秋に撮りたい花5選 – 花の魅力を引き出す色彩・光・構図のポイント

秋に撮りたい花5選 – 花の魅力を引き出す色彩・光・構図のポイント

風景を鮮やかに彩る花々は、私たちに季節の訪れを告げ、癒やしを与えてくれます。この企画では、春夏秋冬の全4回にわたって、フォトグラファーの小春ハルカさん(@86ca86)に季節の花の撮り方を紹介していただきます。第1回は「秋の花」です。

 

こんにちは、小春ハルカです。
普段は、花や夕焼け空、何気ない田舎の景色など、身近に感じる「心動かされる瞬間」を撮影しています。

中でも季節ごとに咲く花を見ると四季の美しさを実感し、そのときだけの花の景色を楽しめるのも魅力です。枯れてしまうときは寂しいけれど、季節が巡ってまた美しく咲く、そのエネルギーや生命力に元気をもらえます。

 

Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S
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Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S
Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S

 

「秋の花」として、最初に思い浮かぶのはコスモスです。

私が写真活動を再開したのは2021年秋なのですが、コスモスが一面に咲く畑が近くにあり、何度も撮影に出かけ「写真を撮ることの楽しさ」に改めて気づいたきっかけでもあります。

 

今回は、秋に撮りたい花と、それぞれの撮影のポイントを紹介します。ぜひ、身近に咲く花を撮りに出かけてみてください!

 

秋に撮りたい花と撮影のポイント

秋の時期に咲く花を5つピックアップしました。それぞれの特徴を生かし、魅力を引き出すためのポイントを紹介します。

【コスモス】カラフルなかわいらしい花

Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S

Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S

 

ピンク、白、濃赤、黄、オレンジと色とりどりで、見ているだけで愛らしいコスモス。暑い夏を乗り越えた後、秋の風に揺られているその姿を見ると心が自然と安らぎます。

  • 時期:6~11月
    ※地域や気象条件、種類や植えられた時期などによっても異なります。

 

主役を決め、ローアングルで淡い青空を背景に

Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S

Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S

 

色や形がかわいらしいコスモスは、秋の澄んだ青空と一緒に写すのが好きです。

たくさん咲く花畑では、どれか一つを主役に決めるようにしています。上の写真では、白いコスモスに注目。ローアングルでシンプルに淡い青空だけを背景にすると、花の色やかわいらしさが際立ちます。手前のピンクのコスモスを前ボケにすることで、数ある花の中から、白いコスモスの特別感を出すことができます。

 

カラーパレットのように空の色で花の雰囲気を変える

Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S
Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S
Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S

 

秋は日が落ちるのが早く、短時間で空の色が変わり、カラーパレットのように色表現が楽しめます。右の写真は、夕方に逆光でF値を小さくして撮影。温かく優しい雰囲気を表現しました。なお、透き通るコスモスの花は逆光で透かし、花びらの重なりを意識することで立体感を出しました。

 

Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S
Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S
Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S

 

また、日没後は、じんわりにじんでいく空の変化や月の出を楽しみながら、しっとりとした雰囲気を写し出せます。撮るときは、月の方向を確認して主役を決め、望遠側(上の写真は70mm)で月がちょうどいい位置にくるような構図を探しました。まだ明るさの残る時間帯に撮影することで、花や空の色を生かすことができます。

 

日常のシーンとして周囲の風景と一緒に写す

Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S

Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S

 

道端などにも咲くコスモスは、秋の日常のワンシーンです。上の写真は、田園風景の中で咲くコスモス畑を見つけ、花を前ボケにして鉄塔など何気ない日常にスポットを当てて撮影しました。全体を写すときは何か目を引くものを一つ入れるのが、まとまりを出すポイントです。

【ススキ】秋の風を感じ、黄金色に輝く

Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S

Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S

 

河川敷や、線路沿いなど身近な場所で見かけるススキ。動物の尾のように見えることから「尾花」とも呼ばれています。サラサラとなびく音が、秋を感じられて心地いいです。

  • 時期:8~10月
    ※地域や気象条件、種類や植えられた時期などによっても異なります。

 

逆光で輝くススキをとらえる

Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S

Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S

 

夕日や朝日など太陽の低い時間帯に逆光で撮ると、ふわふわな綿毛が透き通り神秘的に輝きます。上の写真は、日の出直後の優しい光に包まれ、キラキラ輝くススキを写しました。F値を小さく、かつ望遠寄りにすることでふんわりと、宝石のような玉ボケを作ることができます。

 

