こんにちは、宵月絃(@__yoii_to)です。
私は普段、近所の道や旅先でよく撮影していますが、お部屋の中で撮るのもすきです。
季節によって光が入る位置や時間が変わり、朝・夕方・夜では雰囲気も違います。ひそかに移り変わる光の中で、お気に入りのものを集めて写す時間はとても楽しく、まるで宝箱をのぞいているような気持ちです。
だいすきなものの見せたい部分をすくい取るように写すには50mmの画角がちょうどよく、いつもは標準ズームレンズの50mm付近や単焦点を使用しています。
今回はNIKKOR Z MC 50mm f/2.8で、ずっと気になっていたマイクロレンズの世界を体験。しっかりと使うのははじめてで、お気に入りの被写体のいつもと違う表情にずっとわくわくしていました。
また、後半では、はじめての雫写真にも挑戦したので、ぜひ最後までご覧ください。
マイクロレンズでのぞいた世界の魅力
まずは、普段から撮影しているものを、いつもの距離感と最短撮影距離で撮り比べてみました。
※マイクロレンズの写りの特徴についてはこちら。
【花】質感や雫のきらめきを感じられる
花がすきでお花屋さんで買ったり、自宅でアジサイを育てたりしています。ガラスの器に並べて、光の反射と花の色が交わるのを見ていると、時間も忘れて夢中になってしまいます。
寄ってのぞきこむようにすると、実際に目で見るよりもきらきらした世界が現れました。
上の写真は、器のフチについた水滴を玉ボケにして、アジサイの花から滴るように写した1枚です。花の質感も繊細に描かれ、上に乗る雫も宝石のようにきれいでした。
こちらは真っ白な花びらがきれいな早咲きのコスモスを撮影したものです。左の写真くらいの寄りで撮ることはありましたが、さらに近づいて花びらの質感だけを写してみました。やわらかい陰影とふんわりとした質感で、コスモスの優しい雰囲気を表現できたと思います。いろんな季節の花で試したくなるほど、すきな撮り方でした。
【猫】かわいい表情とクリアな瞳にときめく
猫がとてもすきで、自宅にいる2匹の猫の遊ぶ姿や瞳などをよく撮影しています。
片手にオモチャを持って遊ばせながら表情を切り取るには、50mmの画角がぴったりです。レンズが軽くてコンパクトなので、片手での撮影も楽でした。また、Z 5の機能「動物AF」を使うと、素早く動く猫の顔に常にピントが合って、かわいい表情を逃さず撮ることができます。
いつも一緒にいると「猫が見ている世界をのぞきたい」「何を感じているの」…とよく考えてしまいます。
普段はズームして瞳をアップで撮っていましたが、近くに寄って撮ることはなかったので、じーっと遠くを見つめているところをこっそり撮影してみました。窓など明るい場所を見つめる瞳にはキャッチライトが入り、星をギュッと詰めこんだようにきれいでクリアな描写にときめきました。
夕日をキャッチライトにしてよりかわいく
猫の瞳を撮るときは、夕暮れ時だとよりかわいいと感じました。上の写真は、一緒に窓から夕日を眺めていたときに撮影したものです。黒い部分に太陽が重なるようにアングルを調整すると、いつもより瞳がきらきらして見えて、アニメのキャラクターみたいになりました。
【気泡】一粒一粒が描写されてより涼しげに
上の写真はサイダーを飲んだときに撮影したものです。右の写真のように寄ってみると、グラスの外側についた水滴が玉ボケになり、氷についた気泡は一粒一粒がしっかりと描写され、より涼しげな写真に。気泡がこんなにかわいいものだったと、改めて知ることができました。
【アクセサリー】チャームポイントを大切にすくい取る
お気に入りのアクセサリーは、身に着けるのはもちろん、写真に撮るのもだいすきです。
いつもは上の写真のように、アクセサリー全体にピントが合うようにしますが、今回はチャームポイントに目がいくように撮影してみました。
ガラス玉の中に宇宙を閉じこめたようなアクセサリー。特に気に入っている月のモチーフにピントを合わせました。近くで見るとガラス玉が雫みたいだな…とイメージが膨らんだり、いつもより輝いて見えたり。光の当たり方で印象が大きく変わることにも気づきました。
マイクロレンズ×室内撮影のポイント
ここからは、マイクロレンズの写りを体験して感じたことをもとに、マクロ撮影のポイントや意識したことを紹介します。
【設定】ピントやボケ感の調整を重視する
手持ちでマクロ撮影をするときは、MFで慎重にピントを合わせるため、手ブレしないようにシャッタースピードを速くして、F値を少し大きめにすることを意識しました。
- フォーカス:基本はMFで、猫は動物AFにしました。
- 撮影モード:マニュアルで手ブレしないシャッタースピードに設定してから、F値でボケ感を調整します。なお、じっとしている猫の瞳を写したいときは、すぐ撮れるように絞り優先オートでF値だけ調整しました。
