感度を調整しても手ブレするときは、どうすればいいんですか?
それでもダメな場合には三脚だね。三脚に固定すれば、シャッタースピードを「1/焦点距離」より遅くできるから、明るさを確保できるんだ。
カメラを三脚に固定
三脚に固定して、シャッタースピード30秒で撮影
なるほど~。三脚は持ってないので、まずはF値やISO感度の調整でやってみます!
あえてブレさせる撮り方もある!
今まで「ブレないようにするには」について話してきたけど、「あえてブレさせる」という撮り方もあるんだ。
あえてブレさせる…?
ブレることで、スピード感や躍動感を出せるんだ。
電車をブレさせた写真
本当だ! 動いてる感じが伝わりますね。
シャッタースピードを遅くして、水の流れを写してもおもしろいよ! 下の写真は水道だけど、噴水や川、滝なんかでも違いが出るんだ。
左:4秒、右:1/4000秒
シャッタースピードを遅くすると、水の流れがなめらかになるんですね!
瞬間を写し止めるのも、動きを出すのも、それぞれによさがあるんだ。ただし、あえて動きをブレさせるときも、手ブレはしないようにね!
まずは手ブレしないようにですね。早速バチッと写してみます!
【まとめ】ブレを抑えるコツ
被写体ブレ:被写体に合わせてシャッタースピードを設定する。
- 人を撮る場合:1/500秒
- 素早く動く被写体(乗り物や鳥、スポーツなど)の場合:1/1000秒
手ブレ
- 左手でレンズの下を支え、脇をしめてカメラが動かないように構える。
- シャッタースピードは「1/焦点距離」秒より速く設定する(暗い場所では、F値を小さく、ISO感度をノイズが出ない程度に高くして、シャッタースピードを確保する)。
NEXT STEP!
次は「撮影モード」についてです。撮影モードには、シャッターボタンを押すだけで撮れる「AUTO(オート)」から、F値やシャッタースピードなどを変更できるモードがあります。特徴を覚えると撮れる写真がグンと増えますよ!
>Step6 撮影モード
キャラクターイラスト:福士陽香(@f___haru)
Supported by L&MARK
嵐田大志
本業の傍ら、東京をベースにフォトグラファーとして活動。LightroomやVSCOを活用し、フィルム風の空気感を表現。家族や身近なものを中心にしつつ、頻繁に旅する海外でのスナップを撮り続けている。