はじめまして、Takahiro Taguchi(@tak_tag)です。キャンプが趣味で、季節や天候にかかわらず年間を通して楽しみながら、写真を撮ってInstagramで発信しています。
キャンプ撮影のおもしろさは、長時間自然の中に身を置き、光や天候によって変化する風景の表情をとらえること。もし、キャンプの途中で雨が降ってしまったら…がっかりしてしまう方も多いと思いますが、僕はそうした状況の中でこそ、キャンプ撮影の醍醐味が味わえると考えています。
雨音が響くキャンプ場では人の声がかき消され、辺りを包む湿潤な空気、濡れた葉や土の深い色合いなど自然の魅力に浸ることができます。雨の日は普段あまり外にいないからこそ、新しい出会いや発見も多いです。
この記事では、雨が降っても楽しめるキャンプ撮影のポイントと、魅力的にとらえるアイデアをお伝えしたいと思います。
なお、雨の中のキャンプは水害などの危険が伴います。天気予報をこまめにチェックして、天候が悪化しそうな場合は早めに撤収するなど、安全を第一に考えた行動を心がけましょう。
雨キャンプならではの3つの撮影ポイント
できることが限られてしまう雨キャンプですが、雨の日だからこそ出会えるシーンや被写体もあります。
注目してほしいのが以下の3つです。
- 雨音が響くテントサイト
- テントやタープに滴る雨粒
- 湿潤な雰囲気に映える明かり
これらを魅力的に写すには、雨天ならではの「光」を生かすことが大切です。
【雨粒】雨を線でとらえて雨音を表現する
テントやタープの中で雨音に耳を澄ませると、無心になれてとても癒やされます。雨を線でとらえることで、降りしきる雨の音を写真で表現することができます。
上の写真は、タープの陰から空の方向にカメラを向けて逆光で撮影しました。
シャッタースピード1/40~1/100秒、F5~9程度に設定し、背景を暗い林にすることで光が当たった雨粒が見えやすくなります。また、空の部分にタープを重ねると表面についた水滴が透けて、より雨の雰囲気を強調することができました。
※タープ:日差しや雨、風をよけるための布製の屋根。
【水滴】光を観察して水滴を立体的にとらえる
雨粒を写すのが難しい小雨でも、テントやタープについた水滴を写せば、雨らしさとキャンプ感を表現することができます。雨天はやわらかい光が全体に回った状態なので、細かい水滴の立体感やみずみずしさを繊細にとらえやすいです。
撮りたい部分を見つけたら、そのまわりを1周して光の当たり具合を観察するのがコツ。「ここから見ると立体的に見える」「こっちからだと水滴の影が印象的」…など、好みの光と影のバランスを探して切り取りましょう。
上の写真は、タープの表面だとわかるようにポールを入れた画角にして、水滴にハイライトが入る角度で写して立体感を出しました。このようにローアングルからとらえることで、画面に奥行きが生まれて背景の木漏れ日もアクセントにすることができます。
光を透過しやすいナイロン製のタープがオススメ
ナイロン製のタープは、光を透過するので内側から水滴を撮ることができます。雨に濡れてもすぐに乾き、とても軽いので片付けも楽です。
【明かり】ランタンや焚火をアクセントにする
湿度が高い状態では、緑や土も深い色合いになり全体がしっとりとした雰囲気に。ランタンや焚火のやわらかいオレンジ色の明かりはこうした風景と相性がよく、雨キャンプのムードを盛り上げてくれます。
明かりをポイントにして撮るときは、空を画角に入れず暗い林や地面を背景にします。明かりに露出を合わせて周囲をアンダー気味にすることで、より存在感が際立ちました。
キャンプ道具などを撮影する際に、焚火やランタンを光源として利用するのもオススメです。
上の写真は、キャンプの大切な相棒である車を撮影しました。車の表面にオレンジ色の光が反射してアクセントになり、キャンプらしい雰囲気を出せたと思います。
なお、雨の中の焚火は着火が難しくすぐに消えてしまうなど難易度が高いので、雨が上がったタイミングを狙いましょう。
雨天時の設定のポイント
- 撮影モード:マニュアル。F値でボケ具合を調整して、手ブレしないシャッタースピードに設定します。アンダー気味に撮ると雨ならではの空気感を表現できます。
- F値:暗い場所または日没後や、ボケを生かして撮るときは開放F値。比較的明るい場所や焚火・ランタンの前などで、風景のディテールを写したいときはF4.5~9程度に絞ります。
- シャッタースピード:手ブレしない速さの目安=「1/焦点距離」秒を下回らないようにしつつ、なるべく遅く設定します。
- ISO感度:雨の森の中でも、昼間であればISO160程度から撮影可能です。暗い場合はISO1600程度を上限に調整します。
雨キャンプをさらに楽しむ撮影アイデア
ここからは、より思い出に残る撮り方や、足元の自然、天候の変化に注目した撮影について紹介します。
人を入れて思い出に残る写真に
