風景を鮮やかに彩る花々は、私たちに季節の訪れを告げ、癒やしを与えてくれます。この企画では、春夏秋冬の全4回にわたって、フォトグラファーの小春ハルカさん(@86ca86)に季節の花の撮り方を紹介していただきます。第2回は「冬の花」です。
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こんにちは、小春ハルカです。私は普段、身近に感じる「心動かされる瞬間」を撮影しています。
特に好きな被写体である「季節の花」は、四季の美しさを実感できます。前回は秋の花を紹介しましたが、季節は巡り冬がやって来ました。
冬の景色は植物や彩りが少ないイメージですが、その中でも美しい花を見つけるとうれしくなり、寒さに負けずに咲かせる姿に勇気をもらっています。花は暖かくなるまでゆっくり時間をかけて成長するので、長い間楽しめるのも魅力です。
今回は、冬に撮りたい花と撮り方のポイント、そしてお家でもできる花撮影について紹介します。
冬に撮りたい花5選と撮影のポイント
冬の時期に咲く花を5つピックアップしました。淡い色合いの花が多いですが、冬らしさを生かして撮るのがポイントです。
「冬らしさ」と言っても、さまざまなイメージがあります。
- 寒さに負けず咲く凛とした姿
- 儚くどこか寂しい
- 快晴の澄んだ空の下に咲く爽やかな雰囲気
左:寒さに負けず咲く凛とした姿、右:青空を背景にした爽やかな雰囲気
冬は太陽が低く、夕方には優しい光が差しこみ、暖かさを感じるのも特徴です。
このように背景や光が与える影響が大きい花の世界観。天気や光、花の咲き具合を見て、そこから感じた印象を大事に切り取っています。
【冬桜】寒さの中で際立つ美しさと芯の強さ
冬桜は、10月頃から開花しはじめ、11月~12月に最も多く咲き、春にまた多く開花する二季咲きの花です。小ぶりでかわいらしさを感じますが、寒さの中でも凛として咲く美しさやその生命力に惹かれます。
- 時期:10~4月
※地域や気象条件、種類や植えられた時期などによっても異なります。
寒さの中で凛と咲く姿を写し出す
冬は白くくもった日が多く感じますが、背景として生かすと冷たい空気感を表現できます。枝感によって出した儚さを、開放F値で背景をぼかすことでさらに強調しながら、主役を際立たせています。なお、白っぽい背景で白い花を撮る際は、花の輪郭を残すように意識し、白とびしないように暗めに設定します。
紅葉の色彩を背景に添える
秋から咲きはじめる冬桜は、紅葉と一緒に楽しめます。上の写真では真っ赤な紅葉をぼかして、暖かみを出しました。
まとまって咲いている花を見つけて日の丸構図で存在感を出しました。背景のうっすら色づいているのは紅葉です。混じり合う季節を1枚に収めました。
【スイセン】朝日で輝く雪解けの雫
冬の花で特に好きなのがスイセンです。雪の中で春の訪れを告げるので、別名「雪中花」とも呼ばれているそうです。白くかわいらしい花ですが、雪が降る季節でも美しく咲くその姿に魅力を感じます。
- 時期:12~4月
※地域や気象条件、種類や植えられた時期などによっても異なります。
雪解けしていく瑞々しさを伝える
積もった雪が朝の日差しで溶けていく時間を狙い撮影をしました。明け方の低い太陽を逆光にすることで、雪解けの雫が輝き、瑞々しさを表現できます。
上の写真では、木々の間から差しこむ朝日を背景として大きくぼかし、暖かい雰囲気に。花と目線を合わせるようにローポジション・ローアングルで撮影し、寒さに負けない姿を写し出しました。
立体感のある花の場合、何をいちばん見せたいかでピント位置を変えています。上の写真では、雪解けの様子が素敵だと感じたため、雫にピントを合わせました。