順光でかわいらしく写す

Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S

Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S

 

逆光で撮影したススキと同じ日の写真ですが、位置を変えて順光で撮ると、ススキや空の色がはっきり出てかわいらしいイメージになります。このとき、空を広く入れるため広角寄りにしているのもポイントです。

【ヤナギバヒマワリ】秋に咲く可憐なヒマワリ

Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S

Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S

 

花畑や公園などに咲く、小さなヒマワリのようなヤナギバヒマワリ。過ぎた夏をもう一度感じられる姿に元気をもらえます。黄色い花は青色と相性がよく、空を背景にすると爽やかな印象になります。

  • 時期:9~10月
    ※地域や気象条件、種類や植えられた時期などによっても異なります。

 

密集して咲く花を画面いっぱいに写す

Z 6II、NIKKOR Z 35mm f/1.8 S

Z 6II、NIKKOR Z 35mm f/1.8 S

 

この花は、密集して咲きます。パッと上に向かって咲く花を俯瞰で撮ると花火のように華やかです。黄色は「元気」なイメージもありますが、秋らしくノスタルジックな雰囲気に編集で仕上げています。

 

気に入った花を額縁に入れてアート作品のように

Z 6II、NIKKOR Z 35mm f/1.8 S

Z 6II、NIKKOR Z 35mm f/1.8 S

 

たくさん咲く花畑では、小道具を使うとひと味違う写真が撮れます。上の写真では、額縁を持って絵画のイメージで撮影しました。F値を小さくして背景をぼかすことで、額縁の中の花が浮かび上がります。なお、カメラを片手で持つことになるので、シャッタースピードを極力速くして、手ブレしないようにするのがポイントです。

【ダリア】ぼんぼりのように華やぐ存在感

Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S

Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S

 

植物園などに咲いているダリア。繊細な花びらとダイナミックな形に美しさを感じます。見ているだけで華やかな気持ちにさせてくれます。

  • 時期:7~10月
    ※地域や気象条件、種類や植えられた時期などによっても異なります。

 

一つだけ咲く花を見つけ、形や色の美しさを強調

Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S

Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S

 

ダリアのような大輪の花は、寄って撮影したり、日の丸構図にすると、目を引く写真に。このとき、ダリアの茎や葉の緑を背景にすることで、鮮やかな色彩が引き立ちます。

 

開き切る前の花で写真に変化をつける

Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S

Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S

 

主役となる花を探す中で、開き切る前の花は写真に変化をつけることができます。自然のアートは特別で、それぞれの過程に美しさがあります。

 

大輪の花びらをクローズアップ

Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S

Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S

 

大きく開く花びらは、思い切ってクローズアップすると花火のように華やかな印象になります。逆光で撮影することで、花びらの影や立体感を出すことができました。望遠端70mmで可能な限り寄りましたが、編集でトリミングをして、花の造形美を際立たせています。

【サルスベリ】空を泳ぐように優雅に咲く

Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S

Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S

 

公園など身近な場所に咲くサルスベリ、実は私の自宅の庭にも咲いています。

パッと明るくなるようなピンクと特徴的な花びらの形がかわいらしくて、夏から秋の長い期間楽しめるのも魅力的です。木に咲く花なので、青空と一緒に撮影をして見上げるような構図の写真を撮りたくなります。

  • 時期:7~10月
    ※地域や気象条件、種類や植えられた時期などによっても異なります。

 

木漏れ日でスポットライトを当てる

Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S

Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S

 

花びらの形も素敵で、寄って撮ると華やかさを写し出せます。上の写真を撮ったときは、葉と葉の間から溢れる光が、花にスポットライトを当てているようでした。主役となる花を探すときは、光の当たり方にも注目してみると見つけやすくなります。

 

空を大胆に入れた構図で切り取る

Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S
Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S
Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S

 

下から見上げると、バラバラな背丈と花の動きのおもしろさに気づきます。空の入れ方をいろいろ試しながら、空の下で伸び伸びとしているイメージで撮影しました。木に咲く花は、青空を入れた自由度の高い構図にできます。

 

さまざまな花に共通する撮り方のポイント

ここからは、花全体に共通する撮影のポイントを改めて紹介します。

今回紹介した以外にも秋の花はたくさんありますので、以下のポイントを参考に撮影してみてください!