自然の中で過ごすことがキャンプの醍醐味なので、風景の中に人を入れた写真も欠かせません。特に雨キャンプは「あの日は雨降ったけど楽しかったな…」と、振り返ったときに特別な思い出になります。
このように手元を入れるだけでも臨場感を出すことができます。手とランタンに目がいくように日の丸構図をつくり、ランタンの明かりを際立たせるため空を入れない構図で切り取りました。ランタン本体と地面が同系色なので、黄色いテントにランタンを重ねて形が浮き上がるようにしています。
上の写真は、ハンモックのタープについた水滴を落とそうとしている様子です。このときは一人だったので、三脚を使ってセルフタイマーで自分を撮影しています。斜面の流れを意識して左寄りにハンモックを入れることで視線を誘導し、暗い場所から明るいほうにカメラを向けて奥行きと清々しさを感じられるように撮りました。
なお、三脚は平らで安定した地面に設置しましょう。斜面ややわらかい地面に立てると倒れて機材が壊れてしまう可能性があります。
みずみずしい自然をクローズアップ
キャンプ場の自然にグッと寄って観察すると、肉眼では見えない魅力や新しい発見があります。できることが限られてしまう雨キャンプですが、じっくり自然と向き合うにはちょうどいいです。
今回持って行ったNIKKOR Z 24-70mm f/4 Sは、ズーム全域で最短撮影距離0.3mとかなり被写体に近づいて撮影することができます。上の写真は、小さな花を望遠端70mmでクローズアップして撮影。葉に溜まった雨粒がきれいだったので中心にしてピントを合わせました。望遠のなめらかなボケのおかげで被写体が際立ち、しっとりとした空気も表現できたと思います。
さらに目線を下げて、木の根元に生える小さな芽とコケに注目。雨の日ならではのやわらかい光が全体を照らして、葉の表面やコケの細かな質感まで写すことができます。さらにアングルを微調整して、葉に光が反射する角度を探すことでみずみずしさも表現できました。
心が洗われるような雨上がりの光景
雨が降っても1泊する間に上がることもよくあります。そんなときは絶好のシャッターチャンス。雨の雫がキラキラと輝き、心が洗われるような美しい風景を撮ることができます。
特に注目してほしいのが薄明光線です。雲間から光が放射状に降り注いで見える現象で、雨上がりなど雲が多い朝方や夕方に出会うことができます。別名「天使のはしご」と言われることもあり、その光景はとても幻想的で思わず何度もシャッターを切ってしまいます。
きれいに撮影するコツは、シャッタースピードを速めて少しアンダー気味にして、光の柱と雲のコントラストを強調すること。このときは1/2500秒に設定しました。水辺で撮る場合は離れた場所からズームして、光が当たった水面のきらめきも一緒にフレーミングすると、よりドラマチックに写すことができます。
地面の緑にも雨上がりならではの美しさがあります。
上の写真は、光が差しているところをチルト式液晶モニターで地面すれすれの位置から撮影しました。明るい部分に露出を合わせて撮るとスポットライトのように際立ち、みずみずしい緑のきらめきが感じられます。
雨による増水と転倒に注意
キャンプ場内や付近に池や湖、川などの水辺があるところでは、雨による増水に要注意です。雨が降っている最中はもちろん、激しい雨の後はしばらく水辺に近づいてはいけません。また、水分を含んだ地面はとても滑りやすいため、足元にも十分注意しましょう。
キャンプを快適に楽しむための雨対策
晴れ予報の日でも途中で雨が降ることもあるので、雨対策は常にしておく必要があります。レインコートや傘などの雨具を必ず準備して、着替えとタオルも多めに持っていくようにしましょう。
その他、機材選びやキャンプ道具・設営場所にも雨を意識した工夫が大切です。
機材は防塵防滴性能に優れたものを使う
雨天時に限ったことではありませんが、キャンプ撮影の機材は防塵防滴性能の優れたものがオススメです。さらにコンパクトで軽いものを選ぶと気軽さがアップします。
- カメラ:防塵防滴性能が優れ、軽くて持ち運びしやすいミラーレスカメラがぴったり。
- レンズ:雨天時はレンズ交換が大変なので、幅広い画角と接写もできるNIKKOR Z 24-70mm f/4 Sをメインにして、暗い場所やボケが欲しいときにはNIKKOR Z 50mm f/1.8 Sも使用。レンズ交換をする際は、テントやタープは内側が結露して水滴が落ちてくる可能性があるので、車内などで行いましょう。
最短撮影距離の短いズームレンズなら、広い風景から足元の自然まで、幅広い撮影を楽しめます。
F値の小さい単焦点は美しいボケ味を生かして被写体を際立たせたいときや、暗所で明るく撮りたい場合に重宝します。
三脚があればカメラの置き場に困らない
