みなさん、こんにちは! 富山在住のフォトグラファー・イナガキヤスト(@inagakiyasuto)です。普段は家族の写真や「富山の本気」をテーマに地元の風景を撮っています。
私は『ファミリーキャンプで「カシャッとな」』というブログをしているほどカメラとキャンプが大好きで、新型コロナで外に出る機会は減ってしまいましたが、それまでは月に1~2回くらいキャンプをしていました。「家族としたい」と思ってはじめたキャンプは、自然の中で時間ごとに変わる風景に身を置きながら、非日常感を味わえるところが醍醐味です。
今回は、地元・富山でソロキャンプ旅に行ってきました。Z 5を手に撮影してきたのですが、超広角ズームのNIKKOR Z 14-24mm f/2.8 Sが広大な風景撮影に活躍したので、その写真をたくさん盛りこんでお届けします。
どんな風景に出会えるのか、記事を通して富山の自然をお楽しみください!
自然に囲まれた庄川沿いを南下
今回は、南砺市にあるキャンプ場で夕景や夜景、星空撮影を時間の許す限り楽しむのが目的。南砺市は水と緑が豊かで、散居村や合掌造り集落などの風景で知られる“田舎らしい”場所です。私の住む射水市から南に車を走らせます。
赤門が目を引く「庄川用水合口ダム」に立ち寄り
富山を縦断する庄川に沿うように南下していくと、10個の赤い門が印象的なダムがあります。農業用水として、砺波平野に広がる農村「散居村」を潤すための要所です。
〈撮影ポイント〉
前景の木の緑を額縁のように使ってダムの赤色をアクセントに。特に1か所だけ開いている門が際立つようにしています。
ここはダム湖になっていて、豊富な水が青空を反射してとてもきれいです。ダムにいたのは私だけだったので、のどかな時間が流れていました。
【庄川用水合口ダム】
富山県砺波市庄川町金屋
「閑乗寺公園キャンプ場」で田園に沈む夕日や星空を満喫
ダムから車で10分ほどで、目的のキャンプ場に到着です。
このキャンプ場は、林間、展望、小川などのサイトがあり、いろいろなスタイルのキャンプが楽しめます。広大な芝生や大きな遊具があるので、ファミリーキャンプにもオススメ。特に展望広場から見える散居村の風景が美しくて、わざわざ撮影だけのために訪れる方も多いです。
この日は青空と白い雲、緑のバランスがとてもよかったです。
5月であれば田に水が張られているのですが、稲が育ち、田一面が緑に染まるのも“夏らしい富山”を感じられます。
展望広場から少しだけ下がった場所に展望サイトがあります。車で乗り入れできるオートキャンプ場なので荷物の出し入れが楽チン! 早速、テントやタープを広げました。
キャンプしながら常に散居村を眺められて、実に贅沢なサイトです。
この日は本当に暑かったので、アイスコーヒーでのどを潤します。
キャンプでは特に好きな豆を持って行きます。酸味が少なめでコクがほどよくある、中煎り〜中深煎りくらいが好みです。
せっかくなので、草木や森をバックにコーヒー道具一式を撮影。緑の中に置くとすごく映えますね! 氷に光が当たって輝いているのもきれいです。
ここに来たら絶対見たい、散居村に沈む夕日
一服して寝床などの準備をしていると、あっという間に夕方です。
ここの見どころは、何と言っても夕日。奥の山並みや砺波平野に広がる散居村が、赤く色づいていくのが本当に美しかったです! 最後、爆焼けとまではいきませんでしたが、雲に溶け合い淡く染まる風景に心惹かれました。
〈撮影ポイント〉
夕日は、特に色濃く染まる日没間際が撮影チャンス。構図は「日の丸」で、焦点距離は24mm以下と超広角で狙います。先ほどはふわっと写しましたが、下の写真のように沈みそうな夕日は絞って撮影すると、光芒で輝きが加わります。
日が沈んでから約30分、空がピンクに染まりました。地上は濃紺になり、さらに幻想的な風景が広がっています。
〈撮影ポイント〉
空は上にいくほど色が薄くなるため、70mmの望遠でピンクの部分だけを切り取りました。ピンクと濃紺の対比を生かすように、空を上半分、暗くなった散居村とキャンプ場の森を下半分にフレーミングしています。
見下ろせば夜景、見上げれば星空
食事を終え、焚き火をぼーっと眺める贅沢な時間を堪能していると、気づけば夜11時過ぎ。もう一つのメインである、夜撮影を楽しみたいと思います。