【機材】可動式モニター+ズームで各咲き方に対応

  • カメラ:花の咲く位置に合わせて低い位置や見上げるように撮影する際には、楽な姿勢で構えられる可動式モニターが便利です。私が愛用しているフルサイズの Z 6IIにも可動式モニターがあり、さらに花の透明感や輪郭、立体感をそのまま表現してくれる描写が気に入っています。
  • レンズ:散歩しながら撮る場合は、広角~中望遠域をカバーする標準ズームがオススメです。開放F値がF4でも十分で、私はNIKKOR Z 24-70mm f/4 Sをメインにし、さらにぼかしたいときはNIKKOR Z 35mm f/1.8 Sを使っています。

 

Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S
Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S
Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S

左:31mm、右:70mm

【設定】風でブレないシャッタースピードに

  • 撮影モード:マニュアル。風で花がブレないようにシャッタースピードを設定し、F値でピント範囲を変えるため、マニュアルで撮影しています。
  • シャッタースピード:1/500秒以上で、風があってもブレないように。
  • F値:F4でほどよくボケてくれます。花や風景全体を写すときはF5.6~8程度に絞り、シャープに写し出します。

 

Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S
Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S
Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S

左:F4、右:F8

 

  • ISO感度:風が少ない日は、シャッタースピードを極力下げて、ISO感度は最低感度に。風があってシャッタースピードを速くするためにISO感度を上げるときでも上限を250程度にしています。
  • ピント合わせ:正面から撮る場合は、しべにシングルポイントAFでしっかり合わせます。しべが見えないアングルから撮るときは花びらの重なり部分にピントを合わせています。

 

Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S

Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S

しべにシングルポイントAFで合わせた写真

【光】ドラマチックな逆光・ポップな順光

光は使いわけが大事です。立体感やドラマチックな表現をしたい場合は逆光など後方からの光を、かわいらしくポップなイメージを表現したい場合は順光など前方からの光で撮影します。

 

Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S
Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S
Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S

左:逆光、右:順光

 

なお逆光のときは、背景の色がとびすぎないように注意し、暗い時間帯は黒つぶれしないように花を基準に露出を決めるのがポイントです。

【アングル・構図】主題に合わせた切り取り方

花と背景で色の組み合わせを楽しんだり、美しく咲き誇る花を画面いっぱいに写したり、同じ花でも表現の仕方でさまざまな印象を与えることができます。

 

空背景とボケで主役の花を際立たせる

Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S

Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S

 

花の色や形を見せたいときは、ローアングルで空を背景に。さらに、前ボケや背景ボケを入れることで、シンプルな構図ながら鮮やかさがあり、主役に自然と目がいく写真になります。

 

望遠で密集度の高い部分をフレーミング

D5300、AF-S DX NIKKOR 55-300mm f/4.5-5.6G ED VR

D5300、AF-S DX NIKKOR 55-300mm f/4.5-5.6G ED VR

 

望遠レンズがあると、さらに表現の幅が広がります。密集して咲く花畑では、近くのものを写すより遠くの花に注目すると、密度のある写真を狙うことができます。この写真は、望遠300mm(35mm判換算450mm)で圧縮効果を生かし、密度の高い部分を切り取りました。

 

花を風景の一部としてとらえる

D5300、AF-S DX NIKKOR 55-300mm f/4.5-5.6G ED VR

D5300、AF-S DX NIKKOR 55-300mm f/4.5-5.6G ED VR

 

花を撮る場合、どうしても寄って花だけを写したくなりますが、目線を上げて見てみると、季節の花で彩られた日常風景もとても味わい深いです。このとき、車や標識など身近な被写体を一つ入れてピントを合わせると、風景の中にポイントができてバランスがよくなります。

Photographer's Note

 

優しい秋の風に包まれて。

 

秋に撮りたい花5選 – 花の魅力を引き出す色彩・光・構図のポイント
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秋に撮りたい花5選 – 花の魅力を引き出す色彩・光・構図のポイント
秋に撮りたい花5選 – 花の魅力を引き出す色彩・光・構図のポイント

 

だんだんと肌寒くなっていき、どこか寂しさを感じる秋。この季節には、どこか寄り添ってくれるような優しい花が咲く印象があります。

花は調べてみるともっとたくさんの存在に気づくことができ、いつも見ている花もその日の天気や時間帯で雰囲気ががらっと変わるのが魅力です。

これからの秋の季節にはどういう花の風景と出会えるのか。そのとき感じた気持ちや空気感を大事にしながら撮影を楽しんでいきたいと思います。

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小春ハルカ

小春ハルカ

季節の花や夕焼け空、何気ない田舎の景色など、日々過ごしていく中で身近に感じる「心動かされる瞬間」を撮影。花と風景の淡色世界を表現している。