【梅】カラフルな花が青空に映える
梅林公園や身近な場所でもよく見かける梅は、白やピンク、黄色と、冬の景色をカラフルにしてくれます。
- 時期:2~3月(ロウバイは12月~3月)
※地域や気象条件、種類や植えられた時期などによっても異なります。
青空を背景に軽やかな印象に
見上げて撮るため、背景は自然と空になるのですが、爽やかな青空に梅がよく映えます。手前の花を前ボケでフレーミングし、奥の主役の花を際立たせています。
こちらは黄色い花をつけるロウバイ。補色関係にある青と黄色の相性は抜群です。左側に前ボケをつくり、ふんわりとした印象を出しました。個人的に好きな色の組み合わせなので、黄色い花を見かけると青空をバックに撮影することが多いです。
太陽の光を生かし、透明感を出す
晴れている場合、太陽から遠い空ほど青が濃く出て、太陽に近いほど光で空は白っぽく見えます。左の写真ではあえて白い背景にし、冬らしさを出しました。枝の方向を意識して、太陽に向かって咲いているように。右の写真は、逆光でスポットライトのように、主役の中央の花を照らし出しています。
花のストーリーをイメージ
優しい青空を背に、梅の花がのびのびとしています。隣り合う梅の花が手を差し伸べあっているように見え、枝と枝の間が中央に来るよう構図を決めました。
【ノースポール】仲良く並ぶ可憐な花たち
花壇や花畑で見られるノースポール。同じキク科で秋~春に咲くマーガレットにも似ていますね。白くて繊細な花びらが冬の季節によく合い、可憐で美しい姿に魅力を感じます。小さいけれど、密集して咲いているのを見かけると遠くからでも存在感がありますよ。
- 時期:12~6月
※地域や気象条件、種類や植えられた時期などによっても異なります。
上を向いて咲く花は、俯瞰でかわいらしく
上に向かって咲く花や密集して咲く花は、俯瞰で撮ることで花火のようにパッと明るい印象に。密集感を出すため、四隅まで花で埋まるようにフレーミングするのがポイントです。その中から、背が高くて前面にあり、光が当たる花を主役として中央に配置しました。また、周囲に背が低い花があることで、俯瞰でも高低差によって背景が淡くボケて、優しい雰囲気になります。
前後を大きくぼかし、密集した中から主役を強調
密集して咲く中から、ひょいと顔をのぞかせて光を浴びている花を主役に。近づいて開放F値にすることで前後を大きくぼかし、数ある花の中から主役を際立たせています。
【ビオラ】足もとを彩る優しい色合い
花壇や寄せ植えなどで見かけるビオラ。小ぶりでひらりとした花びらがかわいらしく、優しい色合いに惹かれます。これより大きいものがパンジーで、そちらも冬の花です。
- 時期:11~5月
※地域や気象条件、種類や植えられた時期などによっても異なります。
画面いっぱいにフレーミングして華やかに
小ぶりなビオラは、1か所にたくさん植えられていることが多いです。その華やかさを画面いっぱいにフレーミングして表現しました。一面が同じ花の中でも立体感が出るよう、冬の斜光を生かして花の色と明暗を際立たせています。
前後のボケで、主役の1輪を際立たせる
こちらは、まわりの花に埋もれながらも存在をアピールしているようなビオラを主役に。ビオラを画面いっぱいにフレーミングしながら、前後のボケで主役に視線がいくようにしています。
別の花の色や緑をアクセントに
同じ花が密集している場所では、同じような写真が増えてしまいがち。違う要素(植物や別の色の花)の色味をプラスすることで、変化をつけることができます。
左の写真は右奥に茎や葉の緑を取り入れ、淡いピンクを際立たせました。右の写真では、手前のピンクの花を前ボケにして奥行きを出すことも意識しています。
冬は部屋で花撮影を楽しもう!