左:F5.6、右:F16
- F値:寄って小さい部分を写すときは少し絞ってF5前後、ピントを深めにするならF16程度です。
- シャッタースピード:1/60〜1/6400秒で調整します。明るい日中はシャッタースピードを速めに、暗い場面ではISO感度をなるべく低くするため遅く設定しました。
- ISO感度:日中でF値が小さければISO200~400、暗い状況でシャッタースピードを遅くできないときは上限ISO1600で調整します。
【光】向きや時間帯ごとの色で演出する
写真を撮る上で光は常に重要ですが、マクロ撮影するときは特に光の向きや色によって被写体の印象が大きく変わります。
光の向きを被写体や表現によって使い分ける
近づいて撮るとき、順光はレンズや自分の影が写ってしまうため避けて「逆光」「半逆光」「斜光」を被写体に合わせて使いわけます。ただ、ガラスの器などは近づきすぎると表面に自分が映ってしまうので注意が必要です。
- 逆光:光を通さないものだと陰になって全体的に暗くなってしまうので、薄い花びらやガラスなど透ける被写体と相性がいいです。
上の写真は、夕日を背景にしてガラスのフチの反射を玉ボケにしながら、中の花にピントを合わせています。夕日や花の淡い色が透明感たっぷりに描写されて、儚い空気感を表現できました。
- 半逆光:逆光よりも立体感を残しながら透過した光や手前に伸びる影も生かして撮ることができます。ガラスの器に花を浮かべたものを半逆光で撮ると、花にやわらかい陰影ができて立体的に描写されました。影と一緒にテーブルに映る透過光の輝きも美しいです。
- 斜光:普段、斜光で撮ることは少ないのですが、窓から差す光を花に当てて明るい部分に露出を合わせると、まるで花びらにスポットライトが当たっているようでとても惹かれました。陰影がしっかりと出て質感や自然な色が浮かび上がり、花の繊細さが引き立ちます。色が濃く花びらが透けない生花など、質感や本来の色を伝えたい被写体にぴったりだと感じました。
ただ、斜光は立ち位置によっては被写体に影が落ちてしまうので要注意です。
時間ごとの光の色や質感を生かして撮る
光の当たった部分に寄って切り取るので、光の色や質感も写真の雰囲気にとても影響します。朝と夕方の光の違いを、色や質感の変化がわかりやすいガラス小物を被写体にして比べてみました。
朝の光は透明感があり、全体を包みこむように明るく照らしてくれます。主役を際立たせつつ、まわりの雰囲気も一緒に残したいときに適していると思いました。
夕方は部分的に強く照らされ、光の強さに比例して色の濃淡も生まれるので、主役にスポットライトを当てるように写すのがオススメです。暖かいオレンジ色の光は、被写体をドラマチックに見せてくれます。
夜は身近なもので手軽にライティング
夜は見せたい被写体だけを照らすために部屋の照明は消してしまって、スマホの光やデスクライト、100円ショップにも売っているLEDコースターなどを使ってよく撮影します。
※LEDコースター:上にものを置くと光る照明のこと。
このときは、LEDコースターの上に被写体を置き、斜め下からスマホの光で照らして、少し離れた場所にあるデスクライトで全体をほんのり明るくしています。照らされた部分のみを切り取ることで、花の色や光の反射の美しさを表現できました。
【ピント】合わせる位置を変えて違う印象に
マイクロレンズでの撮影は、レンズが少し動いたり被写体との距離が変わるだけで、ピント位置や範囲が変化します。意図したところに合わせるのが難しい反面、くるくる表情を変える世界をのぞくのが楽しいです。
水の入ったガラスの器にアジサイを浮かべてLEDコースターの上に置き、ラップをかけて上から水滴をつけて俯瞰で撮影しました。
左の写真は花の形まで写っていますが、レンズを近づけていくと、右の写真のように花が大きくボケてまったく違う印象に。アジサイであることを伝えるためにレンズの位置を微調整して、アジサイの輪郭や質感などの要素が雫の中に映るようにしました。
上の写真は、青いアクセサリーを撮影していたときに、ピントを手前のドライフラワーに合わせたものです。アクセサリーに当たる光は玉ボケに、水色の器や花の輪郭は溶けるようにぼけて主役の繊細な写りが引き立ちました。ドライフラワーの儚げな魅力を引き出せたと思います。
マイクロレンズで雫写真に挑戦
マイクロレンズの写りをもっと生かしたいと思い、「雫」写真に挑戦しました。表現のポイントや撮影時に意識した点をお伝えします。
用意するもの
- スポイト:水滴を狙った位置や大きさでつくりやすいです。
- 三脚:雫は揺れなどに敏感でピントもシビアなので三脚を使います。
- 小型LEDライト:雫をピンポイントで照らせます。スマホのライトでもOKですが少し黄色みのある光なので、透明感を出すにはLEDライトがオススメです。