雨天時に意外と困るのがカメラの置き場。テント内の床も結露で濡れる場合があるので、カメラ置き場として三脚があるとかなり便利です。ソロキャンプの場合はキャンプ風景を自撮りしたり、雨が降っていなければ星の撮影にも使えるので持って行って損はないです。
テントやタープはナイロン製のものを
基本的にキャンプ道具は濡れても問題ないものが多いですが、使用後にきちんと乾かさないとカビが生えてしまいます。今回はテント・タープ・ハンモックを使いましたが、すべて乾きやすいナイロン製のものを選びました。テントやタープを地面に留めるペグは長めのものにして、急な突風にも備えます。
明るい色で風景のアクセントに
テントやタープ、ハンモックなどは、青や赤など風景のアクセントになる明るい色を選ぶのがオススメです。晴天時はもちろん、雨で薄暗い風景の中では特に差し色になってくれます。また、霧が出るなど視界が悪い状況でも見つけやすいという安全面でのメリットもあります。
テントは窪地を避けて設置する
地面が窪んだ場所にテントを立てると、雨が降ったときに水が流れこんでしまうので避けましょう。わかりやすい判断方法として、草が生えている地面は水溜まりになりにくいです。
また、雨が降りそうなときは池や湖、川などの水辺に設営するのは絶対NG。少ない雨の予報でも、降りはじめるとあっという間に増水して流されてしまう恐れもあります。
右:ハンモックの上から蚊帳内を撮影
また、就寝環境としてはハンモックもいいと思います。木さえあればテントを張ることができない傾斜地にも設置可能で、水たまりなどを気にする必要もありません。タープと蚊帳がついたハンモックであれば、弱い雨なら気にせず一晩過ごすことができます。特にソロキャンプの場合には、適切な木の間隔さえ覚えれば5分程度で設置できて片付けも簡単なのでとてもお手軽です。
※キャンプ場によっては、ハンモックの設置がNGの場合があります。事前に施設に確認した上で、マナーを守って使用しましょう。
雨でも楽しめるオススメのキャンプ場
今回、僕が行ったキャンプ場は山梨県の「the 508」 。都心から車で1時間半程とアクセスがよく、緑豊かで雨天時はしっとりとした幻想的な雰囲気になります。
上の写真は、晴れた日に撮影したものです。山中湖畔に近いため、このように天気がよければ富士山も見ることができます。
※設備や場所代など詳細はHPをご確認ください。
キャンプ場選びのポイント
- 電波の届くキャンプ場なら天気予報をこまめにチェックできて安心。
- 風の影響を受けにくい林間サイトを選ぶ。
Photographer's Note
お気に入りの1枚
この日のベストショットは、カメラとレンズの性能をとても実感したこの1枚です。被写体としては特別ではないのですが、葉の緑色の諧調表現と一枚一枚の形までくっきりとわかる解像感に感動しました。
高感度耐性にも優れていて暗いシーンも安心ですし、特に逆光耐性はこれまで使用してきたカメラ・レンズの中で一番の性能です!
写りはもちろん、Z 6IIは小型軽量な上にホールドしたときの安定感やボタンの操作性もよく、キャンプ撮影にぴったりだと感じました。NIKKOR Z 24-70mm f/4 SとNIKKOR Z 50mm f/1.8 Sもコンパクトで使い勝手がよく、この組み合わせで真面目に購入を検討しています!
僕は年間で30泊程度キャンプをしますが、雨や雪など普段は外にいることのない状況でのキャンプが好きです。雨のキャンプでは行動が制限されてしまいますが、慣れればしっかりと雨具を準備した上でスナップ撮影をしてみたり、雨音の中でゆっくりと読書をしたりと、工夫次第で楽しみ方はたくさんあります。
天候の変化をプラスにとらえて、そのときだけの出会いを探してみましょう!
雨キャンプの注意点
- 池や湖、川などは増水して危険なので近づかない。
- テントを張る際は水辺・窪地を避けて、長いペグを使用して急な強風に備える。
- 濡れた地面は滑りやすいので、足元に十分注意する。
- 標高が高いキャンプ場などで霧が発生している場合はテントから離れない。
- 天候が悪化したときに素早く撤収できるようキャンプ道具は少なめに。
- 服が濡れると体温を奪われるので、着替えとタオルは多めに用意する。
Photo Gallery
今回のキャンプは途中の数時間は雨でしたが、それ以外の時間帯は晴れていて爽やかな木漏れ日や夕方の情景も撮影することができました。雨天とは違った表情をお楽しみください。
矢印をタップすると写真が変わります。
撮影協力:the 508
Supported by L&MARK
※新型コロナウイルスの感染症対策に十分にご留意いただくとともに、政府、自治体など公的機関の指示に従った行動をお願いいたします。
Takahiro Taguchi
趣味のキャンプを楽しみながら写真を撮ってInstagramで発信している。季節や時間ごとに美しい表情を見せる自然とこだわりのキャンプギア、おしゃれなキャンプシーンをとらえた写真が注目を集めている。