「近くに花が咲いていない」「寒いのが苦手」という方にオススメなのが、部屋の中での花撮影です。花屋さんで生花を購入し、部屋の中に入る光を生かすことで、美しい花の魅力を引き出すことができます。
部屋で花を美しく撮る5つのポイント
①【花選び】密集して咲く花や1輪で華やかな花
まずは花屋さんで花選びから。もちろん好きな花を選ぶのですが、悩む方は以下を参考にしてみてください。
- 小ぶりで密集した花:かわいらしい雰囲気で、寄り・引きによりバリエーションも出せます。影の形も特徴的です。下の写真は、マトリカリアという花で、他にもマーガレットやデルフィニウム、スイートピー、かすみ草などもオススメです。
- 華やかな1輪の花:これ一つで構図の軸が決まります。下の写真はガーベラという花で、他にはバラやダリア、ラナンキュラスなども華やかです。
②【背景と構図】色画用紙で好きな世界観に
花の美しい世界観を切り取るには、生活感が出ないようにしたいところ。白テーブルがあると冬らしい背景をつくれますが、ない場合には色画用紙を使ってみましょう。例えば、真っ白な紙で冬の冷たさを、淡い青で青空を表現できます。このとき、画用紙のみで背景が埋まるように構図を決めるのがコツです。
こちらは、ドリーミーな印象にしたかったので、小さい白い花にマッチしそうな紫の画用紙を選んでみました。
上の写真では、優しいブルーの花にマッチする淡い色画用紙を選び、全体的にパステルなイメージに。花を見切らせて余白を多くつくることで、ニュアンスのある雰囲気を出しました。
なお、色画用紙の上に寝かせて撮影すると、花の表面の美しさや影を生かすことができ、構図のバランスもとりやすいです。ガーベラのように大きな花の場合、花びらに近い茎の部分を台になるものの上に置いて高さを出し、花びらがつぶれないようにします(花びらに隠れるものなら何でも大丈夫です)。
③【光】透明感を出す逆光・ポップに写す順光
光の考え方は外で撮るときと同じで、花びらを透かしたり透明感を出したいときには逆光で、色をしっかり描写してポップに仕上げたいときは順光で撮影します。色画用紙の背景はどこにでも移動できるので、光の向きの調整も楽ちんです。
- 逆光:花びらが透けて透明感が表現でき、冬の冷たい空気感も漂います。特に影が伸びる夕方がオススメで、花の色がのった影が印象的です。
光が強すぎる場合はカーテンで調整
明暗差が強すぎるのを抑えたい場合は、カーテンで調節できます。優しい光に変わり、淡くかわいらしいイメージに仕上がりました。
- 順光:色がしっかり出るため、ポップな印象に。背景に色画用紙を使う場合、色の持つイメージをより引き出すことができます。
④【設定】背景が近いためF値は小さく
テーブルや色画用紙に置いて撮る場合、奥行きがないため、極力F値を小さくするのがポイントです。上の写真では、F2.8ですぐ後ろの花や紙をぼかしています。
また、光が入る場所でF値を小さくすることで、冬らしい透明感を出すこともできます。右の写真のように望遠(写真では70mm)を使えば、豊かなボケを取り入れることも可能です。
⑤さらに魅力を引き出すアイデア
最後に、花の美しさを引き出すアイデアを一つ紹介したいと思います。それは「水を張った透明なボウル」です。下のように、逆光で花の後ろ側に置くと、キラキラした模様をつくり出すことができます。
撮影風景。ボウルの影の位置を見ながら、主役の花の位置を決めます。水を張ったボウルの中に植物などを浮かべると、独特な影をつくることもできます。
こちらが実際に撮影した写真です。背景が白でもボウルの影でニュアンスが生まれ、白い花を際立たせることができました。
こちらは、ボウルの影が全面にくるように。水の中に花が漂うような、幻想的な雰囲気を表現しました。
Photographer's Note
外では寒さに負けずに力強く咲く花からエネルギーを感じ、部屋の中では花と向き合ってじっくり撮影できる空間が楽しくて、改めて花の魅力の奥深さを感じました。
冬は花が少ないイメージがあるかもしれませんが、今回紹介した以外にもクリスマスローズやスノードロップなど、実はたくさんあります。
彩りが少なくなる季節で少し寂しさも感じてしまいますが、アイデア次第で自分の好きなイメージを表現できるので、ぜひみなさんもこの冬は花撮影を楽しんでみてください!
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小春ハルカ
季節の花や夕焼け空、何気ない田舎の景色など、日々過ごしていく中で身近に感じる「心動かされる瞬間」を撮影。花と風景の淡色世界を表現している。