キャンプ場は標高300mの高台にあり、見下ろせば夜景が広がっています。明かり自体はそこまで多くないのですが、そういう“ささやかな感じ”も富山っぽくていいなと思いました。
〈撮影ポイント〉
街から離れた場所にあるキャンプ場では、夜景が遠く、街明かりも多くない場合があります。そのときは、望遠の圧縮効果で引き寄せるのが効果的です。このときは、夜景を玉ボケで強調するため、85mm単焦点で撮影しました。
そして、この場所は街明かりから遠いため、星空がきれいに見えます。
今回は半月よりも大きく月明かりが強めだったため、月の入りの1時すぎまで待機。夜中まで時間を気にせず撮影できるのもキャンプの醍醐味です。
いよいよ月が沈むと、縦に昇る天の川が肉眼でも見えるくらいきれいな星空でした。
反対側を向くと、また違った星景が広がっています。普段生活している場所と比べてかなり暗いので、星が本当に美しいです。
〈撮影ポイント〉
星空は地上風景と組み合わせることで印象深くなります。縦に伸びる天の川を真ん中に配置し、14mmの超広角でダイナミックに。元々スキー場だった場所の傾斜を生かし、キャンプ場と夜景をバランスよく切り取りました。
星空はさまざまなカットを撮るためワンショットが基本なのですが、「500ルール」(500÷焦点距離=上限露出時間)と呼ばれている目安を超えないようにシャッタースピードを設定し、極力ISO感度を低くしてノイズの発生リスクを抑えています。上の写真では、14mm・30秒・F2.8・ISO1600で撮影しています。
※星空撮影の基本についてはこちら。
早朝、朝日に染まる散居村
地元の朝日を積極的に見に行くことって、なかなかないですよね。すごく新鮮なので、キャンプ泊した際は早起きして撮影することをオススメします。
時間は5時前。方角的に朝日自体は見えないのですが、散居村がパープルやピンクに染まっていきます。
30分の間でも、刻々と空の色が変化していきます。眼下の街の光が当たる場所も変わるため、時間を忘れてシャッターを切っていました。
…日がしっかり昇り、キャンプ場の森からも光が差しこんできました。
今日はこの後も巡りたい場所があるので、朝食をしっかり食べます。
ソロ用としてお気に入りのホットサンドメーカーで、6枚切りの厚めのパンに一つはソーセージとプチトマト、もう一つはチーズとバターチキンカレーを挟んで。自然の中で焼きたてを食べるのは至福のひとときです!
【閑乗寺公園キャンプ場】
富山県南砺市井波外2入会1番地
http://kanjojikouen.com/
青空と緑が爽やかな庄川を船で旅する
キャンプ旅で地元をもっと満喫したいと思い、行ってみたかった場所に来ました。
初日に訪れたダムからさらに南下した庄川上流では、「庄川峡遊覧船」で渓谷の自然美を巡る船旅が楽しめます。川を進む船自体は何度も撮影したことがあるのですが、実際に乗るのははじめてです。
早速船に乗りこみます。今回は、長崎橋という大きな橋までを30分ほどで周遊するコースにしました。
船の上での撮影の注意点
レンズ交換が難しいので1本に絞ります。雄大な自然美を写すため、14-24mmのズームレンズにしました。また、揺れによるブレが怖いので、シャッタースピードを1/500秒は確保するようにしています。
乗ってみると、結構速い! この日はかなり暑かったのですが、船の上の風がとても心地いいです。
庄川峡は桜や紅葉、雪景色など季節ごとの絶景が海外の方にも人気で、グリーンシーズンは青空に緑が映えて清々しい光景でした。
…遠くに赤い橋が見えてきました。あれが「長崎橋」です。
下から見上げると想像以上のスケール感!
〈撮影ポイント〉
放射線構図を意識して船内を写して、両脇に長崎橋を目いっぱい入れることでダイナミックさを表現してみました。放射線の中心近くに人がいる瞬間を狙ったのが構図の効果を際立たせるポイントです。
下をくぐって、折り返し。青空と緑の中で赤色がよく映えます。船の跡がちょうどいいアクセントになりました。
船旅を終え、せっかくなので高い所へ移動して、船が来るのを狙います。
青い空と白い雲、山や木の緑で囲まれた川と赤い橋、その川を進む白い船と、要素が見事にそろいました!