- セロファン:100円ショップなどにも売っている折り紙サイズのもの。被写体のイメージに合う色を選んで背景に使います。
ライトやセロファンで雫のかわいさを引き出す
花びらの上にちょこんと大きめの水滴をのせると、ぷっくりとした形がとても愛おしいです。花びらは表面に凹凸があり、ある程度固さがあるものが雫をキープしやすいと思います。小型LEDライトを持って左斜め上から雫を照らすと、光を反射して輝き、立体感も表現できました。
セロファンをくしゃっとしたものを背景にすると、凹凸が光を反射して玉ボケになってくれます。このときは、雫をつけた透かしホウズキの繊細で涼しげな雰囲気と、雨上がりの空気感を表現したくて青いセロファンを選びました。雫と玉ボケのきらめきが、透かしホウズキの儚げな魅力を引き立てています。
撮影メモ
上の2枚はどちらもくもりの日に撮影したものです。全体的に光が穏やかで、陰影もやわらかくしっとりとした雰囲気になるため雫写真に合っていると感じました。ライトで照らした部分や反射した光も際立ちとてもきれいです。
2つの花を使って雫の中に映しこむ
アジサイとダリアを逆光で撮影しました。アジサイの花に雫がぶら下がるようにして、背景のダリアを雫と同じくらいの高さにセッティング。レンズをのぞいて雫の中に花が映りこんだとき、とてもわくわくしました。雫はなるべく大きいほうが被写体を映しこみやすいです。
撮影メモ
雫の中に映す花は、色や形がはっきりしていて小さく映っても花だとわかるものが向いています。反対に雫をつける花は、淡い色のほうが映った花が際立ちます。逆光で花が明るくなるように露出を合わせると、色が際立ち透明感のある印象になりました。
液晶を背景にして光と彩りを取り入れる
夜は光の調整が難しいので、部屋の照明を消してタブレットなどの液晶画面に写真を表示して背景にすると、光と彩りを効果的に取り入れられます。写真は鮮やかでモチーフのはっきりしたものがオススメです。
上の写真は、自分で撮った花の写真を背景にして撮影しました。
ダリアの茎がしっかりしていたので雫をくっつけてみましたが、雫の形をイメージ通りにするにはまだ修業が必要そうです…。逆光状態なので茎はシルエットになり、光を透過した雫の輝きと花の彩りが際立ちました。さらに、水を張ったお盆に花を置くと写真が反射して世界観を強めることができます。
こちらは、夜の幻想的な雰囲気を表現するために、自分で撮ったキャンドルの写真を背景にしました。お盆に張った水に反射して描写がおぼろげになり、キャンドルの灯りにぴったりです。なるべく大きな雫をつくり、灯りの玉ボケをたくさん映しこんでいます。
撮影メモ
雫写真は、背景や反射、水滴の中の映りこみを意識して丁寧に切り取ることで、普段は見られない幻想的な世界を表現することができます。雫をコントロールするのは難しいですが、試行錯誤するのも楽しく夢中になりました。
Photographer’s Note
マイクロレンズでのぞいた世界は、普段見ているものがまったく違った雰囲気になるのがとてもおもしろく、なんだか小さな生きものの目線を体験したようです。近寄るほどに視界が変化していくので、シャッターを切るまでがわくわくして、いろんな角度からものを観察するようになりました。すきなものの質感をより知ることができたり、ボケ方で表現の幅が広がるところも魅力だと思います。
さらに、撮り慣れた50mmの単焦点としても使えるところがうれしかったです。特に小さいF値とクリアで解像感のある描写が印象的でした。
左はくもりの日に撮影した1枚です。くもりの光はしっとりしていてすきなのですが、薄暗い状況でもあります。このレンズはF値が小さく明るく撮れるので、ISO感度を上げずにクリアに撮れました。
右は部屋の中から、明るい空と窓辺に座る猫を切り取りました。猫はシルエットになっていますが、よく見るとふわふわの毛やひげまでしっかりと描かれています。
夜には窓からきれいな月が見えたので撮影してみました。とても小さく遠く感じますが、トリミングするとクレーターまで見ることができて、なんだかうれしくなりました。
夏はスイカやサイダー、アイス、風鈴、ヒマワリなどもクローズアップするとかわいく写ると思います。しゃぼん玉を窓から飛ばして撮ったらどんなふうになるのかな…など、いろんな可能性に興味が湧きました。
お部屋の中でレンズ越しにちょっと冒険するような気持ちを、ぜひ味わってみてください!
Supported by L&MARK
宵月 絃
デジタルカメラで身近な四季の花や月、星、空など「すき」と感じるものを写真に収めてSNSを中心に発信。淡く儚い雰囲気や、静寂の中にやさしさを感じる光景など、見る人の気持ちに寄り添うような写真が人気を集めている。