【庄川峡遊覧船】
富山県砺波市庄川町小牧73-5
http://www.shogawa-yuran.co.jp/
キャンプ旅は、時間に追われることなく、じっくりと撮影を楽しむことができました。地元の風景・スポットやアクティビティは身近すぎて注目しないことが多いですが、「旅」と自分の中で決めることで新たな富山の魅力に気づくことができたと思います。
キャンプ旅の事前準備
キャンプ泊で撮影を楽しむなら、撮りたい被写体に応じて、持っていく機材を考えます。
【撮影機材】
- カメラ:1日中撮りたいので画素数は大きすぎず2400万画素程度、重量・サイズや高感度特性などバランスの取れたカメラが使いやすいと思います。その点で今回使った Z 5は防塵・防滴性にも優れていて、非常にバランスのいいカメラです。
- レンズ:被写体ごとに使いわけます。風景であれば14~70mm程度をカバーできるズームレンズを、テントをゆがめずに撮りたい場合は24~70mmが使いやすいです。夜撮影もするなら開放F値が小さいほど◎。料理などを撮るときは極力明るい単焦点でボケ感を生かします。
Z 5+Z レンズはアンバサダー企画でもずっと使用していましたが、特にNIKKOR Z 14-24mm f/2.8 Sは大三元レンズとしてはコンパクトで使いやすいです。また、広角端でも隅々までしっかり解像し、暗所下でとてもきれいに撮れると感じました。逆光耐性もかなり強く、グラデーションも繊細に描写できます。
- 三脚:オートキャンプ場など車で運べる場所なら、不安定な足場での撮影やブレを考慮して、できるだけしっかりした三脚がオススメです。私は安定感が抜群のジッツオの「GT5543LS」を愛用しています。
- その他:夜撮影では、ヘッドライトやレリーズを持っていきます。シャッター押下時のブレを抑えるためには、スマホアプリ「SnapBridge」をインストールしておくとリモート撮影が可能です。
キャンプでは靴選びも大事
キャンプ場は枝や石などが転がっているので、クッション性が高いものがよく、防水機能も備えているとどんな天候でも快適です。私が愛用しているのはHOKA ONE ONEの「KAHA LOW GTX」という靴。防水仕様な上、スニーカータイプで脱ぎ履きしやすいのでテントの出入りも楽チンです。
【キャンプ道具】
宿泊する場合は、以下を車に積んでいきます。
- テント、タープ、マット、寝袋
- テーブル、イス
- 焚き火台、コンロ
- 調理器具、コーヒー道具
- ライト、ランタン
- クーラーボックス
- ファン、蚊取り線香
- 長袖
夏のキャンプでは、日中の暑さ対策として、充電式のファンやクーラーボックスにアイスを入れて飲み物を確保するようにしましょう。また、冷えこみ対策・虫対策として薄手でもいいので長袖を持っていくことをオススメします。
Photographer's Note
今までは旅行気分で県外でキャンプをすることが多かったのですが、キャンプしないと見られない地元の風景をたくさん知ることができたので、とても貴重な体験でした。
このような時期でもあるので、地元でキャンプする機会を増やしていろいろな発見をしていきたいと思います!
お気に入りの1枚
閑乗寺公園キャンプ場からの夕景は何度か撮影していますが、今回美しい天の川を撮れたのがうれしかったです! 夏らしい垂直な天の川がキャンプサイトのど真ん中に立っていて、右側の傾斜を生かして夜景も一緒に写せたのが、とても気に入ってます。
※こちらに掲載している情報は、2021年8月31日現在のものです。
※新型コロナウイルスの感染症対策に十分にご留意いただくとともに、政府、自治体など公的機関の指示に従った行動をお願いいたします。
Supported by L&MARK
イナガキヤスト
富山県在住のフォトグラファー。家族写真の他、「富山の本気」をテーマに地元の風景を撮り続けている。ファミリーキャンプで「カシャッとな」運営。T&D×東京カメラ部「Try & Discover フォトコンテスト2019」優秀賞、土屋鞄 2019ランドセルフォトコンテスト大賞、長野県観光インスタアワード優秀賞。